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復讐の騎士 リリィ・フランネル
復讐の騎士 リリィ・フランネル(16)
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犯され、絶頂かされ、膣に精液を注ぎ込まれ、それが終わるとぬらぬらと精液で鈍く光る肉棒に口での奉仕を強要されて精液を飲まされ、また犯される。めちゃくちゃに突き上げられて自分勝手に中に射精され、また精液で汚れた肉棒を口にねじ込まれる。口での奉仕は屈辱にまみれる行為だったが、奉仕をさせられている間だけは身体を休めることができた。だが、その休息でわずかに回復する体力がアジムの陵辱に対する弱々しい拒絶になってしまい、アジムの興奮を掻き立てることになってしまう。夕方から犯され始めたリリィは心と身体を玩具にされ続け、夜が明けるころになってようやく気絶することを許された。
疲れ切ったリリィは夢も見ない深い眠りに身を浸した。その眠りは不思議と暖かで、安心する眠りだった。夢は見なくとも心地よさにリリィは我知らず寝顔を緩ませる。
そんな眠りから、リリィは香ばしい匂いに鼻をくすぐられて目を覚ました。何故か寒々しさを感じながら湿った性の臭いで満たされたベッドに頭をつけたままその匂いのもとを探して視線を巡らせる。下着だけを身に着けたアジムが香気の立ち上るカップを手に、カーテンを少しだけ開けた窓から外を見下ろしていた。
すでに日が昇ってしばらく経っているのか、カーテンから漏れる陽光は強い。アジムはただでさえ細い目をさらに細めて窓の外を見下ろしている。リリィに背を向けているアジムがカップを口に運ぶと、分厚く隆起した肩や背中の筋肉が動く。その動く芸術品とも思えるたくましい褐色の肉体に、抱かれた。まだ乾かない股間を思い、リリィは身じろぎする。
リリィの立てたわずかばかりの衣擦れの音に気付いたアジムが、カーテンを閉めながら振り返る。自分を見上げる寝起きで頭が回っていないらしいリリィのぼんやりとした目を見て、アジムは穏やかな笑みを浮かべた。テーブルに用意してあったリリィの分のカップにルームサービスで運んでもらった珈琲を入れ、たっぷりのミルクと砂糖を溶かしてベッドに横になったままのリリィに歩み寄る。
「おはようございます、リリィさん」
「おはよ、アジムくん」
力の入らない身体をどうにか起こしたリリィは、笑みを浮かべて言葉と一緒に差し出されたカップを受け取って口に運ぶ。アジムに部屋に連れ込まれてから口にしたものといえば回復薬と精液くらいだった身体に、甘い珈琲が染み入るようだ。
「おいし……」
そんな風に呟いてから「あれ?」とリリィは首を傾げた。
「今日ってもう4日目だっけ?」
「いえ、3日目ですよ」
現実の土曜の0時から部屋に連れ込まれて、今は日曜日の0時だ。部屋に連れ込まれてからの日数を訂正されたリリィは、
「週末まるごと監禁して陵辱してくれるんじゃなかったの?」
不満げに言うリリィに、アジムは頭を掻きながらリリィに告げた。
「リリィさんを弄るネタが尽きました」
アジムの言葉に、リリィが「えー」と声を上げる。
「完璧に心を折りつくしてくれたんだから、
3日目は私が奉仕させられる日にしてくれたらよかったのに」
アジムはリリィの言葉に苦笑する。リリィが言うように精液の味と匂いを覚えさせたリリィに奉仕させて言葉で弄るというのはアジムも考えついてはいたのだが、この二日間、ずっと泣き顔しか見ていないし、悲鳴しか聞いていない。テンションが上がって興奮しているときならともかく、一度頭が冷えてしまうと心苦しい。
リリィには笑っていてほしいし、優しくしたい。
アジムはリリィの隣にベッドへ腰かけた。アジムの体重を受けたベッドの反動で、リリィの身体が少し浮き上がる。珈琲がこぼれそうになってあたふたするリリィに謝ってから、アジムは少しばかり緊張で高鳴っている胸を抑え込んでリリィに言う。
「じゃあ、今日は、俺の好きにさせてもらって、いいですか」
ちょっと言葉をつっかえながらリリィに告げた。なにが「じゃあ」なのか自分でもわからなかったが、交換条件っぽくしたほうが断られにくいのではと思ったのだ。口に出してから姑息な感じがして、自分に対して嫌な感じを覚える。アジムは目を丸くして自分を見上げるリリィから視線を外して、顔をしかめた。
「いいよ! それじゃ、今日の私はアジムくんのものだよ!」
手元の珈琲を飲み干して、リリィはアジムの膝の上にごろりと仰向けに寝ころんだ。足首の枷からのびる鎖がしゃらしゃらと音を立てる。驚いたアジムがリリィに目を落とすと、リリィはアジムに微笑んだ。
「あ、でも、臭いのとか汚いのとか痛いのは、やめてほしいかな……?」
リリィの言葉にアジムは首を傾げた。
臭いの、汚いの、というのは、まあわかる。ただ、痛いのというのはどういうことか。
「俺、リリィさんにかなり痛い思いをさせている自覚はあるんですけど……。
リリィさんの言う「痛いの」ってどういうものなんです?」
「えーっと。
……切ったり焼いたり千切ったり?」
想定したものよりはるかにヘビーな回答で、アジムは「やるわけないです!」と全力で首を横に振った。たとえリリィに望まれたとしても、やれそうにない。
アジムは枕元に隠してあった足枷の鍵を取り出すと、リリィの左足首にある枷を外す。枷から解放された足首には青く痣ができていた。アジムが鎖をつかんでリリィを引きずったり、リリィ自身が逃げることもできないのに逃げ出そうとしたりで、鉄製の枷に何度もぶつけたからだろう。アジムはそこをそっと撫でる。
「痛いですか?」
「痣にはなってるけど、痛みはないよ」
くすぐったそうに言うリリィを、アジムは膝の上から抱き上げてそのままベッドから腰を上げた。アジムの腕に抱かれたリリィは、抱き上げられたことよりもその高さに驚いて慌ててアジムの首に腕を回して抱き着いた。
「とりあえず、風呂にしましょうか」
アジムはリリィの手にあったカップをベッドからの移動途中にあったテーブルに置かせ、そのまま隣にある脱衣所に足を運ぶ。もともと全裸だったリリィを腕に抱いたまま、バランスを崩すこともなく器用に足だけでパンツを脱衣所に脱ぎ捨ててアジムは浴室に足を踏み入れた。
浴室はメルフィナの塔のようなシャワー設備こそないものの、アジムが3人くらい入っても余裕のありそうな大きな浴槽と、湯を汲みだして使うための小さめの浴槽があった。浴槽にはどちらも湯が満たされていて、暖かな湯気で浴室を曇らせている。浴室の隅には小さな棚が備え付けられていて、石鹸や髪を洗う香油が用意されている。アジムは小さいほうの浴槽に歩み寄り、置いてあった手桶で少しだけ湯を汲んでリリィの手にかけた。
「熱くないですか?」
リリィが頷いてみせるとアジムは手桶にたっぷりと湯を汲んで、汗や精液、唾液に愛液、それに尿でまで汚れていたリリィの身体をざっと洗い流した。そして、少し綺麗になったリリィをゆっくりと大きい浴槽に浸からせた。
アジムはリリィに身体を温めさせている間に、自分は手桶で頭から湯をかぶると棚から石鹸を手に取った。アジムは頭に石鹸を直接こすりつけるようにして泡立てると、ぎょっとするリリィに気付くことなくがしがしと頭をこする。そうして頭と髪を洗うと、また頭から何度か湯をかぶり、ぶるぶると頭を振った。
「よし」
「よし、じゃないよ!
雑いよ、アジムくん!」
アジムは誤魔化すように曖昧に笑ってから、タオルを持ち込まなかったことに気が付いて脱衣所からタオルを何枚か手にして戻る。そのうちの一枚を使って頭を拭いて、残りは備え付けの棚にかけておく。手桶に湯を汲んで頭を拭いたタオルを浸し、湯を吸わせてから石鹸をこすりつけて泡立て、身体を洗う。
「アジムくん、この部屋……というか、このお宿、
すごく上等っぽいんだけど、普段からここに泊まってるの?」
リリィは湯船の縁に頬杖をついて身体を洗うアジムを見ながら問う。たくましい男性の身体が好みのリリィには中々の眼福だ。前を向いているのが照れるのか、アジムはリリィに背を向けて身体を洗っているが、陵辱されている間は見ることのできない強靭すぎる背筋や、引き締まった尻のえくぼなどは、たまらない。
「そうですね。この部屋が俺の定宿になってます」
「……ここ、すごく高くない?
お金、大丈夫なの?」
リリィは視線をアジムの身体から、備え付けの棚にずらした。そこに並んでいる髪を洗うための香油の瓶を見る。瓶のラベルはリリィもよく知っているメーカーのラベルだ。プレイヤータウンで流通しているもので、NPCでは絶対に手の出せないぜいたく品価格のものでもある。大きな部屋風呂があるのも驚きだが、街を見下ろす上層階に部屋風呂がついているのがさらにすごい。リリィが理解できる部分だけでも、一泊一万円以上しても不思議ではない。
アジムのお金の使い方を見れば、今までの収入が残念だったのはよくわかっている。そんなアジムがどうしてこんな宿に泊まっていられるのか。
「あー。俺、ここには無料で泊めてもらっているんですよ」
「えぇ!?」
驚くリリィにアジムはどこから説明したものかと思案してから、
「俺が<抵抗力>スキル持ってるのは知ってますよね?」
「うん。私の魔法が効きにくい原因の一つだから、
よーく知ってる」
リリィの言葉に苦笑してから、
「どうやって<抵抗力>スキルを上げるかは知ってます?」
「魔法を撃ち込まれたり、毒に冒されたりしたら上がるんだっけ?」
「そうです。スキルを高く上げようと思うと、
強力な魔法を連続で撃ち込まれたり、
強い毒にかかったままで我慢したりしないといけないんですよ」
「ふぅん?」
それがどうやったら宿の話につながるのかとリリィは首をかしげる。
「強力な魔法を連続で撃ち込んでくる相手なんて、
ダンジョンの奥底にしかいないじゃないですか?
俺、一人でゲームやってたんで、
ダンジョンに深くは潜れなかったんで、
毒を使う相手を探したんですよ」
しっかり身体をタオルで擦り、泡まみれになったアジムが手桶を手に取る。
「毒っていうと、
やっぱり盗賊とか暗殺者かなって思って、
この街に来たんです。
で、盗賊とか暗殺者が迎撃してくれるだろうと思って、
その辺の麻薬窟に殴り込みかけたんですよね」
「えぇ!?」
「いやー、最初のうちは返り討ちにあって、
何度も死にかけましたよ……まあ、死にませんでしたけど」
それでも何度も襲撃を繰り返すうちに<抵抗力>スキルが上がって毒が効きにくくなり、アジム自身が室内戦闘に慣れて麻薬窟を苦も無く一人で制圧できるようになった。そうなるとダメージを受ける機会を増やすために剣を使わなくなり、鎧をはずすようになり……最終的に無手で殴り込みをかけるようになった。
そんなアジムの姿を、どこかで見ていたのだろう。
「この街でヤクザをやっているプレイヤーの人から接触があってですね。
旦那の喧嘩に惚れ惚れしやした。
是非ウチに草鞋を脱いでくだせぇ、みたいな感じで、
この宿を提供されたんです」
アジムは知らない話だが、一度も姿を見たことのないヤクザプレイヤーはシチリア島で古き良き極道プレイを楽しんでいるプレイヤーだ。シチリア島にいくつも存在するマフィアたちと血で血を洗う抗争を繰り広げている。自警費と売春宿の利益という、堅気の人を守り、堅気の人に迷惑をかけない収入で組織を運営するこのプレイヤーは堅気の人を食い物にする麻薬を嫌う極道だ。昔気質でもあるので、最終的に裸一貫で麻薬窟に殴り込みをかけるようになったアジムを高く買っていた。それに加えて、アジムが繰り返した麻薬窟襲撃でシチリア島における闇の住人達の勢力図に少なくない影響があった。その礼の意味もあっての高級宿提供になったのである。
「ふーん……。
まあ、安心して泊ってて、いいのかな?」
そのあたりの事情はわからないが、首をかしげながらもリリィはとりあえず納得しておいた。無料で泊っているのに絹らしき手触りのシーツに絶頂させられまくった挙句、おもらしまでしてしまったのは、ちょっと申し訳なかったが。
「いいと思いますよ」
アジムは頷きながら湯を浴びて泡を洗い流した後、リリィに目を向けた。上気して赤らんだ顔になっているのはしっかりと湯に浸かって温まった証拠だ。風邪をひかせる心配もないだろう。アジムが膝立ちになって手を差し出すと、意図を理解したリリィが笑みを浮かべながら両手を広げて抱き上げられる体制になった。
疲れ切ったリリィは夢も見ない深い眠りに身を浸した。その眠りは不思議と暖かで、安心する眠りだった。夢は見なくとも心地よさにリリィは我知らず寝顔を緩ませる。
そんな眠りから、リリィは香ばしい匂いに鼻をくすぐられて目を覚ました。何故か寒々しさを感じながら湿った性の臭いで満たされたベッドに頭をつけたままその匂いのもとを探して視線を巡らせる。下着だけを身に着けたアジムが香気の立ち上るカップを手に、カーテンを少しだけ開けた窓から外を見下ろしていた。
すでに日が昇ってしばらく経っているのか、カーテンから漏れる陽光は強い。アジムはただでさえ細い目をさらに細めて窓の外を見下ろしている。リリィに背を向けているアジムがカップを口に運ぶと、分厚く隆起した肩や背中の筋肉が動く。その動く芸術品とも思えるたくましい褐色の肉体に、抱かれた。まだ乾かない股間を思い、リリィは身じろぎする。
リリィの立てたわずかばかりの衣擦れの音に気付いたアジムが、カーテンを閉めながら振り返る。自分を見上げる寝起きで頭が回っていないらしいリリィのぼんやりとした目を見て、アジムは穏やかな笑みを浮かべた。テーブルに用意してあったリリィの分のカップにルームサービスで運んでもらった珈琲を入れ、たっぷりのミルクと砂糖を溶かしてベッドに横になったままのリリィに歩み寄る。
「おはようございます、リリィさん」
「おはよ、アジムくん」
力の入らない身体をどうにか起こしたリリィは、笑みを浮かべて言葉と一緒に差し出されたカップを受け取って口に運ぶ。アジムに部屋に連れ込まれてから口にしたものといえば回復薬と精液くらいだった身体に、甘い珈琲が染み入るようだ。
「おいし……」
そんな風に呟いてから「あれ?」とリリィは首を傾げた。
「今日ってもう4日目だっけ?」
「いえ、3日目ですよ」
現実の土曜の0時から部屋に連れ込まれて、今は日曜日の0時だ。部屋に連れ込まれてからの日数を訂正されたリリィは、
「週末まるごと監禁して陵辱してくれるんじゃなかったの?」
不満げに言うリリィに、アジムは頭を掻きながらリリィに告げた。
「リリィさんを弄るネタが尽きました」
アジムの言葉に、リリィが「えー」と声を上げる。
「完璧に心を折りつくしてくれたんだから、
3日目は私が奉仕させられる日にしてくれたらよかったのに」
アジムはリリィの言葉に苦笑する。リリィが言うように精液の味と匂いを覚えさせたリリィに奉仕させて言葉で弄るというのはアジムも考えついてはいたのだが、この二日間、ずっと泣き顔しか見ていないし、悲鳴しか聞いていない。テンションが上がって興奮しているときならともかく、一度頭が冷えてしまうと心苦しい。
リリィには笑っていてほしいし、優しくしたい。
アジムはリリィの隣にベッドへ腰かけた。アジムの体重を受けたベッドの反動で、リリィの身体が少し浮き上がる。珈琲がこぼれそうになってあたふたするリリィに謝ってから、アジムは少しばかり緊張で高鳴っている胸を抑え込んでリリィに言う。
「じゃあ、今日は、俺の好きにさせてもらって、いいですか」
ちょっと言葉をつっかえながらリリィに告げた。なにが「じゃあ」なのか自分でもわからなかったが、交換条件っぽくしたほうが断られにくいのではと思ったのだ。口に出してから姑息な感じがして、自分に対して嫌な感じを覚える。アジムは目を丸くして自分を見上げるリリィから視線を外して、顔をしかめた。
「いいよ! それじゃ、今日の私はアジムくんのものだよ!」
手元の珈琲を飲み干して、リリィはアジムの膝の上にごろりと仰向けに寝ころんだ。足首の枷からのびる鎖がしゃらしゃらと音を立てる。驚いたアジムがリリィに目を落とすと、リリィはアジムに微笑んだ。
「あ、でも、臭いのとか汚いのとか痛いのは、やめてほしいかな……?」
リリィの言葉にアジムは首を傾げた。
臭いの、汚いの、というのは、まあわかる。ただ、痛いのというのはどういうことか。
「俺、リリィさんにかなり痛い思いをさせている自覚はあるんですけど……。
リリィさんの言う「痛いの」ってどういうものなんです?」
「えーっと。
……切ったり焼いたり千切ったり?」
想定したものよりはるかにヘビーな回答で、アジムは「やるわけないです!」と全力で首を横に振った。たとえリリィに望まれたとしても、やれそうにない。
アジムは枕元に隠してあった足枷の鍵を取り出すと、リリィの左足首にある枷を外す。枷から解放された足首には青く痣ができていた。アジムが鎖をつかんでリリィを引きずったり、リリィ自身が逃げることもできないのに逃げ出そうとしたりで、鉄製の枷に何度もぶつけたからだろう。アジムはそこをそっと撫でる。
「痛いですか?」
「痣にはなってるけど、痛みはないよ」
くすぐったそうに言うリリィを、アジムは膝の上から抱き上げてそのままベッドから腰を上げた。アジムの腕に抱かれたリリィは、抱き上げられたことよりもその高さに驚いて慌ててアジムの首に腕を回して抱き着いた。
「とりあえず、風呂にしましょうか」
アジムはリリィの手にあったカップをベッドからの移動途中にあったテーブルに置かせ、そのまま隣にある脱衣所に足を運ぶ。もともと全裸だったリリィを腕に抱いたまま、バランスを崩すこともなく器用に足だけでパンツを脱衣所に脱ぎ捨ててアジムは浴室に足を踏み入れた。
浴室はメルフィナの塔のようなシャワー設備こそないものの、アジムが3人くらい入っても余裕のありそうな大きな浴槽と、湯を汲みだして使うための小さめの浴槽があった。浴槽にはどちらも湯が満たされていて、暖かな湯気で浴室を曇らせている。浴室の隅には小さな棚が備え付けられていて、石鹸や髪を洗う香油が用意されている。アジムは小さいほうの浴槽に歩み寄り、置いてあった手桶で少しだけ湯を汲んでリリィの手にかけた。
「熱くないですか?」
リリィが頷いてみせるとアジムは手桶にたっぷりと湯を汲んで、汗や精液、唾液に愛液、それに尿でまで汚れていたリリィの身体をざっと洗い流した。そして、少し綺麗になったリリィをゆっくりと大きい浴槽に浸からせた。
アジムはリリィに身体を温めさせている間に、自分は手桶で頭から湯をかぶると棚から石鹸を手に取った。アジムは頭に石鹸を直接こすりつけるようにして泡立てると、ぎょっとするリリィに気付くことなくがしがしと頭をこする。そうして頭と髪を洗うと、また頭から何度か湯をかぶり、ぶるぶると頭を振った。
「よし」
「よし、じゃないよ!
雑いよ、アジムくん!」
アジムは誤魔化すように曖昧に笑ってから、タオルを持ち込まなかったことに気が付いて脱衣所からタオルを何枚か手にして戻る。そのうちの一枚を使って頭を拭いて、残りは備え付けの棚にかけておく。手桶に湯を汲んで頭を拭いたタオルを浸し、湯を吸わせてから石鹸をこすりつけて泡立て、身体を洗う。
「アジムくん、この部屋……というか、このお宿、
すごく上等っぽいんだけど、普段からここに泊まってるの?」
リリィは湯船の縁に頬杖をついて身体を洗うアジムを見ながら問う。たくましい男性の身体が好みのリリィには中々の眼福だ。前を向いているのが照れるのか、アジムはリリィに背を向けて身体を洗っているが、陵辱されている間は見ることのできない強靭すぎる背筋や、引き締まった尻のえくぼなどは、たまらない。
「そうですね。この部屋が俺の定宿になってます」
「……ここ、すごく高くない?
お金、大丈夫なの?」
リリィは視線をアジムの身体から、備え付けの棚にずらした。そこに並んでいる髪を洗うための香油の瓶を見る。瓶のラベルはリリィもよく知っているメーカーのラベルだ。プレイヤータウンで流通しているもので、NPCでは絶対に手の出せないぜいたく品価格のものでもある。大きな部屋風呂があるのも驚きだが、街を見下ろす上層階に部屋風呂がついているのがさらにすごい。リリィが理解できる部分だけでも、一泊一万円以上しても不思議ではない。
アジムのお金の使い方を見れば、今までの収入が残念だったのはよくわかっている。そんなアジムがどうしてこんな宿に泊まっていられるのか。
「あー。俺、ここには無料で泊めてもらっているんですよ」
「えぇ!?」
驚くリリィにアジムはどこから説明したものかと思案してから、
「俺が<抵抗力>スキル持ってるのは知ってますよね?」
「うん。私の魔法が効きにくい原因の一つだから、
よーく知ってる」
リリィの言葉に苦笑してから、
「どうやって<抵抗力>スキルを上げるかは知ってます?」
「魔法を撃ち込まれたり、毒に冒されたりしたら上がるんだっけ?」
「そうです。スキルを高く上げようと思うと、
強力な魔法を連続で撃ち込まれたり、
強い毒にかかったままで我慢したりしないといけないんですよ」
「ふぅん?」
それがどうやったら宿の話につながるのかとリリィは首をかしげる。
「強力な魔法を連続で撃ち込んでくる相手なんて、
ダンジョンの奥底にしかいないじゃないですか?
俺、一人でゲームやってたんで、
ダンジョンに深くは潜れなかったんで、
毒を使う相手を探したんですよ」
しっかり身体をタオルで擦り、泡まみれになったアジムが手桶を手に取る。
「毒っていうと、
やっぱり盗賊とか暗殺者かなって思って、
この街に来たんです。
で、盗賊とか暗殺者が迎撃してくれるだろうと思って、
その辺の麻薬窟に殴り込みかけたんですよね」
「えぇ!?」
「いやー、最初のうちは返り討ちにあって、
何度も死にかけましたよ……まあ、死にませんでしたけど」
それでも何度も襲撃を繰り返すうちに<抵抗力>スキルが上がって毒が効きにくくなり、アジム自身が室内戦闘に慣れて麻薬窟を苦も無く一人で制圧できるようになった。そうなるとダメージを受ける機会を増やすために剣を使わなくなり、鎧をはずすようになり……最終的に無手で殴り込みをかけるようになった。
そんなアジムの姿を、どこかで見ていたのだろう。
「この街でヤクザをやっているプレイヤーの人から接触があってですね。
旦那の喧嘩に惚れ惚れしやした。
是非ウチに草鞋を脱いでくだせぇ、みたいな感じで、
この宿を提供されたんです」
アジムは知らない話だが、一度も姿を見たことのないヤクザプレイヤーはシチリア島で古き良き極道プレイを楽しんでいるプレイヤーだ。シチリア島にいくつも存在するマフィアたちと血で血を洗う抗争を繰り広げている。自警費と売春宿の利益という、堅気の人を守り、堅気の人に迷惑をかけない収入で組織を運営するこのプレイヤーは堅気の人を食い物にする麻薬を嫌う極道だ。昔気質でもあるので、最終的に裸一貫で麻薬窟に殴り込みをかけるようになったアジムを高く買っていた。それに加えて、アジムが繰り返した麻薬窟襲撃でシチリア島における闇の住人達の勢力図に少なくない影響があった。その礼の意味もあっての高級宿提供になったのである。
「ふーん……。
まあ、安心して泊ってて、いいのかな?」
そのあたりの事情はわからないが、首をかしげながらもリリィはとりあえず納得しておいた。無料で泊っているのに絹らしき手触りのシーツに絶頂させられまくった挙句、おもらしまでしてしまったのは、ちょっと申し訳なかったが。
「いいと思いますよ」
アジムは頷きながら湯を浴びて泡を洗い流した後、リリィに目を向けた。上気して赤らんだ顔になっているのはしっかりと湯に浸かって温まった証拠だ。風邪をひかせる心配もないだろう。アジムが膝立ちになって手を差し出すと、意図を理解したリリィが笑みを浮かべながら両手を広げて抱き上げられる体制になった。
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