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敗北者から欲しいものを奪うことができるルールの野球拳
しおりを挟む昼の公園
二人の男子小学生が
片方の腕を突き出しこう言い放った
せーのっ!
「最初はグー!ジャンケンポーン!」
友達のタカオはパーを出し
オレはチョキを出す
つまりオレの勝ち!
「よっしゃあ!やったぁ!」
「はぁ…オレの負けかぁ」
「それじゃ、オレは勝者だから
貰うものは
遠慮なく貰うぜ!」
「わかったよ
オレはもう全部読み終わってるし
好きにしろ…!」
オレはタカオから
約束の漫画全巻を受け取った
「いひひwwありがと」
オレの名前は石田ヒカル
小学5年生
今、うちの学校では
敗北者から欲しいものを
貰えるというルールの野球拳が流行っている
”欲しいもの”なら何でも奪える…闇深いじゃんけんのルールだ
挑まれても
断ることは一応できる
でもオレは結構じゃんけんに強いほうだ
だから戦利品が手に入りやすい!
負けたことなんて
一度もなかった…
「さて、家に持って帰るとするか」
漫画の入った紙袋を持ち
家路へと向かっていると
隣のクラスの女子を
見つけた
そいつは
転校生で兎園って名前らしい
眺めていると
何だか困っている様子を見せた
「おい、どうしたんだよ?
何か困ってるのか?」
声をかけたオレに
兎園は振り返る
「えっ…うっうん
実は道に迷っちゃって
家に帰れなくなっちゃったの…」
「帰れなくなったって…
お前、転校してきて
まだ慣れてないなんて
それじゃ生活できないだろ…」
「いっ良いじゃない!///
あなた、助けてくれるから
話しかけてきたんじゃないの?」
会話してみると
兎園は見た目のおっとりした感じとは
違って普通の女子だ
「悪かったって…そんなに怒るなよ
じゃあさぁ、家の近くに何か
目印になるものが建ってるとか
知ってる?」
「うーん…ああっそうだ
直ぐ側に小さい橋がかかってたわ
確か…橋の名前は小町橋」
「おおっ!その場所なら
知ってるから案内できるぜ!
早く行こう!」
こうして二人
小町橋という小川の上に
かかった橋までやってきた
「あっ!あそこよ
あれが私のお家だわ」
家も見つかったみたいだ
「ありがと、ええっと…」
「オレは石田ヒカル
同じ学校の五年の1組」
「石田ヒカルくんね…
アタシは兎園スミレ
五年2組よ」
「それじゃ無事に
家についたみたいだし
オレも帰るわ…」
「えっ!もう帰っちゃうの?
家に上がってってよw
お礼にお菓子出してあげるからさ」
「良いよ別に
大したことシてねぇしオレ
ソレに早く帰って漫画も読まなきゃ」
兎園は
漫画の入った紙袋を見る
「…その漫画って友達にでも借りたの?」
「へへんwwいいや!
オレが野球拳で手に入れた戦利品なんだ!」
「へぇ…石田くんって
じゃんけんに強いんだ~…」
兎園はオレの手を
突然引いてきた
「まぁ良いじゃない
家だと思って私の家で
漫画を見てお菓子を食べれば!」
オレは勢いに流されるまま
兎園の部屋へとお邪魔した
その間、兎園は
紅茶を注ぎに行くと言って
部屋から出ていった
オレは黙々とページをめくっていた
にしても…この漫画…
「あんまり…面白くないな」
十二ページほどで
一巻を閉じると
そのあとはもう、手を付けなくなった…
オレが退屈そうにしていると
兎園が紅茶の入ったポットと
ティーカップを
二つおぼんに乗せて持ってきた。
「おまたせ!喉乾いてたでしょ?」
「ああ、ありがと
色々と悪いな…」
「良いわよwだって私が招いたんだし」
すると帰ってきてそうそう
兎園は
突然変なことを言い出した
「ねぇ…
私との勝負してみない…?
野球拳でw!」
「私との勝負?…って
兎園も野球拳すんのか?」
「もちろん…それに
私結構強いわよ♪」
「ふーんならっ勝負してやる」
オレは兎園の部屋を
見渡し奪いたいものを決めた
本棚に立てかけてある
図鑑だ
あの図鑑…ほしかったやつだ…
お小遣いをためても
すぐには手に入らないぐらい高い値段だし
「オレが勝ったら
あの図鑑をもらってくぜ!」
「良いわよ♪
私は何にしよっかなぁ~…あ」
ふと、兎園は
オレの積み重なった漫画を見る
「私も奪いたいものが
決まったわ…でも内緒♪」
オレは一度も負けたことがない
だから別に相手の奪いたいものなんて
聞く必要がない…
まぁ、さっき兎園が
紙袋のほうに視線を傾けた時点で
きっと漫画を奪おうと思ってるんだろうけどな
するとオレの頭に
悪い考えが浮かんだ
ここは…わざと負けて漫画を受け取ってもらうことにしよう
面白くなかったし…
そう決めると
オレは兎園と向かい合った
「じゃあ行くよ!」
「おうっ!」
「最初はグー!じゃんけんぽん!」
兎園がチョキを出した後
同時かのように見せかけて
オレはパーを出した
ぽん!
すると双方の手を見た
兎園は大喜びする
「わあああ!勝ったぁ♪
やった♪やったぁ~♪」
「じゃんけんに強いって言った割には
初めて勝ったみたいに
大喜びしてんなww」
オレがそう言うと
兎園は我に返ったのか
喜ぶのやめて顔を赤らめた
「べっ!別にいいでしょ!///
勝ったのは本当なんだから
…貰うものはもらえたし♪」
「あれ?お前の欲しいものって
この漫画全巻じゃないの?」
「え?違うけど…」
「へっ…へぇ
そう」
何だよ…オレの早とちりだったのか
そう思うと
すぐにある疑問が残る
「ところで何をオレから
奪ったんだよ?
オレ、何もあげてないけど…」
すると兎園は
さっきまでとは違う
怪しげな笑みを見せた
「実はアタシ…石田くんに
二つ謝らなきゃいけないことがあるのよね」
「何だよ?」
「アタシね、本当は野球拳なんて
全然強くないんだww」
何だ…そんなことか
場の雰囲気が少し戻り
オレは安心したが
すぐにそこに追い打ちをかけられた
「あと、もう一つ謝りたいこと
それは、フェイントをかけたことねw」
「フェイント?」
「その漫画、家のお兄ちゃんの部屋にも
あるんだよね…あんま面白くなかったでしょw?
多分部屋で読み飽きたであろう石田くんに私が
その漫画をほしいと見せかけて
別のものを奪わせてもらったのよ…
ホント良かったわw石田くんが
私のほしいものを聞いてこなくてw
答えたが最後ソレを奪わなきゃいけないのが
野球拳のルールですもんねw」
「え…?」
「今だから教えてあげるよ
私があなたからもらったもの
それは野球拳での”勝負運”」
兎園の奪ったものの正体を
聞かされオレは固まる
兎園がオレの勝負運を奪った?
「んな馬鹿なww!」
「だったらもう一度
勝負してみる?」
望むところだと
オレが勝負に乗ると
兎園は遠慮なしに次に奪うものを
指定してきた
「じゃあ、次は石田くんの…
性別をもらおうかな♡」
性別でも心臓でも
賭けてやろうじゃねぇか!
今度は本気で負かしてやる!
オレたちは構えた
「最初はグー!ジャンケンポン!」
でも…
兎園はグーを出し
オレは
チョキを出してしまった
「っ…」
信じられない
「じゃあ貰うね♪
石田くんの男としての性別w♪」
こうして
完全に男の姿に兎園が変わると
代わりにオレには
兎園の女の性別が
引き換えられた
「んっ…///」
無くなる股間が
敗北した自分への
屈辱的な勲章のようにも感じる
嘘だろ…
肩幅や手足や体全身は縮み
丸みを帯びていく
嫌だ、ホントに変わってく…
胸が痛み
次第に小ぶりの乳房が膨らむ
「!///」
悔しさから我に返る頃には
オレの体はすっかり女子になっていた
そしてオレは
自身が本当に勝負運が無くなったことを
改めて理解した
「そっそんな…
返せ!返せよ!オレの勝負運!」
「勝負相手に情けをかけたのが悪いのよww
さっきは石田くんが身を引いて勝ったズルだったけど
もうこれで本当に私はあなたの勝負運を奪うことができた
だから永遠に私は負けない♪」
「良いか!明日学校で
また勝負をしろ!
今度こそ勝ってやる!」
「良いよ♪」
こうしてオレは
その日から兎園に挑み続けた
勝負…次の日も勝負
そのまた次の日も
プライドのあった
オレは兎園を勝負相手一筋で繰り返した
しかし勝ち確定の勝負事が続くと
兎園自身オレに飽きを感じてきていた
「また石田と勝負すんの?
もういい加減諦めろよw
オレに叶うわけないってww」
すっかり男子らしくなった
兎園の横でオレは吠え面をかく
「うっ兎園ぉ…!///
良いから…私と勝負してぇ!
私は男の子に戻りたいし
勝負運も取り戻したいのぉ…!///
うう…でないと泣いちゃうわよ…?///」
「言いなりにさせる
手口もすっかり女子だなww
別に良いじゃん?
お前、随分と可愛くなったんだし
このまま女子として生き続けろよww」
「やっ…///
やめてよ…!///
うう…お願いだから私…と勝負してよ
ひっくひっく…」
「わかったわかった…
だからマジで泣くなよ…ホント面倒くせぇ女だな」
そして男の面影のなくなった姿で今日もオレは
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