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翠玉と唐辛子粉
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「おっかしいなぁ。后さまはここに閉じ込められていたと思ったんだけど…」
セレンとハエは、荒らされた室内を見回した。
「どこかへ移された…?」
たしかにここにくるまで兵の一人にも出くわさなかった。ミリアネスの部屋の周辺はもぬけの殻といってよかった。
するとその時、窓の外から荒々しい歓声が聞こえてきた。2人とも窓に駆け寄り外を見た。
「セレン見て、城の門の前…!兵士が集まって、団長の話を聞いてる」
「ほんとだ、すごい数、何の話…」
セレンの声は男達の上げる鬨の声によってかき消された。その猛々しい様子から、団長が兵士たちに激を飛ばしているのだとわかった。
「トリトニアが攻めてきても!我々の父たちが築いたこの城壁の内には!一歩たりとも!踏み入れさせはせん!俺達が、それをするんだ!全員で、この国を守れ!」
その後に、また熱い雄叫びが続いた。セレンはがっくりと床にひざをついた。
「ちょっと、どうしたの!」
セレンの顔は青かった。
「トリトニア兵が来るのか、戦がはじまってしまう…!」
「そんなのさっきからわかってたことでしょ、どうしたのさ」
彼にいってもどうしようもないとわかっていたが、セレンは口を開いた。
「ミリア様はイベリス兵の手の中だ。とうぜんイベリス側は、ミリア様をトリトニアとの交渉材料に使うだろう。だが兵力の数ではトリトニアのほうが断然に勝っている。もしイベリスの条件が気に入らなければ、大公はミリア様を見殺しにして、イベリスに攻め入る可能性がある…!」
「大公って、后様の父さんでしょ?それなのに助けないの」
「ジュエルの覇権と娘の命なら、大公は前者をためらいなく選ぶ…。そういう状況になっても娘の命だけは助け出せるように、大公は私を侍女として同行させたんだ。なのに、私は…!」
セレンは頭をかかえ、髪をかきむしった。
「じゃあさ、つまりトリトニアが到着して、その交渉をはじめるまでは、后様の命は保証されるってことじゃん?」
セレンははっとしてハエを見た。
「そうか…その時間をつかって、なんとかミリア様を…ああ、ありがとう、ハエ!」
セレンはハエの手をぎゅっと握った。時間制限はあるが、希望の光が見えた気がした。
日もおちたころ。大きな箪笥の扉がギイと開かれた。
「セレン、息苦しくなかった?はい、これ」
「ううん、大丈夫。それよりミリア様の居場所はわかった?」
セレンは体をのばして箪笥から出て、ハエがどこからか失敬してきた剣を受けとった。ハエが昔、よく悪さをして閉じ込められていたというこの箪笥の中は、数時間姿をかくすにはぴったりの場所だった。
「多分、城から兵舎の地下牢に移されたんだと思う。そっちに見張りの兵たちが居るみたいだから。正攻法で入るのは、ほぼ不可能だ」
「でも、とりあえず行ってみる。私一人でいくから。ハエは来なくて、大丈夫」
セレンは上衣のフードを目深にかぶった。
「えー、ここまで来て、この先は降りろって?たのしいところなのに」
「私に手を貸したとばれたら、ハエも殺されるかもしれない。だからダメ」
ハエはふんと鼻で笑った。
「今更。宰相を殺してセレンを助けたのはぼくだよ?ぼくって結構役に立つでしょ。一緒の方が后さまを助けられると思うけど」
さっきの遊びはたのしかったのに、とでも言うような口調でハエは言った。
「たしかにハエは役に立つ。今までの子どもっぽいハエはぜんぶ演技だったんだよね。だけど…それでも君は子どもだ。いくらでも未来がある。戦に肩入れすることなんてない、始まる前にさっさと逃げたほうがいい。外も厳しいところだけど、ハエならきっと暮らしていける。だから達者で生きててほしい」
だがハエは無反応だった。
「ちょっと、聞いてる?」
彼はこくんとうなずいた。
「きいてる。ちょっとびっくりしただけ」
ハエは俯いた。衝撃を受けていた。うっとうしいお説教かと思ったら、それはハエにとって大事な言葉と同じことを言っていたのだ。
(この人…ママと同じこと言うんだな)
顔を上げると、少し上からハエを見下ろすセレンの顔があった。
(ママと同じ目の色だ…でも、同じなのは、そこだけじゃない)
リンドウは、命がけで危険な働きをしていた。ウツギの民と、ハエを守るため…。セレンも同じく、何かを守ろうと命がけの一歩を踏み出そうとしているのだ。
「ねぇ、セレン」
向き合ったままハエは聞いた。
「セレンは、何を守りたいの?」
「ミリア様に、ウツギの民たち…それと、罪のないイベリスの人たちも」
セレンは即答した。無邪気な3人の姫、優しい老兵士、ミリア様の愛した陛下、そして団長の姿が頭をよぎった。
「私一人の力でできることじゃない、それはわかっているけど…。しないわけにはいかない。だって、今動けるのは私しかいないから」
ハエは思い切ってきいた。
「ねぇ、その守りたい人の中には、僕も入っている?」
セレンは面食らった。妙な事を聞く子だと思った。
「当たり前じゃない。君は子どもだし、私をたくさん助けてくれた」
「人を殺したのに?后様に毒を盛ったのに?僕は悪い子どもだよ」
セレンは首をふった。たしかに空恐ろしい所業だが、ハエがシャルリュスを殺してくれたおかげでセレンが助かったのは事実だ。
「ハエが悪いなんて、私には言えない。私だってハエの立場なら、同じことをしたかもしれない」
「そっか…じゃ、ぼくたち似てるんだね」
セレンはうなずいた。
「そうだね…。だから私のようにならないで、生き延びてほしいと思う。リンドウもきっと、そう思ってるはず。私はもういくね。さっさと逃げるんだよ、ハエも」
「ほんとに、一人で大丈夫?」
「大丈夫。でも、イベリスを出る前に一つだけ頼みたいことがあるんだ」
「なに?」
「ウツギの村の人たちに、警告をしておいて欲しいんだ。もうすぐ戦が始まるから、安全な場所に身をかくしてやり過ごすようにと」
セレンは地下通路の場所を教え、肌身離さずもっていた翠玉を彼に与えた。
「これをあげる。闇の中でも光るから、ランプ代わりになる。ウツギについたら、スグリという男を捜して。彼に話せば、きっと長まで話がいくから」
「長って、アジサイさまのこと?」
「知ってたの?」
ハエの顔が少しくもった。
「うん。ママが教えてくれた。イベリスには、絶対に秘密なんでしょう」
「そうだ。だけどイベリスは彼女を探している…だからこそ、危険を伝えてほしいんだ。頼めるかな?」
「うん。わかった」
ハエが神妙にうなづいてくれたので、セレンはほっとした。彼とはこれでもう最後だろう。少し迷ったが、アジサイの言っていたことを伝えた。
「アジサイは、最後にリンドウを見たといってた。彼女は苦しんではいなかったと。難しいかもしれないけど、彼女に会えたら、聞いてみるといいよ」
それを聞いて、ハエは目を見ひらいた。
「最後?それって…」
「彼女の…最後の夜のこと。洞窟の地下に帰っていくリンドウの魂を、アジサイは見たといっていた」
ハエはゆっくりと目を閉じていった。
「そっか…やっぱり」
「なに?」
「なんでもないよ。警告はちゃんと伝えるから安心して。あと、これあげる。翠玉のお返しにはお粗末だけど…唐辛子の粉。目潰しに使えるよ」
ハエは手で握れるほどの小さな巾着をセレンに渡した。その目は無邪気でも、空ろでもなく、しっかりと光が宿っていた。
「ありがとう。役に立ちそう。ハエ、元気でね」
ハエは差し出されたセレンの手を握った。母と同じように、細いが硬く、頼もしい手だった。
「うん、セレンも、気をつけて」
セレンとハエは、荒らされた室内を見回した。
「どこかへ移された…?」
たしかにここにくるまで兵の一人にも出くわさなかった。ミリアネスの部屋の周辺はもぬけの殻といってよかった。
するとその時、窓の外から荒々しい歓声が聞こえてきた。2人とも窓に駆け寄り外を見た。
「セレン見て、城の門の前…!兵士が集まって、団長の話を聞いてる」
「ほんとだ、すごい数、何の話…」
セレンの声は男達の上げる鬨の声によってかき消された。その猛々しい様子から、団長が兵士たちに激を飛ばしているのだとわかった。
「トリトニアが攻めてきても!我々の父たちが築いたこの城壁の内には!一歩たりとも!踏み入れさせはせん!俺達が、それをするんだ!全員で、この国を守れ!」
その後に、また熱い雄叫びが続いた。セレンはがっくりと床にひざをついた。
「ちょっと、どうしたの!」
セレンの顔は青かった。
「トリトニア兵が来るのか、戦がはじまってしまう…!」
「そんなのさっきからわかってたことでしょ、どうしたのさ」
彼にいってもどうしようもないとわかっていたが、セレンは口を開いた。
「ミリア様はイベリス兵の手の中だ。とうぜんイベリス側は、ミリア様をトリトニアとの交渉材料に使うだろう。だが兵力の数ではトリトニアのほうが断然に勝っている。もしイベリスの条件が気に入らなければ、大公はミリア様を見殺しにして、イベリスに攻め入る可能性がある…!」
「大公って、后様の父さんでしょ?それなのに助けないの」
「ジュエルの覇権と娘の命なら、大公は前者をためらいなく選ぶ…。そういう状況になっても娘の命だけは助け出せるように、大公は私を侍女として同行させたんだ。なのに、私は…!」
セレンは頭をかかえ、髪をかきむしった。
「じゃあさ、つまりトリトニアが到着して、その交渉をはじめるまでは、后様の命は保証されるってことじゃん?」
セレンははっとしてハエを見た。
「そうか…その時間をつかって、なんとかミリア様を…ああ、ありがとう、ハエ!」
セレンはハエの手をぎゅっと握った。時間制限はあるが、希望の光が見えた気がした。
日もおちたころ。大きな箪笥の扉がギイと開かれた。
「セレン、息苦しくなかった?はい、これ」
「ううん、大丈夫。それよりミリア様の居場所はわかった?」
セレンは体をのばして箪笥から出て、ハエがどこからか失敬してきた剣を受けとった。ハエが昔、よく悪さをして閉じ込められていたというこの箪笥の中は、数時間姿をかくすにはぴったりの場所だった。
「多分、城から兵舎の地下牢に移されたんだと思う。そっちに見張りの兵たちが居るみたいだから。正攻法で入るのは、ほぼ不可能だ」
「でも、とりあえず行ってみる。私一人でいくから。ハエは来なくて、大丈夫」
セレンは上衣のフードを目深にかぶった。
「えー、ここまで来て、この先は降りろって?たのしいところなのに」
「私に手を貸したとばれたら、ハエも殺されるかもしれない。だからダメ」
ハエはふんと鼻で笑った。
「今更。宰相を殺してセレンを助けたのはぼくだよ?ぼくって結構役に立つでしょ。一緒の方が后さまを助けられると思うけど」
さっきの遊びはたのしかったのに、とでも言うような口調でハエは言った。
「たしかにハエは役に立つ。今までの子どもっぽいハエはぜんぶ演技だったんだよね。だけど…それでも君は子どもだ。いくらでも未来がある。戦に肩入れすることなんてない、始まる前にさっさと逃げたほうがいい。外も厳しいところだけど、ハエならきっと暮らしていける。だから達者で生きててほしい」
だがハエは無反応だった。
「ちょっと、聞いてる?」
彼はこくんとうなずいた。
「きいてる。ちょっとびっくりしただけ」
ハエは俯いた。衝撃を受けていた。うっとうしいお説教かと思ったら、それはハエにとって大事な言葉と同じことを言っていたのだ。
(この人…ママと同じこと言うんだな)
顔を上げると、少し上からハエを見下ろすセレンの顔があった。
(ママと同じ目の色だ…でも、同じなのは、そこだけじゃない)
リンドウは、命がけで危険な働きをしていた。ウツギの民と、ハエを守るため…。セレンも同じく、何かを守ろうと命がけの一歩を踏み出そうとしているのだ。
「ねぇ、セレン」
向き合ったままハエは聞いた。
「セレンは、何を守りたいの?」
「ミリア様に、ウツギの民たち…それと、罪のないイベリスの人たちも」
セレンは即答した。無邪気な3人の姫、優しい老兵士、ミリア様の愛した陛下、そして団長の姿が頭をよぎった。
「私一人の力でできることじゃない、それはわかっているけど…。しないわけにはいかない。だって、今動けるのは私しかいないから」
ハエは思い切ってきいた。
「ねぇ、その守りたい人の中には、僕も入っている?」
セレンは面食らった。妙な事を聞く子だと思った。
「当たり前じゃない。君は子どもだし、私をたくさん助けてくれた」
「人を殺したのに?后様に毒を盛ったのに?僕は悪い子どもだよ」
セレンは首をふった。たしかに空恐ろしい所業だが、ハエがシャルリュスを殺してくれたおかげでセレンが助かったのは事実だ。
「ハエが悪いなんて、私には言えない。私だってハエの立場なら、同じことをしたかもしれない」
「そっか…じゃ、ぼくたち似てるんだね」
セレンはうなずいた。
「そうだね…。だから私のようにならないで、生き延びてほしいと思う。リンドウもきっと、そう思ってるはず。私はもういくね。さっさと逃げるんだよ、ハエも」
「ほんとに、一人で大丈夫?」
「大丈夫。でも、イベリスを出る前に一つだけ頼みたいことがあるんだ」
「なに?」
「ウツギの村の人たちに、警告をしておいて欲しいんだ。もうすぐ戦が始まるから、安全な場所に身をかくしてやり過ごすようにと」
セレンは地下通路の場所を教え、肌身離さずもっていた翠玉を彼に与えた。
「これをあげる。闇の中でも光るから、ランプ代わりになる。ウツギについたら、スグリという男を捜して。彼に話せば、きっと長まで話がいくから」
「長って、アジサイさまのこと?」
「知ってたの?」
ハエの顔が少しくもった。
「うん。ママが教えてくれた。イベリスには、絶対に秘密なんでしょう」
「そうだ。だけどイベリスは彼女を探している…だからこそ、危険を伝えてほしいんだ。頼めるかな?」
「うん。わかった」
ハエが神妙にうなづいてくれたので、セレンはほっとした。彼とはこれでもう最後だろう。少し迷ったが、アジサイの言っていたことを伝えた。
「アジサイは、最後にリンドウを見たといってた。彼女は苦しんではいなかったと。難しいかもしれないけど、彼女に会えたら、聞いてみるといいよ」
それを聞いて、ハエは目を見ひらいた。
「最後?それって…」
「彼女の…最後の夜のこと。洞窟の地下に帰っていくリンドウの魂を、アジサイは見たといっていた」
ハエはゆっくりと目を閉じていった。
「そっか…やっぱり」
「なに?」
「なんでもないよ。警告はちゃんと伝えるから安心して。あと、これあげる。翠玉のお返しにはお粗末だけど…唐辛子の粉。目潰しに使えるよ」
ハエは手で握れるほどの小さな巾着をセレンに渡した。その目は無邪気でも、空ろでもなく、しっかりと光が宿っていた。
「ありがとう。役に立ちそう。ハエ、元気でね」
ハエは差し出されたセレンの手を握った。母と同じように、細いが硬く、頼もしい手だった。
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