40 / 147
3章.激動の予感編
36話.迷いの森
しおりを挟む
「ねね、とりあえずどこに向かうつもりなの?」
「そういえば言ってなかったね、俺がルインに来る前に少しの間だけ住んでいた森がとりあえずの目的地になるよ」
アキナに目的地を問われたクロムはそう答えた。
もちろん最終的な目的地は竜人族の隠れ里である。
しかし里の位置を知るわけではないクロムはカオスの助言に従い、その先は出たところ勝負のつもりであった。
仮住居としていた横穴まで行けば何かを感じれる気がする、そんな何の根拠もないしかし確信めいた何か感じてるクロムであった。
「この森の名前って確か<迷いの森>なんだっけ?
俺はこの森に一か月ほど住んでいたけど、迷ったことなんて記憶にないんだが……」
「えっとね、この森の中は外と比較してマナの濃度が異常なほどに濃い場所なの。
だから魔力への適性の低い人なんかはマナ酔いと言われるものになって方向感覚を失ってしまいやすいのよ。
……だから、普通はこの森に一か月も住むなんて無理なことなのよ?」
「魔力適正の高い、多くの魔力を貯めこんでいる魔物が住む森となっていたから、この森の魔物は味付けなしでも美味かったわけか」
クロムはアキナの指摘に対してピント外れな返事をしつつ目的の横穴を目指した。
アキナはクロムが以前にこの森に棲んでいたことを聞いてはいた。
しかしそれが異常なことであることをこの森に入ることで再認識するのであった。
クロムのおかげでステータスが高くなっているアキナはなんとかマナ酔いにはならずに済んでいたが、元々魔術を苦手としている彼女は魔力への適性が低めであった。
そのためにクロムは自身の技能<魔術適正>をアキナに共有しようとした。
しかし転生時にもらった技能は特別なものであるらしく完全な共有はできなかった。
それでも多少は魔力への適性を引き上げることに成功し、少し気持ち悪い程度で済むようになっていた。
「……ありがとね、クロム。
おかげ様でなんとかなりそうよ。
湖が見えてきたけど、例の横穴にはそろそろ着きそうなの?」
クロムたちは仮住居の目の前に広がっていた湖のほとりまで辿り着いていた。
湖に沿うようにして横穴を目指すクロムたち。
そしてクロムは違和感を感じて足を止めた。
「以前生活していた時にはよく来ていた場所ではあるけど……
この湖の中心から前は感じることがなかった魔力の歪みたいなものを感じるな……
……これがカオスが言っていた今なら気付ける違和感ってやつなのか?」
『おそらくそうでしょうね。
あんたを通じて僕にもそれが伝わってくるしね』
クロムが感じた違和感、そしてそれを共有するナビ。
しかしアキナにはそれを感じ取ることはできなかった。
そのことを寂しく感じているアキナに申し訳なく思うクロムであったが、そのことで一つの思いを確信させることにもなった。
この湖の中心に<竜人族の隠れ里>への入り口があるということを。
クロムは魔力の歪が湖のどこに発生しているのかを注意深く探ることにした。
その結果、魔力の歪は湖の中心部の湖底に存在しているように感じられた。
「さて、どうやってそんな場所に向かうかね」
「潜る…… しかない?」
「この湖の深さは相当っぽいんだ、まず息がもたないと思うよ。
仕方ないな、道を作る…… しかないよね」
「え? 道を?? どうやって……」
『洞くつへの穴を掘ったときの応用ってわけ?
規模が違いすぎるわよ?』
「確かにな、でもあの時にコツは掴んださ。
今では底なし泥沼の魔術は俺の得意技の一つになってるだろ?
それに魔術はイメージと言ったのはナビだぞ?
魔術はいかにできると確信しきれるか、そこが全てなんだと最近感じているよ」
そういうとクロムは湖のほとりで片膝をつき、湖に右手を突っ込んだ。
そしてクロムは全身から右手へと魔力の流れを作り、右手より膨大な魔力を湖に流し込み始めた。
続いてクロムはイメージを練り始めた。
自分が今いる場所から湖底にあるであろう隠れ里の入り口までの湖の水を全て排除し、そこまでの一本のまっすぐな道ができあがるのを。
そしてさらにイメージを具体的にするために、旧約聖書に書かれている<モーセの十戒>、モーセが杖を振り上げると海が2つ割れた様子を思い浮かべる。
思い浮かべるイメージ、魔力に込めるイメージをより鮮明により具体的にする。
クロムの想いが込められた魔力が湖内いっぱいに広がる。
そしてクロムはより一層の魔力を湖に流し込みつつ、叫んだ。
「湖よ! 俺に道を示せ!!!」
クロムの魔力がたっぷりと混ざりこんでいる湖はクロムの願いを聞き入れたかのように蠢き始め、クロムの眼前に一本の道を作り上げたのだった。
「そういえば言ってなかったね、俺がルインに来る前に少しの間だけ住んでいた森がとりあえずの目的地になるよ」
アキナに目的地を問われたクロムはそう答えた。
もちろん最終的な目的地は竜人族の隠れ里である。
しかし里の位置を知るわけではないクロムはカオスの助言に従い、その先は出たところ勝負のつもりであった。
仮住居としていた横穴まで行けば何かを感じれる気がする、そんな何の根拠もないしかし確信めいた何か感じてるクロムであった。
「この森の名前って確か<迷いの森>なんだっけ?
俺はこの森に一か月ほど住んでいたけど、迷ったことなんて記憶にないんだが……」
「えっとね、この森の中は外と比較してマナの濃度が異常なほどに濃い場所なの。
だから魔力への適性の低い人なんかはマナ酔いと言われるものになって方向感覚を失ってしまいやすいのよ。
……だから、普通はこの森に一か月も住むなんて無理なことなのよ?」
「魔力適正の高い、多くの魔力を貯めこんでいる魔物が住む森となっていたから、この森の魔物は味付けなしでも美味かったわけか」
クロムはアキナの指摘に対してピント外れな返事をしつつ目的の横穴を目指した。
アキナはクロムが以前にこの森に棲んでいたことを聞いてはいた。
しかしそれが異常なことであることをこの森に入ることで再認識するのであった。
クロムのおかげでステータスが高くなっているアキナはなんとかマナ酔いにはならずに済んでいたが、元々魔術を苦手としている彼女は魔力への適性が低めであった。
そのためにクロムは自身の技能<魔術適正>をアキナに共有しようとした。
しかし転生時にもらった技能は特別なものであるらしく完全な共有はできなかった。
それでも多少は魔力への適性を引き上げることに成功し、少し気持ち悪い程度で済むようになっていた。
「……ありがとね、クロム。
おかげ様でなんとかなりそうよ。
湖が見えてきたけど、例の横穴にはそろそろ着きそうなの?」
クロムたちは仮住居の目の前に広がっていた湖のほとりまで辿り着いていた。
湖に沿うようにして横穴を目指すクロムたち。
そしてクロムは違和感を感じて足を止めた。
「以前生活していた時にはよく来ていた場所ではあるけど……
この湖の中心から前は感じることがなかった魔力の歪みたいなものを感じるな……
……これがカオスが言っていた今なら気付ける違和感ってやつなのか?」
『おそらくそうでしょうね。
あんたを通じて僕にもそれが伝わってくるしね』
クロムが感じた違和感、そしてそれを共有するナビ。
しかしアキナにはそれを感じ取ることはできなかった。
そのことを寂しく感じているアキナに申し訳なく思うクロムであったが、そのことで一つの思いを確信させることにもなった。
この湖の中心に<竜人族の隠れ里>への入り口があるということを。
クロムは魔力の歪が湖のどこに発生しているのかを注意深く探ることにした。
その結果、魔力の歪は湖の中心部の湖底に存在しているように感じられた。
「さて、どうやってそんな場所に向かうかね」
「潜る…… しかない?」
「この湖の深さは相当っぽいんだ、まず息がもたないと思うよ。
仕方ないな、道を作る…… しかないよね」
「え? 道を?? どうやって……」
『洞くつへの穴を掘ったときの応用ってわけ?
規模が違いすぎるわよ?』
「確かにな、でもあの時にコツは掴んださ。
今では底なし泥沼の魔術は俺の得意技の一つになってるだろ?
それに魔術はイメージと言ったのはナビだぞ?
魔術はいかにできると確信しきれるか、そこが全てなんだと最近感じているよ」
そういうとクロムは湖のほとりで片膝をつき、湖に右手を突っ込んだ。
そしてクロムは全身から右手へと魔力の流れを作り、右手より膨大な魔力を湖に流し込み始めた。
続いてクロムはイメージを練り始めた。
自分が今いる場所から湖底にあるであろう隠れ里の入り口までの湖の水を全て排除し、そこまでの一本のまっすぐな道ができあがるのを。
そしてさらにイメージを具体的にするために、旧約聖書に書かれている<モーセの十戒>、モーセが杖を振り上げると海が2つ割れた様子を思い浮かべる。
思い浮かべるイメージ、魔力に込めるイメージをより鮮明により具体的にする。
クロムの想いが込められた魔力が湖内いっぱいに広がる。
そしてクロムはより一層の魔力を湖に流し込みつつ、叫んだ。
「湖よ! 俺に道を示せ!!!」
クロムの魔力がたっぷりと混ざりこんでいる湖はクロムの願いを聞き入れたかのように蠢き始め、クロムの眼前に一本の道を作り上げたのだった。
1
お気に入りに追加
165
あなたにおすすめの小説

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?
カタナヅキ
ファンタジー
現実世界で普通の高校生として過ごしていた「白崎レナ」は謎の空間の亀裂に飲み込まれ、狭間の世界と呼ばれる空間に移動していた。彼はそこで世界の「管理者」と名乗る女性と出会い、彼女と何時でも交信できる能力を授かり、異世界に転生される。
次に彼が意識を取り戻した時には見知らぬ女性と男性が激しく口論しており、会話の内容から自分達から誕生した赤子は呪われた子供であり、王位を継ぐ権利はないと男性が怒鳴り散らしている事を知る。そして子供というのが自分自身である事にレナは気付き、彼は母親と供に追い出された。
時は流れ、成長したレナは自分がこの世界では不遇職として扱われている「支援魔術師」と「錬金術師」の職業を習得している事が判明し、更に彼は一般的には扱われていないスキルばかり習得してしまう。多くの人間から見下され、実の姉弟からも馬鹿にされてしまうが、彼は決して挫けずに自分の能力を信じて生き抜く――
――後にレナは自分の得た職業とスキルの真の力を「世界の管理者」を名乗る女性のアイリスに伝えられ、自分を見下していた人間から逆に見上げられる立場になる事を彼は知らない。
※タイトルを変更しました。(旧題:不遇職に役立たずスキルと馬鹿にされましたが、実際はそれほど悪くはありません)。書籍化に伴い、一部の話を取り下げました。また、近い内に大幅な取り下げが行われます。
※11月22日に第一巻が発売されます!!また、書籍版では主人公の名前が「レナ」→「レイト」に変更しています。

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡
サクラ近衛将監
ファンタジー
女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。
シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。
シルヴィの将来や如何に?
毎週木曜日午後10時に投稿予定です。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~
川原源明
ファンタジー
秋津直人、85歳。
50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。
嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。
彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。
白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。
胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。
そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。
まずは最強の称号を得よう!
地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語
※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編
※医療現場の恋物語 馴れ初め編

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる