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第十一話 優しいブレン
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「そっちいきました!」
「おらぁぁぁ!」
普段のブレンであれば、一体の異物を倒せばその日の仕事は終わりだった。一日に何体も倒した方が効率も良ければ、稼げる額も大幅に上がる。しかし現実はそんなに簡単なものではなかった。それは異物との連戦は死にもっとも近づく行為であったからだ。
「やったぞ!」
しかし、カエデという強力な相棒を得たブレンはその日7体討伐という初めての経験をした。その日暮らしでやっとだった人間が、初めて余裕というものにありついたのだ。
「コアもありました!」
ブレ自身の実力もさながら、カエデの空中からの高火力はブレンが地上でできることを増やすことに繋がり致命傷はほとんどブレンが取っていた。今までかつてないほどに、安全に異物を倒し続けた。
「嬢ちゃんはそれ以外はなにか出来るのか?」
二人は異物を探すのを一時止め、大きな岩を背に休憩をはさんでいた。カエデはノリに乗っていて今なら負けなしで進んでいけると思っているだろう。しかし、ブレンの肌感覚は鋭くいったん間を開けることになった。
「そうですね。後は一瞬だけバリアみたいなのを出したりとかでほとんど守り系ですね」
カエデの必勝法は空中での衝撃は攻撃が主であり、ほかに攻撃方法を知らない。魔法の力を授かったときに、ある程度の使い方は頭にインストールされたかのように理解していた。
しかし、それは本当の基礎だけであり攻撃方法、防御、浮遊などは少女が後から手にしたものだ。そのため、自身の身を守ることを第一優先にしている彼女は攻撃手段の成長が著しく遅かったのである。
「ふーん。攻撃手段が少ないのはほかの魔法士と一緒か」
片膝を立てて座るブレンは、横目でカエデを見る。他の魔法士と同じと言ってもカエデのほうが数段優れていることをこの数戦で正しく理解した。
「みんなそんな感じなんですか?」
「ああ、俺のところにいたやつは炎を巻き散らかすしかできなかったな」
「へぇー」
やはり棘のある言い方ではあるものの、ブレンが言うにカエデとこの世界の魔法士には共通点があるらしい。
(炎かぁ。カッコいいな)
自身の魔法が見た目が地味なことを多少気にしているようで、炎といういかにも魔法ですというものに憧れがあるようだ。しかし、もしカエデのいた日本の市街地で文字通り炎なんてまき散らしたら、それこそ周りに危害や魔法少女だということがバレてしまっていただろうから、これが妥当だったのであろう。
「この国はな、魔素がいまだに多くあってそれの性質が炎使うのに適しているらしい。だから、この国の魔法士や魔法剣士はほとんどが炎を使う奴らだ。まじで優秀な治癒系の高等魔法を使える奴らは城でお抱えしちまってるからなかなか見ることは無いだろうけどな」
「そうなんですね。私もいくつか使えますよ」
カエデの発言はブレンによほどの驚きを与えるものだったのか、ありえないものを見るかのようにカエデを凝視する。それにびっくりしてカエデが軽く体を飛び上がらせる。
「お前あんまり、それを公言するなよ!」
「な、なんでですか?」
凄んだ顔で言うブレンに怯えるカエデ。忠告をもらっているはずが、はたから見れば物を脅し取られているようである。
「ただでさえ、お前は優秀な魔法士だ。実際に一緒に戦っている俺が言うんだ間違いない。それにも関わらず、治癒系統の魔法まで使えるってなればそれを目当てで近寄ってくる連中も出てくるそうするとっ」
必死にカエデに話しかけるブレンは、ふと我に返るとカエデの顔がすぐ目の前にあることに気が付く。気性が荒く常に怒っているカエデだが、今の様子はいつものそれではなく余裕がないものに見える。
「この国は、自分のことで必死になっているやつが多い。だから、他人のことなんて一切考えていない。嬢ちゃんみたいな優秀で都合のいいやつはいいように利用されるだけだ」
「……ありがとうございます」
その勢いに若干押されカエデだが、ブレンの伝えたいことの意味をくみ取ることができお礼の言葉を口にする。
冷静さを取り戻したブレンも、元の座っていた位置よりも少し離れたところに座り直す。
(ブレンさんはやっぱり優しい人なんだな。初めて会ってついてきた人がこの人で良かった)
体育座りでの格好で座っているカエデは、下を向き自身の足の間から覗ける地面を見ながら心の中でそんなことを思う。誰一人知り合いがいない、何も知らない土地での人の温かみ程心に刺さるものは無い。
そして、自身の力が目の前にいるそんな心優しい人のために使えることへの喜びも相まっている。
心優しい少女の拳はより強く握りこまれる。
「おらぁぁぁ!」
普段のブレンであれば、一体の異物を倒せばその日の仕事は終わりだった。一日に何体も倒した方が効率も良ければ、稼げる額も大幅に上がる。しかし現実はそんなに簡単なものではなかった。それは異物との連戦は死にもっとも近づく行為であったからだ。
「やったぞ!」
しかし、カエデという強力な相棒を得たブレンはその日7体討伐という初めての経験をした。その日暮らしでやっとだった人間が、初めて余裕というものにありついたのだ。
「コアもありました!」
ブレ自身の実力もさながら、カエデの空中からの高火力はブレンが地上でできることを増やすことに繋がり致命傷はほとんどブレンが取っていた。今までかつてないほどに、安全に異物を倒し続けた。
「嬢ちゃんはそれ以外はなにか出来るのか?」
二人は異物を探すのを一時止め、大きな岩を背に休憩をはさんでいた。カエデはノリに乗っていて今なら負けなしで進んでいけると思っているだろう。しかし、ブレンの肌感覚は鋭くいったん間を開けることになった。
「そうですね。後は一瞬だけバリアみたいなのを出したりとかでほとんど守り系ですね」
カエデの必勝法は空中での衝撃は攻撃が主であり、ほかに攻撃方法を知らない。魔法の力を授かったときに、ある程度の使い方は頭にインストールされたかのように理解していた。
しかし、それは本当の基礎だけであり攻撃方法、防御、浮遊などは少女が後から手にしたものだ。そのため、自身の身を守ることを第一優先にしている彼女は攻撃手段の成長が著しく遅かったのである。
「ふーん。攻撃手段が少ないのはほかの魔法士と一緒か」
片膝を立てて座るブレンは、横目でカエデを見る。他の魔法士と同じと言ってもカエデのほうが数段優れていることをこの数戦で正しく理解した。
「みんなそんな感じなんですか?」
「ああ、俺のところにいたやつは炎を巻き散らかすしかできなかったな」
「へぇー」
やはり棘のある言い方ではあるものの、ブレンが言うにカエデとこの世界の魔法士には共通点があるらしい。
(炎かぁ。カッコいいな)
自身の魔法が見た目が地味なことを多少気にしているようで、炎といういかにも魔法ですというものに憧れがあるようだ。しかし、もしカエデのいた日本の市街地で文字通り炎なんてまき散らしたら、それこそ周りに危害や魔法少女だということがバレてしまっていただろうから、これが妥当だったのであろう。
「この国はな、魔素がいまだに多くあってそれの性質が炎使うのに適しているらしい。だから、この国の魔法士や魔法剣士はほとんどが炎を使う奴らだ。まじで優秀な治癒系の高等魔法を使える奴らは城でお抱えしちまってるからなかなか見ることは無いだろうけどな」
「そうなんですね。私もいくつか使えますよ」
カエデの発言はブレンによほどの驚きを与えるものだったのか、ありえないものを見るかのようにカエデを凝視する。それにびっくりしてカエデが軽く体を飛び上がらせる。
「お前あんまり、それを公言するなよ!」
「な、なんでですか?」
凄んだ顔で言うブレンに怯えるカエデ。忠告をもらっているはずが、はたから見れば物を脅し取られているようである。
「ただでさえ、お前は優秀な魔法士だ。実際に一緒に戦っている俺が言うんだ間違いない。それにも関わらず、治癒系統の魔法まで使えるってなればそれを目当てで近寄ってくる連中も出てくるそうするとっ」
必死にカエデに話しかけるブレンは、ふと我に返るとカエデの顔がすぐ目の前にあることに気が付く。気性が荒く常に怒っているカエデだが、今の様子はいつものそれではなく余裕がないものに見える。
「この国は、自分のことで必死になっているやつが多い。だから、他人のことなんて一切考えていない。嬢ちゃんみたいな優秀で都合のいいやつはいいように利用されるだけだ」
「……ありがとうございます」
その勢いに若干押されカエデだが、ブレンの伝えたいことの意味をくみ取ることができお礼の言葉を口にする。
冷静さを取り戻したブレンも、元の座っていた位置よりも少し離れたところに座り直す。
(ブレンさんはやっぱり優しい人なんだな。初めて会ってついてきた人がこの人で良かった)
体育座りでの格好で座っているカエデは、下を向き自身の足の間から覗ける地面を見ながら心の中でそんなことを思う。誰一人知り合いがいない、何も知らない土地での人の温かみ程心に刺さるものは無い。
そして、自身の力が目の前にいるそんな心優しい人のために使えることへの喜びも相まっている。
心優しい少女の拳はより強く握りこまれる。
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