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第十三話 休息
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優花と悠香が異世界にて再会を果たしたその日。
悠香に案内され、エドワードに護られながらウォーレンの屋敷へと向かった優花は、屋敷の使用人たちと挨拶を交わし、いつものように屋敷を訪れていたグレン、カレン、アイカの三人とも挨拶を交わした。
その後帰宅したウォーレンに、一先ず明日は第二王子と謁見し、魔術の勉強などは明後日から始めようと提案され、今日のところはひと先ず食事をとって休もうということとなった。
とはいえ、時刻はまだ昼を少し過ぎたところ。
優花とエドワードが使う部屋は使用人たちが準備をしている真っ只中。それならばと、優花と悠香はこれまでのことを話そうと、悠香の部屋で寛ぐことにした。
「本当に久しぶりだね……」
「うん。無事でよかった……」
部屋に元々あった二人掛けのソファに揃って腰掛け、しみじみと呟く優花に、悠香は心からの言葉を零す。
優花の両親も心配していたということを告げれば、彼女は今にも泣き出しそうな顔をし、しかし涙を堪えているようだった。
「私がちゃんとこの世界を守れば、私も悠香ちゃんも、ちゃんと元の世界に戻れるんだよね?」
「そうよ。その手伝いをするためにアタシはこっちに来たんだから」
「戻れなかったら神様だか何だか知らないけど、ぶん殴ってやるわ」と笑いながら悠香が言えば、不安そうにしていた優花もつられて笑う。
「それで、優花はこっちに来てからどうやって過ごしてたの?」
首を傾げる悠香に、優花はこちらの世界に来てからのことを話した。見知らぬ集落の傍にいたこと、そこで親切な親子の世話になったこと、リチャードという子どもの怪我を何かの力で治したこと、そこにエドワードがやってきたこと、それから、エドワードと共に王都へと向かうこととなったことと、その道中のこと。その全てを、悠香は相槌を打ちながら静かに聞いていた。
「随分大変だったのね。一人で知らない場所に来て、心細かったでしょ」
「うん……。でも、今は悠香ちゃんがいるから平気」
話を聞き終えた悠香の言葉に、優花は笑顔を向ける。それは心からの笑顔で、悠香は思わず彼女の頭を撫でた。
優花は嫌がる素振りを見せず、むしろ嬉しそうな顔をして、「悠香ちゃんは今まで何をしてたの?」と首を傾げた。
「アタシは、ハイウェルに連れて来てもらった時からこの屋敷に居たから、ずっとウォーレンたちに色々教えて貰ってたわよ」
剣術や魔術、それからこの世界の常識について。教わった知識をいくつか披露すれば、優花は尊敬の眼差しを向けた。
「流石悠香ちゃん! 私も悠香ちゃんみたいにできるかな……」
「優花なら大丈夫よ。アタシもついてるし」
再び不安げな表情を浮かべた優花に、安心させるように悠香が笑いかける。その言葉が優花にとっては何よりの励ましで、優花は力強く「うん」と頷いた。
「そういえば、魔王ってどういう人なんだろう……」
「さぁ? そもそも人なのかしらね」
ふとした疑問を抱き、二人は揃って首を傾げる。悠香のその言葉に、ウォーレンたちから何か聞いているわけではないということを優花は理解した。
「その辺は明日になれば分かるのかもしれないわね」
「そうだね。色々、ちゃんと教えて貰わなきゃ……」
すべては、二人で元の世界に戻るために。いつになく真剣な表情をする優花の手を握り、「無茶しないようにね」と悠香が告げる。「悠香ちゃんもね」と返され、二人は揃って小さく笑った。
それから他愛のない話をして、優花の部屋の用意が出来た、と使用人が告げに車で、二人はずっと話し込んでいた。
優花が自分の部屋となる部屋へと向かった後、夕食で再び顔を合わせ、そこから、今度は優花の部屋で二人で過ごす。離れていた時間を埋めるように。束の間の安息を堪能するように。
そうして優花の頼みでその夜は一緒に寝ることとなり、翌朝、二人は同じベッドの上で目を覚ますのだった。
悠香に案内され、エドワードに護られながらウォーレンの屋敷へと向かった優花は、屋敷の使用人たちと挨拶を交わし、いつものように屋敷を訪れていたグレン、カレン、アイカの三人とも挨拶を交わした。
その後帰宅したウォーレンに、一先ず明日は第二王子と謁見し、魔術の勉強などは明後日から始めようと提案され、今日のところはひと先ず食事をとって休もうということとなった。
とはいえ、時刻はまだ昼を少し過ぎたところ。
優花とエドワードが使う部屋は使用人たちが準備をしている真っ只中。それならばと、優花と悠香はこれまでのことを話そうと、悠香の部屋で寛ぐことにした。
「本当に久しぶりだね……」
「うん。無事でよかった……」
部屋に元々あった二人掛けのソファに揃って腰掛け、しみじみと呟く優花に、悠香は心からの言葉を零す。
優花の両親も心配していたということを告げれば、彼女は今にも泣き出しそうな顔をし、しかし涙を堪えているようだった。
「私がちゃんとこの世界を守れば、私も悠香ちゃんも、ちゃんと元の世界に戻れるんだよね?」
「そうよ。その手伝いをするためにアタシはこっちに来たんだから」
「戻れなかったら神様だか何だか知らないけど、ぶん殴ってやるわ」と笑いながら悠香が言えば、不安そうにしていた優花もつられて笑う。
「それで、優花はこっちに来てからどうやって過ごしてたの?」
首を傾げる悠香に、優花はこちらの世界に来てからのことを話した。見知らぬ集落の傍にいたこと、そこで親切な親子の世話になったこと、リチャードという子どもの怪我を何かの力で治したこと、そこにエドワードがやってきたこと、それから、エドワードと共に王都へと向かうこととなったことと、その道中のこと。その全てを、悠香は相槌を打ちながら静かに聞いていた。
「随分大変だったのね。一人で知らない場所に来て、心細かったでしょ」
「うん……。でも、今は悠香ちゃんがいるから平気」
話を聞き終えた悠香の言葉に、優花は笑顔を向ける。それは心からの笑顔で、悠香は思わず彼女の頭を撫でた。
優花は嫌がる素振りを見せず、むしろ嬉しそうな顔をして、「悠香ちゃんは今まで何をしてたの?」と首を傾げた。
「アタシは、ハイウェルに連れて来てもらった時からこの屋敷に居たから、ずっとウォーレンたちに色々教えて貰ってたわよ」
剣術や魔術、それからこの世界の常識について。教わった知識をいくつか披露すれば、優花は尊敬の眼差しを向けた。
「流石悠香ちゃん! 私も悠香ちゃんみたいにできるかな……」
「優花なら大丈夫よ。アタシもついてるし」
再び不安げな表情を浮かべた優花に、安心させるように悠香が笑いかける。その言葉が優花にとっては何よりの励ましで、優花は力強く「うん」と頷いた。
「そういえば、魔王ってどういう人なんだろう……」
「さぁ? そもそも人なのかしらね」
ふとした疑問を抱き、二人は揃って首を傾げる。悠香のその言葉に、ウォーレンたちから何か聞いているわけではないということを優花は理解した。
「その辺は明日になれば分かるのかもしれないわね」
「そうだね。色々、ちゃんと教えて貰わなきゃ……」
すべては、二人で元の世界に戻るために。いつになく真剣な表情をする優花の手を握り、「無茶しないようにね」と悠香が告げる。「悠香ちゃんもね」と返され、二人は揃って小さく笑った。
それから他愛のない話をして、優花の部屋の用意が出来た、と使用人が告げに車で、二人はずっと話し込んでいた。
優花が自分の部屋となる部屋へと向かった後、夕食で再び顔を合わせ、そこから、今度は優花の部屋で二人で過ごす。離れていた時間を埋めるように。束の間の安息を堪能するように。
そうして優花の頼みでその夜は一緒に寝ることとなり、翌朝、二人は同じベッドの上で目を覚ますのだった。
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