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第二十一話 身に余る報酬

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「嬢ちゃん次行くぞ!」

「はい!」

 2人は二つ目の依頼も早々に解決し最後の依頼先に向かおうとしていた。本来であれば、決して容易ではないはずの依頼だが二人にとっては大したものでは無かった。それもそのはずで、もともと実力のあるものがこの短期間で何体もの異物を相手にしてきたのだがら、その辺の人間とは培った経験値が違う。
 もともと、戦闘経験が少なかったカエデも、自身の力の使い方や応用の仕方が分かってきたようでこの世界に来た時よりも、実力は格段に上がっている。

(スポーツをするみたいに成長するするものなんだなぁ)

 カエデもそれを認識しているものの、果たしてそれが喜ばしいことなのか分からないでいる。

「嬢ちゃんのセンスは正しいな! おいしい依頼ばかりだったぜ!」

「ブレンさんのこともなんとなく分かってきましたからね!」

 前を向いて走りながらいうブレンもさすがに少し疲れ始めているようで、息をきらしながら叫ぶ。それに受け答えするカエデも今ばかりは目線の高さは同じであった。ブレンはずるいというものの、一緒に走っては絶対にブレンに追いつくことができないカエデは、移動時も魔装を解かずにそのまま浮遊して動いている。
 それは、多少なり安全な町の中ではなく、いつ依頼とは関係ない異物が襲ってきてもすぐに対応できるためでもあった。
 カエデが選んだ依頼は全て討伐任務であった。異物と言ってもその大きさや強さには個体差がある。簡単に誰でも倒せる異物ではないからこそ依頼として出されるのだが、わざわざそれを詠み人にお願いしてまで、そんな危険を冒すパーティーも少ないため、なかなか解決されずにそのままとなっていた。



 そのまま走り去る勢いで3つ目の依頼も完了した。
 ブレンは大喜びで倒した異物からでるコアを持って、すぐさま帰ろうとする。一方でカエデはその依頼主にギルドでもらった用紙にサインをもらい感謝をされつつ、感謝して急いでブレンの後を追った。

 ブレンとカエデはギルドに戻り、その依頼を達成した証である契約書をサインとともに受付に渡す。

「………」

 受付の女性はなにも言わずに、それを受け取りまじまじとその用紙を隅々まで確認する。まさか、この用紙事態が偽物などということは無い。そんなものを手に入れる手段は城の外の人間にはないからだ。だとするならば次に疑うのはサインの偽装だが、これももちろん偽物ではない。
 一度席を立ち、後ろにいる管理役であろう初老の女性の元にその3枚全てを持っていき、なにやら書き込みをしてもらっているようだ。それが一通り終わると、カエデ達からは見えないさらに奥の方に入っていった。

「普段よりも厳重ですね」

 その様子をずっと見ていたカエデがブレンの方を見ずにつぶやく。

「こいつらは、誰にも怒られないからっていつもちんたらしてんだよ」

 ブレンにしか聞こえない声量でいったカエデとは違い、間違いなくカウンター越しに働いている人にも聞こえる遠慮のない声の大きさでブレンがくちにする。すると、それが聞こえたのか、さっき奥の方でサインをしていた女が足を組み偉そうにこちらを睨みつけている。
 しかし、そんな姿を見ても今のブレンは怒るどころか指を指して笑っている。本来の立場が逆転しているものの、あちら側にそれをひっくり返す手段はない。そもそも立場は違うものの、ルールのない者にとってはそんなこと関係がないと同じであった。
 すると奥の方から大きな麻袋を持った女性が3人出てきた。

「おっ!」

 それを見て、さらにテンションを上げる。
 それは今まで見たこともないほどの量の通貨が入っていることが中身を開けて見なくても分かるものであった。
 普段のブレンであれば「あんな袋すらも一人で持てないのか」と悪態をついていただろう。

「こちらが今回の報酬です」

 机に置かれたそれは、こなした依頼の過酷さを表しているものであるはずが二人にそんな記憶はない。流れ作業のように依頼をこなしたため、それは出来過ぎた報酬であった。

「スゲ~!!!」

 ひとしきり騒いだはずのブレンだが、まだ足りないようだ。

「うわぁ~」

 カエデもその量を見てようやく自分がやったことと、この世界で求められていることの物差しを知れたような気がした。
 2人はそれを受け取る。カエデが一つをカエデは両手でそれをそれを持ち自分の体の前でぶら下げるように持つ。ブレンは、右手で片に担ぎ左手でわきに抱える。その姿はまるで強盗をした後のようにも見える。
 しかし、それを正規の方法で手に入れた二人からするとなにも後ろめたいものは無い。そんな様子をギルド内にいる多くのパーティーが羨ましそう視線を送る。そんな大金を目にする機会などほぼないからだ。それが仮に大規模パーティーで報酬を代表者が受け取りに来ているのならば誰もそんなことを思わないだろう。しかし、そうでないことをここにいる誰もが知っている。

「おい! 嬢ちゃんいつもの場所いくか!」

「そ、そうですね」

 その視線と袋の重さに気を取られているカエデにとってそれは、ただのから返事であった。



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