女騎士と皇子

かい

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終章

幸せな家庭を

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「………ユリア…?」

目を開けると、隣にいるはずのユリアがいなくて…。窓から入ってくる風で真っ白なシーツだけがなびいていた。

「………何処に、行った…?」

あいつがいないだけで、ぽっかりと心に穴が空いた感じがする。こんなにも恋い焦がれる相手はユリアだけなんだ。

ロイドは虚空を見つめた。そして―――重い足取りで、近衛兵であるエアの元を訪れる。




「ユリア殿なら実家に帰りましたよ」

「実家…?」

エアにユリアが何処に行ったか知っているか、と聞くとすんなりとその答えは返ってきた。しかし、思わぬ答えだったが…。

「騎士団本部ですよ。何でも…皇子に言うと『行くな』と言われるから黙って行きます、だそうです。」

「――――な、それを早く言え!」

ロイドは慌てて部屋を飛び出す。よりにもよって…騎士団本部とは―――ジンの顔がふと思い浮ぶ。きっと、俺が来なかったことを嬉しがっていることに違いない。


(……思い通りにさせてたまるかッ、)


いつだって、ユリアを独り占めにしたいと思う。いつだって…俺があいつの傍にいたいんだ。

――そう想うのは罪なのだろうか…?


***


場所は変わって…騎士団本部の団長室にて、ユリアはジンとリン……そして、ユリアの子供、『ティナ』と共にいた。

「だぁっ」

ユリアに抱かれて赤ん坊は元気に笑った。

「……コイツ…皇子にそっくりだな。何かムカつく…」

「兄さん、そんなこと言うと…私ここに帰ってきませんよ?」
「なッ、そんなに皇子が好きなのか!?」
「に、兄さんっ…落ち着いて…っ! 私は兄さんのことも好きですからっ」

「あーら、そんな大胆発言していいの? 皇子が焼きもち妬くわよぉ?」

バタン、と大きな音をたてて騎士団長室の扉が開かれた。

「………別に焼きもちなんか、妬くかよ…」

「ろ、ロイド様っ?!」

「……くそ、てめぇは来なくていい」

「ジン、その言い方は冷たいわよ」

しかし、ジンの言葉なんかロイドには聞こえちゃいなかった。

「……ユリア、良かった…」
「え……?」

「探した…すごく、」

そして、愛しいそうにキスをする―――ロイドとユリアは夫婦になっていたのだ。

「ごめんなさい…勝手に出てきて」

「ああ、ユリア…あんまり出歩かないでくれ。今夜、また子作りに励むんだからな?」

ロイドはユリアの耳元で囁く。案の定、ユリアの顔は真っ赤になった。

「あ、あああのっ―――」


(恥ずかしい、ですっっ)

とろりとした目でユリアはロイドを見つめる。

「………だぁ?」

ティナが小さく首を傾げて呟いた。

「………お前らオレの部屋でイチャつくな!」


それを見ていたジンは堪らず叫ぶ。しかし、二人にはまったく聞こえていない。

そして―――再び深い口付けを交した。
きっと…今宵はもっと深い交わりが行われることだろう……そのことは間違いのないことである。


「…愛してる」

――――――それはきっと永遠。



おわり
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