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かい

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本編

03話

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年を重ねることだけが、大人になることじゃない。

柳瀬やなせってさ、どこか他人を寄せ付けないオーラが出てるよなぁ」

「オーラって何だよ?」
「雰囲気」
「意味を聞いてるんじゃねえ」

「ほら、すぐに怒鳴らないの!」
「誰のせいだよ?!」

「もーぅ、榎戸えのきどさんが困ってるでしょ。ねぇ?」

「…あ、え…」

突然、話題をふられた榎戸が慌てている。

「…何で、お前がいるんだ」

「会いたいからでしょー」

雨森あまもりも! 何でいんだよ!!」

「会いたいからだよ☆」

「帰れ」

殴りてえ、空高く殴り飛ばしてえ。

同僚に殺意を目覚めてしまうのは、許してほしいと思う。

ノリが軽いし、馴れなれしいし。

「雨森先生! 分かりますよ、その気持ち!!」

「でしょ~」

「お前ら出てけ」

***

「ふぅ…」

嵐のような奴らだ、と思い溜め息をついた。

―――ガラ。
準備室の扉がふいに開いた。

「失礼します…雨森先生いますか?」

「ん? …あぁ、真千まさちか」

雨森の弟がふいに入ってきた。

兄弟で先生と生徒の関係なんて珍しいと思う。割りと常識人な弟だから、兄と比べると天使だ。

少々、大袈裟すぎたか。

だが、兄の失態を弟の真千が何かとフォローしてくるので、雨森と上手くやっているようなものだ。

「さっき、俺が追い出した」

「そうですか…」

「どうした、何かあったか?」

「ええ、俺たち勝手に生徒会役員になってたんですよ…兄貴のやつ…」

「俺、たち?」

見るところによると、真千まさち一人しかいないように見えるが…
そう疑問に思っていると、真千は慌てて付け加えた。

「俺と同じクラスの飯塚いいづかも兄の被害にあったんですよ」

「…ああ」

確か、雨森と一緒に住んでいる生徒の名前が飯塚と言っていた気がする。

雨森は何を考えているんだか。

「諦めろ。アイツが言い出したことは、絶対だからな」

「…よく分かってますね」

一瞬、驚いたあと真千は微笑を浮かべていった。

「兄と仲良くしてやって下さい。あれでも、良いヤツですから」

「ああ、そうだな」

どっちが年上か分からないな…と、そんなことを思いながら真千を見遣った。

「お世話になります」

そう告げて真千は部屋を出ていった。

「…まったくだ」

溜め息と共に出た言葉は、不思議と嫌な感じはなかった。

昔なら、人と関わることさえ苦手としていたのに。

「変わったよな、俺も」

荒んでいた、あの頃の俺を思い出すと心が重くなる。そうだ、あの頃は笑うことも忘れていたんだ。
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