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第二部 新婚生活の騒動
私の回転木馬(2)
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リリーは熱いお茶を用意し、彼女にすすめた。
「どうぞ。これ、一応とっておきの茶葉なの。口に合うかしら」
「…」
カリーナは浅く椅子に座ったまま、うつむいている。
「…私、戻ってもよろしいですか」
感情の見えない声でカリーナは言った。
「もちろん、戻っていいわ。でも私、あなたに話があるの。それを聞いてもらってからでいい?」
できるだけ穏やかに話かけたつもりだったが、カリーナは席を立った。その手が震えている。
「…私に説教する気?殿下が私になびかなくて、さぞ、いい気味でしょうね。あなたに叱られる間でもなく、私はもう終わりよ。だからもう帰るわ」
カリーナはくるりときびすを返した。
「まって!私、ピオニーと会ったのよ」
びくりと彼女は止まった。
「な…なぜそのことを?どうせ嘘でしょう、やめてちょうだい」
「偶然、あなたのお屋敷で会ったのよ。嘘じゃないわ。私がリンダじゃないって一目で見破ったわ。賢い子ね」
「あ…あの子の事まで調べ上げて、私をどうする気?!あの子に手を出したら、許さないわよ…!」
「ちょっと落ち着いて、私はそんな気はちっともないわ。知ってるのよ、ピオニーを縦に、あなたが御父上から脅されていること」
今度こそ、彼女の顔は衝撃でかたまった。そののち、彼女はふらふらと床に座り込んだ。
「そんなことまで…知られているのね…」
リリーは彼女を支えた。
「ほら、しっかりして?とりあえず座ってちょうだい」
放心状態の彼女はされるがままだった。
「あのね…私、あなたがルセル様の前で誘惑を繰り返すの、正直嫌なの」
「そりゃあ…そうでしょ」
彼女は力なくつぶやいた。
「でもあなただって好きでルセル様を誘惑してるわけじゃない」
「そうよ」
「それに…私たちのせいで、罪もない小さい女の子が母親と引き離されるのも、嫌なの」
「何が言いたいの」
「ねぇ、私たちの利害、一致してないかしら?」
彼女は怪訝そうな顔をした。リリーは続けた。
「あなたは娘を守りたい、私は誘惑をやめてほしい。これって両立可能よ。つまり…つまり私が、あなたとピオニーを助けるわ」
「そんなの…どうやって」
「ピオニーをいったん、私の養女にするのよ。もちろん形式上で、本当のママはあなたよ。ピオニーはお城で暮らす。で、世話係としてあなたも一緒に暮らすの。こうすれば、后も御父上も、あなたとピオニーに手を出せないでしょ?」
カリーナはまじまじと私を見た。
「嫌かしら?たしかに私、后様ほどの力はないけど…あなたがた2人の後見人になるくらいなら、できるわ」
「なんで…なんで私にそこまで。私は、私はあなたの殿下を寝取ろうとしたのよ」
「好きでやってるんじゃないって最初からわかってたもの。利害が一致するなら、協力するに越したことないわ。それに…私の生まれ、あなたも知ってるでしょう?」
「…母子で苦労したって、聞いたけど」
「そうよ。あなたと私の母の境遇は、ちょっと似てるわ。私みたいな目に、合ってほしくないわ。たとえ他人の娘でも」
リリーはカリーナの目をまっすぐ見て言った。
「嘘でしょう…そんな都合のいい話」
「確かに、后と御父上を捨てて私を信じてと言っても、いきなりは無理よね。でも私はいつでもあなたたちを受け入れるわ。だから、考えておいてちょうだい」
カリーナはしばらく沈黙したのち、ぐいっと紅茶を飲みほした。
「…おいしい」
「あら、よかった!それ、私のお気に入りなのよ。林檎とミントの香りがするでしょ?」
微笑んで説明するリリーに、カリーナは言った。
「…あなたを、信じるわ。あなたには裏がなさそうだもの…。ピオニーを、よろしくお願いします」
リリーはほっとした。と同時に少しウキウキした。
「本当!?うれしいわ。即決してくれるとは思わなかったから。ならさっそく養子縁組の手続きをしないとね。それと、この部屋をピオニーのお部屋にしましょう。子供用品を買いそろえなきゃ」
リリーは手を彼女に差し出した。
「信じてくれて、ありがとう。こちらこそよろしくね」
カリーナはぎゅっとその手を握った。久々に、人の情けに触れた気がした。
「まっったく、驚いたぞ。いつの間にやらそなたたちの中で、そんな話がついていたとは」
すべて手はずが整ってから、リリーはルセルに詳しい事を説明した。もちろん最初は良い顔をしなかったが、カリーナが気の毒な境遇にあることを知り、リリーが助ける事に最終的には納得したのだった。
手続きや準備にしばらくかかったが、とうとう明日、ピオニーとカリーナを乗せた馬車が城につくことになっている。
「楽しみですわ。賢くて、かわいらしい子なのですよ」
寝支度を終えベッドにすべりこんだリリーは、思わず思い出し笑いをした。
あれからたびたびオルラント伯の屋敷を訪れ、ピオニーに会っていたリリーは到着が楽しみで仕方がなかった。
「…以外だな。そなたがそんなに子供好きとは知らなかった」
「そうですね…たしかに、子供が大好き、というわけではないんですが」
実は、自分が母親になることに関してはあまり自信がない。いい母親になれるかどうか、わからないからだ…。
だけど、ピオニーと偶然会ったときに感じた「可愛い」という気持ちは、とても自然なものだった。
彼女にそばにいてもらうことによって、自分の頑なな部分が変わるんじゃないか。自然と母親のような気持ちになれるんじゃないか。
実はリリーの中には、そんな下心もあったのだった。
「…余も子どもは好きではない。だいたいろくに接したこともないしな。だが…」
いいよどんだルセルの顔を、リリーは見上げた。
「そなたとの子どもなら、欲しい。どんな子か、見てみたい。そう思うぞ」
その正直な言葉に、リリーは微笑んだ。
「偶然ですね。私も…同じ気持ちかも」
「なんだ、じゃあますます励まないとな」
ルセルはにやりと笑ってリリーに襲い掛かった。ルセルの体からは、太陽のような温かいにおいがする。リリーはそっと目を閉じた。
「まぁ…そう…なりますね…」
その唇に、上からルセルの唇が重ねられた。
「もう、リリーはしゃべるな。余計な事は考えず目を閉じて…今夜は余にまかせればいい」
ルセルはリリーの寝着のリボンをそっとほどいた。リリーはいつも、天使の羽のような華奢な素材のものを夜着ている。その軽い布がさらりと流れ、リリーの胸があらわになった。
(そう、リリーの胸はこうでなければ)
そのしなやかな体についた美しいふくらみに、ルセルは指を這わせた。今日は妙な下着は付けていなくて安心した。あのいやらしい感じも悪くはないが、他の者…しかもリリーの身体を知っているであろう人間が選んで与えたものだと思うと抵抗があった。
思い出すと腹が立ってきた。でもせっかくやっとベッドで2人きりなのだ。怒るよりも、快楽を与えて罰してやる…。
「あっ…ルセル様…っ…」
結婚し、幾度としてきてわかってきたが、リリーの身体は結構感じやすい。少しの刺激でも敏感に反応する。
ルセルはやわらかい乳房を指先で撫で、唇を這わせた。さくらんぼ色の乳頭を口に含むと、リリーの唇のはしから声が漏れた。
「っ…んっ…」
聞かれないよう、口をくいしばっているからそんなくぐもった声になる。リリーは自分にさんざん声を上げさせるくせに、自分はそうやってかくす癖は変わらない。
(感じやすいくせして…)
ルセルはムキになってそこを舌で攻めた。優しく吸って、舐め上げて、彼女の頭がとろけて何もかもどうでもよくなるまで…
「あっ…んんんっ…ルセル様、も、もう…」
ルセルは乳房から口をはなし、リリーの唇を唇でふさいだ。
「だから、しゃべるな…今夜はただ、可愛い声を聞かせてくれればそれでいい」
「そ、んな…あっ」
リリーの細い顎。すんなりとした首。しなやかな腕に胸、その下から美しい曲線を描いて白磁のようなお腹に、腰…
「本当に、リリー、そなたの身体は美しい…」
何度見ても、飽きない。彼女は自分の見た目に自信がないようだったが、その美しさをルセルは好んでいた。
ルセルは彼女のショーツに手をかけた。そして思った。きっとこの体を見て、同じような感想を抱いて、ショーツの紐をほどいた人物は、自分だけではないのだ…。
(だけど、彼女を…孕ませることができるのは、今や自分だけなのだ)
そう思うと、むしろ得意な気持ちになった。ルセルはそっと彼女の腹に触れた。この平らな腹が風船のように膨らむのを想像するのは難しいが、この中にいつか、自分の子がと思うと高揚する気持ちを抑えきれない。ルセルは裸になったその足を、ぎゅっと開いた。
「や、やめて…っ」
さすがに恥ずかしいのか、彼女が顔をかくした。
「い、入れて…はやく入れてくださいッ」
入れれば見えないからと、いつもリリーはこう誘導するのだ。だからルセルは意地悪く微笑んだ。
「だめだ。今日は余がそなたにやる日なのだから」
リリーが一番感じやすく、そして羞恥に耐えられないのが、ここを可愛がることだ。足を開いても、その秘部はぴたりと閉じている。その閉じ目に、ルセルはそうっと指をあてた。
くちゅ…と音がして、割れ目が開いた。中は熟した桃色の花びらだ。透明な蜜が滴っている。
「ふふ…感じているな、ここ」
ルセルがつるんとそこを触ると、リリーが声にならない悲鳴をあげた。
「っ――!」
「おっと、意味のあることをしゃべるなよ。そなたはただ感じていればよい」
花びらの中心の盛り上がった部分を、ルセルは濡らした指先でくすぐった。こうすれば愛撫しながら、彼女の表情が見れるからだ。
「っ…く…あぁんっ…」
やっと、食いしばられた唇が開き、甘い声が外へ漏れ出した。追い打ちをかけるようにルセルはそこを指で撫で上げ、揺らし、可愛がった。
「やっ…だめぇっ…も…っ…」
リリーの息が上がり、苦し気にルセルの顔を見た。
「もう、いきそうか…?」
リリーは恥ずかしさに目を閉じて、悔し気にうなづいた。
「う…ん…」
指でそこに触れながら、ルセルはリリーの耳元に唇を寄せた。
「ならいってしまえ…遠慮せずに、その顔を余に見せるのだ」
「うっ…あっ…だめ…ルセル…様っ…」
ルセルの肩腕の中で、彼女の身体がびくんと震えたのち、くたりと力が抜けた。
「ふふ…そなたのいった顔…可愛かった」
彼女はシーツを引っ張って顔をかくした。
「もう、やめてくださいよ…ひっ!?」
ルセルはいったばかりの身体のその足を開き、リリーに自分を押し当てた。十分に濡れているそこは、なんの抵抗もなくルセルの固くなった先端を受け入れた。
「それはこっちで預かるからな」
リリーが顔をかくしたシーツをはがし、ルセルは一気に腰をすすめた。柔らかいリリーの中は、湿っていて熱くて、ぎゅうぎゅうルセルを締め上げてくる…
(くっ…気を抜くと、すぐいってしまいそうだ)
いつもそうだ。だが今日は彼女の啼くのを思う存分堪能したいのだ。こらえながら、ルセルは腰を動かした。
「ひっ…ぁッ…!」
愛撫している時のこらえているような表情とは違い、中を突くとリリーは新鮮な表情を包み隠さず見せる。
「あっ…あぁっ…!」
だんだん声を抑えるのも忘れ、素の表情があらわになる。驚いているような、苦しいような、でも快楽に忠実なリリーの顔。
「気持ち…いいか…?」
ついルセルはそう聞いてしまう。素直なリリーなんて珍しいから。
「気持ち…いいっ…あぁっ…ルセル様っ…」
めったに聞けないそんな言葉に、ルセルはもう自分を抑えきれなかった。リリーの細い腰をつかんで、めいっぱい突く。
「ひゃっ…ああんっ…」
突くたびにリリーからせつない声が漏れ、その響きはルセルの頭を溶かしてしまう力を持っていた。
(ああ…もう…もうダメだ…っ)
本能のままにぎゅっとリリーを抑えつけて、その一番奥でルセルは精子を放った。
「はぁ…はぁ…っ」
結局今日も少ししか我慢できずいってしまった。荒い息をしながらちょっと落ち込むルセルに、リリーは起き上がって腕を回した。
「どうしたんです…?ルセル様は、気持ちよく、なかった…?」
「そんなことは…ない」
心配そうに自分を抱きしめるリリーに、ルセルはつい本音が漏れた。
「そなたの中が…気持ちよすぎるからいけないのだ」
「え?まぁ…うふふ」
意味がわかったのか、リリーはひっそりと笑った。
「バカにして…」
すねるルセルの頬に、リリーは軽くキスをした。
「いいじゃないですか、お互い気持ちよかったんですから…中に出るの、わかりましたよ」
その言葉に、ふとルセルは思った。
「じゃあそなたの腹の中で今、泳いでいるんだな…余の分身が」
リリーは目を細めて腹を見下ろした。ここにいつか別の命が宿るとは、今は想像もつかない。だけど…ルセルの子なら、見てみたい。
「そうですねぇ…」
リリーは肩をすくめてわらった。この手にわが子を抱く日も、近いかもしれない。
でも今は、別の女の子を待っている。可愛い女の子を。
翌日は、運のいい事に晴天だった。さわやかな風が梢を揺らす中、2人は庭で馬車の到着を待っていた。
「ああ、まだかしら」
待ちきれないように道の向こうを見つめる彼女を、ルセルは新鮮な思いで見た。
(こんな顔もするのだな、リリーは…)
そんなリリーを見ていると、ルセルもまた嬉しくなってしまうのだった。
(まったく、余はカリーナの子など興味もなかったはずなのにな)
だけどそんな風に彼女によって日常が変わっていくのは、なんとも心地よかった。
(リリーが幸せならば、余もまた幸せなのだ)
そんな当たり前のことを、今更のようにルセルは思ったのだった。
いつまでもこの幸せが続くといい。そのために自分も努力しよう。ルセルはひそかにそう決意した。
そしてリリーの手をそっと、握ったのだった。
「どうぞ。これ、一応とっておきの茶葉なの。口に合うかしら」
「…」
カリーナは浅く椅子に座ったまま、うつむいている。
「…私、戻ってもよろしいですか」
感情の見えない声でカリーナは言った。
「もちろん、戻っていいわ。でも私、あなたに話があるの。それを聞いてもらってからでいい?」
できるだけ穏やかに話かけたつもりだったが、カリーナは席を立った。その手が震えている。
「…私に説教する気?殿下が私になびかなくて、さぞ、いい気味でしょうね。あなたに叱られる間でもなく、私はもう終わりよ。だからもう帰るわ」
カリーナはくるりときびすを返した。
「まって!私、ピオニーと会ったのよ」
びくりと彼女は止まった。
「な…なぜそのことを?どうせ嘘でしょう、やめてちょうだい」
「偶然、あなたのお屋敷で会ったのよ。嘘じゃないわ。私がリンダじゃないって一目で見破ったわ。賢い子ね」
「あ…あの子の事まで調べ上げて、私をどうする気?!あの子に手を出したら、許さないわよ…!」
「ちょっと落ち着いて、私はそんな気はちっともないわ。知ってるのよ、ピオニーを縦に、あなたが御父上から脅されていること」
今度こそ、彼女の顔は衝撃でかたまった。そののち、彼女はふらふらと床に座り込んだ。
「そんなことまで…知られているのね…」
リリーは彼女を支えた。
「ほら、しっかりして?とりあえず座ってちょうだい」
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「あのね…私、あなたがルセル様の前で誘惑を繰り返すの、正直嫌なの」
「そりゃあ…そうでしょ」
彼女は力なくつぶやいた。
「でもあなただって好きでルセル様を誘惑してるわけじゃない」
「そうよ」
「それに…私たちのせいで、罪もない小さい女の子が母親と引き離されるのも、嫌なの」
「何が言いたいの」
「ねぇ、私たちの利害、一致してないかしら?」
彼女は怪訝そうな顔をした。リリーは続けた。
「あなたは娘を守りたい、私は誘惑をやめてほしい。これって両立可能よ。つまり…つまり私が、あなたとピオニーを助けるわ」
「そんなの…どうやって」
「ピオニーをいったん、私の養女にするのよ。もちろん形式上で、本当のママはあなたよ。ピオニーはお城で暮らす。で、世話係としてあなたも一緒に暮らすの。こうすれば、后も御父上も、あなたとピオニーに手を出せないでしょ?」
カリーナはまじまじと私を見た。
「嫌かしら?たしかに私、后様ほどの力はないけど…あなたがた2人の後見人になるくらいなら、できるわ」
「なんで…なんで私にそこまで。私は、私はあなたの殿下を寝取ろうとしたのよ」
「好きでやってるんじゃないって最初からわかってたもの。利害が一致するなら、協力するに越したことないわ。それに…私の生まれ、あなたも知ってるでしょう?」
「…母子で苦労したって、聞いたけど」
「そうよ。あなたと私の母の境遇は、ちょっと似てるわ。私みたいな目に、合ってほしくないわ。たとえ他人の娘でも」
リリーはカリーナの目をまっすぐ見て言った。
「嘘でしょう…そんな都合のいい話」
「確かに、后と御父上を捨てて私を信じてと言っても、いきなりは無理よね。でも私はいつでもあなたたちを受け入れるわ。だから、考えておいてちょうだい」
カリーナはしばらく沈黙したのち、ぐいっと紅茶を飲みほした。
「…おいしい」
「あら、よかった!それ、私のお気に入りなのよ。林檎とミントの香りがするでしょ?」
微笑んで説明するリリーに、カリーナは言った。
「…あなたを、信じるわ。あなたには裏がなさそうだもの…。ピオニーを、よろしくお願いします」
リリーはほっとした。と同時に少しウキウキした。
「本当!?うれしいわ。即決してくれるとは思わなかったから。ならさっそく養子縁組の手続きをしないとね。それと、この部屋をピオニーのお部屋にしましょう。子供用品を買いそろえなきゃ」
リリーは手を彼女に差し出した。
「信じてくれて、ありがとう。こちらこそよろしくね」
カリーナはぎゅっとその手を握った。久々に、人の情けに触れた気がした。
「まっったく、驚いたぞ。いつの間にやらそなたたちの中で、そんな話がついていたとは」
すべて手はずが整ってから、リリーはルセルに詳しい事を説明した。もちろん最初は良い顔をしなかったが、カリーナが気の毒な境遇にあることを知り、リリーが助ける事に最終的には納得したのだった。
手続きや準備にしばらくかかったが、とうとう明日、ピオニーとカリーナを乗せた馬車が城につくことになっている。
「楽しみですわ。賢くて、かわいらしい子なのですよ」
寝支度を終えベッドにすべりこんだリリーは、思わず思い出し笑いをした。
あれからたびたびオルラント伯の屋敷を訪れ、ピオニーに会っていたリリーは到着が楽しみで仕方がなかった。
「…以外だな。そなたがそんなに子供好きとは知らなかった」
「そうですね…たしかに、子供が大好き、というわけではないんですが」
実は、自分が母親になることに関してはあまり自信がない。いい母親になれるかどうか、わからないからだ…。
だけど、ピオニーと偶然会ったときに感じた「可愛い」という気持ちは、とても自然なものだった。
彼女にそばにいてもらうことによって、自分の頑なな部分が変わるんじゃないか。自然と母親のような気持ちになれるんじゃないか。
実はリリーの中には、そんな下心もあったのだった。
「…余も子どもは好きではない。だいたいろくに接したこともないしな。だが…」
いいよどんだルセルの顔を、リリーは見上げた。
「そなたとの子どもなら、欲しい。どんな子か、見てみたい。そう思うぞ」
その正直な言葉に、リリーは微笑んだ。
「偶然ですね。私も…同じ気持ちかも」
「なんだ、じゃあますます励まないとな」
ルセルはにやりと笑ってリリーに襲い掛かった。ルセルの体からは、太陽のような温かいにおいがする。リリーはそっと目を閉じた。
「まぁ…そう…なりますね…」
その唇に、上からルセルの唇が重ねられた。
「もう、リリーはしゃべるな。余計な事は考えず目を閉じて…今夜は余にまかせればいい」
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(そう、リリーの胸はこうでなければ)
そのしなやかな体についた美しいふくらみに、ルセルは指を這わせた。今日は妙な下着は付けていなくて安心した。あのいやらしい感じも悪くはないが、他の者…しかもリリーの身体を知っているであろう人間が選んで与えたものだと思うと抵抗があった。
思い出すと腹が立ってきた。でもせっかくやっとベッドで2人きりなのだ。怒るよりも、快楽を与えて罰してやる…。
「あっ…ルセル様…っ…」
結婚し、幾度としてきてわかってきたが、リリーの身体は結構感じやすい。少しの刺激でも敏感に反応する。
ルセルはやわらかい乳房を指先で撫で、唇を這わせた。さくらんぼ色の乳頭を口に含むと、リリーの唇のはしから声が漏れた。
「っ…んっ…」
聞かれないよう、口をくいしばっているからそんなくぐもった声になる。リリーは自分にさんざん声を上げさせるくせに、自分はそうやってかくす癖は変わらない。
(感じやすいくせして…)
ルセルはムキになってそこを舌で攻めた。優しく吸って、舐め上げて、彼女の頭がとろけて何もかもどうでもよくなるまで…
「あっ…んんんっ…ルセル様、も、もう…」
ルセルは乳房から口をはなし、リリーの唇を唇でふさいだ。
「だから、しゃべるな…今夜はただ、可愛い声を聞かせてくれればそれでいい」
「そ、んな…あっ」
リリーの細い顎。すんなりとした首。しなやかな腕に胸、その下から美しい曲線を描いて白磁のようなお腹に、腰…
「本当に、リリー、そなたの身体は美しい…」
何度見ても、飽きない。彼女は自分の見た目に自信がないようだったが、その美しさをルセルは好んでいた。
ルセルは彼女のショーツに手をかけた。そして思った。きっとこの体を見て、同じような感想を抱いて、ショーツの紐をほどいた人物は、自分だけではないのだ…。
(だけど、彼女を…孕ませることができるのは、今や自分だけなのだ)
そう思うと、むしろ得意な気持ちになった。ルセルはそっと彼女の腹に触れた。この平らな腹が風船のように膨らむのを想像するのは難しいが、この中にいつか、自分の子がと思うと高揚する気持ちを抑えきれない。ルセルは裸になったその足を、ぎゅっと開いた。
「や、やめて…っ」
さすがに恥ずかしいのか、彼女が顔をかくした。
「い、入れて…はやく入れてくださいッ」
入れれば見えないからと、いつもリリーはこう誘導するのだ。だからルセルは意地悪く微笑んだ。
「だめだ。今日は余がそなたにやる日なのだから」
リリーが一番感じやすく、そして羞恥に耐えられないのが、ここを可愛がることだ。足を開いても、その秘部はぴたりと閉じている。その閉じ目に、ルセルはそうっと指をあてた。
くちゅ…と音がして、割れ目が開いた。中は熟した桃色の花びらだ。透明な蜜が滴っている。
「ふふ…感じているな、ここ」
ルセルがつるんとそこを触ると、リリーが声にならない悲鳴をあげた。
「っ――!」
「おっと、意味のあることをしゃべるなよ。そなたはただ感じていればよい」
花びらの中心の盛り上がった部分を、ルセルは濡らした指先でくすぐった。こうすれば愛撫しながら、彼女の表情が見れるからだ。
「っ…く…あぁんっ…」
やっと、食いしばられた唇が開き、甘い声が外へ漏れ出した。追い打ちをかけるようにルセルはそこを指で撫で上げ、揺らし、可愛がった。
「やっ…だめぇっ…も…っ…」
リリーの息が上がり、苦し気にルセルの顔を見た。
「もう、いきそうか…?」
リリーは恥ずかしさに目を閉じて、悔し気にうなづいた。
「う…ん…」
指でそこに触れながら、ルセルはリリーの耳元に唇を寄せた。
「ならいってしまえ…遠慮せずに、その顔を余に見せるのだ」
「うっ…あっ…だめ…ルセル…様っ…」
ルセルの肩腕の中で、彼女の身体がびくんと震えたのち、くたりと力が抜けた。
「ふふ…そなたのいった顔…可愛かった」
彼女はシーツを引っ張って顔をかくした。
「もう、やめてくださいよ…ひっ!?」
ルセルはいったばかりの身体のその足を開き、リリーに自分を押し当てた。十分に濡れているそこは、なんの抵抗もなくルセルの固くなった先端を受け入れた。
「それはこっちで預かるからな」
リリーが顔をかくしたシーツをはがし、ルセルは一気に腰をすすめた。柔らかいリリーの中は、湿っていて熱くて、ぎゅうぎゅうルセルを締め上げてくる…
(くっ…気を抜くと、すぐいってしまいそうだ)
いつもそうだ。だが今日は彼女の啼くのを思う存分堪能したいのだ。こらえながら、ルセルは腰を動かした。
「ひっ…ぁッ…!」
愛撫している時のこらえているような表情とは違い、中を突くとリリーは新鮮な表情を包み隠さず見せる。
「あっ…あぁっ…!」
だんだん声を抑えるのも忘れ、素の表情があらわになる。驚いているような、苦しいような、でも快楽に忠実なリリーの顔。
「気持ち…いいか…?」
ついルセルはそう聞いてしまう。素直なリリーなんて珍しいから。
「気持ち…いいっ…あぁっ…ルセル様っ…」
めったに聞けないそんな言葉に、ルセルはもう自分を抑えきれなかった。リリーの細い腰をつかんで、めいっぱい突く。
「ひゃっ…ああんっ…」
突くたびにリリーからせつない声が漏れ、その響きはルセルの頭を溶かしてしまう力を持っていた。
(ああ…もう…もうダメだ…っ)
本能のままにぎゅっとリリーを抑えつけて、その一番奥でルセルは精子を放った。
「はぁ…はぁ…っ」
結局今日も少ししか我慢できずいってしまった。荒い息をしながらちょっと落ち込むルセルに、リリーは起き上がって腕を回した。
「どうしたんです…?ルセル様は、気持ちよく、なかった…?」
「そんなことは…ない」
心配そうに自分を抱きしめるリリーに、ルセルはつい本音が漏れた。
「そなたの中が…気持ちよすぎるからいけないのだ」
「え?まぁ…うふふ」
意味がわかったのか、リリーはひっそりと笑った。
「バカにして…」
すねるルセルの頬に、リリーは軽くキスをした。
「いいじゃないですか、お互い気持ちよかったんですから…中に出るの、わかりましたよ」
その言葉に、ふとルセルは思った。
「じゃあそなたの腹の中で今、泳いでいるんだな…余の分身が」
リリーは目を細めて腹を見下ろした。ここにいつか別の命が宿るとは、今は想像もつかない。だけど…ルセルの子なら、見てみたい。
「そうですねぇ…」
リリーは肩をすくめてわらった。この手にわが子を抱く日も、近いかもしれない。
でも今は、別の女の子を待っている。可愛い女の子を。
翌日は、運のいい事に晴天だった。さわやかな風が梢を揺らす中、2人は庭で馬車の到着を待っていた。
「ああ、まだかしら」
待ちきれないように道の向こうを見つめる彼女を、ルセルは新鮮な思いで見た。
(こんな顔もするのだな、リリーは…)
そんなリリーを見ていると、ルセルもまた嬉しくなってしまうのだった。
(まったく、余はカリーナの子など興味もなかったはずなのにな)
だけどそんな風に彼女によって日常が変わっていくのは、なんとも心地よかった。
(リリーが幸せならば、余もまた幸せなのだ)
そんな当たり前のことを、今更のようにルセルは思ったのだった。
いつまでもこの幸せが続くといい。そのために自分も努力しよう。ルセルはひそかにそう決意した。
そしてリリーの手をそっと、握ったのだった。
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無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
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始めはアホの子にしか見えなかった、ルセルがだんだんと格好良く思えてきました。やっぱり純情って大事。
面白いです!続き楽しみにしてます‼️
ご感想ありがとうございますm(_ _"m)
アホの子感は残しつつ、少しづつ頼れる旦那になってくれれば…と思って書いております笑
そう言っていただけてうれしいです(*´∀`*)
続きはまだ途中ですが、いずれ上げる予定ですので待っていただければありがたいです!