女騎士と皇子

かい

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第三章:いろいろな問題を残しながらも、久々に城に帰る二人だが…?

3-1 二人はゆっくりと歩いていく

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空がしらみ始め、部屋の小さな窓から眩しい光が入ってくる。

いつの間にか、一夜を過ごしてしまったようだ。しかし、ロイドは何かを忘れていないか…と思った。
すごく大事なことだった気がするのだが。命の危機を感じるほどに…。


―――ああ、そうだ。ジンさんに捨てゼリフを吐いてユリアを連れ去ってしまったんだ。

「…………俺、もしかして死亡フラグたってる?」

ハハハ、と乾いた笑いしか出てこない。

覚悟を決めろ、俺。失いたくないんだろ、ユリアを。ジンさんくらい乗り越えてみせろ!

そして……ロイドは気合いを入れた。


***

「…………ユリア、腰大丈夫か?」

想いを伝え合ったあと、ロイドはふと思う。やり過ぎたとはっきりと言えるほど俺たちはまじわった。だから、彼女の腰はきっと痛いに違いない。

(………不公平だよな、本当に…)

だって、重なるカラダに負担がかかるのはきっと女の方だと思うから。男はいつだって、快楽だけしか味わわない。別にやり過ぎたって…腰はたぶん痛くない。

――――あの乱暴な行為を、何度も彼女は受け入れてくれた。感謝してもしきれない…。

「……ちょっと、痛いですけど…何とか大丈夫です…」
「無理すんな…しばらく休め。」
「あ…でも、兄さんが」

今は禁句の言葉をさらりと言うユリアにロイドは溜め息をつく。

「言うな。後で対処方法を考えるから」
「は、はい…」

というか、その前に辺りの状態を見て驚く。

(………何だ、これ……)

ベットのシーツはくしゃくしゃで……体液だらけ。何というか、やりまくったんだなぁとロイドは実感した。

ユリアもそれに気付いたようだった。

「ここは、遠征が多い人が使う部屋なんです。めったに使わないのですが…一応、このままでは…」

そう言って、彼女は大きな胸をしげもなく揺らし、シーツをはぎ取ってゆく。

「……いや、俺がやるから…ユリア、服を来てくれないか?」
「……え、……あの、」

(目のやりばに困るって…その胸は…。)

ロイドは今さらなのだが、ユリアの胸から視線を反らす。しかし、ユリアは戸惑い言った。

「服、ないです。…ロイド様が…破ってしまわれたので……」
「あーそうだった…」

忘れてた…。何てことしやがった、俺。

「ごめん…なら、俺の上着を着ててくれ」
「え、と……ありがとう、ございます……」

ユリアの行動の一つ一つが、可愛いなぁと思ってしまう俺は、相当バカかもしれない。でも、やっぱり…好きな女に弱いのは男のさがだ、仕方ない。

ロイドは、ユリアが服を着ている間に部屋を片付ける。

(…まったく…我ながら無茶したな、)

昨夜の光景がありありと浮かんでしまうような、そんな有り様だった。

(……えーと…これは洗濯か…?)

シーツを手にしてロイドは考えていると、ユリアが突然に話し始めた。

「ロイド様……私…ロイド様なら平気です」
「…………どした…急に?」
「もし、…私に新たな生命が宿っても…私…生みますよ」

「―――――!」

俺は忘れていた…。そういえば、俺はユリアの体内にたくさん射精をしてしまったんだ……。赤ちゃんができてもおかしくない。無責任すぎだよな…本当に。

「………ロイド、さま?」
「あ、ああ……その」

ロイドは口をにごした。

(何て言えばいい…? 一緒に育てよう? それとも、現実逃避して…赤ちゃんが出来たとは限らないだろって言う…?)

―――どっちにしても変だ。俺は……どしたらいい?

「……ごめんなさい…困らせるつもりじゃなくて、私…」
「!」

泣きそうになっているユリアを見て、ロイドは自分が情けなくなった。

(お人好しすぎなコイツを…俺は失いたくない…守りたい)

だったら、答えは一つだろ?

「ユリア…好きだ。だから…いつか俺の子、生んでくれるか?」
「は、はい…っ」


***

こうして、ロイドとユリアとの関係はまとまったが…まだジンとの問題が残っている。

二人は、新しい服に着替えて団長室に向かったのだった。


「……ジンさん…やっぱ怒ってます?」
「てめぇ、これが怒ってないと思ってンのか?」

(ああ………やっぱり、俺……どうなる?!)

「…あの呪縛を解くのに何時間もかかって…苦労したぞ、マジで。」

「……あれ、そっち……?」
「そっちとかあっちとかあるか、アホ。」
「……いや…ジンさんなら…俺を許さないと思って」
「許してないし、許そうとは思わないが?」
「う………」

言葉に詰まる。ジンの鋭い目をロイドは直視することはできなかった。

「それに」

ジンは苦々しく言う。しかし、視線はロイドではなく…ロイドの隣ですまなそうな表情をしているユリアであった。

「まったく、ユリア…お前もお前だ。色気をただれにして……オレはお前に対しても怒ってるぞ」
「………は、はい」

弁解の余地はない。こうなると、ただジンの話に耳を傾け続けるしかない。

「…だいたいなぁ、簡単に身体を許すなよ! 会ったばかりで、ユリア…人生、損してるぞ…?」
「…そうかな? 私は幸せだよ。」

えへへ、とこちらが恥ずかしくなるような笑顔で惚気のろけられて呆れてしまう。

「あーもう、お前ら…勝手にやってくれ」
「…………へ」

(…それって…許してもらえたのか……?)

ロイドは少しの希望を抱いたときに、ジンが「ただし!」と言って付け加えた。

「皇子、良い王になれ!」
「………それは…約束できません」

王家の血筋であるのは確かだけれど、ロイドは『災い』の皇子なのだ。彼が王になれる可能性は低い。

「じゃあ、一発殴っていいか?」
「………え。…ジンさん、本気で言ってます?」
「当たり前だろ。大事な妹を取られて…オレが妥協したのにもかかわらず、『約束できない』だと?」

ジンは不機嫌にロイドを見下ろす…。

「…何かを必死でやったことないだろ? だから、そんなヘタレたことを言うんだ」

胸ぐらを掴まれ、勢いよく壁に叩きつけられた。

「―――――っ」

ジンは必死だった。

「皇子が――民を想う、良い王になってくれ! …そしたら、ユリアとの関係を許してやるよッ!」

吐き捨てるように…、それでもジンは言いきった。

「…あ、ありがとう…ございます。頑張ってみます……」
「ええ、そうね……これから期待してるわよ?」

今まで、黙って聞いていたリンが静かに言った。

「リンさん………」



こうして、ジンからも少しは認められて…ロイドたちは城へと帰ることにした。
帰り際に、ジンは念を押すように告げた。

「…ちゃんと、約束を守れよ」
「分かってます」

ロイドは強く心に誓った。必ず、良い王になってやると。いや……その前に王になれるか危ういのだが。それは、これから考えていかなければならない…。
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