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6章.ダイン獣王国編
88話.謁見④
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「クロム!!
落ち着いて!! 名前が出ただけだから!!!」
クロムは自分が無意識に殺気と冷気を周囲にまき散らしてしまっていたことをアキナのおかげで気づくことができた。
「ダイン王、すまない。
…… 続けてくれ」
気にするなという素振りをしたダインは話を続けた。
最初に発見したのはミツルであった。
ダインはアイリのおかげで転生者の強さと自由奔放さを痛感していた。
なので、ミツルとの交渉は最初から周到かつ慎重に行われるのであった。
ミツルがとても難のある性格の持ち主であることもあり、交渉はかなり難航にしたのだが、なんとか一つの決着点を見つけることに成功したのだった。
ダインはミツルに<国内でのあらゆる自由を獣王の名の元で保障する>という権利を与える。
その対価としてミツルはダインに<獣王が国の一大事であると判断し、招集を宣言したときは必ず招集に応じて助力すること>。
そしてそのためにも国外にはでないこと。
この内容を了承したダインとミツルは<アレスの契>を結ぶこととなったのである。
<アレスの契>とは、闘神アレスを仲介とする契約であり、契を違えた場合は命を落とすという非常に強い強制力をもつ契約である。
そして、契を交わしたミツルは好きにさせてもらうと言い残して王都を去るのだった。
「話の途中ですまないが、一つ確認したい」
「なんじゃ?」
「ダイン王はアレス神からの加護、闘神の加護とでもいうのかな。
それを貰っているという認識でいいのか?
<アレスの契>はその加護の恩恵の一つ…… と感じたのだが」
「その認識でだいたい正解じゃよ」
クロムの質問はかなり踏み込んだ内容の質問であったが、ダインは特に気にする様子もなくクロムの考えを認めた。
しかし認める以上の詳しい話を語ることはなかった。
そして、その話を早々に打ち切るように先ほどまでの話の続きを話し始めたのであった。
ミツルが去ったあとに出会ったタケルは好青年であり、ダインの見立てではミツル以上の強者であると思われた。
ダインはタケルにもミツルと同じ条件を提示したのだが断られることとなり、代わりにタケルより1つの案が提示された。
ダインの親衛隊隊長としてダインを守る、その対価として衣食住の保証をしてほしいという案を。
ダインは<親衛隊隊長以外にもある肩書を与えること>を条件としてタケルの案を飲むこととしたのであった。
タケルはダインの提案を受け入れ、それにより二つの肩書を持つ親衛隊の隊長が誕生したのであった。
この時ダインが与えた2つ目の肩書はタケルの性格見抜いていたダインが、タケルを味方で居続けさせるためのものであった。
タケルも薄々ダインの思惑を察しつつもそれを受け入れるのであった。
「ワシが出会った転生者はこの3人のみじゃ。
先の質問への回答であり、クロムが知りたがっておったミツルについての話もこれが全てじゃ」
ダインはそこまで言うとクロムがどのような反応をするのかを待つことにした。
クロムは思案する。
ダインがミツルに自由を与えたこと。
ダインがミツルの自由を妨害した場合、ダインの命が落ちるという契があったこと。
それらを理解した上でクロムはダインに問う。
「自由を与えられたミツルの行動は把握しているのか?」
「当然知っておる」
「じゃあ……
こいつらの苦悩も知ってるんだよな!!!」
クロムは怒りの感情を隠すこともなく謁見に同席していたディアナを指で刺して言うのであった。
「知っておる。
だがな……
それがアレスの契で許可された内容であり、なにより我が国の国是である強者絶対主義に沿っているものであるというのも事実じゃ」
ダインのこの言葉を聞いた瞬間にクロムの中で何かが爆ぜたのがわかった。
そしてクロムは右手で持った蒼天の杖をダインに向けて宣言するのである。
「ダイン王、いや……
獣王ダイン!!!
俺はダイン獣王国と獣王ダインを否定する!!!!
この場で決闘を申し込む」
複雑な笑みを浮かべるダイン。
やっぱりこうなったかと諦め顔のアキナたち。
そんな中、他の者とは違う表情で違う行動をするものが一人だけいた。
「クロムさん、残念です。
クロムさんとは仲良くなれそうな気がしていたんですけどね……」
「タケルさん、俺もそれには同意するよ。
そして…… やはり立ちふさがるのですね?」
「僕が貰った2つ目の肩書はまだご存じなかったですね。
僕は獣王ダインの親衛隊隊長であり、ダイン獣王国の<勇者>なのです!!!!
国と王を否定し王に決闘を申し込んだ人を放置できるわけありませんよね?」
タケルが与えられた2つ目の肩書、そしてタケルの行動。
どちらもクロムの推測の範囲内ではあったが、寂しい気持ちになるのだった。
しかしそれを押し隠しながら宣言するのであった。
「では!
獣王ダインとその親衛隊隊長であり勇者でもあるタケル!
双方に決闘を申し込む!!!」
落ち着いて!! 名前が出ただけだから!!!」
クロムは自分が無意識に殺気と冷気を周囲にまき散らしてしまっていたことをアキナのおかげで気づくことができた。
「ダイン王、すまない。
…… 続けてくれ」
気にするなという素振りをしたダインは話を続けた。
最初に発見したのはミツルであった。
ダインはアイリのおかげで転生者の強さと自由奔放さを痛感していた。
なので、ミツルとの交渉は最初から周到かつ慎重に行われるのであった。
ミツルがとても難のある性格の持ち主であることもあり、交渉はかなり難航にしたのだが、なんとか一つの決着点を見つけることに成功したのだった。
ダインはミツルに<国内でのあらゆる自由を獣王の名の元で保障する>という権利を与える。
その対価としてミツルはダインに<獣王が国の一大事であると判断し、招集を宣言したときは必ず招集に応じて助力すること>。
そしてそのためにも国外にはでないこと。
この内容を了承したダインとミツルは<アレスの契>を結ぶこととなったのである。
<アレスの契>とは、闘神アレスを仲介とする契約であり、契を違えた場合は命を落とすという非常に強い強制力をもつ契約である。
そして、契を交わしたミツルは好きにさせてもらうと言い残して王都を去るのだった。
「話の途中ですまないが、一つ確認したい」
「なんじゃ?」
「ダイン王はアレス神からの加護、闘神の加護とでもいうのかな。
それを貰っているという認識でいいのか?
<アレスの契>はその加護の恩恵の一つ…… と感じたのだが」
「その認識でだいたい正解じゃよ」
クロムの質問はかなり踏み込んだ内容の質問であったが、ダインは特に気にする様子もなくクロムの考えを認めた。
しかし認める以上の詳しい話を語ることはなかった。
そして、その話を早々に打ち切るように先ほどまでの話の続きを話し始めたのであった。
ミツルが去ったあとに出会ったタケルは好青年であり、ダインの見立てではミツル以上の強者であると思われた。
ダインはタケルにもミツルと同じ条件を提示したのだが断られることとなり、代わりにタケルより1つの案が提示された。
ダインの親衛隊隊長としてダインを守る、その対価として衣食住の保証をしてほしいという案を。
ダインは<親衛隊隊長以外にもある肩書を与えること>を条件としてタケルの案を飲むこととしたのであった。
タケルはダインの提案を受け入れ、それにより二つの肩書を持つ親衛隊の隊長が誕生したのであった。
この時ダインが与えた2つ目の肩書はタケルの性格見抜いていたダインが、タケルを味方で居続けさせるためのものであった。
タケルも薄々ダインの思惑を察しつつもそれを受け入れるのであった。
「ワシが出会った転生者はこの3人のみじゃ。
先の質問への回答であり、クロムが知りたがっておったミツルについての話もこれが全てじゃ」
ダインはそこまで言うとクロムがどのような反応をするのかを待つことにした。
クロムは思案する。
ダインがミツルに自由を与えたこと。
ダインがミツルの自由を妨害した場合、ダインの命が落ちるという契があったこと。
それらを理解した上でクロムはダインに問う。
「自由を与えられたミツルの行動は把握しているのか?」
「当然知っておる」
「じゃあ……
こいつらの苦悩も知ってるんだよな!!!」
クロムは怒りの感情を隠すこともなく謁見に同席していたディアナを指で刺して言うのであった。
「知っておる。
だがな……
それがアレスの契で許可された内容であり、なにより我が国の国是である強者絶対主義に沿っているものであるというのも事実じゃ」
ダインのこの言葉を聞いた瞬間にクロムの中で何かが爆ぜたのがわかった。
そしてクロムは右手で持った蒼天の杖をダインに向けて宣言するのである。
「ダイン王、いや……
獣王ダイン!!!
俺はダイン獣王国と獣王ダインを否定する!!!!
この場で決闘を申し込む」
複雑な笑みを浮かべるダイン。
やっぱりこうなったかと諦め顔のアキナたち。
そんな中、他の者とは違う表情で違う行動をするものが一人だけいた。
「クロムさん、残念です。
クロムさんとは仲良くなれそうな気がしていたんですけどね……」
「タケルさん、俺もそれには同意するよ。
そして…… やはり立ちふさがるのですね?」
「僕が貰った2つ目の肩書はまだご存じなかったですね。
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タケルが与えられた2つ目の肩書、そしてタケルの行動。
どちらもクロムの推測の範囲内ではあったが、寂しい気持ちになるのだった。
しかしそれを押し隠しながら宣言するのであった。
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