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3章.激動の予感編
34話.クロムの苦悩
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「……ん」
目を覚ましたクロムの視界に飛び込んできたものは見慣れた景色であった。
いつのまにか自室のベットで眠っており、その傍らには眠っているアキナの姿があった。
クロムはそんなアキナを起こさないようにしながら、状況の整理をするために回想をする。
そして、色々なことを少しづつ思い出し始めた頃、アキナが目を覚ました。
「クロム!!
やっと目が覚めたのね……
よかった……」
アキナはクロムの胸元に飛び込み、抱きしめる。
クロムのことをずっと看病していたアキナは、中々目を覚まさなかったクロムが目を覚ましたことが嬉しかった。
クロムは状況の説明をして欲しかったが、ひとまずは抱きついているアキナが落ち着くまで頭を撫でることにした。
やがて、落ち着きを取り戻したアキナはいきなり抱きついてしまったことを謝ったのち、クロムが知りたがっている【あのあとに起きたこと】の説明を始めた。
魔物の群れに飲み込まれそうになった時、急に魔物の群れが引き返し始めたこと。
そしてクロムの元に駆け寄ろうとした時、クロムがお腹から血を噴き出して倒れたこと。
そんなクロムの姿に動揺して慌てていたところに、Aランク冒険者が3人所属しているチームを引き連れたダンが到着したこと。
クロムの姿を一目見たダンが緊急時のために持っていたエリクサーを使い、それによってクロムが一命をとりとめたこと。
そして、そのまま約2日間眠り続けたこと。
「なんとなく状況はわかったよ。
心配かけてごめんな……」
「ホントだよ!!!
いつも! いつも……
無理ばっかりするんだから……」
「できる限り気を付けるよ……」
「もぉ……
あとでルーナにいっぱい美味しいもの持ってきてもらうから今日はたくさん食べて、栄養をいっぱいとって、ゆっくり休むこと!!
いいね!!!?」
「は、はい……」
アキナの迫力に圧倒されたクロムは思わずアキナの言葉をそのまま受け入れてしまう。
しかしクロムもまだ疲れが抜け切れておらず、そのままアキナの言葉に甘えることとした。
「あー、アキナ。
悪いけど、ダンを呼んできてもらえないかな?
出掛けないことは約束するけど、ダンに報告しないといけないことがあるからさ」
クロムから伝言を頼まれたアキナは、ルーナのお店のあとにギルドによって伝言してくると言い残して、部屋を後にするのであった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「やっと目を覚ましおったか、心配かけおって」
「わざわざ来てもらってすまないな、ダン。
それに色々としてもらったみたいで……」
「それはよいわ、元はといえばワシが出した無茶な依頼が原因じゃしな。
……そんなことより報告があると聞いたのじゃが、どうしたのじゃ?」
クロムは自分が気を失う直前に起きたことをダンに告げた。
急にどこからか笛の音が聞こえて、その後に魔物が引き返したこと。
そして聞き覚えのない声で何かが聞こえたと思った次の瞬間に、自分の脇腹に穴が開いて倒れたことを。
「それは…… 真実なんじゃろな?」
「嘘でこんなことを言うメリットが俺にありそうか?」
「ないな……
ということは……
あのスタンピードは誰かが魔物を操った結果…… というわけか」
「憶測にすぎないけど、可能性はかなり高いと思ってる。
……カロライン王国の続報はどんな感じで入ってきてるんだ?」
「うむ、嫌なことに今回の話と繋がってしまう内容じゃが……
あの国の王都はスタンピードによって蹂躙され、その後にやってきた正体不明のものたちにより占拠され続けているとのことじゃ。
運の悪いことにカロライン王国自慢の聖竜騎士団が国境付近に遠征中の出来事であったらしい。
聖竜騎士団は王都近郊の街にて王都奪回を目指しているそうじゃ」
「……ルインの対応は?」
「騎士団に協力して王都を奪還したいというのがサラカと王国出身議員の意見なのじゃが……」
「他2国の議員が反対してるということか……」
「うむ……
なので、サラカの個人依頼としてギルドが対応する……
というのが現実的なところかの」
「この街の闇はやっぱり相当深いみたいだな……
俺もリベンジを兼ねてその作戦に協力したいが……
悪いけど、その前に少し時間が欲しい」
「意外じゃな、どうしたというのじゃ?」
「今回のことで思い知ったんだよ……
圧倒的な物量に対して、俺一人では限界があるということに。
あそこで魔物が引かなければダンたちが到着する前にアキナがやられていたかもしれない……
だから俺は仲間を集めたい」
「ふむ…… 仲間のアテはあるのか?」
「確実なアテではないけど、まずはそこから試すつもりだよ」
真剣な表情をして向かい合う二人。
緊張感のある無言の空気が二人を包みこむ。
しかし、その空気は一気に引き裂かれることとなった。
「ただいまー」
「お邪魔しまーーす」
買い出しを終えたアキナとルーナの明るい声が響き渡る。
一気に緊張感が緩んだことでクロムとダンは笑い始めた。
そしてクロムはダンとルーナも食事に誘い、アキナに仲間集めをしたいことの説明をしながらの食事を始めた。
目を覚ましたクロムの視界に飛び込んできたものは見慣れた景色であった。
いつのまにか自室のベットで眠っており、その傍らには眠っているアキナの姿があった。
クロムはそんなアキナを起こさないようにしながら、状況の整理をするために回想をする。
そして、色々なことを少しづつ思い出し始めた頃、アキナが目を覚ました。
「クロム!!
やっと目が覚めたのね……
よかった……」
アキナはクロムの胸元に飛び込み、抱きしめる。
クロムのことをずっと看病していたアキナは、中々目を覚まさなかったクロムが目を覚ましたことが嬉しかった。
クロムは状況の説明をして欲しかったが、ひとまずは抱きついているアキナが落ち着くまで頭を撫でることにした。
やがて、落ち着きを取り戻したアキナはいきなり抱きついてしまったことを謝ったのち、クロムが知りたがっている【あのあとに起きたこと】の説明を始めた。
魔物の群れに飲み込まれそうになった時、急に魔物の群れが引き返し始めたこと。
そしてクロムの元に駆け寄ろうとした時、クロムがお腹から血を噴き出して倒れたこと。
そんなクロムの姿に動揺して慌てていたところに、Aランク冒険者が3人所属しているチームを引き連れたダンが到着したこと。
クロムの姿を一目見たダンが緊急時のために持っていたエリクサーを使い、それによってクロムが一命をとりとめたこと。
そして、そのまま約2日間眠り続けたこと。
「なんとなく状況はわかったよ。
心配かけてごめんな……」
「ホントだよ!!!
いつも! いつも……
無理ばっかりするんだから……」
「できる限り気を付けるよ……」
「もぉ……
あとでルーナにいっぱい美味しいもの持ってきてもらうから今日はたくさん食べて、栄養をいっぱいとって、ゆっくり休むこと!!
いいね!!!?」
「は、はい……」
アキナの迫力に圧倒されたクロムは思わずアキナの言葉をそのまま受け入れてしまう。
しかしクロムもまだ疲れが抜け切れておらず、そのままアキナの言葉に甘えることとした。
「あー、アキナ。
悪いけど、ダンを呼んできてもらえないかな?
出掛けないことは約束するけど、ダンに報告しないといけないことがあるからさ」
クロムから伝言を頼まれたアキナは、ルーナのお店のあとにギルドによって伝言してくると言い残して、部屋を後にするのであった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「やっと目を覚ましおったか、心配かけおって」
「わざわざ来てもらってすまないな、ダン。
それに色々としてもらったみたいで……」
「それはよいわ、元はといえばワシが出した無茶な依頼が原因じゃしな。
……そんなことより報告があると聞いたのじゃが、どうしたのじゃ?」
クロムは自分が気を失う直前に起きたことをダンに告げた。
急にどこからか笛の音が聞こえて、その後に魔物が引き返したこと。
そして聞き覚えのない声で何かが聞こえたと思った次の瞬間に、自分の脇腹に穴が開いて倒れたことを。
「それは…… 真実なんじゃろな?」
「嘘でこんなことを言うメリットが俺にありそうか?」
「ないな……
ということは……
あのスタンピードは誰かが魔物を操った結果…… というわけか」
「憶測にすぎないけど、可能性はかなり高いと思ってる。
……カロライン王国の続報はどんな感じで入ってきてるんだ?」
「うむ、嫌なことに今回の話と繋がってしまう内容じゃが……
あの国の王都はスタンピードによって蹂躙され、その後にやってきた正体不明のものたちにより占拠され続けているとのことじゃ。
運の悪いことにカロライン王国自慢の聖竜騎士団が国境付近に遠征中の出来事であったらしい。
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「……ルインの対応は?」
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「他2国の議員が反対してるということか……」
「うむ……
なので、サラカの個人依頼としてギルドが対応する……
というのが現実的なところかの」
「この街の闇はやっぱり相当深いみたいだな……
俺もリベンジを兼ねてその作戦に協力したいが……
悪いけど、その前に少し時間が欲しい」
「意外じゃな、どうしたというのじゃ?」
「今回のことで思い知ったんだよ……
圧倒的な物量に対して、俺一人では限界があるということに。
あそこで魔物が引かなければダンたちが到着する前にアキナがやられていたかもしれない……
だから俺は仲間を集めたい」
「ふむ…… 仲間のアテはあるのか?」
「確実なアテではないけど、まずはそこから試すつもりだよ」
真剣な表情をして向かい合う二人。
緊張感のある無言の空気が二人を包みこむ。
しかし、その空気は一気に引き裂かれることとなった。
「ただいまー」
「お邪魔しまーーす」
買い出しを終えたアキナとルーナの明るい声が響き渡る。
一気に緊張感が緩んだことでクロムとダンは笑い始めた。
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