彼の真意は誰にも知られてはいけない

かい

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本編

第一話 従順になれない獣は欲望のまま乱れ身を焦がす

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※この話は少しだけ大人な表現が入っております。
苦手な方はご注意ください。
では、大丈夫な方だけお読みください。










天上を見上げてイクーー。

白い液体が、天上に向けて噴射された。
下半身を露出した青年は何回目かの絶頂を達したようだ。

彼は下半身だけでなく、鍛え上げられた身体をすべてさらし、立派になったモノをいきり立たせ、快楽を求めていた。

「……はぁっ…はっ」

一人暗い部屋のベッドのうえで、息をあらげ、その膨張ぼうちょうして硬くなった棒を手で擦る。
自分の手だけではあまり興奮しないのだが、彼はひたすらに自分の欲望を吐き出さなければいられなかった。
止まらないのだ、彼女から来た手紙を目にしてから。

今さらだが、彼の名は、レグナルドという。初老に拾われたあの時の少年である。

レグナルドは、女性にモテるであろう、その整った顔を歪め、異様に大きく硬くなったモノをさらに速く速く上下に動かした。

立派なものをお持ちである、とその肉棒を間近で見た女性は恍惚こうこつそうに言ったな、とふと彼は思った。

容姿もさることながら、筋肉質の肉体は、女性をとろけさせる要因であったのだ。
それでも、レグナルドは彼女に、たった一人の自分のあるじに想ってもらいたかった。
大勢の女性ではなく、たった一人の人にこれをーー大きくなりすぎた狂った棒を……はやく、

ーー入れてしまいたい。

彼は何度も何度も、想像の中で想い人をけがしていく。

駄目だと思うのにやめられない。

彼女は、自分にとって聖域なのに。


ぶしゅー!!

彼女の無垢な笑顔を思い出した瞬間、想いと体液が溢れ出した。


こんなみっともない姿は誰にも見せられない。

白くねばねばした濃い液が、寝台を汚した。
それを白い紙で拭き取り、ゴミ箱へ投げる……がうまく入らない。
拾い上げるのも面倒だな、と彼はため息をつきつつ、白い紙が散乱した部屋を眺めた。
……今誰かが入ってきたら何も言い訳できないな、とレグナルドは自嘲ぎみに笑った。
だって、これは明らかに自慰行為なのだから。
手に入らないと分かってはいても求めてしまう。彼女との『交わり』を想像してしまう。
情けないにも程があるではないか。
ーーそれでも、コシコシと気持ちよくなるまで擦る。
この卑猥な行為で少しは気が紛れるから。

(好きです、好きーー)

これを見たら人は絶対に純粋な『想い』ではないというだろう。

彼女を想像で汚し、犯してーー気持ちを発散している。
彼女が知ったら、軽蔑するだろう。
まさに部屋に散らばっている白い紙のゴミのように、汚い! と言われるかもしれない。

(ーーそんなこと、可愛らしい我が主は言わないかもしれませんが)

汚いとは無縁の生活をしている主、セシリア姫をレグナルドは想った。

記憶の中では、少女の姿でしか知らないので、彼の頭の中の姫はずっと小さなレディのままだ。

可憐で可愛らしく、純粋なまま。
男の欲望はまったく知らない綺麗なお姫様だ。


ところで、レグナルドの自慰は、兵士の詰め所でおこなわれている。
剣の技術を学び、国のために働く者たちが住む場所。

レグナルドは、他国から来たということで優遇され一人部屋にしてもらえた。

他国から剣術や兵法を学ぶのは珍しいのだが、彼が許されたのには理由がある。

和平を結んでいる国の友好の証として、自国の軍事のことを学んできて良いと言われたのだが、彼の居た国・ルーナ王国は小国のため、軍事力は弱く、兵士の数は少ない。
その為か、学ぶのはレグナルド一人だけだったのだ。


隣国に学びに来てから六年経ったーー

必死に学んだ剣術は他の誰よりも強くなった。

ただ、あるじに六年も会えなくて彼の欲望は異様に膨れあがってしまったのだ。


主から来た手紙を広げて、欲情する。

ーーああ、これは彼女の指が触れていてたものだと。

考えるだけで、イキそうになる。


指のこすれる音。ぐちゃぐちゃに、めちゃくちゃに、想像のなかだけで彼女を穢した。


「……あと、少しでーー」

また果てそうだ。


彼は息を切らし、擦る速度を上げた。

一気に気持ちが高ぶっていく。

あっ、と下半身から子種になる液を放出させた。

頭の中が一瞬、真っ白になる。


「うっ……」


(これで何回目だろうか)


イキたくて、擦っていたモノから白いねばねばしたものを何度も放出したのだが。
ぼんやりと彼はこの行為の多さに我ながら引いてしまった。

とてつもなくいけないことのような気がするのに止められない。男の象徴がまた元気にむくりと起き上がった。
尽きない欲望に呆れつつ、それでも久しぶりの休暇でまってしまったそれを吐き出していた。


「………セシリア様っ」


自分にとって神聖な、彼女の名前を呟く。

ひたすらにただ彼は自分を慰めていた。


手に入らないと分かっているが、彼女への偶像ぐうぞうを抱きながらひたすらに欲を満たす行為も、実際に彼女に会えたらどうなるのか。

獣のように襲ってしまいたくなるのかーー。

いや……それだけは、理性で押さえるしかない。

だって、嫌われたくない。

こんな歪んだ想いを知られたくない。


レグナルドは、必死に自分のなかだけで彼女の想いを消化しようとした。


『好き』と素直に言える立場ではない彼は、何度もこの想いを捨てようとした。
けれど、彼女の健気に振る舞う姿、下の者にも優しく労ってくれる、そんな姿をそばで見ていたら捨てるなんてできなかった。

もう、ダメだった。
彼女を、愛さずにはいられない。
ーーその『想い』は六年経ってもなくならなかった。



(……あれから六年になるのか)

外国に軍事を学びに行く、という主を第一に考えてきた彼にとって酷な修行に来てからというもの、寂しくないように彼女とは文通のやりとりをずっとしていた。
心配でたまらなかったというより、彼が彼女との繋がりを求めたからだ。

彼女の手紙の最後は必ず、『会いたいわ』、と書かれていた。

(俺も会いたいです、あなたに)



彼女に会えるのは、あと数日。

小さい頃しか知らない彼女は、18歳のレディになっているはずだ。

こんなみだら行為をする俺は、きっと彼女にはふさわしくない。

それでも、会いたいのだ。

会って話すだけでいいのだ。


……その行為だけでは足りないことは分かっているのだが、他人に彼女をめちゃくちゃに傷つけられるくらいなら、自分が傷つけてしまいたいという、複雑な『想い』をどうしていいか分からずーー

レグナルドは、どこまでも無条件で信頼してくれる彼女に、優しい笑顔の仮面をつけてーー彼は姫に会いにいく。

綺麗な部分だけを見せる彼のやり方は、会えないより苦しいことになるかもしれないが、レグナルドは彼女『だけ』の幸せを願ったのだった。
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