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ミリアネスの覚悟
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「ありがとう…助けてくれて」
ハエに従い人気のない使用人部屋のひとつに逃げ込んだセレンは、ハエに礼を言った。だがハエはセレンを無表情に見た。いつもの彼とはまるで別人に見えた。
「おねえさん、これからどうするの。逃げる?」
セレンは首をふった。
「いいえ。ミリア様とウツギを…助けなきゃ」
「すごいね、そんなことできるの」
無感動に言うハエに、セレンは身を乗り出していった。
「ハエだって、そう思うでしょう?リンドウの、息子なら」
先ほどの発言で、セレンは改めて気がついた。髪の色も目の色も違うが、ハエの顔立ちはどこかリンドウに似ていることに。ハエは、シャルリュスとリンドウの間に生まれた子だったのだ。
「思わないよ。ぼくはウツギもイベリスもどうだっていい。ただママがいればよかった」
そういってハエは血まみれの自分の手を見た。
「あの男は、生まれたのが男だったから始末しろってママに命令した。ママがこっそり僕を逃がさなければ、ぼくはあいつに殺されてた。ママが幸せになるためなら何でもやった。2人に毒を盛ったのもぼくだ。本当はあいつももっと、苦しめて殺そうと思ってた。だけどおねえさん―セレンは僕に優しくしてくれたし、逆立ちを教えてくれたからね。あそこで殺すことにした」
セレンははっと手で口を覆った。
「うそ!?あなたがミリア様に毒を?!何で…!?」
「こんな国、こわれちゃえばいいって思ったから。ぼく一人じゃこわせないけど、トリトニアって大きい国なんでしょ?お后様が殺されればトリトニアは怒って、兵隊がいっぱいくる。そしたらイベリスはぺちゃんこになる。ママはあの男から自由になって、僕と2人で遠くに逃げるんだ…」
ハエはそういって笑った。無邪気なのに、その笑顔はどこか空虚だ。
「王が死んでもイベリスはぺしゃんこになるかなって思ったけど、結局毒で殺すのはどっちも失敗しちゃった。でももうすぐそうなるね?あの男は后様を殺そうとしたんだから。たくさんトリトニアから兵隊がくるね?だけど―だけどもう、ママはいないんだ。ぼくのせいで、ママは自分が犯人だって嘘をついて殺された」
悲劇的な告白をしているはずなのに、その顔はまだ笑っていた。どこかタガのはずれた笑いだ。セレンは思わずハエの肩をつかんだ。
「しっかりして!どうして兵がくるってわかるの?」
「だって、ぼく見たんだ。お后様が捕まる前にこっそり、もう一人の侍女を逃がしたの。彼女はきっと、兵隊をよびにいったんでしょ?」
そういえば、シザリアの姿を一度も見てない。彼女は助けを求めにいったのか。
「それなら…戦になってしまう…」
焦るセレンに。ハエは首をかしげた。
「なんで?セレンたちの目的は、それなんでしょ?」
セレンは歯噛みした。
「そう…。最終的に、イベリスを滅ぼして、ウツギを開放する…それが大公の望みだ。でも私も、ウツギも、ミリアさまも…戦いなんて、誰も望んでないんだ。どれだけ多くの人が死ぬか。戦いたいわけがない!ミリア様のお腹には、陛下の子がお腹にいるんだから!それに…」
セレンの脳裏に、トラディスの姿が浮かんだ。自分をずっと見ていたと言った彼。そのセレンの肩に置かれた、大きな手…その面影を振り払うように、セレンは首をひとふりした。
「ふーん。ま、誰を好きになろうが勝手だけど。でもセレンは今追われてる身なんだよ?戦をとめるなんて、できるの?」
セレンはハエの涼しい顔を見た。
「ミリア様のいる場所、どこだろう?教えてくれない?」
「部屋に監禁されてるよ。ドアの前には兵士達がずらりと立ってるし、一番危ないよ」
セレンは両手を合わせてたのんだ。
「お願い、一緒に来て!先に城の中をいって、どのくらい兵がいるか教えてくれるだけでいいから」
「えー…どうしようかなぁ」
「ハエしか頼れないの!あなたがリンドウが大事だったように、私にはミリア様しかいないの。だから…それに免じて、力を貸して」
必死のセレンに、めんどうになったハエは深く考えずうなずいた。
「まっ、いいよ。兵士どもをコケにするのは、面白そうだしね」
バタンとドアが開いて、兵士達がミリアネスの閉じ込められている自室へと入ってきた。
「おい、女め。あの侍女をどこへやった」
「出せ、あの汚いウツギ女を」
兵士は野太い声でミリアネスをののしり、周りをかこんだ。手足をしばられたミリアネスは悪阻のため青い顔をしていたが、それでも毅然を頭を上げて言った。
「セレンのことなら知らないわ。帰ってくるなりあなたたちが捕らえたんでしょう」
「とぼけるな!あの侍女は、宰相様を刺して逃げた!お前が指示したんだろう!」
兵士達は荒々しくベッドの下や長持ちを家捜しした。ミリアネスは内心、ほっとしていた。
(よかった…セレン、無事逃げたのね)
散々探したが何も見つからなかったので、兵士たちはミリアネスを脅した。
「トリトニアの腹黒女め!侍女2人をどこへやった!言えッ」
「知らないと言っています」
「しらばっくれやがって、このっ…!」
兵士が手を振り上げた瞬間、ドアからトラディスが入ってきた。
「何を長居している。ここにヤツは逃げていないのか?」
「はっ、いないようです。が、この女が嘘をついている可能性があります」
トラディスは、鋭い目でミリアネスを見たあと、彼女に尋ねた。
「本当にきていないのか。真っ先にここへくると思っていたが」
彼は他の兵士とちがい、淡々としていた。だがその分、冷ややかな怒りが感じられた。
「ええ。彼女の姿を見てはいないわ。帰ってきてから一度もね」
ミリアネスはうつむいて答えた。他の兵を押しのけて、トラディスは彼女の前に立った。
「…心配ではないのか」
「ええ。だから逃げてくれてよかったわ」
ミリアは静かにそういった。
「このアマ!」
「ふざけやがって!」
背後でいきりたつ兵たちを、トラディスは一瞥を投げ静めた。助けてくれる侍女も消え、たったひとりで腹の子ともども、今にも殺されてしまうかもわからない状況なのに、彼女のこの落ち着きぶりはどうしたことだろう。そこがトラディスは腑に落ちなかった。
「なぜ、そう平気な顔をしていられる?まだ何か策があるのだろう。正直に言った方が身のためだぞ」
しかしミリアネスは首をふった。
「すべて話せることは話しました。私は一人になることができたので、落ち着いているのです」
その言葉に、トラディスはわがことのように怒りがわきあがってくるのを感じた。
(では、あいつがどうなってもいいと思っているのか!?あいつはあんなにも、后のことを思っているというのに…!)
だがトラディスははっと我に返った。ミリアネスの静かな瞳が、トラディスの目を捉えたからだ。
「ごめんなさい。セレンの行方は本当にわからないのです、私にも」
心の内を見透かされたようなその言葉に、トラディスは一瞬彼女が敵であることを忘れそうになった。
「私は、これからおこる争いに2人を巻き込みたくないのです」
「なぜだ。2人とも、その覚悟で共に来たのだろう。その思いを…いらないというのか」
ミリアネスは首を横にふった。
「いいえ、いらないのではありません。ここで私のために、命を落とすことがあってはいけないからです」
「それは甘すぎる考えだ。あいつはそうは思ってはいないだろう」
「甘いでしょうか?でも私は、私のために2人に死んでほしくない。2人とも才能があり気立ての良い娘です。いくらでも未来がある。私はいつも、彼女達に守られてきた。でも最後の最後は責任を取るのは主である私。彼女たちを守るのは、この私なんです。それが人の上に立つということです」
そういいきったミリアネスの表情には、静かな厳かさが感じられた。なぜセレンがミリアネスに心酔しているのか、トラディスには少しわかった気がした。だが、どうあろうと彼女は今は敵だ。トラディスは厳しく追求した。
「では、もう一人の侍女は?お前が捕まったときにはいたはずだ、どこへ消えた?」
その質問に、ミリアネスは答えなかった。それもそうだろう。セレンの逃亡より、こちらの逃亡のほうがイベリスにとって深刻なのだ。
「答えぬか。行き先はおおかた、辺境伯の館といったところか」
ミリアネスはわずかに眉根をよせた。
「なぜ、そう思うのです」
「…彼女が消えたことに気がついた時点で兵を捜索に出したが、どこをさがしても見つからない。とくれば、イベリス兵が探せない場所へ逃げ込んだとしか考えられん。加えて今、辺境伯の館は普段からは考えられない数の兵でごった返していると報告があった。この2つを足せば、何が起こるかくらい想像はつく」
ミリアネスはゆっくり顔を上げた。背後の兵たちにも、トラディスにも、緊張が走った。
「…鋭い推測ですね、トラディス団長」
その目には悲しみが浮かんでいた。兵士達は蜂の巣をつついたように騒ぎ出した。
「やはりトリトニアの兵がイベリスに向かっているっていうのか?!」
「俺たちを潰して、ジュエルを横取りする気だ!」
「殺せ!こんな女、磔にして八つ裂きだ!」
団長は手を上げて制した。
「待て!手出しはならん!この女はトリトニアとの交渉材料だ。陛下の許可なく触れてはいかん!」
だが兵たちはの怒りはそんな説明ではおさまらない。こんな時、昔の陛下だったらどうしたか。トラディスは考えた。
「身篭っていようが関係ない!この女は今から罪人として扱う!牢に移せ!」
ハエに従い人気のない使用人部屋のひとつに逃げ込んだセレンは、ハエに礼を言った。だがハエはセレンを無表情に見た。いつもの彼とはまるで別人に見えた。
「おねえさん、これからどうするの。逃げる?」
セレンは首をふった。
「いいえ。ミリア様とウツギを…助けなきゃ」
「すごいね、そんなことできるの」
無感動に言うハエに、セレンは身を乗り出していった。
「ハエだって、そう思うでしょう?リンドウの、息子なら」
先ほどの発言で、セレンは改めて気がついた。髪の色も目の色も違うが、ハエの顔立ちはどこかリンドウに似ていることに。ハエは、シャルリュスとリンドウの間に生まれた子だったのだ。
「思わないよ。ぼくはウツギもイベリスもどうだっていい。ただママがいればよかった」
そういってハエは血まみれの自分の手を見た。
「あの男は、生まれたのが男だったから始末しろってママに命令した。ママがこっそり僕を逃がさなければ、ぼくはあいつに殺されてた。ママが幸せになるためなら何でもやった。2人に毒を盛ったのもぼくだ。本当はあいつももっと、苦しめて殺そうと思ってた。だけどおねえさん―セレンは僕に優しくしてくれたし、逆立ちを教えてくれたからね。あそこで殺すことにした」
セレンははっと手で口を覆った。
「うそ!?あなたがミリア様に毒を?!何で…!?」
「こんな国、こわれちゃえばいいって思ったから。ぼく一人じゃこわせないけど、トリトニアって大きい国なんでしょ?お后様が殺されればトリトニアは怒って、兵隊がいっぱいくる。そしたらイベリスはぺちゃんこになる。ママはあの男から自由になって、僕と2人で遠くに逃げるんだ…」
ハエはそういって笑った。無邪気なのに、その笑顔はどこか空虚だ。
「王が死んでもイベリスはぺしゃんこになるかなって思ったけど、結局毒で殺すのはどっちも失敗しちゃった。でももうすぐそうなるね?あの男は后様を殺そうとしたんだから。たくさんトリトニアから兵隊がくるね?だけど―だけどもう、ママはいないんだ。ぼくのせいで、ママは自分が犯人だって嘘をついて殺された」
悲劇的な告白をしているはずなのに、その顔はまだ笑っていた。どこかタガのはずれた笑いだ。セレンは思わずハエの肩をつかんだ。
「しっかりして!どうして兵がくるってわかるの?」
「だって、ぼく見たんだ。お后様が捕まる前にこっそり、もう一人の侍女を逃がしたの。彼女はきっと、兵隊をよびにいったんでしょ?」
そういえば、シザリアの姿を一度も見てない。彼女は助けを求めにいったのか。
「それなら…戦になってしまう…」
焦るセレンに。ハエは首をかしげた。
「なんで?セレンたちの目的は、それなんでしょ?」
セレンは歯噛みした。
「そう…。最終的に、イベリスを滅ぼして、ウツギを開放する…それが大公の望みだ。でも私も、ウツギも、ミリアさまも…戦いなんて、誰も望んでないんだ。どれだけ多くの人が死ぬか。戦いたいわけがない!ミリア様のお腹には、陛下の子がお腹にいるんだから!それに…」
セレンの脳裏に、トラディスの姿が浮かんだ。自分をずっと見ていたと言った彼。そのセレンの肩に置かれた、大きな手…その面影を振り払うように、セレンは首をひとふりした。
「ふーん。ま、誰を好きになろうが勝手だけど。でもセレンは今追われてる身なんだよ?戦をとめるなんて、できるの?」
セレンはハエの涼しい顔を見た。
「ミリア様のいる場所、どこだろう?教えてくれない?」
「部屋に監禁されてるよ。ドアの前には兵士達がずらりと立ってるし、一番危ないよ」
セレンは両手を合わせてたのんだ。
「お願い、一緒に来て!先に城の中をいって、どのくらい兵がいるか教えてくれるだけでいいから」
「えー…どうしようかなぁ」
「ハエしか頼れないの!あなたがリンドウが大事だったように、私にはミリア様しかいないの。だから…それに免じて、力を貸して」
必死のセレンに、めんどうになったハエは深く考えずうなずいた。
「まっ、いいよ。兵士どもをコケにするのは、面白そうだしね」
バタンとドアが開いて、兵士達がミリアネスの閉じ込められている自室へと入ってきた。
「おい、女め。あの侍女をどこへやった」
「出せ、あの汚いウツギ女を」
兵士は野太い声でミリアネスをののしり、周りをかこんだ。手足をしばられたミリアネスは悪阻のため青い顔をしていたが、それでも毅然を頭を上げて言った。
「セレンのことなら知らないわ。帰ってくるなりあなたたちが捕らえたんでしょう」
「とぼけるな!あの侍女は、宰相様を刺して逃げた!お前が指示したんだろう!」
兵士達は荒々しくベッドの下や長持ちを家捜しした。ミリアネスは内心、ほっとしていた。
(よかった…セレン、無事逃げたのね)
散々探したが何も見つからなかったので、兵士たちはミリアネスを脅した。
「トリトニアの腹黒女め!侍女2人をどこへやった!言えッ」
「知らないと言っています」
「しらばっくれやがって、このっ…!」
兵士が手を振り上げた瞬間、ドアからトラディスが入ってきた。
「何を長居している。ここにヤツは逃げていないのか?」
「はっ、いないようです。が、この女が嘘をついている可能性があります」
トラディスは、鋭い目でミリアネスを見たあと、彼女に尋ねた。
「本当にきていないのか。真っ先にここへくると思っていたが」
彼は他の兵士とちがい、淡々としていた。だがその分、冷ややかな怒りが感じられた。
「ええ。彼女の姿を見てはいないわ。帰ってきてから一度もね」
ミリアネスはうつむいて答えた。他の兵を押しのけて、トラディスは彼女の前に立った。
「…心配ではないのか」
「ええ。だから逃げてくれてよかったわ」
ミリアは静かにそういった。
「このアマ!」
「ふざけやがって!」
背後でいきりたつ兵たちを、トラディスは一瞥を投げ静めた。助けてくれる侍女も消え、たったひとりで腹の子ともども、今にも殺されてしまうかもわからない状況なのに、彼女のこの落ち着きぶりはどうしたことだろう。そこがトラディスは腑に落ちなかった。
「なぜ、そう平気な顔をしていられる?まだ何か策があるのだろう。正直に言った方が身のためだぞ」
しかしミリアネスは首をふった。
「すべて話せることは話しました。私は一人になることができたので、落ち着いているのです」
その言葉に、トラディスはわがことのように怒りがわきあがってくるのを感じた。
(では、あいつがどうなってもいいと思っているのか!?あいつはあんなにも、后のことを思っているというのに…!)
だがトラディスははっと我に返った。ミリアネスの静かな瞳が、トラディスの目を捉えたからだ。
「ごめんなさい。セレンの行方は本当にわからないのです、私にも」
心の内を見透かされたようなその言葉に、トラディスは一瞬彼女が敵であることを忘れそうになった。
「私は、これからおこる争いに2人を巻き込みたくないのです」
「なぜだ。2人とも、その覚悟で共に来たのだろう。その思いを…いらないというのか」
ミリアネスは首を横にふった。
「いいえ、いらないのではありません。ここで私のために、命を落とすことがあってはいけないからです」
「それは甘すぎる考えだ。あいつはそうは思ってはいないだろう」
「甘いでしょうか?でも私は、私のために2人に死んでほしくない。2人とも才能があり気立ての良い娘です。いくらでも未来がある。私はいつも、彼女達に守られてきた。でも最後の最後は責任を取るのは主である私。彼女たちを守るのは、この私なんです。それが人の上に立つということです」
そういいきったミリアネスの表情には、静かな厳かさが感じられた。なぜセレンがミリアネスに心酔しているのか、トラディスには少しわかった気がした。だが、どうあろうと彼女は今は敵だ。トラディスは厳しく追求した。
「では、もう一人の侍女は?お前が捕まったときにはいたはずだ、どこへ消えた?」
その質問に、ミリアネスは答えなかった。それもそうだろう。セレンの逃亡より、こちらの逃亡のほうがイベリスにとって深刻なのだ。
「答えぬか。行き先はおおかた、辺境伯の館といったところか」
ミリアネスはわずかに眉根をよせた。
「なぜ、そう思うのです」
「…彼女が消えたことに気がついた時点で兵を捜索に出したが、どこをさがしても見つからない。とくれば、イベリス兵が探せない場所へ逃げ込んだとしか考えられん。加えて今、辺境伯の館は普段からは考えられない数の兵でごった返していると報告があった。この2つを足せば、何が起こるかくらい想像はつく」
ミリアネスはゆっくり顔を上げた。背後の兵たちにも、トラディスにも、緊張が走った。
「…鋭い推測ですね、トラディス団長」
その目には悲しみが浮かんでいた。兵士達は蜂の巣をつついたように騒ぎ出した。
「やはりトリトニアの兵がイベリスに向かっているっていうのか?!」
「俺たちを潰して、ジュエルを横取りする気だ!」
「殺せ!こんな女、磔にして八つ裂きだ!」
団長は手を上げて制した。
「待て!手出しはならん!この女はトリトニアとの交渉材料だ。陛下の許可なく触れてはいかん!」
だが兵たちはの怒りはそんな説明ではおさまらない。こんな時、昔の陛下だったらどうしたか。トラディスは考えた。
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