世界で一番やさしいリッキー

ぞぞ

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リッキーのいいところ

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 今のリッキーにだって、いいところはある。みんなに平等なのだ。仲良しだからという理由で優しくしたりしない代わりに、嫌いなのだろう相手にも、いつもつるんでいる仲間に対する以上にひどいことはしない。年上の、ちょっと不良っぽい怖い人たちにも、平然と舐めた口を聞く。誰に対しても等しく悪意を向ける。いじめられっ子にも、いじめっ子にも。

 私は五年と少しの学校生活の中で、いろんないじめを目にしてきた。顔立ちや体型のせいで「気持ち悪い」と避けられたり、いつも一人でいることを笑われたりする子が、必ずクラスにいた。
 六年生のクラスでも、一人の女子が明らかないじめを受けている。「露悪的」の意味を発表した清水さんだ。そして、そのきっかけを作ったのは、他でもないリッキーだった。
 清水さんの髪ってさ、スチールウールみたいじゃね?
 ある日の休み時間、リッキーはそんなことを言い始めた。彼にとっては誰にでもかけるささやかなちょっかいの一つだったに違いない。
 でも、周りの男子の反応は、他のケースとは全然違った。もともと清水さんはおとなしくて、休み時間になっても誰とも話さず、カバンからそっと本を出して黙々と読んでいるような子だったから、当然かもしれない。クラスの中心の方にいる騒がしくて乱暴な男子たちは、常に小突き回せる相手を探しているようなところがあって、清水さんはかっこうの標的となった。天然パーマなのだろう、確かにスチールウールみたいにゴワゴワした髪を指差して、清水さんの髪、すげーいいよな、真似したいよなー、などと冷やかしていた。でもオレらじゃちゃんとセットできないよな。どうやったらあんなゴワゴワになんだろ? ねぇ清水さん、教えてー?
 そんなからかいがエスカレートし、そのうち清水さんが廊下を歩いているだけで、みんなではやし立ててゲラゲラ笑うようになった。清水さーん、どこ行っちゃうのー? てか、キモいからもう戻ってこないでねー。
 けれど、事の発端であるリッキーは、そういう男子たちの残酷な悪ふざけの輪には加わらなかった。それまでと変わらず、ひょうひょうと誰彼構わず軽口を叩いて回っていた。そしてその意地悪な言葉は、清水さんをいじめる男子たちへも向かっていった。
 キモい奴が他人のことキモいって言ってるの、まじブーメランでキモーい。
 そうして、彼らが数人がかりで清水さんをはやし立てているのを見ると、リッキーは自身で作詞作曲したのだろう「キモい男たちの歌」を大声で歌った。そういうことが続いた結果、男子たちは攻撃の矛を清水さんからリッキーへ変えた。でも、リッキーは相変わらずの態度でやり返していたし、リッキーと他の男子たちとの間の険悪さに気づいてすらいなさそうな宮崎くんと、いつもふざけてはしゃぎ回っていたので、大してダメージも受けていなかったのだろう。やはり空気が読めないというのは恐ろしいことだ。私の中で宮崎くん最強説が生まれた。
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