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6章.ダイン獣王国編
89話.決闘
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クロムの決闘宣言によって緊張感を増した謁見の間。
クロムが続けて何かを言おうとした時、一人の男がクロムの前に立つのであった。
「いきなり王への決闘を認めるわけにはいきませんよ。
まずは、僕がお相手します」
すると、タケルのそんな行動をダインが止めるのであった。
「タケルよ、下がれ。
獣王は誰からの挑戦も拒むことはない」
「しかし……」
「それにな、おぬしら転生者同士での決闘はさせたくないのじゃ、
強すぎるが故に生死でしか決着しないじゃろ。
転生者を死なせるわけにはいかぬのじゃ……」
詳しくは理由を語らないダインであったが、そこに重大な思惑があることだけはその場にいる全てのものが感じ取っていた。
そして、その決意に満ちた表情をみたタケルは言葉を失うしかなかった。
「では、クロムよ。
決闘の相手はワシがしよう、ただし場所は変えさせてもらうぞ」
ダインはクロムからの返答を待つこともなく、そのままどこかへと移動を始めた。
クロムとしても豪華絢爛な謁見の間での決闘は避けたいと思っており、素直にダインの後を追うのであった。
そしてそんな二人のやり取りを無言で眺めていたタケルが複雑な表情をしながらも追いかけてゆく、そんな姿をカルロは見逃さなかった。
しばらくすると、なにやら神々しいと表現するのが相応しいと感じる建造物の中に辿り着いた。
その建造物はクロムの記憶の中にある<パルテノン神殿>に酷似していた。
「また御大層な場所についたが……
ここは何のための場所なんだ?」
「ここは獣王専用の決闘場<エデン>じゃ。
獣王が闘神アレス様に捧げる決闘をする場合のみに使用する聖なる神殿じゃよ」
「へぇ……」
「クロムよ、決闘を始める前に1つ尋ねておくことがある。
決闘である以上、勝者には何か得るものが必要じゃ。
クロムは何を求める?」
「何も。
俺はただこの国と王が気に食わないからぶん殴りたいだけだよ」
「…… まぁ良いわ、そういうことにしておいてやる」
「そりゃどうも。
ダインは何を求めるために…… は、聞くまでもなさそうだな」
クロムの問いをダインは腹黒そうな笑顔で聞いていたのである。
クロムは、今までの言動とその表情からダインの要求は察することができた。
「…… ダインの軍門に下って、タケルと共にダインを支えろ……
ってところだろうな」
クロムの推測を聞いたダインは肯定も否定もすることなく、ただ高笑いをするのみであった。
「では、始めるぞ!!!
タケルとアキナ殿、立会人は任せたぞ」
ダインがそう宣言したことにより、ダインとクロムの間の緊張感が一気に増すこととなった。
一方的に立会人を任された2人はお互いに顔を見合わせて、苦笑しながらも任された役目を全うするしかないとダインとクロムに視線を移すのであった。
立会人が腹をくくる中、クロムは迷っていた。
自分から決闘を切り出しておいて何を迷うのだというところではあるのだが、このあと戦うことになるであろうタケルの目の前で手の内を晒していいものかどうかと悩んでいるのであった。
しかし、迷うことで集中力がイマイチ高まりきっていないクロムの隙を逃す獣王ではない。
ダインは無言のままクロムに向かって突進を始めたのである。
クロムがそのことに気づいたときには、クロムの眼前にダインの渾身の右ストレートが迫っていた。
次の瞬間、クロムは咄嗟に後ろ向きの突風を自身にぶつけることによってなんとか回避するのであった。
「あぶねぇ……
これは気を引き締めないとな……」
クロムは自身の周囲に無数の氷の杭を生成し、空中に浮遊させ始めた。
「とんでもない化け物じゃな、そのような魔術を使えるものをワシは知らないぞ」
「あぁそうかい!
じゃあ、小手調べに付き合ってくれや!!」
クロムの周囲から一気に発射される氷の杭。
次々とダインに着弾していく中、ダインはピクリとも身体を動かすことはなかった。
しかし、クロムはその光景をある不安の気持ちで見つめていたのである。
獣王ともあろうものが、この程度で倒せるのか? と。
クロムが続けて何かを言おうとした時、一人の男がクロムの前に立つのであった。
「いきなり王への決闘を認めるわけにはいきませんよ。
まずは、僕がお相手します」
すると、タケルのそんな行動をダインが止めるのであった。
「タケルよ、下がれ。
獣王は誰からの挑戦も拒むことはない」
「しかし……」
「それにな、おぬしら転生者同士での決闘はさせたくないのじゃ、
強すぎるが故に生死でしか決着しないじゃろ。
転生者を死なせるわけにはいかぬのじゃ……」
詳しくは理由を語らないダインであったが、そこに重大な思惑があることだけはその場にいる全てのものが感じ取っていた。
そして、その決意に満ちた表情をみたタケルは言葉を失うしかなかった。
「では、クロムよ。
決闘の相手はワシがしよう、ただし場所は変えさせてもらうぞ」
ダインはクロムからの返答を待つこともなく、そのままどこかへと移動を始めた。
クロムとしても豪華絢爛な謁見の間での決闘は避けたいと思っており、素直にダインの後を追うのであった。
そしてそんな二人のやり取りを無言で眺めていたタケルが複雑な表情をしながらも追いかけてゆく、そんな姿をカルロは見逃さなかった。
しばらくすると、なにやら神々しいと表現するのが相応しいと感じる建造物の中に辿り着いた。
その建造物はクロムの記憶の中にある<パルテノン神殿>に酷似していた。
「また御大層な場所についたが……
ここは何のための場所なんだ?」
「ここは獣王専用の決闘場<エデン>じゃ。
獣王が闘神アレス様に捧げる決闘をする場合のみに使用する聖なる神殿じゃよ」
「へぇ……」
「クロムよ、決闘を始める前に1つ尋ねておくことがある。
決闘である以上、勝者には何か得るものが必要じゃ。
クロムは何を求める?」
「何も。
俺はただこの国と王が気に食わないからぶん殴りたいだけだよ」
「…… まぁ良いわ、そういうことにしておいてやる」
「そりゃどうも。
ダインは何を求めるために…… は、聞くまでもなさそうだな」
クロムの問いをダインは腹黒そうな笑顔で聞いていたのである。
クロムは、今までの言動とその表情からダインの要求は察することができた。
「…… ダインの軍門に下って、タケルと共にダインを支えろ……
ってところだろうな」
クロムの推測を聞いたダインは肯定も否定もすることなく、ただ高笑いをするのみであった。
「では、始めるぞ!!!
タケルとアキナ殿、立会人は任せたぞ」
ダインがそう宣言したことにより、ダインとクロムの間の緊張感が一気に増すこととなった。
一方的に立会人を任された2人はお互いに顔を見合わせて、苦笑しながらも任された役目を全うするしかないとダインとクロムに視線を移すのであった。
立会人が腹をくくる中、クロムは迷っていた。
自分から決闘を切り出しておいて何を迷うのだというところではあるのだが、このあと戦うことになるであろうタケルの目の前で手の内を晒していいものかどうかと悩んでいるのであった。
しかし、迷うことで集中力がイマイチ高まりきっていないクロムの隙を逃す獣王ではない。
ダインは無言のままクロムに向かって突進を始めたのである。
クロムがそのことに気づいたときには、クロムの眼前にダインの渾身の右ストレートが迫っていた。
次の瞬間、クロムは咄嗟に後ろ向きの突風を自身にぶつけることによってなんとか回避するのであった。
「あぶねぇ……
これは気を引き締めないとな……」
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「あぁそうかい!
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次々とダインに着弾していく中、ダインはピクリとも身体を動かすことはなかった。
しかし、クロムはその光景をある不安の気持ちで見つめていたのである。
獣王ともあろうものが、この程度で倒せるのか? と。
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