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幼稚園バスの置き去り死亡事故について
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Twitter復活したので、こちらの日記(?)はずっと更新しないまま放置していましたが、ちょっと話したいことが出てきたので、再開したいと思います。
さて、その話したいことというのは、先日起きた痛ましい出来事についてです。
幼稚園バスの園児置き去り事故。
この事故について、園や園長に対して強い怒りを覚え、彼らのみを強く批判している方には、不快な内容になるかもしれません。そういう方に苦言を呈す内容だからです。
さて、ではその「苦言」とは何なのか。それは、当事者や当該幼稚園のみのせいにしていては、また同じ事故が繰り返されてしまいますよ、ということです。
私の子ども――ここではりんごちゃんと呼んでいますが、その子は昨年まで幼稚園バスに乗って通園していました。3年間安全に園バスにお世話になり、卒園することができています。もちろん、私も毎日バス乗り場まで行き、見送ったりお迎えしたりしていました。ですから、幼稚園バスが通常、どんな風に運行されているのかは分かります。
その私から見て、当該幼稚園は安全な運行が難しい状況にあるのだろうと、すぐに推察されました。園が会見を行う前の第一報から「おかしい」と思ったのです。
何がおかしいか。
まずは園長が代理でバスを運転していた点です。
普通は体調不良などでバスの運転手が欠勤した場合に備えて、代理の運転手がいます。少なくとも、私の娘の通っていた幼稚園はそうでした。園長が運転してくることなど、有り得ません。園長は園長で、始業時にはミーティングなどを行い、その日一日の流れを確認するでしょうから(園でそういう風景を見た事があるし、勤めていた学習塾でも始業時や子どもが来る前にはミーティングを室長主導で行っていました。それが普通だと思います)。
さらに、引率として同乗していたのは70代の派遣社員の女性ということでした。これも異常です。
通常、バスの運転手と共に、一人、あるいは二人程度の大人が引率して子どもを乗せていきますが、その役割を果たすのは幼稚園の先生、普段園児たちと接している先生です。二人の時は一人が子どもたちといつも接している先生で、もう一人がこれから新しく園に入ってくる先生、というケースがほとんどです。こういうところから子どもに慣れていく&バスの送迎の仕方を学ぶということでしょう。
登園する子どもたちを乗せる際は、「○○ちゃん、おはよう」と、一人一人名前を呼んで挨拶をしてくれます。そして誰がどの停留所で乗るかをまとめた表が常備されているようで、誰か遅れている時には、表を見て確認し、出発の時間になるまで待ってくれています。娘から聞いた話によれば、バスの中でも点呼して全員いるかどうかの確認も行っているそうです。
これが私の知っている通常の園バスの様子です。
では、問題の当該幼稚園に戻ります。
前述のように、園バスを園長が代理で運転し、70代の派遣社員が引率しているのは、異常です。そして、どうしてこんな異常な運行の仕方をしなくてはならなかったのかは、想像に難くありませんよね。人がいないからです。幼稚園で働く人が、不足しているのです。だって、代理の運転手が存在すれば、その人が運転するでしょう? 幼稚園の先生が乗れるなら、わざわざ70代の派遣社員などに頼らないでしょう? いないからこそ、こうした危険な運行の仕方しかできなかったに違いありません。
そう思っていたら、やはり会見で語られたのは「人手不足」でした。
これに対して、「言い訳」とする意見が驚くほど多いです。しかし、本当にそうでしょうか?
確かに、人手不足と確認の漏れは一見すると関係なさそうにも感じられます。人が足りていなくとも、バスの中をちょっと確認するくらいできるだろうと。
けれど、よく考えてみてください。人手が足りない状態であれば、そこで働く少数の人間の負担が分散されず、一人一人の業務が膨れ上がります。その状態がずっと続いていれば、当然疲労が蓄積していきますね。そして疲れていれば、注意力は散漫になります。つまり、小さなミスをしやすくなるのです。
さらに言えば、バスに乗っていたのはどちらも70代。これだけの高齢であれば、若い頃よりも認知能力が低くなってくるのが普通です。普段、シャキシャキしていても、いざと言う時に物を忘れたり、抜けが出る。そういう高齢者は多いはずです。そして高齢の人だけで運行しなくてはならなかったのも、人手が足りないからです。
これでも、人手不足は原因の一つとは言えない、「ただの言い訳」なのでしょうか? 間接的な原因にすら、なっていないと??
「言い訳だ」と言い張る人がいるのなら、事実へしっかり目を向けてくださいと言う他ありません。
前回、起こってしまった園バス置き去りによる死亡事故も、今回の死亡事故も、人手の足りない園で起こっているのです。悲劇的な2つの類似した事故に大きな共通点があるならば、それが原因ではないかと考え、対策するのがあるべき姿ではないのでしょうか。そこから目を背けていては、今後、同じような幼稚園、保育園で、同じ事故が起きてしまいます。
今回、当該幼稚園が引き起こした事故は許されないものです。当然、園長や派遣社員の確認漏れも許されないことです。しかし、「許されないこと」ではあっても、「理解はできること」です。人手が足りずにそこで働く人の疲労が溜まりミスが起こりやすい状況だったというのも、高齢者の認知能力が低くなっていることも、理解はできるでしょう? 理解できるということは、何かしらそれを誘発する原因があったということです。
許されないことを誘発してしまったのが何なのか? そこへ目を向けなければ、根本的な原因が解決されません。個々の幼稚園、保育園に丸投げにしても、そもそもとして人手が足りなければどうにもならないというところも出てくるでしょう。私の娘の通っていた幼稚園のように、ある程度大きなところならいいですが、少人数の小さな園は難しい部分も出てくるはずです。
幼稚園や保育園で人手が足りていない。
痛ましい事故を引き起こすこの問題は、社会問題として捉え、社会全体で解決へ向けて動かなければならないのではないでしょうか。
そのための具体的な対策について、話題になっている方法など含め、次話で書いていきたいと思います。
さて、その話したいことというのは、先日起きた痛ましい出来事についてです。
幼稚園バスの園児置き去り事故。
この事故について、園や園長に対して強い怒りを覚え、彼らのみを強く批判している方には、不快な内容になるかもしれません。そういう方に苦言を呈す内容だからです。
さて、ではその「苦言」とは何なのか。それは、当事者や当該幼稚園のみのせいにしていては、また同じ事故が繰り返されてしまいますよ、ということです。
私の子ども――ここではりんごちゃんと呼んでいますが、その子は昨年まで幼稚園バスに乗って通園していました。3年間安全に園バスにお世話になり、卒園することができています。もちろん、私も毎日バス乗り場まで行き、見送ったりお迎えしたりしていました。ですから、幼稚園バスが通常、どんな風に運行されているのかは分かります。
その私から見て、当該幼稚園は安全な運行が難しい状況にあるのだろうと、すぐに推察されました。園が会見を行う前の第一報から「おかしい」と思ったのです。
何がおかしいか。
まずは園長が代理でバスを運転していた点です。
普通は体調不良などでバスの運転手が欠勤した場合に備えて、代理の運転手がいます。少なくとも、私の娘の通っていた幼稚園はそうでした。園長が運転してくることなど、有り得ません。園長は園長で、始業時にはミーティングなどを行い、その日一日の流れを確認するでしょうから(園でそういう風景を見た事があるし、勤めていた学習塾でも始業時や子どもが来る前にはミーティングを室長主導で行っていました。それが普通だと思います)。
さらに、引率として同乗していたのは70代の派遣社員の女性ということでした。これも異常です。
通常、バスの運転手と共に、一人、あるいは二人程度の大人が引率して子どもを乗せていきますが、その役割を果たすのは幼稚園の先生、普段園児たちと接している先生です。二人の時は一人が子どもたちといつも接している先生で、もう一人がこれから新しく園に入ってくる先生、というケースがほとんどです。こういうところから子どもに慣れていく&バスの送迎の仕方を学ぶということでしょう。
登園する子どもたちを乗せる際は、「○○ちゃん、おはよう」と、一人一人名前を呼んで挨拶をしてくれます。そして誰がどの停留所で乗るかをまとめた表が常備されているようで、誰か遅れている時には、表を見て確認し、出発の時間になるまで待ってくれています。娘から聞いた話によれば、バスの中でも点呼して全員いるかどうかの確認も行っているそうです。
これが私の知っている通常の園バスの様子です。
では、問題の当該幼稚園に戻ります。
前述のように、園バスを園長が代理で運転し、70代の派遣社員が引率しているのは、異常です。そして、どうしてこんな異常な運行の仕方をしなくてはならなかったのかは、想像に難くありませんよね。人がいないからです。幼稚園で働く人が、不足しているのです。だって、代理の運転手が存在すれば、その人が運転するでしょう? 幼稚園の先生が乗れるなら、わざわざ70代の派遣社員などに頼らないでしょう? いないからこそ、こうした危険な運行の仕方しかできなかったに違いありません。
そう思っていたら、やはり会見で語られたのは「人手不足」でした。
これに対して、「言い訳」とする意見が驚くほど多いです。しかし、本当にそうでしょうか?
確かに、人手不足と確認の漏れは一見すると関係なさそうにも感じられます。人が足りていなくとも、バスの中をちょっと確認するくらいできるだろうと。
けれど、よく考えてみてください。人手が足りない状態であれば、そこで働く少数の人間の負担が分散されず、一人一人の業務が膨れ上がります。その状態がずっと続いていれば、当然疲労が蓄積していきますね。そして疲れていれば、注意力は散漫になります。つまり、小さなミスをしやすくなるのです。
さらに言えば、バスに乗っていたのはどちらも70代。これだけの高齢であれば、若い頃よりも認知能力が低くなってくるのが普通です。普段、シャキシャキしていても、いざと言う時に物を忘れたり、抜けが出る。そういう高齢者は多いはずです。そして高齢の人だけで運行しなくてはならなかったのも、人手が足りないからです。
これでも、人手不足は原因の一つとは言えない、「ただの言い訳」なのでしょうか? 間接的な原因にすら、なっていないと??
「言い訳だ」と言い張る人がいるのなら、事実へしっかり目を向けてくださいと言う他ありません。
前回、起こってしまった園バス置き去りによる死亡事故も、今回の死亡事故も、人手の足りない園で起こっているのです。悲劇的な2つの類似した事故に大きな共通点があるならば、それが原因ではないかと考え、対策するのがあるべき姿ではないのでしょうか。そこから目を背けていては、今後、同じような幼稚園、保育園で、同じ事故が起きてしまいます。
今回、当該幼稚園が引き起こした事故は許されないものです。当然、園長や派遣社員の確認漏れも許されないことです。しかし、「許されないこと」ではあっても、「理解はできること」です。人手が足りずにそこで働く人の疲労が溜まりミスが起こりやすい状況だったというのも、高齢者の認知能力が低くなっていることも、理解はできるでしょう? 理解できるということは、何かしらそれを誘発する原因があったということです。
許されないことを誘発してしまったのが何なのか? そこへ目を向けなければ、根本的な原因が解決されません。個々の幼稚園、保育園に丸投げにしても、そもそもとして人手が足りなければどうにもならないというところも出てくるでしょう。私の娘の通っていた幼稚園のように、ある程度大きなところならいいですが、少人数の小さな園は難しい部分も出てくるはずです。
幼稚園や保育園で人手が足りていない。
痛ましい事故を引き起こすこの問題は、社会問題として捉え、社会全体で解決へ向けて動かなければならないのではないでしょうか。
そのための具体的な対策について、話題になっている方法など含め、次話で書いていきたいと思います。
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