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その童貞は返却可能か否か

第6話

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「はぁ、今日は前から挿入れていい?」

 とろとろに潤みきった蜜壺から愛液まみれの指を引き抜いた八重が組み敷いた澪を見下ろして尋ねる。眼鏡の奥の瞳が鋭く光り、強く求められていることがひしひしと伝わってくる。きゅうと膣奥が疼いた。
 頷いて返事をするとベッドヘッドから三週間前と同じ避妊具を取り出してきた。枚数は減っていない。

「もっかい出来たらって思ってたけど……あー、興奮しすぎてちんこ痛い……」

 荒い呼吸を繰り返しながらぶるんとそそり立つ肉棒にゴムを被せていく。

「……八重くんって」
「何? 今更止めないよ」
「ん、そうじゃなくて……見掛けによらずエッチな言葉連発するよね」
「……そう?」
「うん、やらしい人なんだなって……やぁっ!」

 両膝を左右に大きく割られ、秘所が丸出しになる。食い入るように見つめる八重は熱い吐息を溢した。

「澪のえろい身体見たら、やらしくもなるよ。普通でいられるわけがない」

 片方の手で竿を握ってクリトリスから膣口までの敏感な割れ目を擦り上げてくる。くちゅぐちゅと湿った音が益々興奮を煽り立てた。

「ほら、めっちゃえろい。びしょびしょに濡れてぱくぱく俺のちんこ誘ってる……クリトリスびんびんに勃ってるし」
「あっ、あん、八重くん、あっあっ……」
「澪は、はぁ、名前呼んでくれないの?」

 ぷるぷると揺らした亀頭で秘芽を刺激される。浅い息を吐きながら言葉を絞り出す。

「呼ば、ない、んんっ」
「どうして?」
「他の子、に、呼ばせてるから、んんっ、やだ……」

 気安く八重の腕を叩く女子の姿を思い出した。あの子と一緒というのは、何だか嫌だった。
 動きがぴたりと止まり、押し寄せる快楽の波も途端に止む。うっすらと開いた目で下から見上げると八重の目元が真っ赤に染まっていた。

「なにそれっ……!」

 唸り声と共に亀頭がぐにっと秘肉を割り、ずぶずぶと澪の中に侵入してくる。

「やっ、ああんっ!」
「何でそんな可愛いことっ……はぁ」

 全部収まった熱杭を更にぎゅうぎゅうと押し付けられる。前回のセックスとは違う場所を刺激されて新たな快感が呼び起こされる。

「やっぱやばい、あぁ気持ち良すぎてすぐ出そう」

 唇を食いしばって囁く声が真に迫っている。我慢しなくてもいいのに、と伸ばした手は八重に捕らえられ、汗ばんだ身体が覆い被さってきた。そしてすぐさま唇を奪われる。

「んっ、ふぅ」
「澪、好き、澪……」

 吐息の合間に落とされる言葉が全身を侵食していく。射精感を逃がすためか、じっと留まる八重を包む肉襞が彼を求めて蠢いてしまう。彼と触れ合う全ての場所が気持ち良い。

「澪だけにする」

 腰が引き、またぐちゅりと戻される。奥のいいところに当たって背中が震える。
 片方の手の指を絡めながらもう一方の手で胸をまさぐられれば、さっきまで散々舐め転がされた乳首が再び襲い来る愛撫にぴんと張り詰めた。
 ちゅっちゅっと耳の付け根に吸い付かれるから八重の前髪が顔に当たってくすぐったい。

「他の子には呼び方を改めてもらうから……澪だけにするから」

 緩やかな抽挿が繰り返されて、じゅぽ、ぐちゅと卑猥な水音が響く。

「ねえ、やえ、くん……んんっ」
「なぁに、澪」
「あっ、はぁ、前髪……下ろしてる方が、好き」

 浅いところまで抜いた状態でまたも動きを止めた八重は切れ長の瞳を目一杯に見開いた。とろりと溶けた澪の顔を凝視して、あぁと呻いたかと思うとズンと内臓ごと突き上げる。

「ひゃっ、ああっ!」
「澪っ、澪! ああもう!」

 押し潰すように澪の身体をかき抱くとガンガンと腰を叩き付ける。淡いブルーのシーツが波打ち、ぎしぎしとスプリングが悲鳴を上げる。

「やぁっ、やだ! だめっ、それだめ、あっあっ!」
「可愛い、あぁ、やばい。澪のまんこやばいっ……気持ち良すぎる!」
「むりっ、激しい、八重くんっ! あっんんっ」

 激しく揺さぶられる視界を眉間に皺を寄せた八重が埋め尽くしている。平時の大人しい印象はなりを潜め、肉欲にまみれて紅潮した目元がすさまじい色気を放っている。
 こんな顔、他の誰にも見せたくない。

「あっあっ……もっ、むりっ、八重くん」
「澪っ、澪っ、俺もいきそっ……」

 腹の奥に募る快楽が更なる高みを欲して八重をぎゅうぎゅうと締め付ける。それに応えるような激しい抽挿が互いの肌をぱちゅぱちゅと打ち、耳からも犯していく。同じリズムで揺れる細く筋張った身体をぎゅっと抱き締めた。

「あぁもう、出る、出るっ!」
「あっあっ、はぁっ……んんっ!!」

 ぐぐっと押し込まれた先端が最後の一押しとなり、澪を快楽の限界に押し上げた。跳ねる腹の中にびゅるびゅると白濁が吐き出される。最後の一滴まで出し切ろうと余韻のように揺れる腰が収縮を繰り返す澪の膣壁をいたずらに刺激して全身をびくびくと弾ませた。

「澪……」

 酸素を求める唇が甘い声と共に塞がれた。優しく侵入した舌が味わうように澪の口内を蹂躙していく。心地良い疲れに身を浸しながら交わすキスがひどく気持ち良い。
 やがてペニスがずるりと引き抜かれ、脱力した八重の身体が澪の上にずっしりとのし掛かった。

「はぁ、はぁ……あぁまた体位……変えられなかった……」

 などと呟きながら澪の胸に顔を押し付けるので眼鏡が変な位置にずれている。壊さないように抜き取って枕の脇に置けば、八重が重たげに顔をこちらに向けた。

「ありがと、優しい、可愛い……」

 語彙の回路がショートしているのかもしれない。

「そこからでも見える?」
「これくらいの距離なら見えるよ」
「八重くん、一重だったんだね」
「ん……嫌い?」
「かっこいいと思う」

 正直な気持ちを伝えると胸元に熱い吐息が掛けられた。

「俺を殺しに掛かってる。あぁ、おっぱい自由に触れるとか天国かな。柔らかい、えろい……」

 彼の言語を全て理解するのは難しそうなので汗を滴らせる髪を黙って梳いてやる。うっとりと目を閉じて、しかし邪な手つきで澪の胸を弄りながら八重は言葉を吐き出した。

「勇気出して童貞もらってもらってよかった……」
「受け取った覚えはないけどなぁ」
「え」

 乳房に食い込んだ長い指がかちんと固まった。

「八重くんは童貞を捨てたかもしれないけど、私拾った覚えはないなぁ」

 切れ長の目がまんまるに開いて澪を見上げている。
 ふ、ふふ、と笑いが溢れてしまう。

「でもせっかくだからいただいておこうかな」
「う、うんっ、一生の宝になるよ」
「それは大袈裟すぎだよ」

 自己評価が高すぎる、とまたも笑う一方で。

(一生かぁ)

 そこまで気の長い未来はまだ見えないけれど、でも手放したくないと思い始めている可愛い男の頭を撫でながら、澪は心地良い疲れに目を閉じた。
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