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箱庭スローライフ編
第119話 12日目⑨おっさんは彼女の誘惑に白旗を上げる
しおりを挟む拠点に戻り、石鹸作りに使った大コッヘルに水を入れてこびりついた石鹸を溶かして石鹸水にして、それをかまどの火に掛けて温め、触った感覚でだいたい40℃ぐらいにする。
それを持って美岬と一緒に小川に向かう。すでに時間は夜中の12時近くなっており、月はまだ昇っていないので、満天の星空から降り注ぐ弱い青い光が箱庭を照らしている。
目が慣れれば案外星明かりの下でも動けるものだ。ここでLEDライトなんかを使ってしまうとライトで照らした範囲外は見えなくなってしまうので、かえって見える範囲が狭くなってしまう。
小川に着けば、普段は特に意識していない水のせせらぎの音さえ聞き取れる。視覚が制限されるとそれ以外の感覚が強化されるというがその通りだな。
「さて、じゃあ髪を洗ってやるから地面に膝をついて頭だけ突きだして」
「あ、服が濡れちゃうから上だけ脱ぐっす」
「お、おい」
止める間もなく美岬がTシャツを脱いでスポブラ姿になる。薄暗がりの中で下着姿になった美岬から目を離せなくなる。
巨乳とまではいかないまでもそこそこのボリュームのある双丘が魅惑的な曲線を描き、それに押し上げられて隙間の広がった裾からはほどよく引き締まったお腹とへそが見えている。
「……そ、そんなにしげしげと見られてしまうと、いくら暗いっていってもさすがに恥ずかしいっす」
「う……あ、すまん。つい」
美岬の顔を見ればこの暗がりでも分かるほど恥ずかしそうにしている。
「……えっと、そのっすね、一応言い訳みたいなものをさせてもらうと、女子高生って、まだ体型とか胸のサイズとかけっこう変わるんで、スポブラの子って多いんすよ? あたしだってダーリンに会う前の数ヵ月で急に太ったり、胸も大きくなったりしたっすし」
「…………ん? いったい何を言ってるんだ?」
「や、だから……こんな色気も何もないスポブラじゃなくて、フリルとか付いてる可愛いブラの方がいいっすよね? でも、そういう大人なブラってけっこう高いんで、女子高生でも見せる彼氏がいない子はたいていスポブラなんすよ。あたしもまさか自分に彼氏ができるとは思ってなかったんで油断してたというか……」
なんか思いもよらぬところで女子高生のリアルな実態を聞かされてしまったが、そんなことはどうでもいい。
「あのな、美岬。フリルつきの可愛い下着の方がいいとか、スポブラは色気がなくて可愛くないとか、それはあくまで女子の価値観だからな? 少なくとも俺にとって、今の美岬はめっちゃ色っぽいし、もうほんとに可愛いすぎて色々ヤバいことになってるからな」
「はえぇ!? ダーリンはこういうのが好みだったんすか?」
「たしかに好きではあるけどな! でもそういう好み云々じゃなくて、好きな女が俺の前で服を脱いで下着姿で恥ずかしがってる、っていうこのシチュエーションがほんとにエロすぎてヤバいから」
「あぅ……そう言われると、はしたないっすね」
すでに自分自身ギンギンになってしまっていて、抑えるのが辛い。美岬のこの、自分の魅力に無自覚で誘惑してくるのが本当に困る。
「あまり誘惑されると自制が利かなくなりそうだから、こういうのはちょっとやめてほしいかな。美岬は自分の魅力に無頓着すぎるぞ。きちんと避妊ができない現状セックスは出来ないんだから、正直、生殺しでキツすぎる」
正直、もう色々と限界すぎて情けないと思いつつもつい泣き言じみた懇願をしてしまう。しかし、美岬の返答は斜め上のものだった。
「…………ちゃんと避妊が出来るようになったら、抱いてくれるっすか?」
「いや、その美岬に魅力がないから俺がセックスを拒んでるような言い方やめてくれる? そもそも今だってめっちゃ頑張って自制心で抑え込んでる状態なんだから、ちゃんと避妊できるんならとっくに抱いてるし! ただ前も言ったけど、この状況での妊娠は本当に美岬の命に関わるから。俺のたった一人の愛する女の命と天秤にかけるなら、避妊出来ないセックスを我慢するのは当然のことだから。……それでも、本能が美岬を抱きたがってるから正直しんどいんだよ」
俺が絞り出すようにそう言うと、美岬が泣きそうな顔をする。
「あたしも、本能がダーリンに抱かれたがってるから今の状況が辛いっす。それに、大好きなダーリンにずっと我慢させてるのも辛いっす。……だから、もう言っちゃうっすけど、今、避妊薬を作ろうとしてるんす」
美岬が耳を疑うようなことを言う。
「……は? そんなの作れるのか?」
「たぶん作れるっす。あたしが学校で所属してた“有用植物研究会”は本来は大学のサークルで、そこに附属高校の高校生も参加してるって形だったんで、大学生のお姉サマの中には大人なテーマの研究をしてる人もいて、それこそ、文明が崩壊してコンドームやピルが手に入らなくなった状態で妊娠せずにエッチする方法を本気で研究してる人がいたんすよね。まあ、それで……その研究資料なんかにもちょっと目を通したりしてて……」
それを聞いて文字通り闇路に光明が差し込むような錯覚を覚えた。
「すごいじゃないか! 俺としてはその研究をしてた先輩とやらにノーベル賞をあげたいぐらいだ」
「あは。ほんとっすね。ただ、ここには顕微鏡とかが無いから作った避妊薬の効果の実験観察ができないんすよね。だから、その避妊薬だけに頼るんじゃなくて、いくつかの避妊法を複合的に使わなきゃいけないと思うんすよ。それで、その方法についてダーリンの知恵を借りたいなぁ、と」
「おう。そういうことならいくらでも協力するぞ」
「じゃあ、拠点に戻ってからあたしの知ってる情報と問題点を説明するっすね」
「おっけ。……あー、なんか思いっきり脱線したけど、とりあえず髪を洗おうか?」
「あ、はい。お願いするっす♪」
美岬が地面に膝をついて正座して、頭だけ前に突きだす。これはあれだな。時代劇の切腹の介錯のポーズだ。
髪を洗う時にスポブラの肩ひもが濡れないように、美岬の肩に広げたタオルを掛けてやり、しゃべっている間に幾分か温くなってしまった石鹸水を両手で掬って美岬の頭にかけていく。
「ちゃんと目を閉じてないと目に入ったら沁みるからな?」
「はーい。ああ~……なんかこの温さが気持ちいいっす」
十分に髪を濡らしてから、両手の指の腹で頭皮をマッサージするように優しく満遍なく洗っていく。
「……あ。……ああん。……あ、そこ、いい。……あん!」
床屋とかでも理髪師に髪を洗ってもらうのは確かに気持ちがいいから声が出るのは分かるんだが、いちいち艶っぽく喘がれると心穏やかではいられない。まあ、この島にいる間はお預けだと思っていた美岬とのセックスが現実味を帯びてきたことでちょっと心のゆとりはできたが。
一度洗っただけでは泡立たないので、もう一度石鹸水を掛けて洗っていけば今度は少し泡立ち、髪の脂っ気も綺麗に落ちる。リンスがないのでしっとりはさせられないが、それでもハマナスのいい香りになる。
最後は小川の水で洗い流し、肩に掛けてたタオルで水気を拭き取ってやる。
「はい。一丁上がり。いい匂いになったな」
「ほわぁ! めっちゃ気持ちよくってサッパリしたっす。あざっす! じゃあ、今度はあたしがガクさんの髪を洗ってあげるっすよ」
「そうか。じゃあ頼む。服が濡れるから上だけ脱ぐぞ」
「え? ちょ、待って……ぴゃあ!」
こっちばかり動揺させられていることへのリベンジとして、シャツを脱いで上半身裸になると美岬が悲鳴を上げて両手で自分の目を覆うが、明らかに指の隙間が開いている。
「……そんなにしげしげと見られてしまうと、いくら暗いといっても恥ずかしいんだが?」
わざとさっきの美岬と同じように返してやれば、からかわれたと気づいた美岬がぷぅっと膨れる。
「むぅ……そんなこと言うなら、正々堂々とじっくり見てやるっすよ」
「え、ちょ待て! おい!」
美岬がにんまりと笑いながら近づいてきて、本当に俺の身体をしげしげと観察し始める。
「……むぅ、なんすかこの身体。服の上からでも筋肉質なのは分かってたっすけど、ムッキムキじゃないっすか! 贅肉が一欠片もなくて、お腹とかバキバキに割れてて、でもボディビルダーみたいな極端な筋肉じゃなくて……理想的な細マッチョっすね。この身体、本当に30代半ばの中年っすか? ちょっと、どれぐらい固いのか触ってみていいっすか?」
「ええーい! やめい! あとお触り厳禁!」
「むむ、残念。その筋肉を堪能するのはまた今度、ダーリンに抱かれる時まで取っておくっす」
美岬が心底残念そうに伸ばしかけていた手を引っ込める。なんだろうこの敗北感。とりあえず、一つ確実に言えることは、美岬はけっこう肉食系女子だ。
【作者コメント】
いや、美岬さん、あんたなんでそこでいきなり脱ぐかなっ? それするのはもうちょっと先の予定だったでしょうが!
そんなわけで、次回はサバイバルな状況下での避妊セックスの話となります。まあ正直、こういう生々しい話は苦手な方もおられるでしょうが、サバイバル状況下での妊娠と出産は女性にとってリアルに命の危険となるので、知識として知っておきたいと思われる方も多いでしょう。
作者の知る限り、サバイバルをテーマにした作品でこの課題に真剣に取り組んでいる作品はないので(避妊せずにセックスしているのに何故か妊娠しない作品はあるが)あえて真っ正面から取り組んでみようというのが実はこの作品の主要なテーマの一つでした。かなり真面目に調査して、いくつか正解と思われる方法にたどり着いたので、その情報を共有したいと思っています。
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