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帰路の事件
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風がビュンッと強く吹き、モコモコした上着の下にまで鋭い冷たさが入ってきた。両腕に何かを抱くみたいにして、体をさする。
「寒いね」
私は、清水さん、真美ちゃんと並んで歩いていた。清水さんは「うん」と言い、真美ちゃんは「それに重いし」とため息交じりの声を出す。今日はいくつかの教科で宿題にドリルが出たから、それを持ち帰らなくてはならなかった。真美ちゃんの言う通り、背中のランドセルは普段より重い。その上こんなに寒いのでは、「寒い」か「重い」しか言葉が出ない。
なんかおばあちゃんみたいだな、と思ってそう言ってみたら、真美ちゃんが声を上げて笑った。
「じゃあ、かなばあちゃんに、真美ばあちゃんだ」
それから、真美ちゃんは清水さんの方を見て、
「それに、由香ばあちゃんだね」
清水さんの顔が、急にパッと赤くなった。うん、と答えて彼女は下を向いたけれど、頬は幸せそうにゆるんでいた。
由香ばあちゃんか。私も頭で言葉にした。今まで清水さんのことを当たり前に「清水さん」と呼んでいたけれど、名前で呼ぶのもいいかもしれない。いきなり「由香ちゃん」と言うのはお互いに少しむずがゆい気がするから「由香ばあちゃん」から入ってみるとか。それで「由香ちゃん」って呼べるようになるといいな。
そんな風に考えて歩いていると、後ろの方から声がした。悪意とからかいがたっぷり込められた、張りのある男子の声だった。
「清水さーん! 榎本、走って帰ってったけど、追いかけなくていいのー?」
三人揃って振り返ると、何かが飛んできて清水さんの顔に当った。
「大丈夫!?」
私と真美ちゃんの声が重なった。清水さんは両手で隠しつつ顔に付いた泥を払っていた。へいき、というかすかな声を聞いた途端、お腹の底から怒りが突き上げてきた。
「何すんのよ!」
私の怒声は空気を裂いて、真っ直ぐに飛んでいった。それに反撃するみたいに、今度は私の方へ泥団子が飛んでくる。今日、理科で地層の授業があり、外に出て土をいじった。こいつらは、その時に作ったものを持ってきたのだ。こんなことのために。
私は泥を避けたけれど、別の方から投げつけらたものが、肩に当たってしまった。湿った土の臭いが鼻につく。これを顔面に受けてしまった清水さんは、もっと嫌な気分になっただろう。
「あんたらサイテー! こんなことして、何が面白いの?」
叫んでも、返ってくるのは言葉ではなく泥団子攻撃だった。ドン、と胸に当たって玉が崩れる。
「山崎もさあ、榎本みたいな犯罪者とつるんでるとか、お前も同類じゃねぇ?」
男子のうちの一人が、また声を張った。犯罪者? 最近、男子が騒いでる、あれのこと? 何言ってんの、ほんと、バッカじゃないの。
男子からのこんな扱いを受けたことがない真美ちゃんは、オロオロした様子で清水さんの顔に付いた土くれをハンカチで払ってあげていた。その真美ちゃんの方にも、泥のかたまりは飛んでいく。狙っているのか、コントロールが悪いのかは分からないけど。
いい加減にしてよ、とまた叫ぼうとした時、私の前に、私たちよりずっと大きな誰かが走り込んできた。
「てめぇら調子こいてんじゃねぇぞ!」
凄味のきいた太い声が響いた。言葉の後にまで、周囲の空気がジィンと揺れている。泥団子攻撃がピタリと止まった。それから、遠くの男子たちの気配が、言葉もなくそそくさと消えた。
その人が来た瞬間、私はゴリラだと思った。でも、目の前の人物の口調も声も後ろ姿も、彼のものではなかった。だけど、声に聞き覚えはある。誰だろうと耳の底に残っていた声と今の声を重ねようとしていると、その人が振り返った。
「平気か?」
ピアスだった。でも、記憶にある彼はとは少し違う。前は輪っかのピアスを一つ付けているだけだったけれど、目の前のピアスのピアスはもっと増えていて、耳を何度も串刺しにしているみたいに見えた。それに髪も赤く染めている。
はい、と気づいたら答えていた。まさかこの人がこんなところで私を助けてくれるなんて、思いもしなかった。思うわけがない。
ピアスがこっちへ歩み寄ってきた。彼に悪意がないことは分かっていたけれど、心の表面に鳥肌が立つ時みたいなザワザワした感触が走り、ちょっと後ずさりそうになった。
「平気か? お前ら、榎本の友だちだろ。あん時は――」
その時、ピアスを遮って、またどこかから声が飛んできた。聞き慣れた、声が。
「何やってんだ!」
声のした場所を探して辺りを見回すと、こちらへ駆けてくるリッキーの姿を見つけた。目には真剣な怒りがこもっている。さっきの声も攻撃的な響きを持っていた。違うよ、と私が言うより先に、リッキーはピアスに飛びかかってしまった。
いきなり突進されて、ピアスは後ろへよろけたけれど、ぐっと足をふんばって倒れはしなかった。それでも、リッキーはピアスにつかみかかったまま、彼の胸やお腹を力いっぱい殴りつけていた。
「リッキー、違うよ!」
私が叫んで止めに入っても、リッキーはやめない。我慢の限度が来たのか、とうとうピアスはリッキーを突き飛ばした。
仰向けに倒れたリッキーに、今度はピアスが馬乗りになり、彼の顔面を殴った。メガネが割れて、破片が顔に散らばる。そこへ音がなるほど強く、またピアスが拳を打ち下ろした。
「やめて!」
私はピアスの腕をつかんだ。止められるとは思っていなかった。私の手なんて簡単に振り払って、彼はリッキーを殴り続けると思った。でも、振り上げられた腕は、そこから動かなかった。
ピアスはゆっくり拳を下ろすと、リッキーから離れて立ち上がった。
「リッキー」
私はすぐにかがんでリッキーの顔をのぞき込んだ。ガラスの破片が刺さったのか、頬や鼻柱に無数の血が浮かび、右目の下辺りが赤く腫れていた。けれど、刺すような恐怖が背中をはい上っていったのは、そういったケガのせいじゃなかった。リッキーの様子が明らかにおかしかったからだ。
彼は激しく強く、何度も何度も息を吸い、頬の辺りは引きつってビクビクけいれんしていた。何もないところを向いたうつろな目は真っ赤で、縁から涙があふれていた。苦しそうな激しい呼吸もけいれんも一向におさまらず、顔がどんどんどんどん赤くなった。激しい呼吸――この間、私と言い合いになった後に、リッキーの具合が悪くなったという話が頭をよぎる。
どうしよう、どうしよう、どうしよう……。心臓が、頭の中が、耳の底が、ドクドクドクドク脈打って、どうにかしなくちゃと思いながらも目の前で起こっていることが何なのかも分からず、手が震えて、何もできないことでふくれ上がった恐怖が全身に回った。リッキーの荒い呼吸と苦しそうな表情以外、何も聞こえないし見えなかった。
けれど、急に誰かが私を押しのけた。ハッとして見ると、ピアスがリッキーのすぐ側で片膝をついていた。彼はビニール袋を取り出して、リッキーの口に当てる。袋がリッキーの呼吸で小刻みに膨らんだりへこんだりした。ビニールがカシャカシャカシャカシャ音をたてる。しばらくすると、ビニール袋の動きがゆるやかになった。
ピアスがビニール袋を外した。立ち上がった彼の横に私はすぐさまかがみ込み、またリッキーの顔を見た。リッキーは目を閉じ、苦しそうに眉間を寄せ、けれどしっかり息を吸ったり吐いたりしていた。呼吸を取り戻していた。けいれんもしていない。ホッとして全身の力が抜けた。
すると急に頭が回って、私はピアスを探して後ろへ振り向いた。彼はすでに背を向けて、不安げに立ち尽くす清水さんと真美ちゃんの横を通って、歩き去ろうとしていた。
「大山くん!」
ピアスがピタリと足を止めた。
「ありがとう」
私の言葉の後、冷たい風がビュウッと吹いた。ピアスはこちらへ振り返りもせずに、ひとりごとみたいに口にした。
「こんなつもりじゃなかった。そんなにひどいことするつもりなんか、なかった。そいつにも、榎本にも」
言い切るや否や、彼は走っていってしまった。
「寒いね」
私は、清水さん、真美ちゃんと並んで歩いていた。清水さんは「うん」と言い、真美ちゃんは「それに重いし」とため息交じりの声を出す。今日はいくつかの教科で宿題にドリルが出たから、それを持ち帰らなくてはならなかった。真美ちゃんの言う通り、背中のランドセルは普段より重い。その上こんなに寒いのでは、「寒い」か「重い」しか言葉が出ない。
なんかおばあちゃんみたいだな、と思ってそう言ってみたら、真美ちゃんが声を上げて笑った。
「じゃあ、かなばあちゃんに、真美ばあちゃんだ」
それから、真美ちゃんは清水さんの方を見て、
「それに、由香ばあちゃんだね」
清水さんの顔が、急にパッと赤くなった。うん、と答えて彼女は下を向いたけれど、頬は幸せそうにゆるんでいた。
由香ばあちゃんか。私も頭で言葉にした。今まで清水さんのことを当たり前に「清水さん」と呼んでいたけれど、名前で呼ぶのもいいかもしれない。いきなり「由香ちゃん」と言うのはお互いに少しむずがゆい気がするから「由香ばあちゃん」から入ってみるとか。それで「由香ちゃん」って呼べるようになるといいな。
そんな風に考えて歩いていると、後ろの方から声がした。悪意とからかいがたっぷり込められた、張りのある男子の声だった。
「清水さーん! 榎本、走って帰ってったけど、追いかけなくていいのー?」
三人揃って振り返ると、何かが飛んできて清水さんの顔に当った。
「大丈夫!?」
私と真美ちゃんの声が重なった。清水さんは両手で隠しつつ顔に付いた泥を払っていた。へいき、というかすかな声を聞いた途端、お腹の底から怒りが突き上げてきた。
「何すんのよ!」
私の怒声は空気を裂いて、真っ直ぐに飛んでいった。それに反撃するみたいに、今度は私の方へ泥団子が飛んでくる。今日、理科で地層の授業があり、外に出て土をいじった。こいつらは、その時に作ったものを持ってきたのだ。こんなことのために。
私は泥を避けたけれど、別の方から投げつけらたものが、肩に当たってしまった。湿った土の臭いが鼻につく。これを顔面に受けてしまった清水さんは、もっと嫌な気分になっただろう。
「あんたらサイテー! こんなことして、何が面白いの?」
叫んでも、返ってくるのは言葉ではなく泥団子攻撃だった。ドン、と胸に当たって玉が崩れる。
「山崎もさあ、榎本みたいな犯罪者とつるんでるとか、お前も同類じゃねぇ?」
男子のうちの一人が、また声を張った。犯罪者? 最近、男子が騒いでる、あれのこと? 何言ってんの、ほんと、バッカじゃないの。
男子からのこんな扱いを受けたことがない真美ちゃんは、オロオロした様子で清水さんの顔に付いた土くれをハンカチで払ってあげていた。その真美ちゃんの方にも、泥のかたまりは飛んでいく。狙っているのか、コントロールが悪いのかは分からないけど。
いい加減にしてよ、とまた叫ぼうとした時、私の前に、私たちよりずっと大きな誰かが走り込んできた。
「てめぇら調子こいてんじゃねぇぞ!」
凄味のきいた太い声が響いた。言葉の後にまで、周囲の空気がジィンと揺れている。泥団子攻撃がピタリと止まった。それから、遠くの男子たちの気配が、言葉もなくそそくさと消えた。
その人が来た瞬間、私はゴリラだと思った。でも、目の前の人物の口調も声も後ろ姿も、彼のものではなかった。だけど、声に聞き覚えはある。誰だろうと耳の底に残っていた声と今の声を重ねようとしていると、その人が振り返った。
「平気か?」
ピアスだった。でも、記憶にある彼はとは少し違う。前は輪っかのピアスを一つ付けているだけだったけれど、目の前のピアスのピアスはもっと増えていて、耳を何度も串刺しにしているみたいに見えた。それに髪も赤く染めている。
はい、と気づいたら答えていた。まさかこの人がこんなところで私を助けてくれるなんて、思いもしなかった。思うわけがない。
ピアスがこっちへ歩み寄ってきた。彼に悪意がないことは分かっていたけれど、心の表面に鳥肌が立つ時みたいなザワザワした感触が走り、ちょっと後ずさりそうになった。
「平気か? お前ら、榎本の友だちだろ。あん時は――」
その時、ピアスを遮って、またどこかから声が飛んできた。聞き慣れた、声が。
「何やってんだ!」
声のした場所を探して辺りを見回すと、こちらへ駆けてくるリッキーの姿を見つけた。目には真剣な怒りがこもっている。さっきの声も攻撃的な響きを持っていた。違うよ、と私が言うより先に、リッキーはピアスに飛びかかってしまった。
いきなり突進されて、ピアスは後ろへよろけたけれど、ぐっと足をふんばって倒れはしなかった。それでも、リッキーはピアスにつかみかかったまま、彼の胸やお腹を力いっぱい殴りつけていた。
「リッキー、違うよ!」
私が叫んで止めに入っても、リッキーはやめない。我慢の限度が来たのか、とうとうピアスはリッキーを突き飛ばした。
仰向けに倒れたリッキーに、今度はピアスが馬乗りになり、彼の顔面を殴った。メガネが割れて、破片が顔に散らばる。そこへ音がなるほど強く、またピアスが拳を打ち下ろした。
「やめて!」
私はピアスの腕をつかんだ。止められるとは思っていなかった。私の手なんて簡単に振り払って、彼はリッキーを殴り続けると思った。でも、振り上げられた腕は、そこから動かなかった。
ピアスはゆっくり拳を下ろすと、リッキーから離れて立ち上がった。
「リッキー」
私はすぐにかがんでリッキーの顔をのぞき込んだ。ガラスの破片が刺さったのか、頬や鼻柱に無数の血が浮かび、右目の下辺りが赤く腫れていた。けれど、刺すような恐怖が背中をはい上っていったのは、そういったケガのせいじゃなかった。リッキーの様子が明らかにおかしかったからだ。
彼は激しく強く、何度も何度も息を吸い、頬の辺りは引きつってビクビクけいれんしていた。何もないところを向いたうつろな目は真っ赤で、縁から涙があふれていた。苦しそうな激しい呼吸もけいれんも一向におさまらず、顔がどんどんどんどん赤くなった。激しい呼吸――この間、私と言い合いになった後に、リッキーの具合が悪くなったという話が頭をよぎる。
どうしよう、どうしよう、どうしよう……。心臓が、頭の中が、耳の底が、ドクドクドクドク脈打って、どうにかしなくちゃと思いながらも目の前で起こっていることが何なのかも分からず、手が震えて、何もできないことでふくれ上がった恐怖が全身に回った。リッキーの荒い呼吸と苦しそうな表情以外、何も聞こえないし見えなかった。
けれど、急に誰かが私を押しのけた。ハッとして見ると、ピアスがリッキーのすぐ側で片膝をついていた。彼はビニール袋を取り出して、リッキーの口に当てる。袋がリッキーの呼吸で小刻みに膨らんだりへこんだりした。ビニールがカシャカシャカシャカシャ音をたてる。しばらくすると、ビニール袋の動きがゆるやかになった。
ピアスがビニール袋を外した。立ち上がった彼の横に私はすぐさまかがみ込み、またリッキーの顔を見た。リッキーは目を閉じ、苦しそうに眉間を寄せ、けれどしっかり息を吸ったり吐いたりしていた。呼吸を取り戻していた。けいれんもしていない。ホッとして全身の力が抜けた。
すると急に頭が回って、私はピアスを探して後ろへ振り向いた。彼はすでに背を向けて、不安げに立ち尽くす清水さんと真美ちゃんの横を通って、歩き去ろうとしていた。
「大山くん!」
ピアスがピタリと足を止めた。
「ありがとう」
私の言葉の後、冷たい風がビュウッと吹いた。ピアスはこちらへ振り返りもせずに、ひとりごとみたいに口にした。
「こんなつもりじゃなかった。そんなにひどいことするつもりなんか、なかった。そいつにも、榎本にも」
言い切るや否や、彼は走っていってしまった。
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『オレはこいつの「半分ヒーロー」』で「BL小説大賞」に参加しています。よろしければこちらもご覧ください。
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