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復讐の騎士 リリィ・フランネル

復讐の騎士 リリィ・フランネル(18)

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 リリィはふと意識を取り戻した。
 目を覚ましたわけではなく、意識を取り戻しただけだ。頭も体もまだ眠っているのに、目を閉じたまま意識だけが戻って暖かく、安心する闇に包まれて眠っている自分を自覚する。うつ伏せに眠る身体は暖かなものに支えられていた。規則的にゆっくりと上下するそれは、一緒に床に入った男の胸板だろう。まだ眠っているのか、分厚く、逞しいそれが、穏やかな呼吸で上下している。頬を寄せて枕にしているそこからは、生命の鼓動も聞こえてくる。とく、とく、とく、と暖かな闇の中でそれを聞いているとどこまでも安心して、心も身体もそうと自覚しないまま強張っていた部分が溶けていくようだ。
 そんな幸せな闇の中で微睡まどろんでいると、アジムの身体が身じろぎをした。しばらくするとぐっと伸びをして、そこで自分の身体の上で眠るリリィに気が付いたのか、動きが固まった。
 起こされるかな。それとも、身体から降ろされるかな。
 リリィがそんな風に思いながら、それでも身体を包むぬくもりから離れがたくて目を閉じたままじっとしていると、固い皮膚に覆われた分厚い手が頭に触れた。リリィが怪訝に思っていると、アジムの手はそろそろと頭を撫でた後、節くれだった太い指が髪をなでていく。さらさらとしたリリィの髪を毛先までゆっくりと撫でて、毛先のほうに優しく手櫛を入れてから手を頭に戻すと、またゆっくり毛先に向かって撫でていく。いつの間にかもう片方の手が柔らかく腰に回されていて、緩く抱きしめられながら髪を撫でられていると大切にされていることを実感して胸が温かくなる。
 どれくらいそうして撫でられていただろうか。髪を撫でていたアジムの手が止まった。
 リリィは悲しくなってむずかるように、甘えるように、アジムの分厚い胸に頬を摺り寄せる。リリィが撫でるのを再開してくれるのをねだるように首元にぐりぐりと頭を押し付けていると、

「リリィさん。
 もしかして、起きてます?」

 頭の上からそんな言葉が降ってきた。
 それでもリリィが応えずに頭を押し付けていると、困ったようなため息の後、また髪を撫でる手が動き出す。その手のぬくもりを感じながら、リリィは顔を上げた。

「おはよ、アジムくん」

 リリィがなんとなく照れて笑うと、アジムも笑みを返してくれた。

「おはようございます」

 もう夕方ですけどね、と続けたアジムはそのまま髪を撫で続けてくれている。リリィはまたアジムの分厚い胸に顔をうずめて、アジムのぬくもりに包まれる幸せにひたる。リリィがそうして身体を摺り寄せてアジムの温かさを堪能していると、太もものあたりに熱くて硬いものが触れた。
 リリィが視線を落とすと、アジムのものが硬く滾っていた。アジムの顔に視線を戻すと、アジムは少しばかり頬を染めて視線をそらしている。バスローブをまとっているとは言え、素肌を身体に摺り寄せられているのだ。当たり前の反応だろう。
 リリィは口元に笑みを浮かべると、アジムの頬にそっと手を添えて自分と視線を合わさせた。そして、驚いたようなアジムの唇に、自分のそれを重ねる。硬くなったアジムのものを見た瞬間に、リリィの中に欲望が生まれていた。
 このひとと、もっと深く繋がりたい。

「アジムくん。
 ……シて?」

 思いを込めて唇を重ね、耳元でそう囁くと、いきなり天地が反転した。アジムがリリィを抱いたまま寝返りを打って、リリィをベッドに押さえ込んだのだ。
 少し驚いたが、隠しきれない情欲を目に浮かべて自分を見下ろすアジムに、リリィは微笑んだ。

「シて?」

 もう一度、アジムと目を合わせて囁くと、キスが降ってきた。粘ついた貪るようなそれでなく、唇に触れるだけの優しいキス。それで唇を愛撫した後、頬に、鼻に、瞼に、優しいキスの雨が降る。 

「ん……んん、ふ……ん……」

 キスが唇に戻ってくると、今度は深く口づけられる。口の中に入ってきたアジムの舌に自分のものを絡めて応えながら、リリィはアジムの首に腕を回して頭を抱き寄せた。ぬくもりで唇が満たされる。それと同時に胸が、子宮が、ぬくもりを求めて、切なく鳴き始める。
 リリィが首に回した腕を弛めると、アジムの唇が頬からおとがいをなぞり、首筋に口づけながら胸に到る。寝乱れたバスローブを丁寧な手つきで脱がせ、手荒な扱いを受けて痣の残る控えめなリリィの乳房を口にふくむ。左の乳房を丸ごと口にふくまれて頂点の突起を舌で転がされると、熱い息と甘い声が漏れる。放置されて切なさを訴える右の胸も大きな手で柔らかく包まれて、甘い声が喘ぎになっていく。
 胸を責めたアジムの唇が身体から離れると、またリリィの唇に重ねられる。
 リリィが胸の愛撫のお礼とばかりにアジムの唇に吸い付いて舌を絡めて唾液をねだると、アジムはそれ応じて舌と唾液を流し込んでくれた。
 リリィが唇に夢中になっていると、アジムの手が下腹部に触れた。分厚い手が子宮の上に添えられている。それだけでぬくもりが伝わってくるようで、さらに切なくリリィの子宮がアジムを求めて鳴く。アジムの手は分厚いだけでなく、大きい。リリィの子宮をそのぬくもりであやしながらでも、割れ目まで指が届く。すでにリリィのそこはアジムを受け入れるために愛液でぬるぬるになっていたが、アジムの指はそこに潜り込むことはせず割れ目をなぞって愛液を指にまとわせると、クレバスの頂点にある突起に触れた。

「ひぅうん!?」

 突然の強い快感に、腰がはねた。

「あっ、あっ!?
 はっ、ん、んむっ……!」

 クリトリスに愛液をまとわせて優しくしごかれる。その間も唇と手のひらからぬくもりが伝わってくる。幸せと快感で目もくらみそうだ。アジムの太い腕に抱き着いて足を絡め、快感の源であるクリトリスを自分からアジムの指に擦り付ける。

「あ、あっ、ああぁぁぁ……っ!」

 リリィはぬくもりに包まれて絶頂した。
 薬を使われながら無理やり犯されて、頭を真っ白にされるような叩きつけられる絶頂とは違う、胸にあるあたたかなものに満たされての絶頂。アジムの腕を強く抱きしめてその甘い幸せな絶頂から降りてくると、脱力して余韻にひたる。
 リリィがぐったりと手足をシーツに投げ出していると、アジムがリリィに覆いかぶさっていた身体を起こした。股間のものは反り返って先走りを吹きだしている。

「あ……」

 それを目にしたリリィは自分だけが快感を貪っていたことを恥じた。恥じたが、絶頂の余韻が身体を覆っていて、身体を起こそうとしても起きられない。アジムのものに奉仕できそうにない。

「ご、ごめん……」

 リリィの言葉に、アジムは気にしなくてもいいと、笑みを浮かべてゆるゆると首を横に振った。そして、力の入らないリリィの足を抱え込み、股を開かせて無毛の割れ目に少しだけ指を埋めた。

「ん、ふぅ……っ」

 愛液でどろどろのそこはアジムの指を容易く受け入れる。そうしてアジムは絶頂して収まったリリィの性感をもう一度高めていく。絶頂はしたものの、まだ満たされ切っていないリリィの身体はアジムの指で簡単に高ぶっていく。

「は、ぁ……あっ、あぁ……」

 リリィはアジムが指を動かすたびに部屋に響く粘ついた水音に耳を犯されながら、シーツを握りしめて身体をよじらせて早くも登り詰めてしまいそうになりながら、どうにかこらえていたが、

「ま、た、イっちゃうから……。
 もう、挿入いれて……?」

 喘ぎの間からアジムにそう懇願した。
 アジムは少し動きを止めた後に頷いて、リリィの割れ目から糸をひくほど愛液で濡れた指を抜くとそこに自分のものをあてがった。

「入れますよ」
「うん、来て」

 アジムの確認に、リリィは蕩けた笑みを浮かべて頷くと、

「……あはああぁぁぁぁ!」

 太くて、大きくて、でも優しいものと、繋がる。
 圧迫感と幸福感が、膣に入ってくる。

「はっ、はっ、はっ……」

 とろとろのそこに入ってきたアジムのものは、最奥まで一気に押し入ることはせず、入り口でリリィが大きさに慣れるのを待つように、浅いところをにちゃにちゃと音をさせながら出入りする。
 もういいから、一番奥まで突き入れて、全部をアジムのものにしてほしい。
 そう思って言葉にしようとしても、浅いところを責めるアジムのものから与えられる快感で、口から出るのは甘い喘ぎ声ばかりだ。何かを探すようにゆっくりと膣の浅いところを責めるアジムに、快楽に身もだえすることしかできないリリィの思いは伝わらない。

「ひゃうぅん!?」

 もどかしさすら感じながら中途半端な快感を享受していたリリィは、突然身体を走り抜けた強い快感に驚いて悲鳴のような嬌声と驚きに目を見開いた。突然のリリィの反応に、アジムも驚いたように動きが止まる。

「え……な、なんだろう……」

 戸惑うリリィに、アジムが笑みを浮かべて覆いかぶさってくる。

「きゃうぅん!?」

 そして膣のを擦り上げるように一突きされると、また身体が跳ねる。

「リリィさんはここが弱いみたいですね」

 アジムに笑顔で告げられる。

「し、知らない。私、知らないよ。
 あ、あっ、あひっ、ひっ、あっ、ああぁぁぁぁ!?」

 身体に覆いかぶさったアジムが自分の身体でリリィの身体を押さえつけて、リリィの弱いところを責めながら一番奥まで突き入れてくる。リリィは自分の中で暴走するような性感に翻弄されて、アジムの身体にしがみついた。

「あっ、ダメ、イっちゃ、イっちゃう。
 ダメ、まだ、ダメ……なのに……!」

 身体が勝手に絶頂への階段を駆け上がり始めている。もう我慢できそうにない。
 だが、アジムの側も余裕のあるものではなかった。自分の欲望を押さえてリリィを気持ちよくすることを優先していたが、挿入してからはリリィが気持ちいい分だけ、アジムも気持ちよくなっていた。リリィが絶頂しそうになっているのに合わせて、アジムも射精感が昇ってきている。

「リリィ、さん、もう少しだけ、もう少しだけ……!」
「あっ、あ、はっ、あっ、ああぁ!」

 覆いかぶさったアジムの身体に抱き着くようにして絶頂を必死に堪える。

「んむぅ、うぅ……ううぅ!」

 逞しい腕に抱かれ、余裕のない貪るような口づけをされて、自分も知らなかった膣の弱いところを責められる。
 そして、それがどうしようもなく幸せだ。

「もっ、ダメっ! 
 イっちゃう……イっちゃうぅ!」
「出ます、リリィさん、
 リリィさんっ!」
「あはあぁぁぁぁ!!」

 膣に熱いものを感じた瞬間に、リリィも絶頂した。
 お互いがお互いを強く抱きしめあって、絶頂に震える。そしてお互いの絶頂が収まると、余韻の脱力に顔を見合わせて微笑みを浮かべあった。

「……よかった?」
「はい。リリィさんも、よかったですか?」
「うん。すごく、よかった」

 胎にアジムのものを収めたまま、優しくキスを落とされている今も、すごくいい。シーツに投げ出した手を指を絡めて握りあって、空いた手をお互いの首に回して抱き合っていると泣きたくなるほど幸せだ。

「アジムくん。
 もっと、する?」

 リリィの中にあるアジムのものは硬いままだ。精力剤など使わなくとも、アジムの精力は常人離れしている。一度出した程度では収まりがつかないだろう。
 アジムは迷うように気遣うように、だが期待するようにリリィに目を向けた。

「……いいんですか?」
「もちろん」

 リリィはアジムから落とされるキスに熱が入ってくるのを感じながら、誘うような言い方をした自分を少し反省する。アジムがもっとしたいから、という形に誘導したが、リリィももっとアジムに抱かれたかったからだ。
 無理やりされるのもいいけれど、優しくされるのもすごくいい。
 あたたかで、幸せで、無理やりされるのでは満たされないところが満たされる。
 アジムのものが自分の中で動き始めるのを感じつつ、リリィは両手をアジムの首に回す。自分からキスをしながら、リリィは優しく愛される悦びをかみしめた。
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