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1章 暗い朝

14話

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「哀れだな、ヨータくん。」
「なんでっ…あなたが…」
「すまないが、私にも事情があってね…」
「(なんで能力が発動しない…?)あんた俺を本当に消すつもりなのか?」
「私も仕方がないんだ…こうするしか…
はぁぁぁ!」

(そういう事か…俺が…1回目なのか…)

     “呼び出しに応じるな”

…………………………………………

「依加さん、今日は学校行くんで家開けます」
「はーい、気をつけてね~」

 日が出ている内は優しい人だ。でも暗くなる前には帰らないといけない、じゃないと暴れてしまうかもしれないからだ

「行ってきます」

 自宅から学校なら足で行けるが、ここは依加さんの家だ。普段よりも30分も早く家を出た

「すっごいだる~い」
「昨日はご苦労さまだったな」
「おかげさまで頭が回んないわ。」
「普通は1回飛んだら日を開けるんだろ?」
「私は強いから、無理すれば日を開けないでも飛べるのよ…前も言わなかった?」

 一応の確認だ。アティにあまり負荷をかけるのも申し訳ないし、これからの移動は自分で動こう。

……………

「なんか久しぶりだなソラ」
「そうか?」
「そうだよ。そういえばソラが休んでた間にまた不審者が入ってきたんだよ」

 知ってる。というか俺が退治した。

「そういえばヨータは?」

なんか前も同じ事を言った気がする

「…ヨータってだれだ?」
「…え?」
「うちのクラスにヨータなんて子居ないよ」

 2人グルでドッキリでも仕掛けてきてるのか?

「ソラ、ちょっと来て。」

 アティに連れ出され、教室から離れる

「ヨータくんが消えた。」
「は?」

 俺は端末を確認する
 ヨータの名前が無い

「存在ごと消されたみたい」
「そ、そんな訳ないだろ?俺たちは覚えて…覚えて…?」
「やっぱりね…私犯人わかっちゃった。」
「誰だ?」
「あなたが初めて相手した亡者の見た目、思い出せる?」

(俺が学校の屋上で戦って…それから…冴島さんが来て…どうやって倒した?)

冴島茂さえじましげるの能力、<忘れられた痛みミッシングエイク>によって、その亡者もヨータくんも消されたの。」
「存在していたって事実ごと消す能力…」
「だから、貴方の思考の中にヨータくんのイメージが出てこなかった…」
「ヨータ…名前と、どんなやつだったか…それ以外何も分からない。でもなんだか…」

 なんだかすごく寂しくて、悲しい感じがした
 俺は一日を無駄に過ごしてしまった
 覚えてないのに辛い
 学校が終わっても、空いた穴は塞がらなかった

「ソラ、帰ろう?」
「…あぁ」

 何も知らなかった。
 今も変わらず、何も知らない。
 あいつの能力は発動しなかったのか?
 絶対大丈夫なはずじゃないのか?

「ソラくん大丈夫?」
「はい。」
「私でよければ相談に乗るからね。」
「…大丈夫なんですか?夜なのに」
「なんだか、貴方が可哀想だと思ってるうちに私も少し乗り越えれたかもしれないの…だから、ソラくんも頑張って乗り越えてね。」

 乗り越えろって言われても…
 俺にはどうにもできない

 結局何もしないまま、朝を迎えてしまった

「おはようソラ…なんだか暗い朝ね。」
「暗い朝…?誰かのポエムかなんか?」

 今の俺にはどうにも出来ない…
 今の俺には…

 だから、俺は…

「あ、いやなんでもない。なんかあんたが
くらーい感じだったから言ってみただけよ。」
「ふーん」
「あ、そういえば明日には引越しなんで今日の夜で内はお開きですよぉ。」
「随分と早いのね。」
「何か、心残りでも?」
「べ、別にっ」

(はあ、暗い朝ねぇ。)

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