月の石

むう

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タイムカプセル1-7

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蓮は視線を私からお地蔵さまに変える。



きっと蓮にもそう見えたのだろう。



「ちょっと見てくる」と言って、私の頭を撫でてお地蔵まさに近づいていく蓮。




「おい、蓮?」


「帰るって言ってるのにどうしたのよ?」




不思議がっている恭たち。


怖いのに、私はどうしても気になって、蓮の後を追う。




「ちょ、心結まで?」


「さっき行ったんじゃないのかよ~?」




結局、蓮を先頭に、みんなでお地蔵さまの方へ向かう。


私は蓮の後ろに隠れながら、ちらちらとお地蔵さまを見る。


やっぱり仄かに輝いて、思わず息を呑む。




「なんだ、これ…」




後を追ってきた恭たちが、目を見開きながら驚く。




「…みんなも、光って見える?私の勘違いじゃない?」


「いや、うん…普通に光って見える」


「うちも光って見えるけど、意味わかんない。さっきこんなんじゃなかったよね?」


「悪戯ってわけでもなさそうだしな。ここ、俺たち以外居ないし」


「心結が見た時には既に光ってたんだよね?」


「うん…」


「心結が聞いた声と言い、何が起こって「なぁ、これ見て」」




蓮の視線の先、お地蔵さまが立っている真後ろには、ビー玉と同じくらいの大きさをした石が偶然にも6つ、色とりどりに光り輝いていた。


石から放たれる光は、まるで星と同じような輝きをしていて、思わず見惚れてしまう自分がいた。



お地蔵さまが光って見えたのは、きっとこの石が原因だったんだ…





「これ持てんの?」


「持つの?!嘘でしょ、」


「害はなさそうだけど…何かあったら怖いよね…」


「―俺、持ってみるわ」


「止めなって!何かあってからじゃ遅いんだよ?!」


「でも気になるしさ。」




そう言って樹希は躊躇うことなく、きらきらと光る石を1つ触って確かめる。




「平気だわ。熱くもないし…ただ、月か星の光で光ってるっぽいな」



“ほら”と、樹希は私の掌に光る石を乗せる。



樹希の言う通り、光る石を手で覆い被せるとただの石に変わり、月や星に翳せば、ただの石から光る石へと変わった。


残りの光る石も、私が持ってる光る石同様、月や星以外の光には反応することはなかった。




「石が光るのも気になるけど、俺たち人数分あるのも引っかかるよな 」


「うん…偶然にしても出来過ぎ」


「心結に起こった不思議な出来事もそうだよね」


「でも、これが俺たちの前に現れたって事は、良くも悪くも何か理由があるのには違いないよな?」


「確かにそうかも。誰かの声が聞こえて、お地蔵さまを見つけて、この光る石を見つけて…」


「しかも6個!」


「ねぇ、記念に持って帰ろうよ!」


「この石を?」


「そう!これがあればさ、今日の事を思い出せるし、会う機会がうんと少くなっても、みんなのこと死ぬまで絶対忘れないでしょ?(笑)」




私がそう言って笑えば、みんなは「忘れたくても忘れられない(笑)」と笑い返してくれた。




そして一頻り笑った後に押し寄せる焦り。




腕時計を確認すると、針は9時40分を指していた。





「「 呑気に笑ってる場合じゃない!」」





私たちは、1人1つずつ光る石を手に持ち、急いで来た道に戻り、草木をかき分け、いつもの裏山へ続く砂利道を通り抜け、100段の階段を駆け下りる。


上りよりも下りの方が傾斜を感じやすい為、普段なら「手摺に掴まらなきゃ無理!」と言う悠が、手摺も使わずに下りていく姿は貴重且つ、そこまで急がないと間に合わないという事を物語っていた。


100段の階段を下り終わると、沢山の屋台で賑わっていた境内の広場は、撤収作業が既に済んでいて、ぱらぱらと人が居る程度だった。


そんな景色を横目に、私たちは小走りで井國神社を後にする。





「ここまで来れば間に合う、っしょ…」




家まであと数百メートルといったところで、私たちは息を整えるべく立ち止まる。




「だな…悠、大丈夫か?今までに見たことの無い素早さだったけど(笑)」


「ぜぇぜぇ…へい、きっ…ぜぇぜぇ」


「いや、全然平気じゃねぇ(笑)」



樹希はそう言って近くにある自販機でお水を買い、悠に手渡す。




「ありがとう」と息を切らしながらしゃがみ込む悠。





何故か一貫性がある不思議な出来事。



この時、私は日本昔ばなしの笠地蔵を思い出した。




貧しいけれど心優しい老夫婦が、町から家に変え途中、頭に雪を積もらせているお地蔵さまに売れ残った笠を被せてあげて、そして最後にはお地蔵さまから恩返しを受けるという話をー



ポケットに入れていた光る石を月に翳す。



もし、この光る石がお地蔵さまから私たちへの贈物で、私たちを繋いでくれるものだったとしたらと思うと、嬉しい気持ちで心が溢れた。




――それから、小学校を卒業するまで私たちは、暇さえあれば光る石について詳しく調べるために図書館に通いつめたけれど、光る石について記載されているものはなった。



その中で分かったことは、その光る石は新月の日にしか光らないという観察結果だけだった。


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