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6章.ダイン獣王国編

81話.ディアナの決断

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束の間の静寂、その中ディアナがゆっくりと<頼み>を話し始めた。

「そんなに恐縮されると話し始めにくいのじゃが……
 我ら狐人族をクロム殿の庇護下ひごかに置いてもらえぬだろうか…… ということじゃ」

「!!!!」

ディアナの頼みの内容を予見できなかったクロムは動揺を隠すことができずにいた。

「庇護下って……!
 俺が庇護するためには俺の配下…… つまり従属してもらうしかないことは理解の上でか?」

「クロム殿の仲間たちは全て従属関係にあることはアキナ殿から聞いておる。
 そのうえでの頼みじゃ」

「そんなことをしてしまったら……
 俺はミツルと同じ搾取者さくしゅしゃになってしまうじゃないか!!
 あるじがミツルか俺かの違いしか……」

「その違いは大きいし、勘違いはしないでほしいな。
 我ら狐人族は本来<搾取さくしゅされる側>の種族じゃ、強者の庇護の元で生きるかそれを拒んでこばんで滅ぶかしか選べぬのじゃ。
 今まではなんとか運良く生き延びてはきたが…… それも限界じゃろうて」

「そうかもしれないが……」

「そんな私だから人を見る目には自信がある、そしてクロム殿に従属してクロム殿の元で繁栄したい…… そう思ったのじゃ」

ディアナが真剣な表情でそう語る背後では、アルテナを始めとする狐人族の重鎮が片膝をついてクロムに対して頭を垂れるのであった。

「わかったが……
 一つ条件がある、種族の総意であること。
 これは絶対条件だ」

「クロム殿はアキナ殿を伴侶はんりょとしているのに<獣人族>というものを理解できておらぬようじゃの」

「あはは、クロムはちょっと特殊な事情があるからね……
 各種族の里に住む獣人族にとって族長は絶対なの、族長が決めたらそれはもう総意なのよ」

「アキナ、それは……」

「わかってるよ、そういうのはクロムの好みじゃないもんね。
 アルテナ、今からあなたが里中の意見を聞いてきてくれないかな?
 ちゃんと個人個人が望んでることなのかどうかをね」

渋い表情のクロムの気持ちを理解するアキナは、アルテナに里のみんなの気持ちを確認してきてくれるように頼んだ。
結果がどうであるかはアキナにはすでにわかりきっていることではあったのだが。

しばらくして戻ってきたアルテナはクロムたちにお願いをする、広場のほうにきてくれと。
その願いを受けたクロムたちが広場に向かうと広場は大勢の狐人族で埋め尽くされていた。
そしてクロムたち3人はアルテナに導かれるまま広場の中央に存在する舞台へと進んでいった。
舞台中央に3人が立った頃、里中に一つの音が響き渡った。
――狐人族、総勢165名が一斉に跪きひざまづき頭を垂れるこうべをたれる音であった。

そして舞台の上にディアナとアルテナが歩み寄り、クロムたち3人に告げるのであった。

「我ら狐人族の総意でございます。
 クロム殿、いえクロム様
 我らはあなたと従属関係を結び、庇護下に入ることを望みます」

「はぁ……
 わかったよ、受け入れる。
 ただ…… 
 様はやめてくれ……」

こうなってしまっては受け入れるしかないクロム。
苦笑するクロムを大笑いしながら見つめるアキナとカルロ。
そしてその姿を見て安堵したあんどした狐人族は歓声をあげて喜ぶのであった。

その後の展開は<竜人族><鬼族>を仲間にしたときと同じような流れである。
最初に全員と従属関係を結ぶ、その後は自分が転生者であって秘密だらけの存在であることを話し、詳細はアキナとナビに丸投げをするのであった。
その結果はいつも通りの混乱である。
それを収束させることにもやや慣れてきているアキナとナビ。

「あははは、変わり者であるとは言ったがまさかここまでとはの」

「まだまだ驚くことは残ってると思うけどな。
 俺たちの本拠地に案内するよ」

ゲートの入り口を生成しながらそういうクロム。
そしてその後も今まで通りであり、狐人族の里もゲート内に移転させることとなった。

「はぁぁ……、毎回この説明が面倒なんだよなぁ……」

そして何かをひらめき悪い顔をしたクロムはディアナとアルテナを呼び出して告げるのであった。

「今後の説明役はお前ら2人もよろしくな!」

そう告げるクロムに苦笑で答える2人であったが、信頼できる大きな存在に庇護されるその温かさと安心感を噛み締めるのでもあった。
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