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ノアズアーク編
第178話 45日目①あれから1ヶ月。岳人の朝
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自然に目が覚めた時、まだ周囲は真っ暗だったが、朝独特の空気の匂いというか、雰囲気でだいたいいつもの目覚めの時間だと覚る。暗がりの中、腕時計をチェックしてみれば、蓄光の文字盤は5時頃を指していた。
カレンダーの日付は26。フェリーの沈没から始まった漂流生活も今日で45日目になる。9月も終わり近くなるとさすがに日の出も遅い。今は5時半を過ぎないと空も白んでこない。
朝晩はすっかり涼しくなり、寝る時に薄手のブランケットがないとちょっと肌寒い。幸いにして徳助氏の遺品にはそういう寝具類も含まれていたのでありがたく使わせてもらっている。この島で暮らしていく上で必要な物は徳助氏がだいたい持ち込んでくれていたので本当に助かっている。おかげさまで本来ならそういう物を作るために使うはずだった時間を別の作業に充てることができている。
一緒に寝ていた美岬を起こさないようにそっと寝床から抜け出そうとすると、今までくっついていた温もりを求めるように美岬が身動ぎしたのでブランケットを首元まで掛けてやれば、美岬は眠ったまま器用にクルクルとブランケットを身体に巻き付けてミノ虫状態になり、幸せそうな寝顔で再び熟睡モードに入った。その可愛い寝姿に思わず口許が緩む。
美岬との初めてのセックスから1ヶ月。美岬の次の生理が来るまでは、俺たちがしている避妊法に本当に効果があるのか内心かなりハラハラしていた。特に避妊スポンジ法に切り換えてからは体感的には普通に生でやってるわけだし。
しかし、俺たちの心配をよそに美岬の生理は約2週間後に予定通り来たので、頸管粘液法と避妊スポンジ法にはちゃんと効果があったのだと二人でホッと胸を撫でおろした。……確信に至るにはもう数ヶ月必要だとは思うが。
蛇足だが、避妊スポンジ法で膣の奥にスポンジを入れておくとオリモノや生理の経血をある程度吸い取ってくれるそうで、生理用品の代用品として使えると美岬が喜んでいた。使い捨てのナプキンはまだ残っているが、ここでどれだけの期間暮らすことになるか分からない以上、いずれ代用品が必要になるのは明白だったわけだし。
これまでは生理がかなり重い方だったという美岬だが、今回はまったく前触れ無しにいきなり始まったからスポンジを入れてて良かったと言っていた。前の晩の行為の後始末として洗うために取り出したスポンジに血が付着していて生理に気づいたとのこと。
しかも今回は生理そのものがかなり軽かったとのことで、その辺は食生活や生活習慣の変化によるところが大きいのでは? と考察している。食べ物の質は本土にいた頃とは比べ物にならないほど向上してるしな。
そんなことをつらつらと考えていると、つい美岬の夜の乱れた姿を思い出してムラムラしてくる。特にこの4日間はお預けだったから尚更だ。
オギノ式による計算と頸管粘液法によるダブルチェックで昨日までの4日間が危険日だったから、二人で決めた通りセックスは当然のこととして気持ちが昂らないようにスキンシップも控えめにしていたから少々欲求不満気味だ。
美岬の命に関わる大切なことだから二人でちゃんと危険日に関する情報は共有している。二人がきちんと危険日を把握して注意していればそういう日に盛り上がってつい、という事故も避けられるし、実際にそれで上手くいっていると思う。
昨日で一応危険日は終わっているから今日からまたセックス解禁ではあるが、やるべき仕事がたくさんあるから朝っぱらから盛るわけにはいかない。
これ以上この空間にいると自制が利かなくなりそうだからさっさと外に出て作業を始めるとしよう。
テントの外に這い出せば、ひんやりした朝の澄んだ空気が頭を冷やしてくれる。周囲は木に囲まれ、地面には落ち葉が厚く積もり、頭上にはブルーシートのタープ屋根。ここは新居の建設予定地のそばの林の中に設営した仮拠点だ。
洞窟内で見つかったテントはポールが折れていた以外は特に破損していなかったのでポールを修理して寝床として使っている。
ここは水場もすぐそばだし、トイレとかまどと風呂もすでに近くに移設済みだからそれなりに快適に暮らせている。
徳助氏の遺品を砂浜の拠点内に収納したら俺たちの生活スペースが無くなってしまったので、そちらは今後は倉庫として使うことにして、生活の拠点をこちらに移し、これまで新居の建築の準備を進めてきた。
必要な建材は、丸太、葦、粘土、枯れ草、ロープ、木釘、接着剤の膠ってところだな。これらがとにかく大量に必要になる。このうち膠は海竜の皮や骨を使って作って板状に乾燥させたものがすでに十分ある。
ちゃんとした斧が手に入ったので立ち枯れの木を切り倒す手間と時間が大幅に短縮され、ここのところしばらく木こりに勤しんでいたのですでにかなりの量の丸太が仮拠点の周囲に積み上がっている。伐採して乾燥中の葦の束もたくさんある。
隙間時間を活用して、伐採した木から落とした堅い小枝をナイフで削って木釘を作ったり、葛の生糸をより合わせてロープを作ったりもしているが、こちらももうかなりの量ができている。
これだけあればそろそろ新居の建設を始められそうだな。
毎朝の日課としてかまどに火を入れ、ダッチオーブンで湯を沸かし始める。砂浜の拠点の炊事場で使っていたかまどは石を組んだだけの小さい1口のものだったが、こちらで新しく作り直したかまどは石の隙間に粘土をモルタル代わりに挟みながら成型したので頑丈さとサイズアップを両立でき、ダッチオーブンと大コッヘルを同時に使えるように2口にしてある。形状も燃焼効率を考えて古い日本家屋の土間にあるような半球を2つ並べたような昔ながらの形のかまどに寄せてある。
かまどの火が安定する頃には、薄暗いがなんとか動き回れる程度には明るくなってきているので、小川に掛けた丸太の橋を渡り、ショートカットルートを通って葛の群生地に行き、葛の蔓と葉を採取して仮拠点に戻る。
集めてきた大きめの葛の葉はトイレットペーパーの代用品なので、まとめてトイレに運び込み、中に置いてある専用の篭に補充しておく。
トイレの中にはもう一つ別の篭もあり、それには麻袋がセットしてあり、中には腐葉土が入っている。これは便の上から掛けて埋めるためのものだ。当初の目的は便を隠し悪臭を抑えることだったが、腐葉土に埋めることで分解が促進されて早く嵩が減り、トイレを長く使えることが判明した。まあ、一種のバイオトイレだな。
来たついでにトイレで用を足してスッキリしてからかまどのところに戻り、ダッチオーブンで沸いている湯に木灰を混ぜ、蔓を茹でていく。
ダッチオーブンは大コッヘルよりも容量が大きいので一度に茹でられる葛の蔓の量が増え、取れる繊維の量も増えた。
茹でて軟らかくした蔓を小川のそばに新しく掘った発酵槽に運び入れ、そこに元から入っていた発酵済みの蔓を入れ替えで出し、小川で洗って繊維だけにして干す。この干した繊維──葛緒は美岬が夕方に回収してくれる。
小川の洗い場のすぐそばには、新しく建てた風呂小屋がある。小屋といっても雨の日に濡れないように四隅の柱を立てて茅葺き屋根をつけただけの東屋みたいなものだ。
屋根の下には風呂桶である大型クーラーボックスとその隣に湯を沸かすための専用のかまど、洗濯物を入れるための篭があり、地面には細い木で作った『すのこ』が敷いてある。これがないと足裏がドロドロになるから風呂に入れるようになってすぐに作った。
洗濯篭には昨夜、風呂に入る前に脱いだ洗濯物が二人分入っているので、風呂の残り湯にかまどの灰を混ぜてアルカリ性にして、そこに洗濯物を入れて洗い、洗濯篭に出して小川の洗い場に運び、濯いで干しておく。これも夕方に美岬が風呂の準備のついでに回収してくれる。
はっきりと役割分担しているわけじゃないが、暗黙の了解でなんとなくそういうルーティンが出来上がっている。
とりあえず早朝の作業が終わったので、タープ下の炊事場に戻り、大コッヘルで湯を沸かし、煎ったドングリの殻を煮出してドングリ茶を作っておく。ルイボスティーに似た味と香りで俺と美岬のお気に入りだ。
その匂いに釣られたかどうかは分からないが、テントの出入り口が開き、美岬がのそのそと這い出してくる。
「おはよう。みさち」
「……うぅ……ん。おふぁ……よっす、ガクちゃん。ふわぁ……」
眠そうに欠伸をしながら近づいてきた美岬が俺の背中におぶさるように抱きついてきて、肩越しに俺の頬に頬擦りしてくる。
「んふふ。お髭もここまで伸びるとチクチクじゃなくてモフモフっすね。適度な硬さによる弾力が堪んないっす」
「伸ばしっぱなしじゃなくて一応整えてはいるけどな」
毎日髭を剃るのはこの状況では現実的ではないので、最近は伸びた髭をなるべく見苦しくないように整えるように気を付けている。
「それはちゃんと分かってるっすよ。旦那さまは今日もワイルドダンディで素敵っす」
いたずらっぽく笑いながら美岬がチュッと頬に口付けしてくる。まったくこいつには敵わないな。
「……ドングリ茶ができてるけど飲むか?」
「わぁい! ちょうど温かい飲み物が欲しかったんすよ」
「じゃあ飲みながら今日の予定を決めようか」
時間は朝の6時半。周囲もだいぶ明るくなってきた。見上げた薄紫の空は高く、遥か上空の鰯雲が朝陽を受けて金色に輝いている。
俺と美岬の新しい一日が始まる。
【作者コメント】
今回から第三部スタートです。本編の前話である15日目から1ヶ月後の45日目、日付では9/26となります。今回からは1日1話更新となります。
のっけから生々しい話となりましたが、リアリティ重視のサバイバルハウツー物を目指しているこの作品としては避けては通れない重要なポイントですゆえ、こういう話が苦手な方もご理解いただければ幸いです。二人が採用している避妊法である松の精油由来の殺精子ゼリー、避妊スポンジ法、頸管粘液法、オギノ式について詳しくは12日目⑩⑪にて説明してあります。
ペッサリーについては、現在の避妊スポンジ法に不満がないので二人はそもそも手を出していないようです。
カレンダーの日付は26。フェリーの沈没から始まった漂流生活も今日で45日目になる。9月も終わり近くなるとさすがに日の出も遅い。今は5時半を過ぎないと空も白んでこない。
朝晩はすっかり涼しくなり、寝る時に薄手のブランケットがないとちょっと肌寒い。幸いにして徳助氏の遺品にはそういう寝具類も含まれていたのでありがたく使わせてもらっている。この島で暮らしていく上で必要な物は徳助氏がだいたい持ち込んでくれていたので本当に助かっている。おかげさまで本来ならそういう物を作るために使うはずだった時間を別の作業に充てることができている。
一緒に寝ていた美岬を起こさないようにそっと寝床から抜け出そうとすると、今までくっついていた温もりを求めるように美岬が身動ぎしたのでブランケットを首元まで掛けてやれば、美岬は眠ったまま器用にクルクルとブランケットを身体に巻き付けてミノ虫状態になり、幸せそうな寝顔で再び熟睡モードに入った。その可愛い寝姿に思わず口許が緩む。
美岬との初めてのセックスから1ヶ月。美岬の次の生理が来るまでは、俺たちがしている避妊法に本当に効果があるのか内心かなりハラハラしていた。特に避妊スポンジ法に切り換えてからは体感的には普通に生でやってるわけだし。
しかし、俺たちの心配をよそに美岬の生理は約2週間後に予定通り来たので、頸管粘液法と避妊スポンジ法にはちゃんと効果があったのだと二人でホッと胸を撫でおろした。……確信に至るにはもう数ヶ月必要だとは思うが。
蛇足だが、避妊スポンジ法で膣の奥にスポンジを入れておくとオリモノや生理の経血をある程度吸い取ってくれるそうで、生理用品の代用品として使えると美岬が喜んでいた。使い捨てのナプキンはまだ残っているが、ここでどれだけの期間暮らすことになるか分からない以上、いずれ代用品が必要になるのは明白だったわけだし。
これまでは生理がかなり重い方だったという美岬だが、今回はまったく前触れ無しにいきなり始まったからスポンジを入れてて良かったと言っていた。前の晩の行為の後始末として洗うために取り出したスポンジに血が付着していて生理に気づいたとのこと。
しかも今回は生理そのものがかなり軽かったとのことで、その辺は食生活や生活習慣の変化によるところが大きいのでは? と考察している。食べ物の質は本土にいた頃とは比べ物にならないほど向上してるしな。
そんなことをつらつらと考えていると、つい美岬の夜の乱れた姿を思い出してムラムラしてくる。特にこの4日間はお預けだったから尚更だ。
オギノ式による計算と頸管粘液法によるダブルチェックで昨日までの4日間が危険日だったから、二人で決めた通りセックスは当然のこととして気持ちが昂らないようにスキンシップも控えめにしていたから少々欲求不満気味だ。
美岬の命に関わる大切なことだから二人でちゃんと危険日に関する情報は共有している。二人がきちんと危険日を把握して注意していればそういう日に盛り上がってつい、という事故も避けられるし、実際にそれで上手くいっていると思う。
昨日で一応危険日は終わっているから今日からまたセックス解禁ではあるが、やるべき仕事がたくさんあるから朝っぱらから盛るわけにはいかない。
これ以上この空間にいると自制が利かなくなりそうだからさっさと外に出て作業を始めるとしよう。
テントの外に這い出せば、ひんやりした朝の澄んだ空気が頭を冷やしてくれる。周囲は木に囲まれ、地面には落ち葉が厚く積もり、頭上にはブルーシートのタープ屋根。ここは新居の建設予定地のそばの林の中に設営した仮拠点だ。
洞窟内で見つかったテントはポールが折れていた以外は特に破損していなかったのでポールを修理して寝床として使っている。
ここは水場もすぐそばだし、トイレとかまどと風呂もすでに近くに移設済みだからそれなりに快適に暮らせている。
徳助氏の遺品を砂浜の拠点内に収納したら俺たちの生活スペースが無くなってしまったので、そちらは今後は倉庫として使うことにして、生活の拠点をこちらに移し、これまで新居の建築の準備を進めてきた。
必要な建材は、丸太、葦、粘土、枯れ草、ロープ、木釘、接着剤の膠ってところだな。これらがとにかく大量に必要になる。このうち膠は海竜の皮や骨を使って作って板状に乾燥させたものがすでに十分ある。
ちゃんとした斧が手に入ったので立ち枯れの木を切り倒す手間と時間が大幅に短縮され、ここのところしばらく木こりに勤しんでいたのですでにかなりの量の丸太が仮拠点の周囲に積み上がっている。伐採して乾燥中の葦の束もたくさんある。
隙間時間を活用して、伐採した木から落とした堅い小枝をナイフで削って木釘を作ったり、葛の生糸をより合わせてロープを作ったりもしているが、こちらももうかなりの量ができている。
これだけあればそろそろ新居の建設を始められそうだな。
毎朝の日課としてかまどに火を入れ、ダッチオーブンで湯を沸かし始める。砂浜の拠点の炊事場で使っていたかまどは石を組んだだけの小さい1口のものだったが、こちらで新しく作り直したかまどは石の隙間に粘土をモルタル代わりに挟みながら成型したので頑丈さとサイズアップを両立でき、ダッチオーブンと大コッヘルを同時に使えるように2口にしてある。形状も燃焼効率を考えて古い日本家屋の土間にあるような半球を2つ並べたような昔ながらの形のかまどに寄せてある。
かまどの火が安定する頃には、薄暗いがなんとか動き回れる程度には明るくなってきているので、小川に掛けた丸太の橋を渡り、ショートカットルートを通って葛の群生地に行き、葛の蔓と葉を採取して仮拠点に戻る。
集めてきた大きめの葛の葉はトイレットペーパーの代用品なので、まとめてトイレに運び込み、中に置いてある専用の篭に補充しておく。
トイレの中にはもう一つ別の篭もあり、それには麻袋がセットしてあり、中には腐葉土が入っている。これは便の上から掛けて埋めるためのものだ。当初の目的は便を隠し悪臭を抑えることだったが、腐葉土に埋めることで分解が促進されて早く嵩が減り、トイレを長く使えることが判明した。まあ、一種のバイオトイレだな。
来たついでにトイレで用を足してスッキリしてからかまどのところに戻り、ダッチオーブンで沸いている湯に木灰を混ぜ、蔓を茹でていく。
ダッチオーブンは大コッヘルよりも容量が大きいので一度に茹でられる葛の蔓の量が増え、取れる繊維の量も増えた。
茹でて軟らかくした蔓を小川のそばに新しく掘った発酵槽に運び入れ、そこに元から入っていた発酵済みの蔓を入れ替えで出し、小川で洗って繊維だけにして干す。この干した繊維──葛緒は美岬が夕方に回収してくれる。
小川の洗い場のすぐそばには、新しく建てた風呂小屋がある。小屋といっても雨の日に濡れないように四隅の柱を立てて茅葺き屋根をつけただけの東屋みたいなものだ。
屋根の下には風呂桶である大型クーラーボックスとその隣に湯を沸かすための専用のかまど、洗濯物を入れるための篭があり、地面には細い木で作った『すのこ』が敷いてある。これがないと足裏がドロドロになるから風呂に入れるようになってすぐに作った。
洗濯篭には昨夜、風呂に入る前に脱いだ洗濯物が二人分入っているので、風呂の残り湯にかまどの灰を混ぜてアルカリ性にして、そこに洗濯物を入れて洗い、洗濯篭に出して小川の洗い場に運び、濯いで干しておく。これも夕方に美岬が風呂の準備のついでに回収してくれる。
はっきりと役割分担しているわけじゃないが、暗黙の了解でなんとなくそういうルーティンが出来上がっている。
とりあえず早朝の作業が終わったので、タープ下の炊事場に戻り、大コッヘルで湯を沸かし、煎ったドングリの殻を煮出してドングリ茶を作っておく。ルイボスティーに似た味と香りで俺と美岬のお気に入りだ。
その匂いに釣られたかどうかは分からないが、テントの出入り口が開き、美岬がのそのそと這い出してくる。
「おはよう。みさち」
「……うぅ……ん。おふぁ……よっす、ガクちゃん。ふわぁ……」
眠そうに欠伸をしながら近づいてきた美岬が俺の背中におぶさるように抱きついてきて、肩越しに俺の頬に頬擦りしてくる。
「んふふ。お髭もここまで伸びるとチクチクじゃなくてモフモフっすね。適度な硬さによる弾力が堪んないっす」
「伸ばしっぱなしじゃなくて一応整えてはいるけどな」
毎日髭を剃るのはこの状況では現実的ではないので、最近は伸びた髭をなるべく見苦しくないように整えるように気を付けている。
「それはちゃんと分かってるっすよ。旦那さまは今日もワイルドダンディで素敵っす」
いたずらっぽく笑いながら美岬がチュッと頬に口付けしてくる。まったくこいつには敵わないな。
「……ドングリ茶ができてるけど飲むか?」
「わぁい! ちょうど温かい飲み物が欲しかったんすよ」
「じゃあ飲みながら今日の予定を決めようか」
時間は朝の6時半。周囲もだいぶ明るくなってきた。見上げた薄紫の空は高く、遥か上空の鰯雲が朝陽を受けて金色に輝いている。
俺と美岬の新しい一日が始まる。
【作者コメント】
今回から第三部スタートです。本編の前話である15日目から1ヶ月後の45日目、日付では9/26となります。今回からは1日1話更新となります。
のっけから生々しい話となりましたが、リアリティ重視のサバイバルハウツー物を目指しているこの作品としては避けては通れない重要なポイントですゆえ、こういう話が苦手な方もご理解いただければ幸いです。二人が採用している避妊法である松の精油由来の殺精子ゼリー、避妊スポンジ法、頸管粘液法、オギノ式について詳しくは12日目⑩⑪にて説明してあります。
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