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58話
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「行くよ!」
リスポーンしてすぐにタイガが先頭を走る。テツとニシはすぐ後付いてきて、俺はワンテンポ遅れて走り出す。タイガの背中を見て前に出るのは初めてかもしれない。
役割上俺が前に出るのが、普通だからだ。
迷いなく、決心を決めた男の背中は立派なものだった。タイガはずっと俺の後を追ってここまで来た。本当に全てが真っすぐな、人間だった。彼は、俺のおかげで自分があると言っていたが、今では正反対だ。
さっきの試合の俺の後ろはどれほど頼りなかったことだろうか。
「テツ、ニシ! 恐らくまたさっきみたいに囮が見えたら、一斉射撃! 1枚落とすぐらいの気持ちで! 今後不用意に体を出させないようにする!」
「任せろ!」
「わかった!」
二人に指示は出すが、俺には特にないようだ。なにも言わず俺は後ろに着いて行くだけ。
しかし、指示の内容は確実なもので、3マッチ勝利というルールをきちんと活用している物だった。普段は俺の指示に従うだけだったが、タイガはタイガなりにきちんと、色んなことを考えていることが分かった。
「いたぞ! さっきと同じ右展開だ!」
だいぶ早い段階で姿が見えた。まだ境界ラインまでは少しあるが、この段階で見えるということは、やはりあえて俺達に発見させているようだ。
「掃射!」
テツの発見報告を受けて、全員が居場所を確認した次の瞬間に、すぐさまコールが出た。この速さは、テツとニシのことを信頼していないと出来ないことだ。
「やりきれなかったな」
恐らくほんのミリまで削りきったようだが、ダウンを取れるところまではいかなかった。相手チームも絶対にダウンが出来ない状況ということは、理解していただろうから、銃声がしてから遮蔽物に隠れるまでが、とてつもなく早かった。
「すぐに、全員で左展開するよ! スナの裏を突く。陣地が入れ変るくらいのつもりで回るよ!」
だからといって、落胆するのではなく、すぐさまその次の作戦に移る。初めから仕掛けが成功したときと、失敗したとき、どちらのことも考えてあったのだろう。行動一つ一つに無駄が無い。
そして、作戦の本質を瞬時に理解させるために、わざと大袈裟な言葉を使っている。指示を曖昧にしないことは、なによも大事なことだ。
さっき俺が全くもって出来ていなかったこと。
「「了解」」
そのまま、誰とも接敵しないまま、捕捉もしないまま、左ラインを駆け上がる。境界ラインを既に超えているから、この作戦は成功していることを示す。
相手チームも、まさかノンストップで来るとは想像はできても、実行してくるとはなかなか思わないのだろう。
「タイガ! 通り過ぎた! 俺たちの少し後方の遮蔽物に一人いるぞ!」
ニシが、ふと後ろを振りかえって、敵を補足したようだ。ここまで誰も見つけられないことに、不安を覚えて注意深く確認していたことようだ。
「スナじゃない!」
すぐさま、タイガが報告を受けた敵を発見したが、持っている武器がスナイパーでないことを確認した。
ということは、この奥にスナイパーがいる可能性が、高くなった。
「テツ、ニシいける!?」
「任せろ!」
「じゃあ、先に前進むよ! 付いてきて!」
ここで初めて、タイガが俺に指示を出した。さっきまでは、この試合俺の仕事は無いものだと思っていた。しかし、付いてこいということは、ここから俺の盾が必要になるということだ。
その言葉をかけられたとき、俺の全身に電気が流れたように、背筋が伸びた。そのまま、走りだすタイガの後ろのにピッタリとついて走りる。
「タイガやったぞ!」
俺達が、前にすすですぐにテツがからの報告が入った。あの二人ならたった一人てこずることは無いと、思ったがさすがだ。
「ナイス! そのまま俺達の姿が見える位置を維持して、中央ラインを進んで!」
タイガの声とかぶさるように、1発の銃声が聞こえた。
「俺たちの所にスナが飛んできてる! 恐らくは、正面に一枚と、タイガ達の前方に一枚!」
一個しか聞こえなかったということは、一人は遠いが、もう一人はかなり近くにいるようだ。
「了解! ダウンしないように気を引いて、撃ち返してもいい!」
「弾幕を撒くのは得意だぜ!」
テツの報告のおかげであらかたの位置は、把握できていた。さらに、銃声を絶え間なく鳴らすことで、足音を聞こえずらく、タイガが裏を取っているのを気づかせないようにしていた。
「裏取れたこれはやれる!」
伏せ撃ちをしていた一人を見つける。こちらには全く気がついていない。この距離まで近づけば、確実にやれる。
俺はとっさにどこにいるかも分からない、残りの敵を警戒してタイガがちょうど射線の通る所に盾を構えて前に出る
「そう! それ!」
タイガ、大きく叫ぶ。タイガのやりたいことを察知して、自然と体が動いた。
「やったぞ! 後2人!」
結果としてはイージーキルを拾ったことになるが、確実で迅速な動きが功を奏した。
「これで、俺たちの居場所は全員バレた。正面のスナを横から突くから、そのまま前出て。途中もう一人のアタッカー見つけたら、そっち優先していいよ!」
「了解!」
タイガは方向転換して、一気に中央ラインの方に向かっていく。
「!?」
タイガが声を上げるよりも先に立ち止まる。異変を察知した俺は、すぐさまタイガの前に出る。アタッカーの一人に待ち伏せされていた。射撃よりも先に先に姿を確認できたため、先頭のタイガは多少の被弾で済んだ。
運よくここでタイガをやりきれれば、後は武器を持たない俺だけ。一気に五分まで持っていけたが、それは叶わず、4対1の状況にまで持っていった。
恐らく、敵はリスポーンを待つために、俺たちの姿が見えても撃たずに、隠れてやり過ごすだろう。
だけど、こんな絶好の機会を逃すわけがない。
「あと一人だ!」
「おお!」
「タイガ達が待ち伏せされてた時に、一発だけ弾が飛んできた! 恐らくエリアの右端にいる」
よく見るとニシのHPが大きく削られているのが分かった。待ち伏せと合わせて、スナを一発当ててくるとは、抜け目ないというか、勝ちを諦めない意思を感じる。
しかし、その攻めの姿勢のおかげで俺達に勝利をもたらしてくれ。居場所さえわかれば、後はそこに雪崩込めばいいだけ。スナイパーはリロードに時間がかかるから、近距離で人数有利なら勝てる。
「いたぞ!」
一番いテツが見つける。今までのお返しと言わんばかりに、伏せているラスト一人に銃弾を浴びせる。
VICTORY
俺達は1マッチ目の大敗を、やり返す形で、一人も落ちることなく圧勝しきった。
タイガの迷いのない進軍と、機転を活かした展開。
さっきと比べると、勝つべくして勝った試合だった。
リスポーンしてすぐにタイガが先頭を走る。テツとニシはすぐ後付いてきて、俺はワンテンポ遅れて走り出す。タイガの背中を見て前に出るのは初めてかもしれない。
役割上俺が前に出るのが、普通だからだ。
迷いなく、決心を決めた男の背中は立派なものだった。タイガはずっと俺の後を追ってここまで来た。本当に全てが真っすぐな、人間だった。彼は、俺のおかげで自分があると言っていたが、今では正反対だ。
さっきの試合の俺の後ろはどれほど頼りなかったことだろうか。
「テツ、ニシ! 恐らくまたさっきみたいに囮が見えたら、一斉射撃! 1枚落とすぐらいの気持ちで! 今後不用意に体を出させないようにする!」
「任せろ!」
「わかった!」
二人に指示は出すが、俺には特にないようだ。なにも言わず俺は後ろに着いて行くだけ。
しかし、指示の内容は確実なもので、3マッチ勝利というルールをきちんと活用している物だった。普段は俺の指示に従うだけだったが、タイガはタイガなりにきちんと、色んなことを考えていることが分かった。
「いたぞ! さっきと同じ右展開だ!」
だいぶ早い段階で姿が見えた。まだ境界ラインまでは少しあるが、この段階で見えるということは、やはりあえて俺達に発見させているようだ。
「掃射!」
テツの発見報告を受けて、全員が居場所を確認した次の瞬間に、すぐさまコールが出た。この速さは、テツとニシのことを信頼していないと出来ないことだ。
「やりきれなかったな」
恐らくほんのミリまで削りきったようだが、ダウンを取れるところまではいかなかった。相手チームも絶対にダウンが出来ない状況ということは、理解していただろうから、銃声がしてから遮蔽物に隠れるまでが、とてつもなく早かった。
「すぐに、全員で左展開するよ! スナの裏を突く。陣地が入れ変るくらいのつもりで回るよ!」
だからといって、落胆するのではなく、すぐさまその次の作戦に移る。初めから仕掛けが成功したときと、失敗したとき、どちらのことも考えてあったのだろう。行動一つ一つに無駄が無い。
そして、作戦の本質を瞬時に理解させるために、わざと大袈裟な言葉を使っている。指示を曖昧にしないことは、なによも大事なことだ。
さっき俺が全くもって出来ていなかったこと。
「「了解」」
そのまま、誰とも接敵しないまま、捕捉もしないまま、左ラインを駆け上がる。境界ラインを既に超えているから、この作戦は成功していることを示す。
相手チームも、まさかノンストップで来るとは想像はできても、実行してくるとはなかなか思わないのだろう。
「タイガ! 通り過ぎた! 俺たちの少し後方の遮蔽物に一人いるぞ!」
ニシが、ふと後ろを振りかえって、敵を補足したようだ。ここまで誰も見つけられないことに、不安を覚えて注意深く確認していたことようだ。
「スナじゃない!」
すぐさま、タイガが報告を受けた敵を発見したが、持っている武器がスナイパーでないことを確認した。
ということは、この奥にスナイパーがいる可能性が、高くなった。
「テツ、ニシいける!?」
「任せろ!」
「じゃあ、先に前進むよ! 付いてきて!」
ここで初めて、タイガが俺に指示を出した。さっきまでは、この試合俺の仕事は無いものだと思っていた。しかし、付いてこいということは、ここから俺の盾が必要になるということだ。
その言葉をかけられたとき、俺の全身に電気が流れたように、背筋が伸びた。そのまま、走りだすタイガの後ろのにピッタリとついて走りる。
「タイガやったぞ!」
俺達が、前にすすですぐにテツがからの報告が入った。あの二人ならたった一人てこずることは無いと、思ったがさすがだ。
「ナイス! そのまま俺達の姿が見える位置を維持して、中央ラインを進んで!」
タイガの声とかぶさるように、1発の銃声が聞こえた。
「俺たちの所にスナが飛んできてる! 恐らくは、正面に一枚と、タイガ達の前方に一枚!」
一個しか聞こえなかったということは、一人は遠いが、もう一人はかなり近くにいるようだ。
「了解! ダウンしないように気を引いて、撃ち返してもいい!」
「弾幕を撒くのは得意だぜ!」
テツの報告のおかげであらかたの位置は、把握できていた。さらに、銃声を絶え間なく鳴らすことで、足音を聞こえずらく、タイガが裏を取っているのを気づかせないようにしていた。
「裏取れたこれはやれる!」
伏せ撃ちをしていた一人を見つける。こちらには全く気がついていない。この距離まで近づけば、確実にやれる。
俺はとっさにどこにいるかも分からない、残りの敵を警戒してタイガがちょうど射線の通る所に盾を構えて前に出る
「そう! それ!」
タイガ、大きく叫ぶ。タイガのやりたいことを察知して、自然と体が動いた。
「やったぞ! 後2人!」
結果としてはイージーキルを拾ったことになるが、確実で迅速な動きが功を奏した。
「これで、俺たちの居場所は全員バレた。正面のスナを横から突くから、そのまま前出て。途中もう一人のアタッカー見つけたら、そっち優先していいよ!」
「了解!」
タイガは方向転換して、一気に中央ラインの方に向かっていく。
「!?」
タイガが声を上げるよりも先に立ち止まる。異変を察知した俺は、すぐさまタイガの前に出る。アタッカーの一人に待ち伏せされていた。射撃よりも先に先に姿を確認できたため、先頭のタイガは多少の被弾で済んだ。
運よくここでタイガをやりきれれば、後は武器を持たない俺だけ。一気に五分まで持っていけたが、それは叶わず、4対1の状況にまで持っていった。
恐らく、敵はリスポーンを待つために、俺たちの姿が見えても撃たずに、隠れてやり過ごすだろう。
だけど、こんな絶好の機会を逃すわけがない。
「あと一人だ!」
「おお!」
「タイガ達が待ち伏せされてた時に、一発だけ弾が飛んできた! 恐らくエリアの右端にいる」
よく見るとニシのHPが大きく削られているのが分かった。待ち伏せと合わせて、スナを一発当ててくるとは、抜け目ないというか、勝ちを諦めない意思を感じる。
しかし、その攻めの姿勢のおかげで俺達に勝利をもたらしてくれ。居場所さえわかれば、後はそこに雪崩込めばいいだけ。スナイパーはリロードに時間がかかるから、近距離で人数有利なら勝てる。
「いたぞ!」
一番いテツが見つける。今までのお返しと言わんばかりに、伏せているラスト一人に銃弾を浴びせる。
VICTORY
俺達は1マッチ目の大敗を、やり返す形で、一人も落ちることなく圧勝しきった。
タイガの迷いのない進軍と、機転を活かした展開。
さっきと比べると、勝つべくして勝った試合だった。
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