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8章.神々の黄昏編

138.クロムの決断

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 はじけ飛んだ光の玉。
その閃光が収まると、そこには創造神メテオライトがいた。

「はい、おかえりなさい」

『なっ……!!』

 違う次元へと逃避したはずのメテオライト。
それが何故かクロムに召喚されたような状態でクロムの目の前にいた。

 当然ながら何が起こっているのか、それを理解できずに困惑するメテオライト。
クロムは、そんなメテオライトの状況を完全に無視して、左手を天にかざす。
すると、メテオライトの左足のひざ下が消えさった。

「うんうん、ちゃんと想定通りになっているね」

『どういうこと…… だ』

「チェックメイトってことだよ、創造神メテオライトさん」

『馬鹿なことを―――』

 メテオライトが発し始めたその言葉は、最後まで声になることはなかった。
なぜなら、途中でメテオライトの下半身が消滅したため、顔面から地面に激突してしまったのだ。

「こうなっちまうと創造神さまも無様だな……
 ただ明確に敵対しちまった以上、どっちかが滅ぶしかないよな」

 そう言ってメテオライトを消滅させようとしたとき、クロムはメテオライトの表情が気になった。
何かこのまま消滅させてしまうとマズイ、そんな直感がクロムを思いとどまらせる。

「このまま消滅させると……
 お前の思うツボって感じが何故かする。
 カオスに相談しようにもあれ以来返事ないしな……」

 上半身のみの姿となったメテオライト。
腕を使ってなんとか起き上がったものの、何かを言うわけでもなく、ただ静かにクロムのことを眺めた。
そして、不敵な笑みを浮かべながら話しかけてきた。

『どうした、我を滅ぼすのではなかったのか?』

「そのつもりだったが……、嫌な予感がよぎったんだよ
 この世界の神は、必ず何かを司る存在だ。
 そしてその神がいなくなるということは、世界からその司るものがなくなるということを意味するとカオスから聞いたことがある。
 世界を創造した神が消滅した場合、世界の存在そのものが危うくなる、そんな予感がするんだよ」

『ほほぉ、そうかもしれないし、そうでもないかもしれない。
 さて、お前はどうする?』

「……」

『悩む時間はないぞ?
 こうしている間にも世界は消滅に向かって進んでいる』

 メテオライトはこのような状態であっても世界の消滅をあきらめていなかった。
そしてそれはクロムにも知覚できており、それが真実であることがわかるだけに余計に焦るのだった。

「お前から創造神の座を奪う術もわからない上に、そもそも時間もほとんどない……」

『さぁ、どうする?
 我を滅ぼさぬのか?』

「滅ぼすことのリスクが否定できない以上、残念だけど今ここで消滅させるわけにはいかない。
 ただ、何もしなければ世界が消滅してしまう……」

 悩みぬいたクロムは両手を胸の前で合わせて祈るような姿勢で魔力を今いる次元そのものに満たし始めた。
すると、メテオライトが創りだした王座の間にいたはずのクロムとメテオライトが、いつの間にか真っ白な空間の部屋の中にいた。

『何が起きた……』

「俺とお前しかいないそんな空間に変化させた。
 もちろんこの空間はいかなる空間や次元ともつながっていない」

『初めてきた次元に対してこの短時間でそのようなことできるはずがない!!』

「普通にするならその通りだろうな、でも元々仕込んでたものを流用しただけだからな。
 別次元に逃避したお前を目の前に召喚するなんてことがなぜできたと思ってる?」

『……』

「お前が存在する次元、それのすべて内包する空間を俺の空間術<ルーム>で生成して包み込んだ」

『先ほどの茶番劇の間にしてたことがそれか……
 しかし、それほどのことをしていれば魔力の流れで我が気付かないわけがない!!』

「バレないために、ほぼ効果はないだろうと思ってた魔術の連続攻撃をあれだけハデにやったんだよ。
 あれだけ場の魔力も俺の魔力も暴れまわっている状態なら、俺が何かしてたとしても気が付くわけはない」

『まんまとしてやられたわけか……』

「この空間はこれからもっと小さくなる、お前ひとりがギリギリ存在できる程度までな。
 自分と虚無しか存在しない空間となり、あらゆる次元から隔離もされている。
 つまりは、この空間にお前を封印する!
 封印することで滅ぼすことによって発生するリスクを回避しつつ、お前から創造神の座を奪う算段がつくまでの時間を稼がせてもらうよ」

 クロムはそのままメテオライトの前から姿を消した。

『……絶対に許さヌ』
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