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諦観の騎士 リリィ・フランネル
諦観の騎士 リリィ・フランネル(13)
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リリィに手を引かれながらチューリッヒの町を歩き、プレイヤータウンに足を踏み入れる。国としてはスイスだがドイツ系の文化が色濃く出た町並みはそのままに、プレイヤーたちが持ち込んだ現実の文化と価値観が混じりこんだどこか混沌とした気配のする街だ。それまでは食品といえばチーズやソーセージ、ワインといった西洋文化のものが売られていたが、プレイヤータウンに踏み込むと串焼き、唐揚げ、ラーメンやハンバーガーなどが露店を出している。当然、価格も金貨一枚を意味する「円」で書かれてあって、それまでとは異質な街だ。
金貨一枚あればNPCが経営する宿ならかなり贅沢なものに泊まれる。だが、ここでは串焼き一本が百円だ。串焼き一本で百泊できる。贅沢は敵だなどというつもりはないが、いいものが多いのでうっかり散財してしまわないように気をつけないと。
そんなことを考えながら、すでに一度、派手に散財した経験のあるアジムはリリィに連れられて一軒の店に入った。
とてもいい香りがするそこは、
「お風呂用品の専門店なんだよ」
リリィの説明通り店だった。凄まじい数が並ぶ固形石鹸、ボディソープ、シャンプーやリンスに加えてタオルやボディスポンジなども所狭しと置いてある。
「私はいつもここで買ってるんだ。
ボッタクル商店と比べるとちょっとお高めだけど、
すごく品質が良くてキレイになるし、肌にいいからオススメだよ」
以前、リリィと一緒に買い物を楽しんだ百貨店の名前を出しながら説明してくれる。正直なところ、肌への影響の話はアジムにはあまりピンとこないのだが、キレイになるというのは気になる。戦闘では敵の攻撃を受け止めることがほとんどなので、どうしても小さな傷が増えて、同時に量は少ないとは言え血の匂いと汚れがまとわりつく。
陵辱プレイをやっているときはともかく、普段はそんな手でリリィに触れたくはない。
「どれでも泡立ちは良くて汚れもよく落ちるから、
好みの香りで選んじゃったらいいと思うよ」
リリィの言葉に頷いて、陳列されている石鹸やを手にとって順番に香りを確認していく。
濃く主張の強い花の香り、淡く細やかな花の香り、樹木の香りに果物の香り。それぞれに種類もあって、香りが混じってどれが好みか分からなくなってきた。そんな中で、馴染みのある爽やかな柑橘の香りを感じて、思わず呟く。
「あ、リリィさんの匂い」
自分も石鹸の香りを確認していたリリィが、アジムの漏らした言葉を聞いて背筋を伸ばした。
「ああ、やっぱりいい匂いだな」
アジムが他の石鹸と比較しながら何度もくんくんと香りを嗅いでいるのを見て、リリィは自分の匂いを嗅がれているような感覚を覚えて顔を赤らめた。
「アジムくん、私の匂いをそんなにじっくり嗅がれると、
ちょっと恥ずかしいよ」
リリィに服の裾を引かれて焦ったアジムは、バカ正直に香りの感想を口にする。
「え? あ、でも、石鹸よりリリィさんのほうがいい匂いだと思います」
リリィはその言葉に「ぐっ」と言葉を詰まらせた。匂いなどという生理的な部分を褒められると嬉しいのだが、恥ずかしい。さらに顔を赤くしたリリィは、なんとか話題を変えようと、
「私のことより、アジムくんはどんな石鹸がいい?
なにか使いたい香りの石鹸とかあった?」
「俺は香りよりも汚れや自分の匂いがよく落ちる石鹸がいいですね」
リリィは「ふむふむ」とアジムの言葉に頷いて、
「それじゃ、店員さんに聞いてみようか。
匂い消しなんかはアドバイスしてもらったほうがいいだろうし」
「そうですね」
リリィの言葉に頷き合って、アジムは近くにいた店員に声をかけた。振り返った店員は、人間ではなく豚面鬼だった。首には奴隷であることを証明する鉄の首輪が鈍く光る。
「匂い消しなら、炭の入った石鹸をオススメしますよ」
自分の匂いに苦労しているという豚面鬼の店員が、販売員らしい丁寧な言葉と豚面でもわかる柔和な笑顔でいくつかの石鹸を勧めてくれた。顔はよくとも無駄に刺々しい森妖精などより、よほど客に寄り添った接客だ。
アジムは勧められた中から竹炭と塩が入っているという石鹸を手に取った。特別な香りはないが、とても石鹸らしい安心する香りと体臭を予防してくれるという効能を評価してのものだ。ついでに、石鹸の泡立ちが良くなるというボディタオルも合わせて手にする。
これで戦闘後の匂いも少しはましになるだろうし、匂いを落とすのも楽になるかもしれない。石鹸は一つだけ購入して、良かったら追加で買いに来よう。
そんなふうに思いながら店員に礼を言って会計に向かおうとしたところで、リリィから待ったがかかった。
「アジムくん、シャンプーとリンスは?」
「石鹸がありますよ」
「ダメだよ、アジムくん!
ハゲちゃうよ!」
リリィの叫びを受けてもアジムは首を傾げるだけだった。
近くに居た別の男性たちが「ハゲる」という単語に心を抉られてビクッと身体を竦ませる。
「そうなんですか?」
「髪が傷んだら抜けやすくなるし、
最低限のお手入れはしておかないと」
「はぁ」
まさか現実でもそんな感じなのだろうか。
リリィはそんな懸念を抱きながらアジムを手招きして屈ませると、真っ黒な髪に触れる。
「やっぱりゴワゴワだね。
汚いわけじゃないけど、とても傷んじゃってるよ。
せめてリンスくらいはしないと」
「はい」
リリィが触れてくるのを目を細めて受け入れていたアジムは素直に頷くが、
「リンスとかはどれ使えばいいんでしょう?」
「それこそさっきの店員さんに教えてもらえば……」
途中で視線を向けて言葉を途切れさせたリリィに、豚面鬼の店員が、豚の顔に苦笑を浮かべる。髪のない彼にはシャンプーやリンスなどの実体験は語れない。
「今までシャンプーやリンスは使っていなかったので、
どれでもいいとは思うんですけど……よかったら、リリィさんが選んでください」
「え、いいの?」
「はい。リリィさんが選んでくれたものなら、
俺も好きになれそうですから」
先程選んだ石鹸は特別な香りはないので、シャンプーとリンスの香りが香水をつけないアジムの匂いになるだろう。
リリィが、アジムの匂いを決めるのだ。
「わかった。頑張って選ぶね!」
責任重大だが、任せてもらったからにはいいものを選ばないと。
嬉しそうに頷くアジムを見て気負ったリリィは張り切ってシャンプーの棚に向かう。
汗の匂いが気になるのなら、やはりミント系か? 汗の匂いと混じっても不快感はないだろう。強いほうがいいのか、強すぎないミントがいいのか。それとも別の香りと混ざったミントがいいのか。シャンプーとリンスで別のものにすると変に混ざってしまうか。
リリィが考えを巡らせながら順番に棚のシャンプーやリンスの香りを確かめていると、アジムも自分で匂いを確かめようとリリィが動いてぶつかってしまわないよう腕に抱きとめながら、リリィの頭の上から棚のシャンプーを手に取った。
アジムの太く力強い腕に動きを封じられて、リリィはベッドの上のアジムの匂いを思い出した。
「……えーっとね」
「はい」
思い出すと同時に下腹部に生じた熱を誤魔化すために、意味のない声を上げると、素直な返事と何を勧められるのか期待する目を向けられてリリィは焦る。
「こ、これなんかどうかな!?」
そして手に取ったのは、特別な香りのないごく普通のシャンプーだった。
アジムは首をかしげる。
「香りは何もないですよ?」
「アジムくんの匂い、好きだから!」
頭に浮かべていたベッドの上でのアジムの匂いの感想をそのまま口に出してしまってから、リリィは何を口走ったのか理解して真っ赤になった。
「え、でも、臭くないですか?」
思わず、といった感じで返ってきた反論に、汗と精が入り混じった匂いを思い出しながら、
「そういうのも、アジムくんのなら、好きだから……」
「そ、そうですか……」
二人でシャンプーとリンスの棚を前に赤くなる。
そんな二人に声がかけられた。
「お買い上げありがとうございます」
失礼にならないよう完璧に制御された「店先でいちゃついてんじゃねぇ」という感情を含んだ豚面鬼店員の声にハッとなって、意味なく慌てて会計に向かった。
店を出てからは何となく気恥ずかしさはあるものの、それでもどちらからともなく手を取り合って買い物を続ける。
リュドミラの店を知るまではよく通っていたという衣類や装飾品を扱う店が集まった界隈で、リリィが顔見知りの店員たちに「この人をカッコ良くしてください!」と声をかけるとアジムは着せ替え人形にされてしまう。リリィだけでなく店員たちも、プレイヤーには珍しい珍しい筋肉質な体型のアジムにいろいろな服を着せられてご満悦だ。
アジムがお返しに「リリィさんも可愛くしてあげてください」と店員たちに声をかけると、当然のようにリリィも着替え室に拉致されて、着せ替え人形にされる。本人の好みからガーリーな装いが多いリリィに、店員たちが背中の空いた大人びたドレスや花魁風の着物といった色気を押し出した衣装を着せると、普段とは違う艶やかさにアジムはドギマギした。
「もう、いいでしょ!」
さすがに着替え疲れたリリィが叫んだのでお開きにして、アジムは動きやすいぴっちりとしたシャツだけ購入した。アジムの逞しい胸や腕、背中の筋肉がくっきり浮き上がる、リリィのおすすめでもある。
ほかにもリュドミラが扱っていないハンカチや靴下などの小物を買い込んで、今度は食事だ。
露店がたくさん立ち並ぶ界隈に入ると、露店で買い込んだ食べ物を食べるためのベンチと椅子がおかれているので、食べたいと思ったものを片っ端から買い込んでそこに腰を落ち着けた。
焼きそば、たこ焼き、フランクフルトといったお祭りなどでよく見るものから、魚醤を使ったサンドイッチや香草と海老の炒め物といったアジア圏の気配がするもの、Tボーンステーキやワイン煮込みといった西洋の肉料理が雑然と入り混じっている。それらをプレイヤーらしい冷えたビールで露店とテーブルを何度も往復して追加注文しながらたっぷりと食べた。
いい感じに腹も膨れ、ほろ酔いになってからリリィがよく利用するという魔法薬の店にはいる。安売りされていた回復薬を大量に買い込み、ほんのり酔って気が大きくなっていたので「使用量注意!」などと書かれていた媚薬まで買って、ようやく家路につく。
アジムは今回も散財した。
金貨一枚あればNPCが経営する宿ならかなり贅沢なものに泊まれる。だが、ここでは串焼き一本が百円だ。串焼き一本で百泊できる。贅沢は敵だなどというつもりはないが、いいものが多いのでうっかり散財してしまわないように気をつけないと。
そんなことを考えながら、すでに一度、派手に散財した経験のあるアジムはリリィに連れられて一軒の店に入った。
とてもいい香りがするそこは、
「お風呂用品の専門店なんだよ」
リリィの説明通り店だった。凄まじい数が並ぶ固形石鹸、ボディソープ、シャンプーやリンスに加えてタオルやボディスポンジなども所狭しと置いてある。
「私はいつもここで買ってるんだ。
ボッタクル商店と比べるとちょっとお高めだけど、
すごく品質が良くてキレイになるし、肌にいいからオススメだよ」
以前、リリィと一緒に買い物を楽しんだ百貨店の名前を出しながら説明してくれる。正直なところ、肌への影響の話はアジムにはあまりピンとこないのだが、キレイになるというのは気になる。戦闘では敵の攻撃を受け止めることがほとんどなので、どうしても小さな傷が増えて、同時に量は少ないとは言え血の匂いと汚れがまとわりつく。
陵辱プレイをやっているときはともかく、普段はそんな手でリリィに触れたくはない。
「どれでも泡立ちは良くて汚れもよく落ちるから、
好みの香りで選んじゃったらいいと思うよ」
リリィの言葉に頷いて、陳列されている石鹸やを手にとって順番に香りを確認していく。
濃く主張の強い花の香り、淡く細やかな花の香り、樹木の香りに果物の香り。それぞれに種類もあって、香りが混じってどれが好みか分からなくなってきた。そんな中で、馴染みのある爽やかな柑橘の香りを感じて、思わず呟く。
「あ、リリィさんの匂い」
自分も石鹸の香りを確認していたリリィが、アジムの漏らした言葉を聞いて背筋を伸ばした。
「ああ、やっぱりいい匂いだな」
アジムが他の石鹸と比較しながら何度もくんくんと香りを嗅いでいるのを見て、リリィは自分の匂いを嗅がれているような感覚を覚えて顔を赤らめた。
「アジムくん、私の匂いをそんなにじっくり嗅がれると、
ちょっと恥ずかしいよ」
リリィに服の裾を引かれて焦ったアジムは、バカ正直に香りの感想を口にする。
「え? あ、でも、石鹸よりリリィさんのほうがいい匂いだと思います」
リリィはその言葉に「ぐっ」と言葉を詰まらせた。匂いなどという生理的な部分を褒められると嬉しいのだが、恥ずかしい。さらに顔を赤くしたリリィは、なんとか話題を変えようと、
「私のことより、アジムくんはどんな石鹸がいい?
なにか使いたい香りの石鹸とかあった?」
「俺は香りよりも汚れや自分の匂いがよく落ちる石鹸がいいですね」
リリィは「ふむふむ」とアジムの言葉に頷いて、
「それじゃ、店員さんに聞いてみようか。
匂い消しなんかはアドバイスしてもらったほうがいいだろうし」
「そうですね」
リリィの言葉に頷き合って、アジムは近くにいた店員に声をかけた。振り返った店員は、人間ではなく豚面鬼だった。首には奴隷であることを証明する鉄の首輪が鈍く光る。
「匂い消しなら、炭の入った石鹸をオススメしますよ」
自分の匂いに苦労しているという豚面鬼の店員が、販売員らしい丁寧な言葉と豚面でもわかる柔和な笑顔でいくつかの石鹸を勧めてくれた。顔はよくとも無駄に刺々しい森妖精などより、よほど客に寄り添った接客だ。
アジムは勧められた中から竹炭と塩が入っているという石鹸を手に取った。特別な香りはないが、とても石鹸らしい安心する香りと体臭を予防してくれるという効能を評価してのものだ。ついでに、石鹸の泡立ちが良くなるというボディタオルも合わせて手にする。
これで戦闘後の匂いも少しはましになるだろうし、匂いを落とすのも楽になるかもしれない。石鹸は一つだけ購入して、良かったら追加で買いに来よう。
そんなふうに思いながら店員に礼を言って会計に向かおうとしたところで、リリィから待ったがかかった。
「アジムくん、シャンプーとリンスは?」
「石鹸がありますよ」
「ダメだよ、アジムくん!
ハゲちゃうよ!」
リリィの叫びを受けてもアジムは首を傾げるだけだった。
近くに居た別の男性たちが「ハゲる」という単語に心を抉られてビクッと身体を竦ませる。
「そうなんですか?」
「髪が傷んだら抜けやすくなるし、
最低限のお手入れはしておかないと」
「はぁ」
まさか現実でもそんな感じなのだろうか。
リリィはそんな懸念を抱きながらアジムを手招きして屈ませると、真っ黒な髪に触れる。
「やっぱりゴワゴワだね。
汚いわけじゃないけど、とても傷んじゃってるよ。
せめてリンスくらいはしないと」
「はい」
リリィが触れてくるのを目を細めて受け入れていたアジムは素直に頷くが、
「リンスとかはどれ使えばいいんでしょう?」
「それこそさっきの店員さんに教えてもらえば……」
途中で視線を向けて言葉を途切れさせたリリィに、豚面鬼の店員が、豚の顔に苦笑を浮かべる。髪のない彼にはシャンプーやリンスなどの実体験は語れない。
「今までシャンプーやリンスは使っていなかったので、
どれでもいいとは思うんですけど……よかったら、リリィさんが選んでください」
「え、いいの?」
「はい。リリィさんが選んでくれたものなら、
俺も好きになれそうですから」
先程選んだ石鹸は特別な香りはないので、シャンプーとリンスの香りが香水をつけないアジムの匂いになるだろう。
リリィが、アジムの匂いを決めるのだ。
「わかった。頑張って選ぶね!」
責任重大だが、任せてもらったからにはいいものを選ばないと。
嬉しそうに頷くアジムを見て気負ったリリィは張り切ってシャンプーの棚に向かう。
汗の匂いが気になるのなら、やはりミント系か? 汗の匂いと混じっても不快感はないだろう。強いほうがいいのか、強すぎないミントがいいのか。それとも別の香りと混ざったミントがいいのか。シャンプーとリンスで別のものにすると変に混ざってしまうか。
リリィが考えを巡らせながら順番に棚のシャンプーやリンスの香りを確かめていると、アジムも自分で匂いを確かめようとリリィが動いてぶつかってしまわないよう腕に抱きとめながら、リリィの頭の上から棚のシャンプーを手に取った。
アジムの太く力強い腕に動きを封じられて、リリィはベッドの上のアジムの匂いを思い出した。
「……えーっとね」
「はい」
思い出すと同時に下腹部に生じた熱を誤魔化すために、意味のない声を上げると、素直な返事と何を勧められるのか期待する目を向けられてリリィは焦る。
「こ、これなんかどうかな!?」
そして手に取ったのは、特別な香りのないごく普通のシャンプーだった。
アジムは首をかしげる。
「香りは何もないですよ?」
「アジムくんの匂い、好きだから!」
頭に浮かべていたベッドの上でのアジムの匂いの感想をそのまま口に出してしまってから、リリィは何を口走ったのか理解して真っ赤になった。
「え、でも、臭くないですか?」
思わず、といった感じで返ってきた反論に、汗と精が入り混じった匂いを思い出しながら、
「そういうのも、アジムくんのなら、好きだから……」
「そ、そうですか……」
二人でシャンプーとリンスの棚を前に赤くなる。
そんな二人に声がかけられた。
「お買い上げありがとうございます」
失礼にならないよう完璧に制御された「店先でいちゃついてんじゃねぇ」という感情を含んだ豚面鬼店員の声にハッとなって、意味なく慌てて会計に向かった。
店を出てからは何となく気恥ずかしさはあるものの、それでもどちらからともなく手を取り合って買い物を続ける。
リュドミラの店を知るまではよく通っていたという衣類や装飾品を扱う店が集まった界隈で、リリィが顔見知りの店員たちに「この人をカッコ良くしてください!」と声をかけるとアジムは着せ替え人形にされてしまう。リリィだけでなく店員たちも、プレイヤーには珍しい珍しい筋肉質な体型のアジムにいろいろな服を着せられてご満悦だ。
アジムがお返しに「リリィさんも可愛くしてあげてください」と店員たちに声をかけると、当然のようにリリィも着替え室に拉致されて、着せ替え人形にされる。本人の好みからガーリーな装いが多いリリィに、店員たちが背中の空いた大人びたドレスや花魁風の着物といった色気を押し出した衣装を着せると、普段とは違う艶やかさにアジムはドギマギした。
「もう、いいでしょ!」
さすがに着替え疲れたリリィが叫んだのでお開きにして、アジムは動きやすいぴっちりとしたシャツだけ購入した。アジムの逞しい胸や腕、背中の筋肉がくっきり浮き上がる、リリィのおすすめでもある。
ほかにもリュドミラが扱っていないハンカチや靴下などの小物を買い込んで、今度は食事だ。
露店がたくさん立ち並ぶ界隈に入ると、露店で買い込んだ食べ物を食べるためのベンチと椅子がおかれているので、食べたいと思ったものを片っ端から買い込んでそこに腰を落ち着けた。
焼きそば、たこ焼き、フランクフルトといったお祭りなどでよく見るものから、魚醤を使ったサンドイッチや香草と海老の炒め物といったアジア圏の気配がするもの、Tボーンステーキやワイン煮込みといった西洋の肉料理が雑然と入り混じっている。それらをプレイヤーらしい冷えたビールで露店とテーブルを何度も往復して追加注文しながらたっぷりと食べた。
いい感じに腹も膨れ、ほろ酔いになってからリリィがよく利用するという魔法薬の店にはいる。安売りされていた回復薬を大量に買い込み、ほんのり酔って気が大きくなっていたので「使用量注意!」などと書かれていた媚薬まで買って、ようやく家路につく。
アジムは今回も散財した。
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