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第十話 異物討伐
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「今日も昨日と同じく異界の獣が相手だ」
その視線の先には、まだ見えぬ異界の獣を見据えている。
あたりは、哀愁漂う荒野が広がる。町の周りには緑や川が流れていたが、ここだけは何もない。はるか遠くの方に建造物のようなものが見えるが、それはブレンが言う城と関係があるのだろうか。
「昨日のやつですね」
カエデも魔装を装備する。それはカエデの心も引き締めるもので戦うことを意識づけるものであった。
「そう言えば嬢ちゃんはなんか違う呼び方していたよな」
「私はあれを異物って呼んでいます」
「ふーん。なんでだ?」
「特に理由はないですね。そう教わりました」
カエデは、夢の中で一通りの説明を受けた。それをその通りにしていただけだ。理由を聞かれても答えられるわけがない。
「まあ、呼び方なんてどうでもいいか。指す対象が違わなければ」
その辺にこだわりはないようで、その返答にすぐ受け流す。
「なんでこの辺りは誰も人がいないんですか?」
それは昨日の危機的状況を見ていたら当然の疑問であった。もし、あの場にたまたまカエデが現れなければブレンは間違いなく死んでいてた。
そんな偶然がそうそ起こらないことをカエデは知っている。そのため、ブレンがなぜそんな危険を冒してまで一人で、人気のない場所にいるのか純粋に疑問だったのだ。
「俺みたいな一人で戦っているような人間は狩場を選ばなければいけないんだ」
「え? どうしてですか?」
カエデは横に立っているブレンの顔を見上げるように尋ねる。
「例えば、俺が倒した異物のコアを後から来たパーティーに横取りされることもある。というよりは、それで自分たちは一切手を出さずに倒し終わった所に来て脅し取るのだけで生活している奴なんかもいる」
「ええ!? そんなこと許されるんですか!?」
良い子のカエデにとっては衝撃的な内容であった。この世界ではごく当然のことなのか、はたまたそんなことをする悪党もいるということなのか、どちらにせよそんなこと許されていいはずがない。
「許されるも何もない。コアをギルドに持っているやつが倒した証だ」
その発言は生きるか死ぬかの過酷な世界において、どう生き残るかも自身で選択していかなければならない、さらなる過酷さを表すものであった。
「だって、それギルドの人たちはなにも言わないんですか?」
カエデの疑問は当然のものであった。ズルをして人の成果を横取りするような人間を、受け付けるわけがない。カエデの世界ならそれが普通の感性である。
「あいつらにとってはそんなことどうでもいいんだよ。異物が減れば得したくらいにしか思っていない」
しかし、この世界においてはそんな平和な世界の常識は通用しないようだ。カエデにとっては信じられないことであるが、ギルドとは公平な立場に立つ公の機関として認識していたがどうやらそうではないらしい。
「でも、それじゃあみんな死んでいっちゃったらギルドの人も危ないんじゃないんですか?」
死と隣り合わせだからこそ、生きて戦ってくれる人がいることのありがたみを理解できているはずである。
「あいつらは、城のなかにいれば永遠の平和が訪れると本気で思っているんだよ。先の大戦でそれを証明しちまった国があるからな」
カエデも見た強固な壁に囲まれた城のことである。それは、たしかに厳重そうで異物と言えどもそう簡単に手出しができるものではことは分かる。しかし、それが永遠に続くことは無いことなんて普通なら分かることではないか。
「まあ、それも中はどうなっているかは誰にもわかないけどな」
ブレンはその永久の平和の存在を疑っているようだ。もっとも、その城に入る権利の無いものにとっては、そんなことどうでもいいことである。
「だから、周りに人がいないことを確認してからじゃないと俺は戦わない。あとは不意打ちを受けないようにするためだな」
最後の理由はブレンが今まで培ってきた経験によるものだ。
実質カエデも不意打ちの攻撃でこの世界に迷い込んだ。もしあれが無ければ、いつも通りに家に帰り寝て翌朝学校に行く、今まで通りの当たり前の生活を送っていただろう。
「おい! 見ろ嬢ちゃん!」
ブレンの声が大きく野太くなる。構えた剣先にいるのは一体の異物であった。
カエデもすぐさま反応し戦闘態勢をとる。右手に握られるのは、自身の身長より少し低いステッキのようなもの。先端は花のつぼみのような形をしている。
「なんだ嬢ちゃんそんなもの持っていたのか」
横目でそれを見たブレンが驚きの声を上げる。急に姿が変わったと思ったら今度は何も持っていなかったはずの少女が手に何かを握っている。
この世界の魔法士でもできることかと思っていたが、どうやらそうでもないらしい。
「補助輪みたいなものです。これが無くても魔法は使えますが、これがあったほうが簡単なんです!」
少女も同じく魔法具の先を先ほど出現した異物のほうに向ける。ここから何が出てくるのかは分からないはずのものだが、それは銃口を向けられたかのような緊張感を放つ。
「補助輪ってなんだ?」
その時途端に目の前の異物が距離を詰めてきた。その姿は四足歩行の獣のような見た目で、視界に映っていることが見間違いではないかと思うほどに薄汚れた紫色をしている。
飛びかかってきた異物に、カエデが直線の衝撃はを3本放つ。それは、まっすぐに異物めがけて飛んでいく。人にあたりでもしたらどうなるかはカエデ本人にも分からない。いまだかつてそんなことはしたことないし、したいと思ったこともないからだ。
しかし、それをいとも簡単によけ異物との距離は当初よりもだいぶ縮んむ。だからと言って焦ることは一切ないカエデは浮遊を始める。空を飛ばな異物はカエデにとって格好の餌だった。
そこまでは、カエデのいつも通りの流れで戦闘が続く。そう思っていたが、今回はそうでもない。
「ふぉぉぉ!」
地上にはブレンがいるからだ。カエデという目標をなくした異物は標的をブレンに変え飛びかかってきた。その右前足を大きく振りかぶりブレンめがけて叩きつける。しかし、ブレンもそれに負けじと手に持つ大剣で相殺する。
異物の動きが一瞬止まったその隙をみてカエデが波紋に広がる攻撃をする。それは見事に異物の無防備な背中に直撃する。
「いまです!」
「おっしゃあああ!」
怯んだその一瞬をつきブレンが大きく振りかぶり叩きつけるように異物に切りかかった。ブレンの確かな手ごたえとともに、その異物は二人の前から消滅した。
「やったぁ!」「よし!」
二人は重なるように勝利の喜びを表す。
すると。
「おい! あったぞ!」
そう言ってブレンが駆け寄るその場所には、小さな黒い欠片のようなものがあった。
「これがコアってやつですか?」
地面に降り立つカエデはブレンのすぐ横に立ち、落ちているその欠片をのぞき込む。
「ああ、そうだ。これで今日はただ働きでなくて済みそうだ」
喜ぶブレンの顔は、今までにないほどの笑顔で満ち溢れている。これがそれほどまでに重要な物だとは、カエデにはすぐには結びつかないものの、それは見ていて気分のいいものであった。
その視線の先には、まだ見えぬ異界の獣を見据えている。
あたりは、哀愁漂う荒野が広がる。町の周りには緑や川が流れていたが、ここだけは何もない。はるか遠くの方に建造物のようなものが見えるが、それはブレンが言う城と関係があるのだろうか。
「昨日のやつですね」
カエデも魔装を装備する。それはカエデの心も引き締めるもので戦うことを意識づけるものであった。
「そう言えば嬢ちゃんはなんか違う呼び方していたよな」
「私はあれを異物って呼んでいます」
「ふーん。なんでだ?」
「特に理由はないですね。そう教わりました」
カエデは、夢の中で一通りの説明を受けた。それをその通りにしていただけだ。理由を聞かれても答えられるわけがない。
「まあ、呼び方なんてどうでもいいか。指す対象が違わなければ」
その辺にこだわりはないようで、その返答にすぐ受け流す。
「なんでこの辺りは誰も人がいないんですか?」
それは昨日の危機的状況を見ていたら当然の疑問であった。もし、あの場にたまたまカエデが現れなければブレンは間違いなく死んでいてた。
そんな偶然がそうそ起こらないことをカエデは知っている。そのため、ブレンがなぜそんな危険を冒してまで一人で、人気のない場所にいるのか純粋に疑問だったのだ。
「俺みたいな一人で戦っているような人間は狩場を選ばなければいけないんだ」
「え? どうしてですか?」
カエデは横に立っているブレンの顔を見上げるように尋ねる。
「例えば、俺が倒した異物のコアを後から来たパーティーに横取りされることもある。というよりは、それで自分たちは一切手を出さずに倒し終わった所に来て脅し取るのだけで生活している奴なんかもいる」
「ええ!? そんなこと許されるんですか!?」
良い子のカエデにとっては衝撃的な内容であった。この世界ではごく当然のことなのか、はたまたそんなことをする悪党もいるということなのか、どちらにせよそんなこと許されていいはずがない。
「許されるも何もない。コアをギルドに持っているやつが倒した証だ」
その発言は生きるか死ぬかの過酷な世界において、どう生き残るかも自身で選択していかなければならない、さらなる過酷さを表すものであった。
「だって、それギルドの人たちはなにも言わないんですか?」
カエデの疑問は当然のものであった。ズルをして人の成果を横取りするような人間を、受け付けるわけがない。カエデの世界ならそれが普通の感性である。
「あいつらにとってはそんなことどうでもいいんだよ。異物が減れば得したくらいにしか思っていない」
しかし、この世界においてはそんな平和な世界の常識は通用しないようだ。カエデにとっては信じられないことであるが、ギルドとは公平な立場に立つ公の機関として認識していたがどうやらそうではないらしい。
「でも、それじゃあみんな死んでいっちゃったらギルドの人も危ないんじゃないんですか?」
死と隣り合わせだからこそ、生きて戦ってくれる人がいることのありがたみを理解できているはずである。
「あいつらは、城のなかにいれば永遠の平和が訪れると本気で思っているんだよ。先の大戦でそれを証明しちまった国があるからな」
カエデも見た強固な壁に囲まれた城のことである。それは、たしかに厳重そうで異物と言えどもそう簡単に手出しができるものではことは分かる。しかし、それが永遠に続くことは無いことなんて普通なら分かることではないか。
「まあ、それも中はどうなっているかは誰にもわかないけどな」
ブレンはその永久の平和の存在を疑っているようだ。もっとも、その城に入る権利の無いものにとっては、そんなことどうでもいいことである。
「だから、周りに人がいないことを確認してからじゃないと俺は戦わない。あとは不意打ちを受けないようにするためだな」
最後の理由はブレンが今まで培ってきた経験によるものだ。
実質カエデも不意打ちの攻撃でこの世界に迷い込んだ。もしあれが無ければ、いつも通りに家に帰り寝て翌朝学校に行く、今まで通りの当たり前の生活を送っていただろう。
「おい! 見ろ嬢ちゃん!」
ブレンの声が大きく野太くなる。構えた剣先にいるのは一体の異物であった。
カエデもすぐさま反応し戦闘態勢をとる。右手に握られるのは、自身の身長より少し低いステッキのようなもの。先端は花のつぼみのような形をしている。
「なんだ嬢ちゃんそんなもの持っていたのか」
横目でそれを見たブレンが驚きの声を上げる。急に姿が変わったと思ったら今度は何も持っていなかったはずの少女が手に何かを握っている。
この世界の魔法士でもできることかと思っていたが、どうやらそうでもないらしい。
「補助輪みたいなものです。これが無くても魔法は使えますが、これがあったほうが簡単なんです!」
少女も同じく魔法具の先を先ほど出現した異物のほうに向ける。ここから何が出てくるのかは分からないはずのものだが、それは銃口を向けられたかのような緊張感を放つ。
「補助輪ってなんだ?」
その時途端に目の前の異物が距離を詰めてきた。その姿は四足歩行の獣のような見た目で、視界に映っていることが見間違いではないかと思うほどに薄汚れた紫色をしている。
飛びかかってきた異物に、カエデが直線の衝撃はを3本放つ。それは、まっすぐに異物めがけて飛んでいく。人にあたりでもしたらどうなるかはカエデ本人にも分からない。いまだかつてそんなことはしたことないし、したいと思ったこともないからだ。
しかし、それをいとも簡単によけ異物との距離は当初よりもだいぶ縮んむ。だからと言って焦ることは一切ないカエデは浮遊を始める。空を飛ばな異物はカエデにとって格好の餌だった。
そこまでは、カエデのいつも通りの流れで戦闘が続く。そう思っていたが、今回はそうでもない。
「ふぉぉぉ!」
地上にはブレンがいるからだ。カエデという目標をなくした異物は標的をブレンに変え飛びかかってきた。その右前足を大きく振りかぶりブレンめがけて叩きつける。しかし、ブレンもそれに負けじと手に持つ大剣で相殺する。
異物の動きが一瞬止まったその隙をみてカエデが波紋に広がる攻撃をする。それは見事に異物の無防備な背中に直撃する。
「いまです!」
「おっしゃあああ!」
怯んだその一瞬をつきブレンが大きく振りかぶり叩きつけるように異物に切りかかった。ブレンの確かな手ごたえとともに、その異物は二人の前から消滅した。
「やったぁ!」「よし!」
二人は重なるように勝利の喜びを表す。
すると。
「おい! あったぞ!」
そう言ってブレンが駆け寄るその場所には、小さな黒い欠片のようなものがあった。
「これがコアってやつですか?」
地面に降り立つカエデはブレンのすぐ横に立ち、落ちているその欠片をのぞき込む。
「ああ、そうだ。これで今日はただ働きでなくて済みそうだ」
喜ぶブレンの顔は、今までにないほどの笑顔で満ち溢れている。これがそれほどまでに重要な物だとは、カエデにはすぐには結びつかないものの、それは見ていて気分のいいものであった。
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