上 下
41 / 70

vr夜間学校

しおりを挟む
朝、俺は妹のヒロコの部屋へ
カーテンを開けに行く

「おいっ…起きろよ」


「んん…お兄ちゃん」


日差しが差し込む部屋で
隈を見せる妹

もう三ヶ月になるんだが
妹は不登校をしている


「…学校

行かないの…?」

俺が聞くと
妹は布団で顔を隠す

「…会いたくない」


「そうか…」

俺は座布団に腰を下ろした

不登校の原因は
クラスの男友達の菊池とかいう奴に
傷つくことを言われたからだそうだ

そいつは
クラスでも陽気な性格の方で
その時は周りも一緒になって
妹を笑ったらしい


それを妹は
省けにされたのと同じように
捉えてしまったそうだ

多分…違うんだろうけどな


「まぁ良いや

でもさ…ヒロコ

このまま不登校が続くと
中学も卒業できなくなるかも
しれないんだぞ?

どうするんだ?」


「…だって行きたくないもん

もうどーでも良い」

投げやりになっているな…



「それならさ
VR夜間学校ってのに通ってみないか?」


「えっ…VR?」

ヒロコは布団から顔を出す


「そう、学校に行けなくなった人や
行けなかった人たちが
周りを気にせず通えるヴァーチャルの学校なんだって

VRだから姿も自由に変えれるし
名前も皆の前では匿名でも良いんだ

今なら体験入学できるみたいだけど
行く気は無いか?」


「…」

「ああ、それと
一人じゃ心配な場合
付添人をつけても良いんだって

お兄ちゃんが一緒に着いてってやるよw?」

「ホント…?」

「でもw見ててやるだけだからな?
わかったか?」

「わっつわかった…私、体験入学してみる」


こうして俺たち兄妹は
VR夜間学校
体験入学をすることになった

十七時頃、VR夜間学校から
届いたVRメガネを開封し
学校のサイトへとログインした

すると、性別の選択画面が出る

妹はもちろん女子に決定した

「お兄ちゃんは…どっちの性別にする?」

「お前は俺がどっちで居たほうが安心する…?」

「いっしょに…来てくれるなら女の子が良い」


「おいおいw男恐怖症になんかならないでくれよな?

んじゃ、仕方ないから俺も女子で」

性別を決定すると
次は見た目の細部まで変える項目が出てきた

妹は俺のVRの身体を弄る

「お兄ちゃんの髪型はこのほうが可愛い…///」

背丈や体型…なんかを
細かく変える妹

楽しそうに熱中をしている妹の顔には
少し笑顔が戻ってきていた

「よし、できたよ…///
次はニックネームだね///」

妹は名前をつけ
決定を押した

「お兄ちゃんは吉行だから
きぃちゃん…!///」

「はいはいw」

きぃちゃんか…
呼ばれたことないし
恥ずかしいけど…まぁ良いか

ふと、時計を確認すると
そろそろVR夜間学校に登校する時間だ

「よし、それじゃ登校しようか」

「うっうん…」

二人でVRメガネをつけ
スイッチを入れた

「…」

不安を抱えた
妹は俺にしがみつく

…大丈夫だよ

手を震わせているのを感じ取り
そのまま二人の意思は
VR夜間学校の校内へと吸い込まれていった…


…それから
チャイムの音が俺たちの耳に
流れる…

我に返り
うつ伏せに眠っていた
机から体を起こした

すると、密着していた机を通して
胸の柔らかい感触が
伝った


スカートをからはみ出る太もも
内股になると
その股には何も無いことがすぐにわかった


…ここまでリアルなものなのか…最近のVRって///

自分の身体に
一人頬を染めていると

妹が一つ後ろの席から俺の背中を突いた


「お兄ちゃん…だよね?///」

「そう…みたいだな…

スゲェよな…ここまで
アバター通りの身体になれるなんてw」

「うん…でも
学校に来るの…なんか久しぶり…だな///」

そう言う妹の口数は少しずつ
少なくなり音量も下がっていった

やっぱり緊張するか…

「でもさwほらっ席も二つずつくっつけて
区切られてるわけじゃないし

一人の空間は保てるだろw」

「うっ…うん///」

そのまま
普段通う学校のように
何ら変わりのない授業が始まった

でも少し違うのは
教科は同じでも
一人ひとりに合わせた
内容だったってことぐらいだ

一時間目が終わると
すぐさま妹は俺の背中を突く

「なっなんとか…終わったね
一時間目」

「…お前、そんな調子で
どうするんだよ」

俺が少し呆れていると
ヒロコの目の前に
一人の女子がやってきた

「あの…///」

「…なっ…なあに?///」

突然声をかけられた
ヒロコは
戸惑いつつも返事を返す

すると、その女子も
緊張していたのか
顔がほぐれ
笑顔でこう言った



「あの…あのさw!
おっ…いや私…と///
友達に…なってくれな…いかな?///」


突然のことに
驚くヒロコ
「え…?///」

まぁ…急に友達になってなんて
言われたら驚くよなw


でもヒロコは
席を立ち上がりその女子の手を取った

「私で良ければ…良いよw!///」

「ほっ本当…に⁉///」

「うんっ!///
私ヒロコっていうんだ…
…貴方の名前は?///」


「おっ…あっ…いや、
わっ私は…あけひ…いやアケミだよ…!
よろしくねヒロコ…ちゃん///」

手を取り合う二人

フフッ…これで
もう大丈夫そうだな…


こうして
一日限りの体験入学を
三人は楽しんだ…

特にヒロコは
アケミととても親しくなった

学校のチャイムが鳴り
放課後になった

「それじゃ…ね///
アケミちゃん…///」

「うん…バイバイ…///」

でも手を振るアケミに
ヒロコは泣きながら抱きついた

「っ!ヒロコ…ちゃん///」


「…ねっねぇ…

アケミちゃんは
入学体験が終わったら
このVR夜間学校に通おうって
思ってたり…するの?///」

その質問に
少し黙り込み
アケミは真っ直ぐ
ヒロコを見つめて言った

「…ううん
私は通わない

今まで通り
前の学校に通うよ…」

アケミの言葉に
ヒロコは抱きつくのを辞める

「…」


ヒロコは落ち込んでいる…
でもアケミは口を開いた

「大丈夫…!
ヒロコちゃんも…絶対
今までの学校に通うように
戻るから…!



…”俺”が戻すから」

「え?…」


彼女の聞き慣れない口調に
一瞬唖然とする


「じゃあまた学校でね…!」

だがそのまま
アケミはVRの世界から
現実に戻っていった…

一人立ちすくむ
ヒロコの肩に俺は手を添えた


「俺たちも帰ろう」

そうしてVR夜間学校体験入学は
終わりを告げた


それから翌朝
インターホンが鳴り
俺は玄関へと出た


するとそこには
ヒロコと同じ学校の
クラスメイトの男子が立っていた


「…よぉ菊池アケヒロくん」

俺に深くお辞儀すると
ヒロコの居る二階を見た

「…」

うつむく菊池に
俺は言った

「VR夜間学校の体験入学で
女子にまでなって
アイツに会ったのに
何であの時
謝らなかったんだ?」


「やっぱり…それじゃ
駄目だって思って…

怖がられてるかもしれないけど

俺…!
本気で悪いと思ってるから

面と向かって謝りたいんです…!」

…真っ直ぐに見つめる
目に一点の曇りもない


「そうだな…それが合ってるよ
必ずその真意は伝わるさ…

上がんな…ノックを二回すれば
妹も俺だと思って
部屋に入れるぜ」


「ありがとうございます…!」


その頃
妹は起きて部屋を
ウロウロしていた

「どうしよ…

でも…もし違ったら」

そこにノックが二回入る

「…お兄ちゃん?」

妹はドアを開けた


だが
その向こうには
菊池が立っている

「…アケヒロ…くん」

重い空気がのしかかり
目を逸らす妹

だがドアは閉めず
少しずつ菊池の目線に
視点を合わせていく

「…」

そして菊池は深くお辞儀した


「本当にごめん…!

俺、ふざけて
お前のこと傷つけて…怖がらせて
学校にも行けないぐらい
悩ませたりして…!」


菊池は
頭を下げたままでいる

その姿を見た
ヒロコは
笑って答えた

「ううん!
もう…気にしてないよ!
わざわざ…
謝りに来てくれてありがとう///」

「ごめんな…こんなに長引かせちまって」

「フフwでも
…ごめんねが遅くなっただけで
私達本当は仲がいいもんね!///」

「あっ…ああw
そうだよなw!///」


「じゃあ早く学校に行かなきゃw!

ああ、アケヒロくんは部屋から
出てってw出てってw
私着替えなくちゃいけないんだからねw!」

「えっ?」

「だってアケヒロくんは
男子でしょ?ソレにここは私の部屋ですよ~w」

「おうっ!そっそうだよなw///
待ってからな!///」

菊池が一階へと
降りていく音を聞きながら
ヒロコは一人呟いた

「きっとアケミちゃんは
アケヒロくんだったんだろうなw
そう言えば
トイレ掃除の時も男子の方に入ろうと
しちゃってたしw

だけど嬉しかったよ///

体験入学にまで心配して
やって来てくれたこと…」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

由紀と真一

廣瀬純一
大衆娯楽
夫婦の体が入れ替わる話

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

兄になった姉

廣瀬純一
大衆娯楽
催眠術で自分の事を男だと思っている姉の話

兄の悪戯

廣瀬純一
大衆娯楽
悪戯好きな兄が弟と妹に催眠術をかける話

処理中です...