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    昼 宿屋ボダン 自室

    さて、暫くはやることもないので、例のスキル、『ゲル』の能力の確認でもしようと思う……。一応失敗しても大丈夫なように周りのものは退けておいたし、準備は満タンだ!あ、そうだ。汚れないように服も脱いだ方が良かな?うん。脱ごう!服の替えはあるけど無駄遣いはよくないし。何より洗うのメンドクサイ!

「よっこらせ。」

    思い立ったが吉日と。
    俺は椅子から立ち上がる。
    靴を脱ぎ、靴下を脱ぎ、コートを脱ぎ、畳んでベッドの脇に置く。そのままベルトを外してズボンを半ばまで下ろした所で絶叫と右ストレートが優を襲った。

「な、ななな!何いきなり脱ぎ出してんのよ!へ、変態!露出魔!痴漢!」

    片足になった時に見事決まったストレート。
    ズボンが脚に絡まり、面白いように転げ回る。
    それをエリザが抱き止めて、漸く回転が止まり、回る視界で原因を見ると顔を真っ赤に染めた王女がいた。
    何時もほぼ下着な姿(下着+シースルー)で寛いでるから、てっきり下着の露出は気にしない人間だと思ってたが、……違ったみたいだ。
    自分はよくても他人がしてるのを見るのはダメパターンだったらしい。

    拳を握り第二擊に入ろうとするリリーに、俺は両手を前に出し抵抗を表すが、

「ご、誤解でぶほ!」

    弁明する暇もなく攻撃は直撃。
    ポカポカと無数の拳が顔面を見舞う。そして、その度に後頭部に柔らかい二つの感触が伝わる。
    むにゅっむにゅっと程好い弾力で。押し潰されては健気に返ってくる二つの球体。豊かな乳房が頭を包み、薄手のシャツの布越しに張りのある膨らみを感じ。

「っ!」

    変な声が出てしまったぞ。恥ずい!

「あらあらぁ?」

    エリザは妖艶に笑うと、右手で優の頬を撫でた。そのまま唇に触れ、首を伝い、胸筋と腹筋を擦り、さらに這うよにう右手を下へと動かす。

「ふふふふふ」
「お、おい!何して!て、痛い!痛い!」
「変態!変態!変態!変態!変態!変態!変態!」

    ポカポカポカと王女様の攻撃で意識は前へ………。
    
「痛い!!ちょ、たんま!たんま!たんま!誤解!誤解です!スキルの確認しようと思っただけです!見せつけてた訳じゃないっす!マジで!」

    痛みに抗えず、俺は両手をガードに回す。必死で弁明を繰り返すも攻撃は依然継続中。

    その間にもエリザは俺の股間を布越しに撫で回す。
     手付きは次第に厭らしさを増し、布越しに指を絡めたり、上下に動かしたりと小癪にも俺を馴れさせない。
    しかも、まるでこのカオスを楽しんでいるかのような妖艶な声で息を吐き掛ける。

―――マズイ!

    瞬間にそう思った。

    何がマズイのか分からない。しかし、身体中を熱が脈打つような温度が襲い、きしかんを覚える悪寒を感じるのだ。

―――このままだとマズイ!

    何とか逃げ出そうと体を動かすが、如何せん二対一だ。お嬢様を傷つけるわけにはいかないし、変な所を触られてるので力が伝わらない。
    おまけにエリザが絶妙な立ち位置で体を絡めてくるので、動くことすらままならない。

「ちょっと!エリザさん?!これ以上はマズイ!何か出そう!何か出そうだから!」
「構わないわよ?少し汚れるくらい」
「いや、違う!そう言う次元じゃないと思うから!」
「あらあらあらぁ」

この時、俺は既にこの先何が起こるか理解していた。
あの時と同じ“熱“が自分を襲っている。
俺が王国から追われる身になったあの昼と同じ魔力が!

マズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイ

    霧散する理性をかき集めて何とか魔力を押し止める。しかし、此方の苦労も知らないで二人の熱はヒートアップ!
エリザがパンツの中に指を入れ、その指を※※の先端に添えた時、俺の中で何かがプツリと切れた。

ドピュッドピュドピュドピュドピュドピュ―――!!!

白濁液が部屋中に飛び散り、直後、部屋を絶叫が支配した。



    五分後。
    汚れた床を拭き、エリザに説教をし、コーヒーで一息尽いた後、俺は再度仕切り直しをした。

「よし、始めるか!」

    依然格好はパン一のまま俺は胡座をかいている。その横にエリザが興味深げに陣取り、リリー王女はやや離れたベッドの上で遠巻きに退避。

「何の能力なの?」
「ん?ああ、幻想級のスキルだ。」
「幻想級にエグいスキルよ。」

    エリザ、俺、リリーと言葉のバトンを回し、最後にエリザに返ってきた。
     彼女は珍しくも頭上に?を浮かべ、俺とリリーを交互に見回して、

「それは幻想級じゃないって事かしら?」

頬に左手を当てて問い返した。

「いや、幻想級であることは確かだ。」
「自己申告だけどね。」
「いや、ホントだから。」
「どっちでもいいけれど……。それ、どんな能力なの?」
「それはさっきの……いや、もう一度見た方が早いだろ?」

    俺は一瞬言葉を言い淀み、口での説明を避けた。
    右手を前に出し、血液のように魔力を送る。


―――威力は抑え目、掌からのみの放出。量も少な目に……。


    次の瞬間、ドピュッドピュドピュとゲルが吹き出し、眼前の容器にゲルが溜まった。

「うん、威力と量と部位の指定は問題ないみたいだな。」

    俺は大方予定通りの結果に満足げに首肯いた。
    それを見てリリーは「何で得意気なのよ」とやや引き気味の突っ込み、エリザは観察するようにゲルを見る。
    手で取り、臭いを嗅ぎ、指触りを確認して、そのまま口に持ってきて味を確認する。
    「やめなよー」と言うリリーの忠告を無視し、その動作を三回繰り返し、

「?何かしら?無味無臭……何かネバネバトロトロしてるけど………。」

    ゴクンと喉を鳴らし、口内のものを躊躇いなく飲み込む。
    その未知に対する無鉄砲さは頼もしさすら感じさせた。
    もしかしたらエリザは科学者だったのかもしれない。それも狂気の付く方の。でも、

「た、食べて大丈夫だったのか?自分で言うのもなんだが、腹壊すぞ?」

「んん?食べた感じ問題無さそうだったわよ?それに私は生まれてこのかた体を壊したことがないのよ?」

「そ、そうか。ならいい……のか?」

    頭を捻る俺。
    心配顔の王女。
    エリザは頓着なしに、ぶつぶつと専門用語ぽいものを呟いている。

「何か分かるのか?」
「まあ、少しだけ。生でも確かめたいから直接私の口にいれてくれないかしら?」

    口を大きく開け、どうぞぉ?と言ってくるエリザ。
    ホントに良いのだろうか?
    能力が分かるなら越したことはないのだが、無駄な苦労を掛けてるようで申し訳ない。

「気にしなくていいわ?未知の解明は私の趣味だから?」

「そ、そうか。なら遠慮なく入れるぞ?」

    右手をエリザの口に押し入れる。
    彼女は口を楕円に歪ませ、「うっ」と涙目に。

「わ、悪い!」
「気にしひゃいでふふけなさい?能力ひひたいんでほ?」


    言葉にならない言葉で答える。

    美女の変顔とはどうしてこう性欲を掻き立てるのか?
    マテマテ!善意で協力してくれてる相手に失礼だろ!

    俺は邪心をそっとしまい、先程より威力を大分抑えてゲルを放射し―――

びゅるっ! びゅるるるっ! ぶびゅるるるるるるるぅっっ!!

―――いや、しようと思ったのだが、上手く歯止めが効かず大量のゲルが吹き出してしまった。

「んぁぅっ! すごっ……たくさん……っ!」

    エリザは口から零れ落ちるゲルを両手で止め、ゴクゴクと喉を揺らす。
    舌使いが妙に艶かしく、何かを確認するように優の手を舐め回す。

「はぁはぁ……あむっ、じゅぷっ……ぢゅるるるっ」

「ちょ、あんた達何やってんのよ!」

「お待ちください!王女様!これは能力の確認!」

「口に手突っ込みながら言っても説得力無いのよ!」

「今後のためにも必要な事なんです!」

「う~~~~~!」

    俺の必死さが伝わったのかリリーは渋々と引き下がる。しかし、視線は冷たい。侮蔑と軽蔑の混ざった瞳だ。
     その視線の先では依然エリザが右手をチュルチュルと啜っていた。
     口から白い白濁液が零れ、首を伝って、突き出た胸に溜まっていく。

     何時も以上にボディラインがハッキリと見え、優がその扇情的な姿に股の膨らみを抑えきれなくなった頃、

「ゴクリ🖤…………ごちそうさまでした?」

    エリザは口を離した。

    何だかお預けを喰らったみたいで惜しい気分だが、おくびにもそれを顔に出さず、真面目な顔で早速エリザに問う。

「それで何か分かったか?」
「ええ、大体ね?」

    タオルで顔や服を拭きながら妖艶に答える。

「貴方のスキルは『特殊系』。属性は『土』。基本能力は『放射』『形成』『吸収』の三つね。」




「何でそこまで分かるんだ?」

    やや懐疑的にエリザを見ると、あっけらかんと彼女は答えた。

「私も貴方と同じように特殊なスキルを持ってるってことよ?」
「?何だそれは?」
「『超味覚』。『感覚系』スキルの一つで。属性は『無』。基本能力は『解析』『把握』『予測』よ。まあ、平たく言ってしまえば舌で触ったものの本質を見る力かしら?」
「便利な能力だな。」
「うっとうしいだけよ?それに『吸収』が成功してるなら多分貴方も使えるようになるわ?」
「『吸収』……?そう言えば俺の能力、『放射』『形成』『吸収』だったな。属性と系は知ってるが、何なんだ?『吸収』や『形成』てのは?」
「そうね。簡単に言えば『放射……ゲルを放出する能力』。『形成……放出したゲルを特定の形に変える能力』。『吸収……ゲルで包んだものの魔力や体力を吸収する能力。』かしら。『吸収』の時運が良いと相手の能力を学習する事も出来るわ。」
「な、なるほど。何ともチートな。」

    つまり一見ゲルを撒き散らすだけの無能能力に見えた『ゲル』は実は触手のように動かすことができ、相手の能力も学習できる壊れスキルだった言うことか!しかも、既に『超味覚』を手に入れてるかもしれないと!

    これは俺の時代が来たのではないか?

    気分を良くした俺は早速超味覚を試してみようと自分の手を舐めてみた。

「違う!違うわ?そうじゃなくて!能力を手に入れるのは貴方じゃなくてゲルの方よ?」

「え、お、おお!そうか!何だよ!もっと早く言えよ!」

    無駄な恥を掻いてしまったではないか。

    出鼻を挫かれたような格好になった優は、赤面するが、めげずに『超味覚』を試す。

    ゲルを出し、『超味覚』を発動。

    ゲルに舌ってあるのか?とか、そんな疑問が浮かばない程すんなり能力は起動した。

    新たに出したゲルが優の手に触れた瞬間、脳内に情報が雪崩れ込む。

―――――――――――――――
ステータス

名前:赤羽優
種族:人間
年齢:15歳
状態:覚醒、興奮
技能:幻想級スキル『ゲル』
            ゲル所有スキル『放出』『形成』『吸収』『ステータス鑑賞』
魔法:なし
称号:転生者、アウトロー
耐性:物理攻撃耐性
            痛覚耐性
            寒冷耐性
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みんなの感想(1件)

ジャック
2018.11.13 ジャック

主人公も色々無用心だが、姫が全て悪い。

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