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22話
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「相手右展開してる!」
「テツは、そのまま時間稼いで! ニシ! 中央の奴の足止め!」
「ヴィクターさん左前出るよ!」
2マッチ目が開始した。敵チームも、対策を考えてくるだろうとは思っていたが、さっきの一戦では試合時間が短すぎるから、情報も完璧ではないと思い、同じ作戦で仕掛けていった。
タイガの後ろについていくと、前方に敵が2人見えた。向こうも、タイガが要注意だと判断したらしく、2人がかりで潰しに来たようだ。
ただ、こっちも二人だ。敵の位置を把握するとタイガは一瞬足を止めて、その隙に俺は、タイガの前に盾を構えて出る。
相手は、俺達を認識したと同時に、射撃してきたが、俺の盾が弾を全てすう。今回は、俺だけの初期ポイントで買える盾だったので、耐久ポイントが後少ししかなくなった。
しかし、それだけの時間が稼げれば十分だ。相手が撃ち終わった次の瞬間に、タイガが俺のわきから出て、リロード中の敵をフリーで撃ちダブルキル。
このまま、一気に殲滅しきれるかと思いきや、そう簡単にいかず、遮蔽のない所で、丸見えになっていた俺が、中央にいた敵にキルされる。
相手も、仲間のリスポーンを待つため、前線を下げ始めた。
「相手が、引き気味だから一気に押すよ!」
タイガは、前に詰めながら、そう叫ぶ。それを聞いたテツも、タイガと合流するために、いったん中央による。
「ニシも前出て!」
ダウンして、動けない俺が今出来ることは、落ち着いた指示を飛ばすこと。タイガの視野が狭まっている今、やりたいことの趣旨を汲み取り、テツと、ニシにそれを伝える。
「はい!」
ニシが前に出ていったことにより、残り二人の敵を三方向から挟む形になった。逃げ腰になった相手程、倒しやすいものはない。タイガが、左から制圧射撃をしている所に、ニシとテツがそれぞれ一人ずつキルをする。
俺と、敵二人のリスポーンを待つことなく、2マッチ目が終了した。
「はい、ナイス!」「よっしゃ!」「おおい!」
残っていた3人がほぼ同タイミングで声を上げる。これで2勝目だ。
「3人ともナイス! 俺キルされちゃったけど、安心して見ていられたわ」
勢いに乗ってゴリ押せてしまった感は、多少あるがこのくらいの強気じゃないと、この先が心配になってしまうから、今は十分だろう。
ゲームの大会という物を、体験したことがあるのは俺だけだ。圧勝するくらいの勝ち方をした方が、強い自信にもつながるだろう。
「いや、いやあれはしょうがないですよ」
「あれのおかげで、きっかけが出来たんですからね」
味方が一人キルされたくらいじゃ、一切の動揺を見せないあたり、一人一人の個人技がしっかりしている証拠だ。逆に相手チームは、1マッチ目に完勝されたから、どうしても一人キルされた瞬間に逃げ腰になってしまっていた。さっきのストレート負けが頭によぎったのだろう。
自分のプレイと力に自信がないと、どうしてもそうなってしまう。
FPSはより強い精神の持ち主が、勝ゲームだ。
「あと1勝で、1回戦突破ですね!」
「これはいけるな!
「油断するなよ」
こう見ると本当にバランスのいいチームになったと思う。俺が、入る前はどんな感じだったかは分からないが、タイガを中心に、きちんと3人の息が合っている。そこに、俺が加わっても全然違和感がないし、さらに強固にかみ合っている感じがする。
本当に、一試合一試合が楽しくて仕方がない。この負ければその時点で終わりで、日本一の夢も、世界への夢をついえる場面であるはずなのに、緊張よりも高揚感の方が勝っている。
そう考えると俺が、一番浮足だっているのかもしれないが、試合が始まった瞬間の、全員のスイッチの入れ替わりを感じると、俺のスイッチも勝手に切り替わる。
このまま油断せずに、戦えば絶対に大丈夫だ。始まる前からずっとそう思っていたが、それがきちんと確信に変わっている。
「はじまるぞ!」
「よっしゃ!」「おう!」「はい!」
そのまま波に乗った俺たちは、決勝リーグ一回戦を見事3連勝で勝ち上がった。
「今日の反省会もこんな所かな?」
みんなで一通り、感想や意見を言い合って、反省点なども出し切ったあたりで、俺が投げかけた。
1回戦目が終わり、2回戦目は1マッチ取られたが、見事ベスト8入りを果たした。普通に考えれば、これだけでも凄いことだ。新タイトルとはいえ、日本でトップ8に入っているのだから。しかも、プロチームに所属していおらず、アマチュアチームとして参加しているにも関わらず。
「公式配信のコメントとか、SNSとか見た?」
反省会が終わり、全員がやっと気を抜けた時にニシが聞いてきた。チームに入るか入らないかの、話をしたときにも思ったが、一番、周りからの評価を気にしているようだ。
「みんな驚いてるな。予選との差を」
「今回はかなりアグレッシブに攻めたからな」
テツの言うとおり、予選との戦い方の差で、別チームを疑われてるくらいだ。
実際のところ、まだ顔を出して配信しているわけではないから、別の人間がやっていても、バレはしない。まだ癖なんか見て分かるような段階でもないし。
だけど、だからといって、そんなことをするはずがない。
「え!? そうなの? 今見て見る!」
タイガはニシと打って変わって、だいぶのんきだ。なんなら、公式配信のことも忘れていたんじゃないだろうか?
試合中もそうだが、目の前の事に集中すると、他のことが見えなくなってしまうことが、多いような気がする。
それはいいことでもあるのだが・・・・。
「だけど、これで見ている人もわかったんじゃないかな?」
「なにをっすか?」
「フォージにおいて、作戦がいかに大事かを」
単純に面白いゲームであるのは間違いないが、フォージの面白さはゲーム性よりも、戦略ゲーだ。
無限にたてられる戦略の中で、チームの個性や利点と相手チームとの相性を吟味して、勝つ方法を模索する。思考すれば、思考するだけ楽しいし、それを実行に移せるだけの、実力も必要になる。これほど、競技シーンに向いているゲームも少ないのではないだろうか?
カジュアルそうにもこの楽しさを知ってもらいたいし、「見る」楽しさも十分にある。
「たしかにな。ヴィクターさんが、入ってきてから、だいぶ戦い方変わったよな」
「昔は、3人で突っ込むだけだったからな」
「ああ、今思うと本当馬鹿みたいだったな」
初めて一緒にやった時も、そんな感じだったから、なんとなく予想はできていた。
「でも、それで押しつぶしまくってたんでしょうか?」
「そうだね」
「結構勝ってたしね」
この3人の連携が、強固な理由は、その時のが生きているのだろう。それに、テツとニシはFPS経験が無かったようだから、そこで経験値を積めたのは良いことだったのだろう。
これだけ、作戦がどうこう言っていても、やはり一番の醍醐味は相手をキルすることだから。
「滅多にない俺からの提案が一つあるんだけどいいか?」
今日はここで終わりかなと、思っていた矢先だった。
「なに?」
「1回会わね? 俺たちって一回もリアルで会ったことないじゃん?」
たしかに、言われてみればそうだ。だけど、俺からしたら、それが当たり前だったのでなんとも思っていなかった。
毎日一緒にゲームをしていても、顔も知らない。もっと言えば、ネットを通して以外の姿を知らないなんて、普通のことだった。
「ヴィクターさんはともかく、俺たち3人もない」
「そうなんだ、それは以外だった」
てっきり、3人は会ったことがあるものだと思っていたが、そうでもないのか。
しかし、これを提案してくる当たり、しっかりこの先もチームとしてやっていくつうもりなのだろう。
適当にするつもりなら、ネットの人間に会うなんて、そうそうしないだろうからな。
だとしたら、俺も断る理由は無いな。
「俺は、別にいいよ」
タイガとテツも特に抵抗はないようだ。
まあ、どうせ準決勝までいったらOFFラインだから、今のうちに顔を合わせておくのも悪くないだろう。そこで初めましてで、また変な緊張や遠慮がちになってはもともこもないのだから。
「みんなどこに住んでるの?」
「東京」「神奈川」「千葉」「東京」
「みんな関東圏かよ」
「だいぶ都合良いな」
意外なことに、みんな都合よく関東圏内で、会おうとすればすぐに会える位置だな。
「テツは、そのまま時間稼いで! ニシ! 中央の奴の足止め!」
「ヴィクターさん左前出るよ!」
2マッチ目が開始した。敵チームも、対策を考えてくるだろうとは思っていたが、さっきの一戦では試合時間が短すぎるから、情報も完璧ではないと思い、同じ作戦で仕掛けていった。
タイガの後ろについていくと、前方に敵が2人見えた。向こうも、タイガが要注意だと判断したらしく、2人がかりで潰しに来たようだ。
ただ、こっちも二人だ。敵の位置を把握するとタイガは一瞬足を止めて、その隙に俺は、タイガの前に盾を構えて出る。
相手は、俺達を認識したと同時に、射撃してきたが、俺の盾が弾を全てすう。今回は、俺だけの初期ポイントで買える盾だったので、耐久ポイントが後少ししかなくなった。
しかし、それだけの時間が稼げれば十分だ。相手が撃ち終わった次の瞬間に、タイガが俺のわきから出て、リロード中の敵をフリーで撃ちダブルキル。
このまま、一気に殲滅しきれるかと思いきや、そう簡単にいかず、遮蔽のない所で、丸見えになっていた俺が、中央にいた敵にキルされる。
相手も、仲間のリスポーンを待つため、前線を下げ始めた。
「相手が、引き気味だから一気に押すよ!」
タイガは、前に詰めながら、そう叫ぶ。それを聞いたテツも、タイガと合流するために、いったん中央による。
「ニシも前出て!」
ダウンして、動けない俺が今出来ることは、落ち着いた指示を飛ばすこと。タイガの視野が狭まっている今、やりたいことの趣旨を汲み取り、テツと、ニシにそれを伝える。
「はい!」
ニシが前に出ていったことにより、残り二人の敵を三方向から挟む形になった。逃げ腰になった相手程、倒しやすいものはない。タイガが、左から制圧射撃をしている所に、ニシとテツがそれぞれ一人ずつキルをする。
俺と、敵二人のリスポーンを待つことなく、2マッチ目が終了した。
「はい、ナイス!」「よっしゃ!」「おおい!」
残っていた3人がほぼ同タイミングで声を上げる。これで2勝目だ。
「3人ともナイス! 俺キルされちゃったけど、安心して見ていられたわ」
勢いに乗ってゴリ押せてしまった感は、多少あるがこのくらいの強気じゃないと、この先が心配になってしまうから、今は十分だろう。
ゲームの大会という物を、体験したことがあるのは俺だけだ。圧勝するくらいの勝ち方をした方が、強い自信にもつながるだろう。
「いや、いやあれはしょうがないですよ」
「あれのおかげで、きっかけが出来たんですからね」
味方が一人キルされたくらいじゃ、一切の動揺を見せないあたり、一人一人の個人技がしっかりしている証拠だ。逆に相手チームは、1マッチ目に完勝されたから、どうしても一人キルされた瞬間に逃げ腰になってしまっていた。さっきのストレート負けが頭によぎったのだろう。
自分のプレイと力に自信がないと、どうしてもそうなってしまう。
FPSはより強い精神の持ち主が、勝ゲームだ。
「あと1勝で、1回戦突破ですね!」
「これはいけるな!
「油断するなよ」
こう見ると本当にバランスのいいチームになったと思う。俺が、入る前はどんな感じだったかは分からないが、タイガを中心に、きちんと3人の息が合っている。そこに、俺が加わっても全然違和感がないし、さらに強固にかみ合っている感じがする。
本当に、一試合一試合が楽しくて仕方がない。この負ければその時点で終わりで、日本一の夢も、世界への夢をついえる場面であるはずなのに、緊張よりも高揚感の方が勝っている。
そう考えると俺が、一番浮足だっているのかもしれないが、試合が始まった瞬間の、全員のスイッチの入れ替わりを感じると、俺のスイッチも勝手に切り替わる。
このまま油断せずに、戦えば絶対に大丈夫だ。始まる前からずっとそう思っていたが、それがきちんと確信に変わっている。
「はじまるぞ!」
「よっしゃ!」「おう!」「はい!」
そのまま波に乗った俺たちは、決勝リーグ一回戦を見事3連勝で勝ち上がった。
「今日の反省会もこんな所かな?」
みんなで一通り、感想や意見を言い合って、反省点なども出し切ったあたりで、俺が投げかけた。
1回戦目が終わり、2回戦目は1マッチ取られたが、見事ベスト8入りを果たした。普通に考えれば、これだけでも凄いことだ。新タイトルとはいえ、日本でトップ8に入っているのだから。しかも、プロチームに所属していおらず、アマチュアチームとして参加しているにも関わらず。
「公式配信のコメントとか、SNSとか見た?」
反省会が終わり、全員がやっと気を抜けた時にニシが聞いてきた。チームに入るか入らないかの、話をしたときにも思ったが、一番、周りからの評価を気にしているようだ。
「みんな驚いてるな。予選との差を」
「今回はかなりアグレッシブに攻めたからな」
テツの言うとおり、予選との戦い方の差で、別チームを疑われてるくらいだ。
実際のところ、まだ顔を出して配信しているわけではないから、別の人間がやっていても、バレはしない。まだ癖なんか見て分かるような段階でもないし。
だけど、だからといって、そんなことをするはずがない。
「え!? そうなの? 今見て見る!」
タイガはニシと打って変わって、だいぶのんきだ。なんなら、公式配信のことも忘れていたんじゃないだろうか?
試合中もそうだが、目の前の事に集中すると、他のことが見えなくなってしまうことが、多いような気がする。
それはいいことでもあるのだが・・・・。
「だけど、これで見ている人もわかったんじゃないかな?」
「なにをっすか?」
「フォージにおいて、作戦がいかに大事かを」
単純に面白いゲームであるのは間違いないが、フォージの面白さはゲーム性よりも、戦略ゲーだ。
無限にたてられる戦略の中で、チームの個性や利点と相手チームとの相性を吟味して、勝つ方法を模索する。思考すれば、思考するだけ楽しいし、それを実行に移せるだけの、実力も必要になる。これほど、競技シーンに向いているゲームも少ないのではないだろうか?
カジュアルそうにもこの楽しさを知ってもらいたいし、「見る」楽しさも十分にある。
「たしかにな。ヴィクターさんが、入ってきてから、だいぶ戦い方変わったよな」
「昔は、3人で突っ込むだけだったからな」
「ああ、今思うと本当馬鹿みたいだったな」
初めて一緒にやった時も、そんな感じだったから、なんとなく予想はできていた。
「でも、それで押しつぶしまくってたんでしょうか?」
「そうだね」
「結構勝ってたしね」
この3人の連携が、強固な理由は、その時のが生きているのだろう。それに、テツとニシはFPS経験が無かったようだから、そこで経験値を積めたのは良いことだったのだろう。
これだけ、作戦がどうこう言っていても、やはり一番の醍醐味は相手をキルすることだから。
「滅多にない俺からの提案が一つあるんだけどいいか?」
今日はここで終わりかなと、思っていた矢先だった。
「なに?」
「1回会わね? 俺たちって一回もリアルで会ったことないじゃん?」
たしかに、言われてみればそうだ。だけど、俺からしたら、それが当たり前だったのでなんとも思っていなかった。
毎日一緒にゲームをしていても、顔も知らない。もっと言えば、ネットを通して以外の姿を知らないなんて、普通のことだった。
「ヴィクターさんはともかく、俺たち3人もない」
「そうなんだ、それは以外だった」
てっきり、3人は会ったことがあるものだと思っていたが、そうでもないのか。
しかし、これを提案してくる当たり、しっかりこの先もチームとしてやっていくつうもりなのだろう。
適当にするつもりなら、ネットの人間に会うなんて、そうそうしないだろうからな。
だとしたら、俺も断る理由は無いな。
「俺は、別にいいよ」
タイガとテツも特に抵抗はないようだ。
まあ、どうせ準決勝までいったらOFFラインだから、今のうちに顔を合わせておくのも悪くないだろう。そこで初めましてで、また変な緊張や遠慮がちになってはもともこもないのだから。
「みんなどこに住んでるの?」
「東京」「神奈川」「千葉」「東京」
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