なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです!!

日向ぼっこ

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2章.冒険者編

32話.異変の予兆

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 ダンがクロムたちの偉業達成とランクアップを公表して数日の間は冒険者ギルドにいることが困難なほど騒がしく、クロムは大量の決闘を挑まれることになった。
 クロムがその全てに圧勝することにより、急なランクアップのことやアキナとチームを組んだことへのやっかみも徐々にではあるが減っていった。

 その後の二人は主に討伐系の依頼をこなしながら日々を過ごし、一か月ほど経過するころには順風満帆の冒険者生活を楽しんでいた。

「クロムもすっかり冒険者って感じになってきたわね」

「そうか? 自分ではよくわかんないんだけどな。
 でも生活は安定してきたし、毎日楽しく過ごさせてもらってるよ。
 これもアキナのおかげだな、ありがと」

「いえいえ、私も毎日楽しいよ♪
 さて、今日も依頼受けに行こ♪」

 すでに日課となっている毎朝の依頼探しをするために冒険者ギルドについた二人はいつもと様子が異なることに気が付いた。
 クロムたちは緊張感を持ってギルドに入ると、スズに声を掛けられた。

「おはようございます、今からお二人を探しにいくところだったんですよ」

「おはよう、でも探すってどうしたんだ?」

「私もよくはわからないんですけど…… ダンさんが二人を早く呼んでこいって……」

「ん~、特別指令ってやつか? 俺たちには回さないようにするって言ってたのに……」

 ボヤくクロムをアキナは宥めなだめつつ、二人はスズに案内されてダンの部屋へ向かうことになった。

「ようやくきおったか……
 そこへ座ってくれ」

 部屋に入った二人は挨拶もそこそこにダンに勧められるがまま椅子に座ると、もう一人の部屋の住人に視線を向けた。

「クロムさん、アキナさん、はじめまして。
 僕はルイン自治議会の議長をしているサラカと申します。
 ダンとは冒険者時代の仲間でして……」

「自己紹介はそのくらいでいいじゃろ、それより本題にはいろう」

 ダンがサラカの自己紹介を途中で遮ると、本題へ入ることを促した。
 そして、サラカが話し始めた<本題>は衝撃的な内容であった。
 大陸の東部に存在するカロライン王国の王都が陥落したらしいとのことだった。
 まだ一報が入っただけの段階であり、詳細は不明とのことだが陥落自体は事実でありそうだった。

「……そんなに簡単に3大国の一角が陥落するもんなのか?」

「ワシが知っている限りでは、3大国による大陸の統治が始まって以降、初のことじゃ……」

「ルイン自治議会としてもなんらかの対策をしたいところなのですけど……
 ……ご存じかもしれませんが自治議会は3大国の牽制のし合いでまともに機能していません……
 なので…… 個人的にダンに相談をさせてもらった次第です……」

 サラカは自分の無力さを嘆きつつも、それでもなんとかしなければという使命感によりここにいるのであった。
 しかし特にこれ以上の情報があるわけでもない現状では、東への警戒を強めておく以上の対策をたてるすべがなかった。

 この場は今後の協力と情報共有の約束をし、解散しようという話になったときに状況は急変することになった。
 急にダンの部屋のドアが開き、スズが飛び込んできたのであった。

「なんじゃ! ノックぐらいせぬか!!!」

「す、すいません……
 って、それどころじゃないんです!!!
 東の方角よりルインに向けての魔物のスタンピードが発生したそうです!!!!」

「「「「!!!!!!!」」」」

「詳細を説明せい」

 ダンに説明を促されたスズは説明を始めた。
 異変の始まりはカロライン王国領内で依頼をこなしていた冒険者が遠方より迫ってくる魔物の大群を発見したことらしい。
 その後大陸東部方面にて活動していた多数の冒険者より同様の報告が入り、現在は街までおおよそ1時間程度の場所を進んでいるとのことだった。

「ダン、僕はただちに自治会議の議員を招集して会議を始めます。
 対応には間に合わないでしょうから、事後処理…… の会議しかできないとは思いますが……」

「サラカは自分の仕事をすれば良いわい。
 現場対応はワシら冒険者の仕事じゃ。
 ということでクロムよ、ギルドからの特別指令じゃ」

「さすがにこの状況じゃ断れないよな。
 先発隊としてスタンピードの進行を遅らせて時間を稼げ…… ってとこか?」

「うむ……
 ある意味死ねと言ってるような依頼をしておきながらではあるが…… 
 生きて帰って来いよ」

「ったく、無茶ぶりすぎだろ……
 他のAランクは?」

「今街にいるのはおぬしだけじゃ……
 居場所はわかっておるから至急連絡をつけて応援に向かわせる……
 ……すまぬな」

「戻ったら、美味いものでもごちそうしてくれ」

 クロムは笑いながらそう言い残すと、アキナを連れて街の外へと向かうのであった。
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