138 / 147
8章.神々の黄昏編
130話.結婚式
しおりを挟む
クロムは動揺していた。
この時が近い未来にくることはわかっていたが、まさかそれが今日であるとは微塵も考えていなかったのである。
「はぁぁ……
ついに…… か。
せめて式が無事終わるまでは誰にも悟られないようにしないとな」
クロムは先ほど聞いた言葉が空耳ではなく、現実であるということは受け入れていた。
その上でみんなのお祝いムードを壊したくもなかったし、幸せに包まれているアキナに心配をかけたくもなかった。
「アキナには言わなきゃいけなくなるけど…… せめて式が終わるまでは……」
クロムは自身の動揺を悟られることがないように、時間をかけて心を落ち着かせながら、アキナが待つ部屋まで帰るのだった。
「クロム殿!!
こんな大切な日に花嫁を残してどこに行っているんですか!!!」
部屋に戻ったクロムを待っていたものは、ディアナの怒号であった。
まさか部屋に戻った早々で怒号を浴びることになるとは夢にも思っていなかったクロムがディアナに言い訳と謝罪をしようとすると、背中に衝撃があり振り返った。
「いた!!!!
もぉ、式当日の朝にどこに行ってたのよ!!!!」
振り返ったクロムは、その声の主を静かに抱き寄せながら落ち着いた声で謝罪する。
「ごめんな、アキナ。
朝早く目が覚めちゃったから、街の様子を確認がてら散歩してたんだ」
「ぶぅ……
散歩なら私も誘ってくれたらいいのに!!」
「すごく気持ちよさそうな寝顔だったから、起こすのが忍びなくて……」
クロムの言葉に顔を赤らめて黙り込むアキナ。
そんな二人のやり取りを見ていたディアナは苦笑するしかなかった。
「はぁ……
お二人とも仲が良いのはわかりましたから、目の前でいちゃつくのはやめてください。
アキナさんは、そろそろ式の準備に向かいますよ」
ディアナの声で我に戻ったアキナは、クロムに先に行ってるねと告げてディアナと共に式場へと急ぐのだった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
クロムが結婚式の会場に到着したのは、式開始時刻の1時間ほど前であった。
そして、アキナの様子を伺うために声をかけにいったクロムはそこで固まることとなる。
「クロム??
どうしたの、そんな部屋の入口で固まって……
入っておいでよ」
アキナのそんな言葉で我に戻るクロム。
「あ、あぁ、すまない。
アキナがあまりにも綺麗すぎて……
想像以上すぎて固まってしまった」
「あ、ありがとね……
嬉しいけど、すっごく照れる……」
すっかり二人だけの世界を作り出して、いちゃつく二人。
しかしそんな甘い空気は一人の言葉で霧散することとなった。
「はぁ……
もういちゃつくのは好きにしてください、でもクロム殿。
ご自分の準備をお急ぎください」
ディアナにそう促されてクロムは自分が準備をしていないことを思い出した。
そして、急ぎ衣装替えなどを行っているところにカルロが訪ねてきた。
「兄貴、アキナ、本当におめでとうな!」
カルロといつもの軽口の挨拶を交わすと、カルロは急に改まった口調で話し始めた。
「本日は配下一同を代表して、竜人族族長カルロが僭越ですが、神父を務めさせていただきます。
そろそろお時間ですので、こちらにどうぞ」
カルロの急変に驚くクロムとアキナ。
しかしすでに開始時刻を迎えようとしているため、追及することもできぬままカルロに連れられる形で式場へと向かうのだった。
そして、クロムたちはカルロに招かれるまま祭壇の前まで移動した。
「皆様、ご静粛にお願いします。
ただいまより、クロム様とアキナ様の結婚式を始めさせて頂きます。
汝クロムは、この女アキナを妻とし、
良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、
病める時も健やかなる時も、
共に歩み、他の者に依らず、
死が二人を分かつまで、愛を誓い、
妻を想い、妻のみに添うことを、
神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」
「誓います」
「汝《なんじ》アキナは、この男クロムを夫とし、
良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、
病める時も健やかなる時も、共に歩み、
他の者に依らず、死が二人を分かつまで、
愛を誓い、夫を想い、夫のみに添うことを、
神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」
「誓います」
「皆さん、お二人の上に神の祝福を願い、
結婚の絆によって結ばれた このお二人を
神が慈しみ深く守り、助けてくださるよう
祈りましょう
今日結婚の誓いをかわした二人の上に、
満ちあふれる祝福を注いでください」
カルロの宣言を受けて、出席者から歓喜の声と盛大な拍手が沸き起こる。
そして、クロムが出席者へ感謝の言葉を伝えて、無事に結婚式は終わりを迎えた。
幸せいっぱいの顔をしているアキナが隣にいることの幸せに浸るクロムであったが、頭の片隅で<神に誓い、神の祝福を受ける>という一連の誓いがなんとも苦々しいと思うのであった。
そして、アキナと共に二人のみで部屋の戻ったクロムは、ついにアキナに告げるのだった。
この時が近い未来にくることはわかっていたが、まさかそれが今日であるとは微塵も考えていなかったのである。
「はぁぁ……
ついに…… か。
せめて式が無事終わるまでは誰にも悟られないようにしないとな」
クロムは先ほど聞いた言葉が空耳ではなく、現実であるということは受け入れていた。
その上でみんなのお祝いムードを壊したくもなかったし、幸せに包まれているアキナに心配をかけたくもなかった。
「アキナには言わなきゃいけなくなるけど…… せめて式が終わるまでは……」
クロムは自身の動揺を悟られることがないように、時間をかけて心を落ち着かせながら、アキナが待つ部屋まで帰るのだった。
「クロム殿!!
こんな大切な日に花嫁を残してどこに行っているんですか!!!」
部屋に戻ったクロムを待っていたものは、ディアナの怒号であった。
まさか部屋に戻った早々で怒号を浴びることになるとは夢にも思っていなかったクロムがディアナに言い訳と謝罪をしようとすると、背中に衝撃があり振り返った。
「いた!!!!
もぉ、式当日の朝にどこに行ってたのよ!!!!」
振り返ったクロムは、その声の主を静かに抱き寄せながら落ち着いた声で謝罪する。
「ごめんな、アキナ。
朝早く目が覚めちゃったから、街の様子を確認がてら散歩してたんだ」
「ぶぅ……
散歩なら私も誘ってくれたらいいのに!!」
「すごく気持ちよさそうな寝顔だったから、起こすのが忍びなくて……」
クロムの言葉に顔を赤らめて黙り込むアキナ。
そんな二人のやり取りを見ていたディアナは苦笑するしかなかった。
「はぁ……
お二人とも仲が良いのはわかりましたから、目の前でいちゃつくのはやめてください。
アキナさんは、そろそろ式の準備に向かいますよ」
ディアナの声で我に戻ったアキナは、クロムに先に行ってるねと告げてディアナと共に式場へと急ぐのだった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
クロムが結婚式の会場に到着したのは、式開始時刻の1時間ほど前であった。
そして、アキナの様子を伺うために声をかけにいったクロムはそこで固まることとなる。
「クロム??
どうしたの、そんな部屋の入口で固まって……
入っておいでよ」
アキナのそんな言葉で我に戻るクロム。
「あ、あぁ、すまない。
アキナがあまりにも綺麗すぎて……
想像以上すぎて固まってしまった」
「あ、ありがとね……
嬉しいけど、すっごく照れる……」
すっかり二人だけの世界を作り出して、いちゃつく二人。
しかしそんな甘い空気は一人の言葉で霧散することとなった。
「はぁ……
もういちゃつくのは好きにしてください、でもクロム殿。
ご自分の準備をお急ぎください」
ディアナにそう促されてクロムは自分が準備をしていないことを思い出した。
そして、急ぎ衣装替えなどを行っているところにカルロが訪ねてきた。
「兄貴、アキナ、本当におめでとうな!」
カルロといつもの軽口の挨拶を交わすと、カルロは急に改まった口調で話し始めた。
「本日は配下一同を代表して、竜人族族長カルロが僭越ですが、神父を務めさせていただきます。
そろそろお時間ですので、こちらにどうぞ」
カルロの急変に驚くクロムとアキナ。
しかしすでに開始時刻を迎えようとしているため、追及することもできぬままカルロに連れられる形で式場へと向かうのだった。
そして、クロムたちはカルロに招かれるまま祭壇の前まで移動した。
「皆様、ご静粛にお願いします。
ただいまより、クロム様とアキナ様の結婚式を始めさせて頂きます。
汝クロムは、この女アキナを妻とし、
良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、
病める時も健やかなる時も、
共に歩み、他の者に依らず、
死が二人を分かつまで、愛を誓い、
妻を想い、妻のみに添うことを、
神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」
「誓います」
「汝《なんじ》アキナは、この男クロムを夫とし、
良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、
病める時も健やかなる時も、共に歩み、
他の者に依らず、死が二人を分かつまで、
愛を誓い、夫を想い、夫のみに添うことを、
神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」
「誓います」
「皆さん、お二人の上に神の祝福を願い、
結婚の絆によって結ばれた このお二人を
神が慈しみ深く守り、助けてくださるよう
祈りましょう
今日結婚の誓いをかわした二人の上に、
満ちあふれる祝福を注いでください」
カルロの宣言を受けて、出席者から歓喜の声と盛大な拍手が沸き起こる。
そして、クロムが出席者へ感謝の言葉を伝えて、無事に結婚式は終わりを迎えた。
幸せいっぱいの顔をしているアキナが隣にいることの幸せに浸るクロムであったが、頭の片隅で<神に誓い、神の祝福を受ける>という一連の誓いがなんとも苦々しいと思うのであった。
そして、アキナと共に二人のみで部屋の戻ったクロムは、ついにアキナに告げるのだった。
0
お気に入りに追加
165
あなたにおすすめの小説

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡
サクラ近衛将監
ファンタジー
女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。
シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。
シルヴィの将来や如何に?
毎週木曜日午後10時に投稿予定です。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~
川原源明
ファンタジー
秋津直人、85歳。
50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。
嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。
彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。
白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。
胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。
そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。
まずは最強の称号を得よう!
地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語
※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編
※医療現場の恋物語 馴れ初め編

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる