それは、恋でした。

むう

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夏合宿

2-4

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***


「ホース?」

「はい、グラウンドに土埃が舞ってて」

「そりゃ、ホースじゃ時間かかるなぁ」



用務員室にホースを借りに来たあたしは、用務員のおじさんと話していた。


「やっぱり、時間かかりますか?」


「うーん・・・よし、ジェットホース使うか!」



ジェットホースと言うのは、体育の先生がよく乾いたグラウンドに使う大きい水車みたいなものだ。



「ほ、ホントですか!?」

「この暑さじゃサッカー部も大変だからね。すぐもて来るからお譲ちゃんはグランドに戻ってな」

「あ、ありがとうございます!!」




あたしはペコリと用務員さんにお辞儀をして駆け足でグラウンドに戻る。


グラウンドに戻ると、日陰で休憩しているサッカー部員の姿が。
あたしの姿に気づいたお兄ちゃんがスポーツドリンクを持って、駆け寄ってくる。




「お前、何処行ってたんだよ!?こんな暑いのに」


「あのね?さっき用務員さんにここの水撒きを頼みに行ってて」

「水撒き?」

「うん。グランドからっからだし、お昼からはもっと熱くなるから今のうちにって思って…」



「おーい、お譲ちゃん持ってきたよ」


お兄ちゃんと話している時、用務員さんがホースを持ってきてくれた。




「ありがとうございます!」






***




ようやく、お昼の時間がやってきた。

ずっと立ちっぱなしだったあたしはやっと座る事が出来た。

用務員さんが水捲いてくれたおかげで、その後の練習は少しグラウンドに冷たいか風を吹かせてくれた。



よかった、熱中症になる人が出なくて。


ふぅ、と1つため息を付くとあたしの所に渡邊先輩が近づいてくる。





「沙奈ちゃん!」

「はい。どうしましたか?」

「買い物行くよ!」

「か、買い物??」




買い物に行くのはいいけど、あたしまだ休憩してない。

ちょっとでも休みたかったんだけど…



鞄から出していたお弁当をまた片づけてあたしは立ち上がる。





「買い物はこの長い休憩中に行かないといけないの!で、終わったらご飯」


「そうだったんですか…じゃぁ」



そう歩き始めた瞬間、あたしは少しだけクラっ、と頭が回った。





あ、れ・・・?





あたしは机に寄りかかる。





「沙奈ちゃん?」

「へ、平気です・・・」

「平気っぽく見えねぇけど?」

「え・・・?」





後ろを振り返ると、そこには悼矢さんがいた。




「少しくらい休まねぇと。渡邊、沙奈ちゃんまだ慣れてねぇんだから、あれこれ仕事させたら大変になるだろ?」


「あ、」



悼矢さんは、あたしを無理やり座らせて、持っていたスポーツドリンクを突き出す。




「水分とっとかねぇと」



あたしはそのスポーツドリンクを貰う。


また、気を遣わせてしまった。



悼矢さんは、いつも周りを見ているんだな。




じゃなきゃ、あたしがこうしてフラフラしてるの分かるはずないもん。




「沙奈ちゃん、気付かなくてごめんね?あたし沙奈ちゃんが仕事テキパキやってくれるかつい…」


「い、いいえ!あたしこそ、自己管理が不十分で…」



あたしは首を大きく横に振る。


渡邊先輩は良かったと、胸を撫で下ろしていた。


渡邊先輩も、本当にいい人だな。


自分が悪い事をしたらすぐに相手に謝って。





「悼矢、こんな事にいたのかよー!」

悼矢さんを探しに来たお兄ちゃんがお弁当を持ちながらこっちに駆け寄ってくる。




「沙奈もいんじゃん!弁当一緒に食おー!」

「今から夕飯のお買い物に行かないとなの」

「マジで!?って、お前ちょっと顔青くね?大丈夫かよ?」



机にお弁当を置いてあたしの頬を触る。




そんなに、心配しなくてもいいのに、お兄ちゃんは本当心配性だなぁ。




「さっき俺が、冷たいもんあげたから平気だって。な、沙奈ちゃん」

「は、はい!もうすっかり元気で…お兄ちゃんもう大丈夫だから!渡邊先輩行きましょう。」

「う、うん」





あたしは椅子から立ちあがって渡邊先輩について行くように歩く。






その時、あたしの頭に帽子が被される。





へ・・・!?



吃驚して上を向いてみると、そこには悼矢さんの顔が。




ち、近っ・・・!!




「買い物行ってる最中に、たおられでもしたら困るしな。俺の帽子被って行って?」

「だ、だいじょ「後で、返してくれればいいからさ。な?」



あたしの言葉を遮って、そしてお兄ちゃんの所へと戻って行く。




あたしは悼矢さんの後姿を見つめながら、ただ1人ドキドキしていた。








その後ろで、渡邊先輩がどんな顔でいたかなんか知らずに―
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