女騎士と皇子

かい

文字の大きさ
上 下
8 / 26
閑話:それぞれの二人の談話

ふたりの談話 ユリア視点

しおりを挟む
私たちが騎士団本部に出発する少し前のこと……私とエアさんの二人での話である。

「エアさん、ロイド様はもう命を狙われませんよね?」
「んー…どうでしょう? これからの貴方たち次第だと思いますよ。」
「…そう、ですか……」
(でも、当分は命の保障はあるよね……?)
エアさんの表情というか今までの言動からして私はそう悟った。

ところで、城にある一角のテラスにて話しをしている。二人っきりで…というのは初めてだから緊張する…。
ロイド様は朝の儀式とかで急いでディアスさんのもとに行ってしまったからいない。儀式とは滝にうたれる、みたいな簡単なものらしい。
災いの子だという皇子を清める意味があるのかだが…ロイド様が言うには気休めにしかならない、のだそうだ。
実際にそうだと私も思う。だって、現にロイド様は力を暴走させてしまっているから…。
私はそこまで考えて、あの行為を思い出してしまい、顔が熱ってしまった。
初めてだったから……よく覚えてないけど…とにかくロイド様にはいろいろ恥ずかしいとこを見られた気がする………いや見られた。

「にしても、見事に食われちゃいましたね?」
「くわれ……?」
エアさんの言っていることはよく分からない。ロイド様には血を吸われたらしいけど…食われてませんよ?
首をかしげて私はエアさんを見つめた。常に笑顔のエアさんがさらに笑っている。
「つまり皇子と交わりをもっちゃった、てことですよ。」
「ば……バレてたんですね」
「ええ、ばっちり。ユリア殿は、騎士だから恋愛をしている暇なんてないなどと言っていたのに……気が変わったんですか? それとも、それほどあの行為が凄かったんですか?」
「……………き、聞かないで下さいっ…そんなこと!」

(どうしてそんな変なコト聞くんですかーっ!)
顔を赤くしてエアさんを睨んでみたけれども…通用せず。しかし、ふと優しく微笑まれた。

「貴方なら皇子を任せられます。」
「え?」
「…実は、わたくしと皇子は幼馴染なんです。小さいときから…遣えておりました。だから…皇子を死なせたくはない、わたくしも…皇子を守りたい…」
「エアさん……大切なんですね、ロイド様のこと」
「はい。幼いときから忠誠を誓っていますから。たとえ、王から皇子の暗殺を命じられても殺す気は全くありませんでしたよ…」

(し、信じられない…だってあの時は本気の目でしたよ?)
私が疑惑の目で見ていたら、エアさんがクスリと笑う。
「貴方がいましたから。ユリア殿が皇子を狙っているのかもしれない、と疑っていたんで小芝居しました。悪かったですね、」
あははーと軽く言われた。そんな理由で私は毒で死にかけたかと思うと恐ろしい。

「………いいです、もう…それより、王族でも貴族でもない…ただの小娘に皇子の命を預けて良いのですか?」
「…いいんですよ。貴方がアナタであれば…わたくしは満足です。」
「…………?」
「好きなんでしょ、皇子を。」
「―――――――っ」

図星をつかれた。私は黙って頷くしかない。

「貴方がアナタのままで皇子を好いてくれるなら、わたくしは皇子の命を預けられる。幸い、皇子には正室はいないし、取らなければならないこともない。」

「…………それは、災いの子、だからですか?」
災いの子は…子孫を残すべからず。そんな決まりでもあるのだろうか…。
「まあ…そんなとこですかね。ただ単に王族では皇子の嫁など軽視されているだけなんですけどね。災いの長子に子などできたら厄介ですし。」
なるほど、だから私はすんなりココにいられるのですね。皇子に正妻などいたらただ事では済まされないと思うし。
私は変な納得をする。
「…だから、ユリア殿は存分に皇子といちゃついていいんですからね。」
「いちゃ……?!」
「それとも、勢いで正妻になっちゃいますか? 平民でも騎士で手柄を立てれば、それなりの身分は貰えますから。皇子と結婚できますよ?」
「け、けっこん………!?」
ありえない言葉に戸惑ってしまう。身分差なんて計り知れないほどあるというのに。年齢だって六歳ほど離れているというのに…結婚なんて恐れ多いことだ。
「ロイド様は…こんな小娘を好きになんてなりませんよ。あの方はお優しいから私を労ってくれますけど…愛は感じてくれないでしょう。それでも、私は側でロイド様を助けられれば充分です。幸せなんです」
「…………素晴らしいほど鈍いんですね。皇子もそうですけど…お互いをもっとた方がいいですよ?」
「え?」
「騎士団本部で…貴方たちの関係が賛同されるか分かりませんが…」
「え? でも、兄さんは好きにしたらいいって…」
「言葉でそうは言っても実際は違うかもしれない。頑張って下さいよ? 反対されて皇子と引き離されたりでもしたら守れるものも守れませんから。」
「はい。私がロイド様を守ります」
「よろしくお願いします。ユリア殿しか出来ないことですから……」
にこやかに彼らの談話は終わった…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

【R18】突然召喚されて、たくさん吸われました。

茉莉
恋愛
【R18】突然召喚されて巫女姫と呼ばれ、たっぷりと体を弄られてしまうお話。

騎士団長の欲望に今日も犯される

シェルビビ
恋愛
 ロレッタは小さい時から前世の記憶がある。元々伯爵令嬢だったが両親が投資話で大失敗し、没落してしまったため今は平民。前世の知識を使ってお金持ちになった結果、一家離散してしまったため前世の知識を使うことをしないと決意した。  就職先は騎士団内の治癒師でいい環境だったが、ルキウスが男に襲われそうになっている時に助けた結果纏わりつかれてうんざりする日々。  ある日、お地蔵様にお願いをした結果ルキウスが全裸に見えてしまった。  しかし、二日目にルキウスが分身して周囲から見えない分身にエッチな事をされる日々が始まった。  無視すればいつかは収まると思っていたが、分身は見えていないと分かると行動が大胆になっていく。  文章を付け足しています。すいません

【R18】貧しいメイドは、身も心も天才教授に支配される

さんかく ひかる
恋愛
王立大学のメイド、レナは、毎晩、天才教授、アーキス・トレボーの教授室に、コーヒーを届ける。 そして毎晩、教授からレッスンを受けるのであった……誰にも知られてはいけないレッスンを。 神の教えに背く、禁断のレッスンを。 R18です。長編『僕は彼女としたいだけ』のヒロインが書いた異世界恋愛小説を抜き出しました。 独立しているので、この話だけでも楽しめます。

年上彼氏に気持ちよくなってほしいって 伝えたら実は絶倫で連続イキで泣いてもやめてもらえない話

ぴんく
恋愛
いつもえっちの時はイきすぎてバテちゃうのが密かな悩み。年上彼氏に思い切って、気持ちよくなって欲しいと伝えたら、実は絶倫で 泣いてもやめてくれなくて、連続イキ、潮吹き、クリ責め、が止まらなかったお話です。 愛菜まな 初めての相手は悠貴くん。付き合って一年の間にたくさん気持ちいい事を教わり、敏感な身体になってしまった。いつもイきすぎてバテちゃうのが悩み。 悠貴ゆうき 愛菜の事がだいすきで、どろどろに甘やかしたいと思う反面、愛菜の恥ずかしい事とか、イきすぎて泣いちゃう姿を見たいと思っている。

【R18】国王陛下に婚活を命じられたら、宰相閣下の様子がおかしくなった

ほづみ
恋愛
国王から「平和になったので婚活しておいで」と言われた月の女神シアに仕える女神官ロイシュネリア。彼女の持つ未来を視る力は、処女喪失とともに失われる。先視の力をほかの人間に利用されることを恐れた国王からの命令だった。好きな人がいるけどその人には好かれていないし、命令だからしかたがないね、と婚活を始めるロイシュネリアと、彼女のことをひそかに想っていた宰相リフェウスとのあれこれ。両片思いがこじらせています。 あいかわらずゆるふわです。雰囲気重視。 細かいことは気にしないでください! 他サイトにも掲載しています。 注意 ヒロインが腕を切る描写が出てきます。苦手な方はご自衛をお願いします。

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

【R18】幼馴染の男3人にノリで乳首当てゲームされて思わず感じてしまい、次々と告白されて予想外の展開に…【短縮版】

うすい
恋愛
【ストーリー】 幼馴染の男3人と久しぶりに飲みに集まったななか。自分だけ異性であることを意識しないくらい仲がよく、久しぶりに4人で集まれたことを嬉しく思っていた。 そんな中、幼馴染のうちの1人が乳首当てゲームにハマっていると言い出し、ななか以外の3人が実際にゲームをして盛り上がる。 3人のやり取りを微笑ましく眺めるななかだったが、自分も参加させられ、思わず感じてしまい―――。 さらにその後、幼馴染たちから次々と衝撃の事実を伝えられ、事態は思わぬ方向に発展していく。 【登場人物】 ・ななか 広告マーケターとして働く新社会人。純粋で素直だが流されやすい。大学時代に一度だけ彼氏がいたが、身体の相性が微妙で別れた。 ・かつや 不動産の営業マンとして働く新社会人。社交的な性格で男女問わず友達が多い。ななかと同じ大学出身。 ・よしひこ 飲食店経営者。クールで口数が少ない。頭も顔も要領もいいため学生時代はモテた。短期留学経験者。 ・しんじ 工場勤務の社会人。控えめな性格だがしっかり者。みんなよりも社会人歴が長い。最近同棲中の彼女と別れた。 【注意】 ※一度全作品を削除されてしまったため、本番シーンはカットしての投稿となります。 そのため読みにくい点や把握しにくい点が多いかと思いますがご了承ください。 フルバージョンはpixivやFantiaで配信させていただいております。 ※男数人で女を取り合うなど、くっさい乙女ゲーム感満載です。 ※フィクションとしてお楽しみいただきますようお願い申し上げます。

処理中です...