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アルツハイマーの兄にとって今日の私は介護士の新田さん
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住宅地の端にたつ青木家には
両親と私と兄の四人が住んでいる
庭にはペットの犬の紀州犬ヨシロウも居る
「ただいまー」
私達はまだ未成年だが・・・
実は兄は稀に見る若年性アルツハイマーという病気にかかっていた
症状は見当識障害、人物誤認
それ以外の症状はあまり少ない
「おかえりー・・・?」
兄の声だ
持病の自覚があるため
なるたけ家族や学校など周りの話を信じて生活している
今の相槌も誰が帰ってきたのかわからないまま部屋越しに返したのだろう
自分の部屋でカバンを置き着替えたあと私は
兄のいるリビングへと向かう
兄の症状が軽くなるためにも
会話は増やしたほうがいいだろう
「土日なのに運動部の部活があって疲れちゃったww
小学生の時より忙しくて嫌んなっちゃうw
ねっ!お兄ちゃん」
「・・・おっ!おおwはるみ・・・?」
兄の場合
昔のことは記憶の根本に残ってて覚えていやすいらしく
大体私は会話の前か語尾に「お兄ちゃん」とつけて呼びかけることで
兄に「妹のはるみ」と認識させている
「でっでもお前・・・中学生だったけ・・・?」
首を傾げ
申し訳無さそうに尋ねるお兄ちゃん
「もぉw当たり前でしょw」
こういうときは怒らず
笑顔で濁したほうが相手も話しやすくなるだろう
二人でしばらく
会話をしてると玄関外からヨシロウが吠える声が聞こえた
「わんわん!」
「なんか吠えてるぞ」
「きっと散歩の犬に反応してるのよ」
「わんわん!」
しかしあまりにも吠えるヨシロウに
兄はその声を気にし玄関向かって喋った
「こらータマミ!静かにしなさーい」
「えっ」
兄の発した言葉に一瞬思考が止まる
タマミはヨシロウを飼う前に
昔飼っていた茶色の柴犬のメス・・・
その瞬間
玄関外で子供の声の大声が聞こえてきた
「うぉー!ここんちの犬白いのから柴犬になっちゃった!」
・・・やばい!
慌てて私は立ち上がり
ヨシロウの元へと向かう
「チンチンも無いぞ・・・メスんなっちゃった・・・」
「ヨシロウ!」
玄関ドアを開け外へ出ると
音に反応した小学生男子たちが
走って庭から出ていった
構わずヨシロウへと目を向けると
そこにいたのはタマミだった
「・・・タマミ」
しかし名前を呼んでもキョトンとする
「ヨシロウ・・・おいで」
しゃがみ込み
手を差し出すと彼女は駆け寄ってきた
やっぱりこの子はヨシロウなんだ
「・・・」
今まで母に言いつけられていた約束
「お兄ちゃんの前ではお兄ちゃんに自分を自分と認識されるように
会話でも気をつけて話すのよ?」
薄々勘付いていたがこの約束は
ヨシロウがタマミになったように
私自身が他人にされないようにするための約束だったんだろう
でも・・・
「間違われたらそのあと私を妹だって認識してもらえば良いんじゃない・・・?」
妙な好奇心にかられてか
この時私には悪い考えが芽生えてしまった…
両親と私と兄の四人が住んでいる
庭にはペットの犬の紀州犬ヨシロウも居る
「ただいまー」
私達はまだ未成年だが・・・
実は兄は稀に見る若年性アルツハイマーという病気にかかっていた
症状は見当識障害、人物誤認
それ以外の症状はあまり少ない
「おかえりー・・・?」
兄の声だ
持病の自覚があるため
なるたけ家族や学校など周りの話を信じて生活している
今の相槌も誰が帰ってきたのかわからないまま部屋越しに返したのだろう
自分の部屋でカバンを置き着替えたあと私は
兄のいるリビングへと向かう
兄の症状が軽くなるためにも
会話は増やしたほうがいいだろう
「土日なのに運動部の部活があって疲れちゃったww
小学生の時より忙しくて嫌んなっちゃうw
ねっ!お兄ちゃん」
「・・・おっ!おおwはるみ・・・?」
兄の場合
昔のことは記憶の根本に残ってて覚えていやすいらしく
大体私は会話の前か語尾に「お兄ちゃん」とつけて呼びかけることで
兄に「妹のはるみ」と認識させている
「でっでもお前・・・中学生だったけ・・・?」
首を傾げ
申し訳無さそうに尋ねるお兄ちゃん
「もぉw当たり前でしょw」
こういうときは怒らず
笑顔で濁したほうが相手も話しやすくなるだろう
二人でしばらく
会話をしてると玄関外からヨシロウが吠える声が聞こえた
「わんわん!」
「なんか吠えてるぞ」
「きっと散歩の犬に反応してるのよ」
「わんわん!」
しかしあまりにも吠えるヨシロウに
兄はその声を気にし玄関向かって喋った
「こらータマミ!静かにしなさーい」
「えっ」
兄の発した言葉に一瞬思考が止まる
タマミはヨシロウを飼う前に
昔飼っていた茶色の柴犬のメス・・・
その瞬間
玄関外で子供の声の大声が聞こえてきた
「うぉー!ここんちの犬白いのから柴犬になっちゃった!」
・・・やばい!
慌てて私は立ち上がり
ヨシロウの元へと向かう
「チンチンも無いぞ・・・メスんなっちゃった・・・」
「ヨシロウ!」
玄関ドアを開け外へ出ると
音に反応した小学生男子たちが
走って庭から出ていった
構わずヨシロウへと目を向けると
そこにいたのはタマミだった
「・・・タマミ」
しかし名前を呼んでもキョトンとする
「ヨシロウ・・・おいで」
しゃがみ込み
手を差し出すと彼女は駆け寄ってきた
やっぱりこの子はヨシロウなんだ
「・・・」
今まで母に言いつけられていた約束
「お兄ちゃんの前ではお兄ちゃんに自分を自分と認識されるように
会話でも気をつけて話すのよ?」
薄々勘付いていたがこの約束は
ヨシロウがタマミになったように
私自身が他人にされないようにするための約束だったんだろう
でも・・・
「間違われたらそのあと私を妹だって認識してもらえば良いんじゃない・・・?」
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