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大量生産型モブ俳優の私が匿名子役として活動してる話
しおりを挟む土日の昼間テレビの情報番組にて
《喫茶店の大盛りメニュー》という
コーナーが放送していた
『ごちそうさまでした♪』
【姫リンゴあずき】という芸名の
大食いタレントが
完食したパフェの容器を持ち上げ
満面の笑みを見せる
その光景は
一般家庭全てで放送され
大概の人の目には触れられた
「凄いわよね~あんな量食べといて
全然体型変わってないし・・・美人だし」
「きっとオマエと違って
自己管理ができてる子なんだよww」
大体芸能人と一般人では
生活自体違うと思い
ふと、感じる疑問も
すぐに流されどーでもよくなる
しかし・・・
そんな芸能界にも
まだ知られていない大規模な秘密が隠れていた
私もその芸能界で
一般には言えない秘密を持ち
活動している
でもそんなこと考えないように演じなくてはいけない
今日はドラマの番宣でバラエティ番組に出演なんだから・・・
mc:『はいではゲストお二方の登場でーす!!』
司会の声とともに拍手が響き私たちは
スタジオの表へと出る
アシスタント:『本日のゲストの一人は
大物女優の村崎詩音さん
そして!いま話題沸騰中の天才子役!
塚本リトくん!』
大物女優:『本日はよろしくお願いたします~
村崎詩音でございます』
『よろしくお願いします!
つかもとリトです!』
挨拶とお辞儀を
隣同士で席へと座ると
村崎さんとともに
早速番宣パネルを出した
『僕と村崎さんが主演の
「ひとりぼっちの二人の道」が
今夜9時に新ドラマでスタートします!
元気をもらえる
ほのぼのとした作品になってますので
是非御覧ください』
司会:『はーい!皆さん今夜9時ですよ!
チャンネルはそのままでお願いしまーす!』
レギュラー芸人:『9時ですね!僕、絶対見ますよ~w』
レギュラー芸人相方:『ウソウソwコイツの
絶対は信じないほうが良いですよw
オレその言葉で約束破られたもんww』
レギュラー芸人:『オマエとリトくんを比べんなや~』
レギュラー芸人相方:『うわぁー人を人気の多さで選んでますよコイツぅ~w!』
大食いタレント・姫りんごあずき:『いやあ~♡リトくんで
争っちゃ駄目ー!アタシのものですよぉー♡』
大物女優:『何おっしゃるのww私の孫に手出しちゃ駄目よぉ~♪』
レギュラー芸人相方:『いやいやw!ドラマの中の話だけででしょwソレ!』
ついには芸人以外のタレントまでフザケだし
客席は笑いに包まれた
その後収録は終わり
控室へと芸能人たちは帰っていく
私も
共演者の人たちに一室ずつ
出向き挨拶に回っていた
さてと・・・
次は姫リンゴあずきさんに挨拶しに行けば
最後ね・・・
姫リンゴあずきさんの名前が入った
自分よりも一回り大きなドアの前につくと
背伸びをしてドアノブに手を掛けた
よいしょ・・・
やっぱり子供の体だと色々不便ね・・・
ドアはゆっくり開かれ
私は室内を覗き込む
あっ居たいた・・・!
ドアを挟んだ部屋の向こうには
背を向けた
姫リンゴあずきの後ろ姿が見える
「失礼しまーす・・・」
言いかけたその瞬間
目の前に立っていた姫リンゴあずきさんの体が
突然膨れ始めた
姫リンゴあずき:「うっぷぅ・・・!」
さっきまでの華奢な体型が贅肉と脂肪で埋もれていく
そして同時に短くなった髪が
後頭部の
二重肉を表に晒した
姫リンゴあずき:「ふぅ・・・やっと剥がれたぜ」
何かのシールを二の腕から剥がし
横顔を見せる
姫リンゴあずきさんは
見苦しいほど巨漢の中年男性の姿に変わり果てていた
驚いた私は咄嗟に廊下へと引っ込み
ドアの隣に隠れた
サイズの小さい女性用の服もきしみを上げ
腹肉がスカートの上に乗っている
二の腕を掻きむしる姫リンゴあずきさん
姫リンゴあずき:「変身できて仕事が増えたのは良いんだけど
皮膚が荒れて痒いんだよなぁ~
この「タグタトゥーシール」」
「タグタトゥーシール・・・」
姫リンゴあずき:「でも内緒にしてないと・・・干されちまうだろうなぁ」
うっ嘘ぉ・・・
口を抑える私
しかしそれを横目に
男性が控室のドアを覗き込み
動じることなく
突然姫リンゴあずきにカメラを向けた
パシャパパシャパシャ!!
「え・・・?」
連射した音に気づいたときにはもう遅く
男性はカメラを持ったまま
逃げるようにその場を立ち去った
まっまさか・・・!
私が追いかけると局の外の裏庭で
さっきの男が
サングラスと帽子をした男に
姫リンゴあずきさんの写真を見せていた
江藤:「おおっ!
うまい具合に撮れてんじゃん
・・・でもまだイマイチ証拠が無いなぁww」
発した一声に
顔を隠した男性が誰なのか
私はすぐに察しがついた
「えとうくん・・・」
江藤・男性:「!」
一人呟くと
敏感にも二人が私の方を振り向く
江藤:「・・・なーんだww誰かと思えば
天才子役のリトくんじゃないww
子役タレントなんだから
こんな人気のない場所に来ちゃ駄目でしょww」
「・・・そのカメラ」
江藤:「ああ、これねwおじさんたちのお仕事で使うものだよww
このカメラで嘘をついてる人間たちの実態を暴露するんだw」
私の目の前へとしゃがみこむと
江藤くんは話を続けた
江藤:「大人の世界はねぇ?ウソをついちゃうと
オレたちみたいなソレを飯にする連中に
追いかけ回されることになるんだよww
芸能界にいる以上リトくんも気をつけてねw」
怖がらすかのように私に言い聞かせると
テレビ局の入口に私を探すマネージャーの姿を見つけ
江藤くんは足早に
建物の陰へと隠れる
江藤:「ああ・・・それとリトくん
天才だなんて評価されてるみたいだけど
君の場合大人並みの演技をしても
所詮大人で考えたら凡人の才能だって
オジサンには見えるぜw?
君には中学受験ぐらいの時期になったら
芸能界を潔く引退することをおすすめするよww
そのほうが周りの態度の裏返りに振り回されなくて
良いと思うよww?じゃあねぇ~リトくん♪」
それだけを告げると
江藤くんたちは帰っていった
江藤くん・・・するどいな
その出来事から数週間後だった
”姫リンゴあずきの正体”
”大食いタレント
姫リンゴあずきの正体は
下積み時代にもならない売れない
おデブタレントの中年男性だった⁉”
”どうやってオッサンが
若い華奢な女子になった⁉”
一件を踏まえ
そして所属している㊙事務所の蔵寺鯛造《くらでらタイゾウ》社長から
私に呼び出しがかかった
「くらでらタイゾウしゃちょう・・・お話とは一体何ですか?」
蔵寺社長:「うむ・・・君にも既に知ってる情報だろうが
同じくこの㊙事務所に所属している姫リンゴあずきくんの正体が
公になったことは知ってるよね?」
「はい・・・」
だが私は少し苦笑いを加える
「でっでも驚きましたよ
まさか・・・姫リンゴあずきさんも『タグタトゥーシール』を
使用して活動していたなんて」
蔵寺社長:「もちろん『タグタトゥーシール』については極秘だからね
使用者のタレント同士であっても
プライバシーを漏らす可能性がある
だがもう彼は使えない」
社長は
私の左袖を捲る
私の腕には服のタグのように
体のサイズや性別
その他の項目がびっしりと記されている
蔵寺社長:「もちろん目に見えない
『薄化粧加工タグタトゥシール』も
配られる予定だから
来年の夏
テレビで軽装になることがあっても
気づかれはしないから安心したまえ」
「はい・・・」
タグタトゥーシール
これは
名前の通りタトゥーシールと変わりない使用方法で
使うことによってタグの項目に記された通りの見た目に変わる製品だ
一般には公表されていないが
我々の業界では
イマイチ扱いづらい・地味でパッとしない
そんな人間を他人になりきらせ
売り出すことがある
良いように言ってしまえば
何でも自分のなりたい姿になれる魔法のシール
「では失礼します・・・」
蔵寺社長:「ああ、それと『タグタトゥーシール』を剥がすときは
誰にも気づかれないように
塚本リトとして足跡を残さないように
わかったね?」
深くお辞儀を残すと
人目が付かないように
使われてない
トイレへと駆け込んだ
ティッシュを
水道で濡らし個室へと駆け込む
ティッシュを腕のタグタトゥーシールに押し当てつつも
携帯で
マネージャーさんを呼ぶ
「ん・・・!///」
待っている間
男児の体から女児へと変わり
内股になると
乳房が膨らみ
お尻も大きくなって
服の布地が少し破ける
「はぁ・・・///」
最後に長い髪が背中まで下ろされ
私は元の姿に戻った
塚本リトのマネージャー:「猪田さん・・・」
「マネージャーさん?」
ノックが入り戸の下の隙間から
自身の私服を渡されると
男児用の服を脱ぎ捨て私はブラジャーやらを
身につけていく
「すみません・・・私の服持ってきて下さって」
塚本リトのマネージャー:「良いですよ
世間に塚本リトの正体がバレても困りますしw」
「はっはい・・・///」
マネージャーさんの助けももらい
いつものように
私は自分の住むアパートへと帰宅した
部屋の中
夜景で明るいビル街を窓ガラス越しに見ながら
ため息をつく
「ホントは女優になるのが夢だったのに・・・」
私は人並みの演技しかできない
地味だしパッとしない
だから子役として売り出された
確かに江藤くんの言う通りだね
ふと、部屋の片隅の壁に掛けてある
江藤くんと
私が写った写真に目が入る
昔彼と私は付き合っていて
二人共若かったのもあって夢を持っていた
江藤:『オレは皆が面白いと思う記事を書いて
頂点目指すんだw!』
『私だってw女優にぜーったいなってやるわ!』
この前は以前とは変わり果てた
彼の行いに失望したけど
なんで夢を諦めたの?だなんて
私も江藤くんのこと酷く思えないや・・・
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