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31話

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 3人がマップに生成される。1人分の空きがあることに違和感を感じる。

 マッチ開始時に、プレイヤー名が出るため、相手チームに3人しかいないことは知られているだろう。
 バレていなければ、そこをうまく突ける可能性もあったが、そう上手くはいかないようだ。

「行くよ! 無理せずに、でも慎重になりすぎないようにね」

 いつもどおり、タイガが前に出ていき、その後ろにテツが続く。今回は初めから2人のアーマが強化されているため、1対1の対面ならまず負けることはないだろう。
 後は、1人多い敵をどうやって、分散させるかだが、こちらが連携が取れない場所にいっては意味がない。

「今のところ、視認できないし、足音も聞こえないな」

 タイガと位置を交代して、一番前線出ているテツが慎重に、索敵している。
 このまま真っすぐ進んでいけば、敵を視認するか射撃されるかで、敵の位置把握ができるものの、盾職がいない今日はそれが出来ない。
 そのため、こちらが先に見つけるか、同タイミングで見つけないと先手を取られて、それを縮められないまま負けてしまう。今回は先手を取り、相手を1人ダウンさせて初めて五分になる。それから、リスポーンまでの間にどれほどのことが出来るかが、ポイントだ。

「おい、右斜め前あたりに一人いるぞ!」

「テツの前方にも一人いる! 今遮蔽の陰からチラッと見えた」

 少しづつ敵の位置を把握し始める。相手チームもさすが、ここまで勝ち上がってきているだけあって馬鹿ではない。人数有利が出来ているからと言って、一気に全員で前に出てくるような真似はしなかった。
 それをしてきてくれれば、こちらとしては、どれほど楽だっただろうか? 盾職である、ヴィクターがいないが、火力のあるタイガを嫌ってか、やり過ぎなくらいに慎重だ。

 恐らく、相手チームはこちらの人数不利を利用して、囲い込むようにU字型に隊列している事だろう。その策にはまり囲い込まれてしまえば、一気にタイガとテツはダウンを取られる。しかし、後ろに下がればマップの端に追いやられる。相手チームにも、きちんと作戦を立てられる人物がいるようだ。

「一人やった! 二人から見て正面の敵!」

 前に出るに出られなく、攻めあぐねていた所への報告だった。先ほどの遮蔽の陰から見えた敵の所に、銃を構えていたようだ。スナイパーの置きAIMとは言え、ヘッドショット一発で仕留め切った。今回ニシが、使っている武器はヘッドショット倍率が特段高いスナイパーだ。そのため胴体ダメージはかなり低い値になっていて、ヘッドショットだと1発胴体だと4発必要になる。
 そんな不安定な武器をしようしなければいけない程度には緊迫した状況だ。だが、それを決めきるのが、ニシの凄いところでもある。相当なプレッシャーを感じているであろう、この状況で、一番最初に仕事をこなしたのはニシだった。

「ナイス! ほかに敵見える?」

 タイガが叫ぶ。

「ここからだと、確認できない! 俺も前に出る」

 そう言って、ニシはうつ伏せで銃を構えていた状態から、起き上がり何の警戒もなく前に駆けていく。もし、それで、敵に自分の居場所を知られて、ダウンされても、その銃声と射線で、残りの敵の位置が割れれば、タイガとテツが倒してくれると思ったからだ。

「おい! タイガ! さっき右にいたやつ、あれから物音していないから、まだそこにいるぞ!」

 正面にいる敵を倒したということは、左右に分かれている敵は2:1であることが分かっている。

「了解! じゃあ一気に二人で行くよ!」

 タイガの声と同時にテツは、敵の方向に向かっていた。ゆっくりしていると、後方に下がられたり、左右にいる敵が合流する恐れがあるからだ。分断されている今が絶好の機会である。もし、目の前の敵が2人いたとしても、タイガとテツのAIM力と強化されたアーマー差があれば十分持っていけると判断してだ。

「俺左から周るから、タイガは右から言ってくれ!」

 ニシはそう言って、遮蔽物から見て少し大きめに左周りをした。その行動は、自分が先に視界に入ることで、敵の視線をこっちにずらし、その隙にタイガが後ろからダウンを取れると思ってのことだった。

「ダメ! 一緒に着いてきて!」

 タイガは、テツの声を聞いてすぐに叫んだが、それは既に行動しきっていた後だった。

 その遮蔽物の裏には敵一人しかいなかった。対面したテツは目の前の敵に、射撃する。

「これ、やりきれる!」

 自分の持っているアドバンテージを活かしきって打ち勝った、と思った時に後ろから射線が通った。
 相手チームの援護だ。
 確認出来ていなかった2人の内の1人が、もう少し後方に控えていたのだ。テツは、挟み撃ちをされ、ダウン。しかし、ほぼほぼ削りきっていた敵をタイガが後ろからキルする。そのまま、テツをダウンさせた敵にも射撃するが、上手く遮蔽を使われて、リロード中に詰められタイガもダウンする。

「もうミリ!」

 その報告を受けて、スナイパーしか持っていない、ニシが突っ込む。ここで、もう一人キルを取ることが出来れば、1対1にまで持っていける。
 こっちが先に相手チームをダウンさせたから、リスポーンするのも相手の方が早い。そのためここで待っても、人数不利が余計に開くだけなので、勝負を仕掛ける。

「倒した!」

 その賭けには成功して、残り少しの体力の敵を、スナイパーの腰撃ちスコープを覗かずに打つことでキルした。
 これで、リスポーンするまでの間は1対1だ。ニシが先にヘッドショットで相手を抜くことが出来れば、こちらの勝利になる。
 ニシも、いったん体制を整えるために遮蔽物の陰にしゃがみ、リロードをする。すると、相手チームの最後の一人が、目の前に現れた。それにいち早く反応して、銃口を相手に向ける。ニシの方が一瞬早く射撃をするが、相手は一発では倒れなかった。

 すると3人の画面中央に大きく「LOSE」の文字が出る。

「ああー! おっしい! 胴体だった」

「いや、ドンマイドンマイ!」

「おしい勝負だった!」

 接戦ではあったものの1戦目は負けてしまった。
 ただ、良い勝負をしに来たのでは無く、に来ているのだ。

「相手の最初にキルしたやつはリスポーンしてたみたいだな」

「じゃあ、どっちにしろきつかったか」

 今までの試合はほとんど短期決戦だった。一人目をキルしてからの戦闘時間が短かったため、相手にリスポーンの隙を与えていなかった。しかし、今回はどうしても、ヴィクターがいない分のロスタイムが生れてしまったのだ。

「テツ、今日は無理に挟みこんだり、自分を囮にするようなことはしちゃだめ。俺たちは、一人でダウンしたら、人数不利は広がるだけなんだから」

「おっけ。悪い悪い。ちょっと焦りすぎたわ」

 テツも、そのことは理解していだ。いつも通りの連携が手に馴染み過ぎていて、ついとっさに取れる行動が引き起こしてしまった。
 声掛けと、行動がほぼ同タイミングだったことの弊害が出た。いつもならばそれがいい事ではあったものの、今回ばかりは、それが上手く作用しなかった。

「今回は焦らず、キルしたら一回体制を立て直すくらいがちょうどいいかもね」

「そうだな、ポイントを上手く使おう。実力は俺たちのほうが上だって、今ので分かったからな」

 1戦取られ追い詰められているはず、ではあるものの3人の誰もが、弱気になっていない。むしろ、強気な姿勢は変わっていない。そうでなければ負けたのにも関わらず、自分達のほうが強いなんて言葉が出てくるはずがない。

「よし! 次は勝つよ!」

 次負けたら、いよいよ後がなくなる、2戦目が開始した。




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