【なろう490万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ

海凪ととかる

文字の大きさ
184 / 244
ノアズアーク編

第184話 45日目⑦夜のお楽しみを予約をする

しおりを挟む
 休憩のために仮拠点に戻ってきて振り返れば、土台と梁材を組んだだけのまだ始まったばかりのマイホーム建設現場が目に入る。
 最初が肝心だからきちんと水平にできるかが一番の課題だったが、なんとか上手くいって土台と梁は見たところ特に傾きは気にならない。まあ精度は低いとはいえペットボトルの水平水準器で計りながら組んではいるんだから見て分かるほどの傾きがあったらまずいわけだが。
 土台が傾いているとその上に建てるすべてに影響するから、最初の傾きは可能な限り小さくしておくに越したことはない。

「ガクちゃん、手がにかわでベタベタなんだけど、これって水洗いで落ちるかな?」

「おう。膠は化学接着剤と違って水洗いでもすぐ落ちるぞ。でもぬるま湯の方がよく落ちるからちょっと待ってな」

 膠まみれの手で困り顔の美岬のために、バケツに湯と水を混ぜてぬるま湯を準備してやる。
 そこに美岬が両手を突っ込んで揉み洗いで汚れを落としていく。

「あは。気持ちいい~! いい湯加減でビバノンノンっす。膠もポロポロ取れるっすね」

「そういえば、膠はコラーゲンの固まりだから手についても手荒れするどころか綺麗になるって聞いたことあるな」

「ほほう! マジすか! ならあたしはこれからも膠係に立候補しちゃうっすよ!」

「……お、おう。それはいいけど、そもそもみさちは手荒れとか今のところ無縁だろ?」

「まあそうなんすけどね。そもそも手荒れってどうしてなるんすかね?」

「主に水仕事で使う湯と洗剤のせいで手の皮脂が洗い流されて、皮膚の保湿ができなくて乾燥してひび割れるのが原因だな。それをそのまま放置すると手の皮がだんだん硬くなってきてますます割れやすくなる。あと消毒用の塩素が手に付いたままなのもいけないな。あれは本当に手がぼろぼろになるから辛い」

「……なんか実感こもってるね」

「ホテルの厨房一年目にケアを怠ってひどい目にあったよ。それからは気をつけてたから大丈夫だけどな」

「ガクちゃんも色々経験してきてるんだね。……うん。汚れが綺麗に落ちた。心なしかお肌がプルプルになった気が……」

「ん。まあ本人がそう思うならそうかもな」

「むう、張り合いない返事っすねー。嫁の手が綺麗になるのには興味なしっすか」

 ぷうっと頬を膨らませながら俺の前で挑発げに動かされる美岬の手を取ってしげしげと見つめ、ぷにぷにと触る。

「うーん、言われてみればプルプルになっている気もしないではないが、元々がみずみずしくて張りのある綺麗な手だから多少上乗せされても違いが分からないんだよな」

「……ちょ、そっち? ってかいつまで揉み揉みしてるんすか」

「いやー、いつまでも触っていたいこの絶妙な柔らかさがたまらんなー。可愛くて綺麗な手だなー」

 揉み揉みして撫で撫でして擦り擦りして、手の甲に口付ける。

「はわわわっ! わ、わかったから! もうおしまい!」

 顔を真っ赤にした美岬に手を振りほどかれて体の後ろに隠されてしまった。

「おや、残念」

「もぅ~、触りかたがエッチすぎ。ガクちゃんってまさかの手フェチだったの?」

「いやそんなことないぞ。まあ強いていうなら美岬フェチ?」

「……なにその広さ」

「美岬を構成するすべての要素が愛しいから髪の毛からつま先まで愛でる自信はあるぞ」

「おうふ。旦那さまの愛が重いよぅ。髪の毛からつま先まで愛でるとかわけわかんないし」

「実演してやろうか?」

「…………そ、そういうのはまた夜にお願いします」

「残念」

 俺としては他愛ないスキンシップと言葉遊びのつもりだったのだが、俺の態度が誤解を与えてしまったようで──

「…………えっと、もしかして、夜まで我慢するのがしんどい感じ? それなら危険日終わってるし、今から準備してこようか?」

 と、潤んだ瞳で上目遣いにそんなとんでもないことを提案してきた。準備とはつまり避妊用のスポンジをアレするってことだ。
 突然のお誘いに一瞬で突沸しそうになったが、いやいやいや、となけなしの理性を総動員して踏み留まる。

「……ちょ、今のは破壊力やばすぎ。むしろそれで理性吹っ飛びそうになったんだけど」

「え? あれ? 違った?」

「うん。俺としてはちょっとした言葉遊びと戯れのつもりだったから、そりゃあ多少のスキンシップはしたかったけど、本番は夜のお楽しみということで今するつもりはなかったかな。まだこれから作業を予定してるわけだし、時間に追われてのつまみ食いみたいなセックスはしたくないな」

「つまみ食いセックスって上手い言い回しだね」

「セックスはただの性欲発散じゃなくて愛し合う二人の大切な愛情表現の方法だからな。俺にとって美岬と愛し合う時間は本当に幸せで大切にしたい時間だから、空いた時間に急いで済ますような合間作業みたいにはしたくないんだよな」

「ふふ。ガクちゃんってけっこうロマンチストだよね。あと、あたしのこと好きすぎでしょ。でも、言いたいことは分かるよ。あたしもエッチのあとでまったりしながら眠くなるまでおしゃべりするの好きだし。ガクちゃんがあたしとのエッチの時間をすっごく大切にしてくれてるのがよく分かって嬉しかったし」

「そか。まあその、ここのところご無沙汰だったから、今夜はじっくり愛し合いたいと思ってるけど」

「はーい。ご予約承りました。じゃあ、お風呂も早めに準備しておくね」

「おう。なら晩飯も早めに用意しておいた方がいいな。……朝の中華スープが残ってるから、餅を作り足して、干物の魚を焼くぐらいでいいかな。とりあえず3時ぐらいまで休憩してからデッキ作りを再開して、4時半ぐらいで今日の作業は切り上げる感じでどうかな?」

「うん。あたしもそれでいいよ。じゃあちょっと休憩しましょっか」

「飲み物はコーヒーでいいか?」

「あざます」

 二人の穏やかな午後の時間が過ぎていく。





【作者コメント】
 週末なのでもう本日2話目の更新。

 水仕事をしていると手荒れって深刻な問題ですよね。これは自分自身が普段からやっていて、職場の新人が水仕事の手荒れに悩んでいた時にやらせてみて効果があった手荒れ対策ですが、ハンドクリームを手に擦り込んだ上で使い捨てのニトリルグローブ(手にフィットするやつ)を履いて作業するといいですよ。手荒れがひどい方の場合はハンドクリームに加えて軟膏薬も塗ってニトリルグローブを履いておくと劇的に改善します。


しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。 ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。 しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。 奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。 そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...