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6章.ダイン獣王国編
102話.クロムの思惑
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『本題』というクロムの発した言葉がこの場の緊張感を一気に高める。
つい先ほどダインとバロンの行動を諫め、その二人ともに勝利を収めているクロムが真面目な口調で発した言葉なのだから当然の結果でもある。
「そうじゃな、戻ったら話したいことがあると言っておったのもその本題とやらなんじゃろ?
もったいぶらずに話すが良い」
ダインに本題を話すことを促されたクロムは、言いにくそうな表情を一瞬だけ浮かべたがすぐに真剣な表情に切り替えてダインの目を正面から見ながら話を始めた。
最初はバロン襲撃の件の詳細、つまりはバロンはただの先遣隊でありしばらくしたら悪魔王サタンの軍勢がこの大陸に上陸すること。
そしてこのロンダルディア大陸への進軍を決定したサタンの背後には邪神と呼ばれる悪魔の神の思惑が存在していることを。
さらにこの構図はクロムがミレストンに向かう前に想定していた『悪い予感』の内容そのものでもあることを。
「なんだかとんでもない次元の話じゃの……
悪魔族の侵略に、その背後に見える邪神の存在……
神々の事情で急に転生者が増えたこのタイミングで、存在自体が疑われていた悪魔族が邪神の関与が見える形でこのロンダルディア大陸への進軍を始める……」
「さすがは獣王様だな、今頭に思い描いたことでたぶん正解だよ」
「……」
クロムの言葉にダインは言葉を失った。
ダインは優れたカリスマ性を持った王ではあるが、知能に優れた 王ではない。
ゆえに想定外であり、想像もできなかった事態が続くこの状況を理解しそれに対応することは難しかったのである。
「く、クロム? 私にはちょっと理解できないんだけど……」
そんな中、クロムの隣で静かに聞いていたアキナが状況の説明を求めるような困惑の表情でクロムを見つめていた。
クロムはそんなアキナの表情を愛らしく感じ、片手で抱きしめるとゆっくりと説明を始めた。
自分を転生させた神、カオスの言葉が真実であるとするならばとした上でクロムは話を始めるのだった。
転生者が最近増えていることの理由は、この世界を創造した創造神が神々の暇つぶしのためにこの世界に転生者を次々と送り込ませて好き勝手させるというゲーム始めたからである。
そして神の中には転生者を送りこむ代わりに自分への信仰心の厚い人物に神のお告げという形で助言を与え、その者を操る形でこのゲームに参加している神もいる。
「まぁ前者タイプの神がカオスであり、後者タイプの神がダイン王が崇拝するアレス神ということになるだろうな。
そして、悪魔王サタンの背後にいる邪神もこの後者タイプだと思う」
「え……、っていうことは悪魔たちの進軍は神の暇つぶしによるもの?」
「おそらくね」
――そしてこの手のゲームを好まなさそうなカオスがゲームに参加しているわけや思惑もなんとなく想像できるわけだけど……
――それは今考えることじゃないな
クロムがゆっくりと解説することによって、この場にいるすべての者が状況を把握することができた。
神という存在はすべての生物にとって崇拝の対象である、信仰の度合いに差異こそあるが。
今の状況を把握・理解するということは、その崇拝の対象である神がこの大陸を大混乱に陥れようとしているということを知ってしまうことでもあった。
しかもその理由が『暇つぶし』である。
「さて、みんなが困惑することが分かった上でこんなことを丁寧に説明したのは理由がある。」
「だろうな、何が目的じゃ?」
「単刀直入に言う、ミレストンという街を俺にくれ。
そして俺はミレストンで都市国家樹立を宣言する、ダインは街の譲渡とそこでの建国を認めてくれ」
「そんなこと認めれるわけないじゃろうが、バカバカしい」
「だろうな、でもマジで言っている。
ミレストンはサタンが上陸する予定地だ、これはバロンがサタンに上陸拠点として報告をいれているからな。
そして、その悪魔どもの相手を俺にやらせろってことだよ」
「ワシにも面子がある、はいそうですかとは言えぬ」
「そういうと思ってこないだの決闘の勝者の権利を使ってなかったわけだが……
獣王ダインよ、決闘の勝者の権利としてミレストンの譲渡を望む」
「…… わかった。
しかし建国は認められぬ、カロライン王国と聖セイクリッド神国との協定に反することにもなる」
3国間ではお互いに不可侵・不干渉の協定とともに新興国が誕生してロンダルディア大陸内のバランスを崩壊させないように新興国の建国を承認しないようにするという協定も結んでいたのであった。
ゆえに諦めろと言わんばかりの表情をするダイン王。
しかしクロムはそれを気にする様子もなく、カルロに問いかけるのであった。
つい先ほどダインとバロンの行動を諫め、その二人ともに勝利を収めているクロムが真面目な口調で発した言葉なのだから当然の結果でもある。
「そうじゃな、戻ったら話したいことがあると言っておったのもその本題とやらなんじゃろ?
もったいぶらずに話すが良い」
ダインに本題を話すことを促されたクロムは、言いにくそうな表情を一瞬だけ浮かべたがすぐに真剣な表情に切り替えてダインの目を正面から見ながら話を始めた。
最初はバロン襲撃の件の詳細、つまりはバロンはただの先遣隊でありしばらくしたら悪魔王サタンの軍勢がこの大陸に上陸すること。
そしてこのロンダルディア大陸への進軍を決定したサタンの背後には邪神と呼ばれる悪魔の神の思惑が存在していることを。
さらにこの構図はクロムがミレストンに向かう前に想定していた『悪い予感』の内容そのものでもあることを。
「なんだかとんでもない次元の話じゃの……
悪魔族の侵略に、その背後に見える邪神の存在……
神々の事情で急に転生者が増えたこのタイミングで、存在自体が疑われていた悪魔族が邪神の関与が見える形でこのロンダルディア大陸への進軍を始める……」
「さすがは獣王様だな、今頭に思い描いたことでたぶん正解だよ」
「……」
クロムの言葉にダインは言葉を失った。
ダインは優れたカリスマ性を持った王ではあるが、知能に優れた 王ではない。
ゆえに想定外であり、想像もできなかった事態が続くこの状況を理解しそれに対応することは難しかったのである。
「く、クロム? 私にはちょっと理解できないんだけど……」
そんな中、クロムの隣で静かに聞いていたアキナが状況の説明を求めるような困惑の表情でクロムを見つめていた。
クロムはそんなアキナの表情を愛らしく感じ、片手で抱きしめるとゆっくりと説明を始めた。
自分を転生させた神、カオスの言葉が真実であるとするならばとした上でクロムは話を始めるのだった。
転生者が最近増えていることの理由は、この世界を創造した創造神が神々の暇つぶしのためにこの世界に転生者を次々と送り込ませて好き勝手させるというゲーム始めたからである。
そして神の中には転生者を送りこむ代わりに自分への信仰心の厚い人物に神のお告げという形で助言を与え、その者を操る形でこのゲームに参加している神もいる。
「まぁ前者タイプの神がカオスであり、後者タイプの神がダイン王が崇拝するアレス神ということになるだろうな。
そして、悪魔王サタンの背後にいる邪神もこの後者タイプだと思う」
「え……、っていうことは悪魔たちの進軍は神の暇つぶしによるもの?」
「おそらくね」
――そしてこの手のゲームを好まなさそうなカオスがゲームに参加しているわけや思惑もなんとなく想像できるわけだけど……
――それは今考えることじゃないな
クロムがゆっくりと解説することによって、この場にいるすべての者が状況を把握することができた。
神という存在はすべての生物にとって崇拝の対象である、信仰の度合いに差異こそあるが。
今の状況を把握・理解するということは、その崇拝の対象である神がこの大陸を大混乱に陥れようとしているということを知ってしまうことでもあった。
しかもその理由が『暇つぶし』である。
「さて、みんなが困惑することが分かった上でこんなことを丁寧に説明したのは理由がある。」
「だろうな、何が目的じゃ?」
「単刀直入に言う、ミレストンという街を俺にくれ。
そして俺はミレストンで都市国家樹立を宣言する、ダインは街の譲渡とそこでの建国を認めてくれ」
「そんなこと認めれるわけないじゃろうが、バカバカしい」
「だろうな、でもマジで言っている。
ミレストンはサタンが上陸する予定地だ、これはバロンがサタンに上陸拠点として報告をいれているからな。
そして、その悪魔どもの相手を俺にやらせろってことだよ」
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