女騎士と皇子

かい

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閑話:それぞれの二人の談話

ふたりの談話 ロイド視点

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ロイドとユリアが初めての夜を迎えた翌日のことの話である――――

「雑念が多いぞ、ロイド」
静かにディアスが唸る。
「……すみません」
朝の日課とは言い難いけれども習慣となってしまった座禅を組んでいた。今日は滝にうたれることはなく…静かに一室で精神を安定させていた。

「昨日は……」

師匠がふとそんなことを言った。俺は目を閉じて耳をすませる。

「お前に承諾しないで『封』を解いてしまったが……すまないな。」
「やっぱり、……師匠のせいだったか」
『封』とは簡単な力封じだ。俺の力ほどになると、さほど効果はないがないよりはマシだ。
前回の『暴走』から学んで、師匠に俺の力を封じてもらったというのに…前兆がなければ、力が解きはなたれるなんてことは絶対にないのに…昨日は例外が起きてしまった。
「エアに頼まれて解いてしまったが…結果的には良かったのか?」
「良くないですよッ! てか、いつ解いたんですか? そんな素振りは全くなかったはずなのに!」
「言ってなかったか、ロイド? 離れていても解けるのだぞ。」
「言ってませんし、聞いてません!」
俺は師匠を睨みつけて怒鳴る。師匠とエアの共謀で『暴走』のきっかけを誘発してしまったなんて……許せない。
俺が苦しいんじゃない……巻き込まれてしまったユリアが一番…苦しい立場なんだと思う。
こんな王家の厄介事を一般市民にすべてを任せるなんて酷だろうに。

「……なぁ、師匠?」
「何だ、ロイド」
「いつまでアンナコトしなくちゃならないんだ?」

―――アンナコトとは……男女が共寝してやることだ。

今朝のユリアは平気な顔して笑ってたけど…身体は結構ツラいはずだ。
俺は男だからよく分からないが……初めてはすごく痛くて、精神的にも負担が大きいと聞いている。だから……なるべくしたくない、俺の精神が安定しているかぎりは。
「いつまで、とは正確には言えんが…今の状態では当分やらなくても平気だろう。『封』をしなくても、力をコントロールしてるみたいだからな」
「……そうですか」
掴みかけた、いや掴むことはないだろう……平穏な暮らしを夢見てきた。どんなに普通の人間が良かっただろうと何度も思ったことか……けれど、それは孤独だったときだけ。
今、思うのは…。

「ユリアを束縛し続けるのは嫌だ、俺は…アイツの負担になりたくない」
「ロイド……抗え。王家に……いや、お前自身の弱い心を克服しろ。お前はロイド=ハルト…王家の姓でないお前しかできないことだ。」
「……それができたら苦労はしないんですけど」
「ヘタレたことを言うな、ロイド。惚れた女にずっと助けてもらうなんて情けないぞ」
「う…」
図星をつかれ顔を熱らせた。
「…情けない…とは思ってますけど、なぜ俺がユリアに惚れたと思うのですか?」
「そんなの簡単だ。何の情もない女に優しくするほど、お前は器用じゃないってことだ」
よく分かってるな、師匠は。それほど長いときを過ごしたから当たり前なのだけれど。
「…そうですね、器用なんかじゃない……俺は…」
「お前なりのやり方でやれ。そう悩むな」
「…はい」
きっと俺はユリアを傷つけることしか今はできなくて。いつか……不器用な俺にもあいつを喜ばせることができたらいい。

今はそう願うんだ。
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