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「―――私も優に付いてくからよ!」


「は―――………?」


「貴方と一緒に私も王宮を出る!」


「いやいやいやいや。マテマテマテマテ!待ってくださいお嬢様!何言い出してるんですか?!」

「そのままの意味よ!問題ないでしょ!」

「問題しかありませんから!温室育ちのお嬢様が生きていけると思ってるんですか!外にはフカフカのベッドも、贅沢聞いてくれる召し使いもいないんですよ!」

「知ってるわよ!」

「お風呂だって汚いし、馬小屋みたいな部屋に寝ることになるかもしれないんですよ!」

「か、覚悟は出来てるわ!」

「第一俺は犯罪者です。一緒にいたら危険にさらします!」

「そんなの!一番問題じゃないわよ!」

「一番問題です!」

     二人の声は段々とヒートアップしていく。
     暗い地下牢の最下層に男女の声が反響する。
     その響き渡る二つの声に、もう一つの声が、クスクスと笑う女の声が、絡められた。


『いいんじゃない?連れててってあげれば?』


     一瞬、獄内に静寂が戻り、二人の目は声の主を探るように奥へと向けられた。


    そこに居た女を見て、二人は少なくない驚きを覚える。
    その異様な様相にだ。

    身長は高い。優と同じくらいであり、年齢は妙齢と呼ばれるほど。
    顔形は優艶であり、病的に白い肌が薄暗い獄内でもハッキリと見える。
    そして、頭髪は優と同じく黒一色。背中を通り越して、膝元にまで来た髪は雨に濡れたような艶やかさだ。

    彼女は黒と白の囚人服を身に纏い、刺の付いた細い鎖で体を宙に固定されていた。
    傷口からポタポタと血が滴り、見るも痛々しい有り様だ。しかし、一番注目をするのはそこではない。
    傷口が異常な速度で再生と殺傷を繰り返していたのだ。

    常軌を逸したその光景にリリーは完全に飲み込まれている。
    かくゆう俺も頬が引き吊りそうになった。

「まさか此処に俺以外の囚人が居たとはね。驚いたよ。でも、これは俺達の問題だ。部外者は引っ込んでいてくれないか?」

『あら、残念。部外者だなんて、一緒に一晩を過ごした仲じゃない?貴方の悲鳴なかなかセクシーだったわよ?』

「一晩?!セクシー!?」

どう言うことだとキッと睨み上げてくるお嬢様。

しかし、どうとゆうこともない。
俺が拷問されて悲鳴を上げてるのを聞いて、楽しんでいただけの変態と言うことだ。


「黙れ!変態!退屈なのは分かるが、俺達は忙しい。暇潰しなら他を当たれ!」

『私はただ純粋に思ったことを言っただけよ?
    その娘の決意は固そうだし、無理矢理拒絶して、後で一人で追ってこられた方が危険じゃない?それくらいの無茶しそうよ、その娘?』

    リリー王女を見ると首をブンブンと振っていた。
    いや、否定してほしかったんだけど………。

    俺がどう説得しようかと悩んでいると、彼女は更に付け足した。

『ふふふ、分かるわよ、貴方の考え。怖いんでしょ?
    今の貴方はまともに戦える様子じゃない。追っ手を無事撒けるか?いや、それよりも、賊にでも襲われたら……、果たしてどうなるか?その娘随分と可愛いし、何より王族。利用価値は色々ありそうよね?』

「何が言いたいんだ?リリーの肩を持ったと思えば、今度は脅しか?言いたいことがあるならハッキリと言え!さっきも言ったが俺には時間がない。」

『じゃあ、端的に言うわ!
    私をここから出しなさい?私が貴女達を護衛して上げるわ。その対価として私は自由を得る。どう?私は役に立つわよ?』

「………………。役に立つ以上に、厄介になりそうだ。この状況で更に寝首を掛かれる心配はしたくない。」


    しかし、この女の言うことも一理ある。
    お嬢様の無茶ぶりはよく分かっている。
    どうすることが一番安全だろうか………。

    この女の力だけ利用できれば最善なんだけど…。そんな事が出来るとしたら―――

「―――隷属魔術……。隷属魔術を掛けて良いなら信用してやる。」

『それは信用してないんじゃないの?』

「これが最低条件だ。出来ないのならこの話は無しだ。」


俺がそう言うと女は不快げに舌を鳴らした。
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