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恋?
3-12
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「沙奈ちゃん、水~~…って、いないっけな…」
裕大に、沙奈ちゃんが臨時マネージャーではなくなったと告げられてから、皆は“沙奈ちゃん”という回数が増えていった。
そして―
沙奈ちゃんがいなくなった事によって、俺らの歯車は少しずつおかしくなっていた。
「悼矢、お前沙奈ちゃんと仲良かったんだから、何とかしてくれよー!」
「んなこと言ってもなぁ」
「あ、准は中学の時から知ってたんだよな?言ってみてくれよ!」
「馬ぁ鹿。俺だけが頼んでもしょうがねぇだろ?頼むならお前らも行かなきゃだろ」
「ん~・・・」
最近、裕大が休憩時間になると、誰かに電話しているのが気になっている。
前はあんまり携帯を弄らなかった裕大が、携帯を触るようになっていた。
「なぁ、裕大の奴また電話してんの?」
「・・・そーみてぇだな」
暑さを凌ぐために、皆家から持参してきた団扇でパタパタと仰ぐ。
近くに居た奴らと一緒に裕大を見ていると、心配そうな顔をして電話をしている。
准も電話している理由は分からないらしい。
聞いてみようかと思ったけど、休憩中、ギリギリの時間帯まで電話をしているから、なかなか話を切り出せないでいる。
そう考えている時、裕大の電話は終わってこっちに向かってきた。
「裕大、最近電話する機会多くね?何かあったのかよ?」
「何かあったわけじゃねぇけど…ここん所、俺たち家に帰るの遅いだろ?沙奈が心配でさ」
「沙奈ちゃん?何で?」
裕大はドリンクを飲んで、一息付く。
「家庭の事情だよ。お前らが心配する事じゃねぇから」
「んだよ、それー」
他人の事を詮索するのは、あまりよくない事は分かっている。
でも、気になるものは気になる。
まぁ、話したくないから話さないんだから、しょうがねぇけど。
「あ、裕大「悼矢~~!!」
俺が裕大に話しかけようとした時、後ろから渡邊の声が聞こえた。
渡邊を見た瞬間、裕大の顔が変わる。
・・・?
「ーなした?」
「コーチ、今から用事だから後は任せるって。で、6時には切り上げろだって」
「あ、そうなん?裕大、この後のメニュー、」
裕大は、険しい顔をしていた。
これまでには見た事のない表情で。
「な、何、んな顔してんだよ・・・?」
驚きを隠せない弘樹が裕大の肩に手を置いて言う。
何を思っているのだろうか。
すぐに思った事を言葉にして言うはずの裕大が何も話さない。
「裕大・・・?」
「なぁ・・・」
俺が話しかけると、裕大はゆっくり口を開いた。
「悼矢に言う前に、まず誰に言うべきか分かってる?俺が遠くにいたならしょうがねぇよ。けど、近くにいるなら、主将の俺に言うべきじゃねぇの?」
「ご、ごめん…悼矢が最初に目に入っちゃってー…」
「それじゃ…しょーがねー、よな。裕大、そんな顔してっと沙奈ちゃんにも怖がられるぞ?」
どうにか宥めようと努力はしたものの、裕大の怒りはおさまらない。
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