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6章.ダイン獣王国編

100話.様々な思惑

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 ダイン王はため息をついていた。
クロムの急な来訪から始まり、悪魔急襲の報告そして、その討伐にクロムが向かうという急転すぎる展開にダイン王たちは混乱を極めていた。
しかしそこは圧倒的なカリスマ性を有するダイン王、この混乱を1日程度で収束させたのだった。

「やっと落ち着いてきたようじゃの」

「かなりの混乱でしたけど、ダイン王のおかげでかなり早く収束できましたね」

 王座にぐったりとした様子で座り込むダイン王にタケルが労うように声をかけた。
そして少し冷静さを取り戻したことにより、クロムからの伝言を思い出した。

「そういえばダイン王、クロムさんからの伝言があります。」

「伝言じゃと?」

「はい、ミレストンに向かう間際に2つの依頼を残していきました。
 もしものために防衛の準備をしてほしいこと、帰ってきたら重大な話があるからよろしくとのことでした。」

「わかった……
 タケルよ、防衛レベルを引き上げさせよ。
 …… クロムが来たら起こしてくれ、ワシは少し寝る」

 それだけを言い残すとダインは自室に戻っていった。
クロムの名を出したときから明らかに不機嫌になり、さらにそれを隠そうともしないダイン。
タケルは王のそんな言動をただ静かに見送りながら苦笑するのであった。
 タケルが各方面に防衛レベルの引き上げの指示を出して回っていると、見知らぬ者と一緒にいるクロムの姿を見つけた。

「クロムさん!! もう戻ったのですか!?」

「あぁ、タケル。 ただいま。
 早速で悪いが…… ダインと話し合いの準備を始めてくれ」

「それはいいのですが…… そちらの方は?」

「それもあとで説明するよ、あと俺の仲間も数人ほど間もなく来るからそいつらも通してほしい」

「わかりました……
 とりあえずはダイン王に報告してきますよ、あとで声をかけますのでそれまでは謁見前に待機していただいたお部屋にてお待ちください」

 タケルが準備をしている間指定された部屋にて待っているクロムとアキナとバロン。
ここまでずっと一言も発しないバロンのことが気になったクロムはそのことを訪ねてみることにした。

「バロンどうしたんだ?
 この国に来てからずっと黙っているけど」

「クロム殿に何か思惑があるうえに、私は襲撃の張本人。
 クロム殿がダイン王に紹介をするまでは黙っているのが得策…… と考えただけですよ」

 クロムはバロンの思惑を有難いと感じ、そのような言動を自分の意志でとれるバロンの存在を頼もしいと感じた。
それと共に、バロンが仲間になってくれたことへの感謝も深く感じるのであった。

「兄貴、ナビちゃんから急いでいけって伝言が来たけどなんかあったのか?
 それに隣のおにーさんは誰なんだ??」

「私のところにもその伝言あったけど……
 クロムさんどうしたの?」

 急にクロムたちの目の前に<ルーム>の出口が開くと、中から聞き慣れた声が響いてきた。

「カルロ、ルーナ。
 急に呼び出して悪いね、バロンの紹介もしたいところだが……
 その前に頼んでおいたことの報告を先にお願いしたい」

 クロムはバロンの紹介をする時間すら惜しんでミレストンに向かう前に二人に頼んでおいたことの報告を求めた。
なぜならその内容はこのあとに控えているダインとの話し合いに重要な意味を持つ内容であるからだった。

「あぁ、そのことならバッチリだぜ。
 さすがに依頼内容に対して日数が短すぎるけどな」

「私のほうも無事OKのお返事をもらうことができましたよ。
 ただ、やはりもう少し時間的に余裕のある依頼がうれしいですね」

 二人とも依頼内容は問題なくこなしていることを告げつつ、それに使える時間が短すぎたことを苦笑しながら口をそろえるのであった。

「あぁ、そのことについてはすまなかったよ。
 どうしても急ぐ必要があったのと…… 
 <ルーム>を使えるし、二人なら問題なくできるだろうとも思っての依頼だったんだけど?」

 クロムはイジワルそうな笑顔を浮かべながらそう言うとその場にいる人たちは苦虫を噛み潰したにがむしをかみつぶしたような顔でお互いに見合うしかなかった。

「はぁ……
 クロムの悪い癖がでてるよ?」

 そんなアキナの言葉で皆が笑い始めるのであった。

―― さて、準備は問題ない。
―― ここからが本番だな

 そんなクロムの想いに気づくものは、まだ誰もいないのであった。

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