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あなたからキス、されるなんて……※

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足早に海辺から階段を駆け上り、部屋へと戻って、はぁはぁと苦し気なサイラスをイリスは気遣った。

「大丈夫ですか? お水飲みます?」

「平気です……ただ、熱くて」

 イリスは部屋を冷やす魔動機のスイッチを入れようと壁を探した。が――次の瞬間、後ろから彼に抱きしめられていた。

「無意味です――あなたを抱かないと、もうおさまらない」

 直接的な言葉に、ごくん、とイリスは唾をのんだ。
 彼の声に余裕がない。首筋のうしろから、荒い息遣いが感じられる。

「すみません……ぁ、せっかく、あなたの好きな、海に、入っていたのに……」

 彼の唇が、イリスのうなじに押し付けられる。びっくりするほど熱かった。

(発情してるんだ――先生)

 彼の意思に反して、発情がその身体を乗っ取っていることがありありと感じられて、それにあてられるように、イリスの肌も熱くなる。

(受けとめ――ないと)

 優しい先生の、どうしようもない事情を、イリスが解消してあげるのだ。
 イリスはその腕のなかで、くるりと回転してサイラスに向き直った。

「平気です。海は逃げませんから――しましょう、先生」

 来ていたパーカーとワンピースを脱ぐ。ストンとそれらが床に落ち、あらわになった下着に自ら手をかける。

「っ……ぁ」

 イリスの生まれたままの姿に、逆にサイラスがたじろぐ。見てはいけないけど、見てしまう――そんな視線が、イリスの胸や腹、下腹部を移動していく。

「どうぞ、好きなようにしてください――でも、その前に」

 イリスは手のひらで、彼の胸に触れた。そういえば、彼が服をすべて脱いだところを見たことがない。

「先生も脱いでください」

 するとサイラスはたじろぎつつも、脱ぎ始めた。
 不思議と最初の時より、おぼつかない手つきだった。

(そっか、最初の時は夢だと思ってたから――遠慮がなかったのかな)

 お互い一糸まとわぬ姿になると、サイラスはぎゅっと熱い腕でイリスを抱きしめた。
 肌と肌が触れ合わさって、心地がいい。 

「イリス……こうしてする前に抱き合うのは、初めてですね」

 名前の呼び方が、ラシエルさんからイリスへと変わった。

(……別にいつもの呼び方でいいのに。これも先生の気遣い、なのかな)

 思えばいつも、このあたりで抱き上げられてベッドへと連れていかれていた。でも今回は。

「行きましょう」

 イリスは彼の手を引いて、自分からベッドへと連れて行った。
 リゾートらしい雰囲気の、紗の帳が張られた涼し気なベッドに入ると、イリスは自分からサイラスの頬に触れてみた。

「先生の裸見るの……初めてです」

 サイラスの目が、はっと見開かれた。夜明けの空のような薄紫色の瞳に引き込まれるように――イリスは自分から、彼の唇に唇を重ねた。

「っん……!」

 サイラスが驚いたような吐息を漏らしたが、イリスはかまわず彼の唇を舌で押し開いた。

「っは、ぁ……あ」

 彼はされるがままに、イリスの舌を受け入れた。その手がイリスの背に回り、ぎゅっと抱きしめられる。

「んぁ、はぁ、ぁぁ……っ」

 キスしているだけなのに、彼の漏らす吐息はすでに快感に染まっていた。 
 イリスが舌を動かして彼の舌にからめると、イリスをつかむ手がびくん、と反応するほどに。

「イリス……っあ」

 唇をはなすと、彼はうっすらと目をあけてイリスを見た。
 その目は、発情の桃色に染まっていた。

「ダメ……です、こんな……っ」

 上気した頬に、乱れた辛そうな顔で、サイラスは訴えた。

「ご、ごめんなさい。キス、嫌でしたか?」

 イリスが気遣ってきくと、サイラスはくしゃっと顔をゆがませて、つぶやいた。

「あ、あなたからキス、されるなんて……そんなの……ッ」

 イリスはちょっとうろたえた。

(えっでも、キスは前もしたよね? 私からされるのは無理だけど、自分からするのはいいってこと……?)

 すると、サイラスは絞り出すように言った。

「かんちがい、しそうに、なる……ので」

 桃色に染まったその目が潤んで、今にも涙がこぼれそうな感じだった。

(私からのキスで??? なにが??? かんちがい???)

 とイリスは思ったし、とっても気になったが、サイラスはかなり無理してその一言を言っているようだったので、それ以上聞くことはできなかった。

(それになんだろう……先生がこんな風になってるのって……)

 なんだか、可哀そうで……ぎゅっとしてあげたくなる。イリスは素直にそれを行動に移した。
 よくわからないけど――

「大丈夫ですよ、そんな悲しい顔しないでください」

 震えている彼の体を抱きしめると、腰のものはしっかりと硬くなっていた。
 いつもイリスをめちゃくちゃにするその楔に、ふと触れてみる。

「っ……ぁ、イリス……ッ」

「ここも、私から触られるのは嫌ですか?」

 イリスが聞くと、サイラスは頬を真っ赤にした。

「嫌じゃ……ない、です……んんッ……」

 戯れに先端を掴むと、彼の身体がびくん、と反応した。
 そのまま先の部分を、手のひら全体で弄る。

「はぁ、ぁ、んんっ……!」

 握った手を、上下に動かしてみると、サイラスはぎゅっと目を閉じた。

「痛い? 大丈夫ですか?」

 サイラスは首を振った。

「きもちいい、です……っはぁ、あなたが、私のを……して、くれる、なんて……」

 イリスの手の中で、彼のものはどんどん熱さと硬さを増していった。

「ぁ……っ、ダメ、出ます、イリス、手をはなして……汚れる……ッ」

 切羽詰まった声でサイラスは言ったが、イリスは止めなかった。

(だってここでやめられたら辛いだけでは……?)

 どくん、と彼のものが脈打って、どろりと手の中で熱い液体がはじけた。
 射精してなお、彼のものはまだ出す前と同じくらいに硬かった。
 はぁ、はぁ、と肩で息をしながら、サイラスはベッドサイドに置いてあった布を取った。

「拭いて……ください、私ので汚してしまったので……」

 イリスは素直に受け取って精液をぬぐった。

「先生の、初めてみました。熱くてとろっとしてますね」

 人間のとそう変わらない――とイリスはちょっと好奇心から比べていたが、そんなイリスを、サイラスはふいに後ろから抱きしめた。

「わっ」

「イリス……とても気持ちよかったです、あなたの手でいかされるのは」

 耳もとでささやかれる。

「自分でする100倍、気持ちよかった……」

 イリスはちょっと動揺した。

(えっ、先生、そんなことするの……?)

 いや、何をおぼこなことを言っている。男性はみなするものだろう。
 イリスはセルフ突っ込みしたが、ちょっとまだ動揺していた。

「イリス?」

「いえその、せ、先生もそういう事するんだなーって、あはは……」

 耳朶に唇がふれそうな場所で、サイラスは言った。

「ええ、しますよ。あなたとした時のことを思い出しながら――」

 サイラスの手が、イリスのむき出しの胸をむにゅりと柔らかくつかむ。

「この柔らかい胸の感触を、ここの――あなたの中が、私のものを締め付ける、骨まで蕩けるような快楽を思い出しながら、今日がくるまで、何度も、何度も……」

 そんなことを言われて、イリスはぎょっとして、そして同時に――どうしようもなく、下腹部が熱くなった。

(やだ……そんなこと)

 そんなこというの、反則だ。
 イリスはそう思いながらも――顔が見えない体勢のおかげで少し強気になって、言った。

「そ、それなら……もう、い、入れてください……」
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