35 / 147
2章.冒険者編
32話.異変の予兆
しおりを挟む
ダンがクロムたちの偉業達成とランクアップを公表して数日の間は冒険者ギルドにいることが困難なほど騒がしく、クロムは大量の決闘を挑まれることになった。
クロムがその全てに圧勝することにより、急なランクアップのことやアキナとチームを組んだことへのやっかみも徐々にではあるが減っていった。
その後の二人は主に討伐系の依頼をこなしながら日々を過ごし、一か月ほど経過するころには順風満帆の冒険者生活を楽しんでいた。
「クロムもすっかり冒険者って感じになってきたわね」
「そうか? 自分ではよくわかんないんだけどな。
でも生活は安定してきたし、毎日楽しく過ごさせてもらってるよ。
これもアキナのおかげだな、ありがと」
「いえいえ、私も毎日楽しいよ♪
さて、今日も依頼受けに行こ♪」
すでに日課となっている毎朝の依頼探しをするために冒険者ギルドについた二人はいつもと様子が異なることに気が付いた。
クロムたちは緊張感を持ってギルドに入ると、スズに声を掛けられた。
「おはようございます、今からお二人を探しにいくところだったんですよ」
「おはよう、でも探すってどうしたんだ?」
「私もよくはわからないんですけど…… ダンさんが二人を早く呼んでこいって……」
「ん~、特別指令ってやつか? 俺たちには回さないようにするって言ってたのに……」
ボヤくクロムをアキナは宥めつつ、二人はスズに案内されてダンの部屋へ向かうことになった。
「ようやくきおったか……
そこへ座ってくれ」
部屋に入った二人は挨拶もそこそこにダンに勧められるがまま椅子に座ると、もう一人の部屋の住人に視線を向けた。
「クロムさん、アキナさん、はじめまして。
僕はルイン自治議会の議長をしているサラカと申します。
ダンとは冒険者時代の仲間でして……」
「自己紹介はそのくらいでいいじゃろ、それより本題にはいろう」
ダンがサラカの自己紹介を途中で遮ると、本題へ入ることを促した。
そして、サラカが話し始めた<本題>は衝撃的な内容であった。
大陸の東部に存在するカロライン王国の王都が陥落したらしいとのことだった。
まだ一報が入っただけの段階であり、詳細は不明とのことだが陥落自体は事実でありそうだった。
「……そんなに簡単に3大国の一角が陥落するもんなのか?」
「ワシが知っている限りでは、3大国による大陸の統治が始まって以降、初のことじゃ……」
「ルイン自治議会としてもなんらかの対策をしたいところなのですけど……
……ご存じかもしれませんが自治議会は3大国の牽制のし合いでまともに機能していません……
なので…… 個人的にダンに相談をさせてもらった次第です……」
サラカは自分の無力さを嘆きつつも、それでもなんとかしなければという使命感によりここにいるのであった。
しかし特にこれ以上の情報があるわけでもない現状では、東への警戒を強めておく以上の対策をたてるすべがなかった。
この場は今後の協力と情報共有の約束をし、解散しようという話になったときに状況は急変することになった。
急にダンの部屋のドアが開き、スズが飛び込んできたのであった。
「なんじゃ! ノックぐらいせぬか!!!」
「す、すいません……
って、それどころじゃないんです!!!
東の方角よりルインに向けての魔物のスタンピードが発生したそうです!!!!」
「「「「!!!!!!!」」」」
「詳細を説明せい」
ダンに説明を促されたスズは説明を始めた。
異変の始まりはカロライン王国領内で依頼をこなしていた冒険者が遠方より迫ってくる魔物の大群を発見したことらしい。
その後大陸東部方面にて活動していた多数の冒険者より同様の報告が入り、現在は街までおおよそ1時間程度の場所を進んでいるとのことだった。
「ダン、僕はただちに自治会議の議員を招集して会議を始めます。
対応には間に合わないでしょうから、事後処理…… の会議しかできないとは思いますが……」
「サラカは自分の仕事をすれば良いわい。
現場対応はワシら冒険者の仕事じゃ。
ということでクロムよ、ギルドからの特別指令じゃ」
「さすがにこの状況じゃ断れないよな。
先発隊としてスタンピードの進行を遅らせて時間を稼げ…… ってとこか?」
「うむ……
ある意味死ねと言ってるような依頼をしておきながらではあるが……
生きて帰って来いよ」
「ったく、無茶ぶりすぎだろ……
他のAランクは?」
「今街にいるのはおぬしだけじゃ……
居場所はわかっておるから至急連絡をつけて応援に向かわせる……
……すまぬな」
「戻ったら、美味いものでもごちそうしてくれ」
クロムは笑いながらそう言い残すと、アキナを連れて街の外へと向かうのであった。
クロムがその全てに圧勝することにより、急なランクアップのことやアキナとチームを組んだことへのやっかみも徐々にではあるが減っていった。
その後の二人は主に討伐系の依頼をこなしながら日々を過ごし、一か月ほど経過するころには順風満帆の冒険者生活を楽しんでいた。
「クロムもすっかり冒険者って感じになってきたわね」
「そうか? 自分ではよくわかんないんだけどな。
でも生活は安定してきたし、毎日楽しく過ごさせてもらってるよ。
これもアキナのおかげだな、ありがと」
「いえいえ、私も毎日楽しいよ♪
さて、今日も依頼受けに行こ♪」
すでに日課となっている毎朝の依頼探しをするために冒険者ギルドについた二人はいつもと様子が異なることに気が付いた。
クロムたちは緊張感を持ってギルドに入ると、スズに声を掛けられた。
「おはようございます、今からお二人を探しにいくところだったんですよ」
「おはよう、でも探すってどうしたんだ?」
「私もよくはわからないんですけど…… ダンさんが二人を早く呼んでこいって……」
「ん~、特別指令ってやつか? 俺たちには回さないようにするって言ってたのに……」
ボヤくクロムをアキナは宥めつつ、二人はスズに案内されてダンの部屋へ向かうことになった。
「ようやくきおったか……
そこへ座ってくれ」
部屋に入った二人は挨拶もそこそこにダンに勧められるがまま椅子に座ると、もう一人の部屋の住人に視線を向けた。
「クロムさん、アキナさん、はじめまして。
僕はルイン自治議会の議長をしているサラカと申します。
ダンとは冒険者時代の仲間でして……」
「自己紹介はそのくらいでいいじゃろ、それより本題にはいろう」
ダンがサラカの自己紹介を途中で遮ると、本題へ入ることを促した。
そして、サラカが話し始めた<本題>は衝撃的な内容であった。
大陸の東部に存在するカロライン王国の王都が陥落したらしいとのことだった。
まだ一報が入っただけの段階であり、詳細は不明とのことだが陥落自体は事実でありそうだった。
「……そんなに簡単に3大国の一角が陥落するもんなのか?」
「ワシが知っている限りでは、3大国による大陸の統治が始まって以降、初のことじゃ……」
「ルイン自治議会としてもなんらかの対策をしたいところなのですけど……
……ご存じかもしれませんが自治議会は3大国の牽制のし合いでまともに機能していません……
なので…… 個人的にダンに相談をさせてもらった次第です……」
サラカは自分の無力さを嘆きつつも、それでもなんとかしなければという使命感によりここにいるのであった。
しかし特にこれ以上の情報があるわけでもない現状では、東への警戒を強めておく以上の対策をたてるすべがなかった。
この場は今後の協力と情報共有の約束をし、解散しようという話になったときに状況は急変することになった。
急にダンの部屋のドアが開き、スズが飛び込んできたのであった。
「なんじゃ! ノックぐらいせぬか!!!」
「す、すいません……
って、それどころじゃないんです!!!
東の方角よりルインに向けての魔物のスタンピードが発生したそうです!!!!」
「「「「!!!!!!!」」」」
「詳細を説明せい」
ダンに説明を促されたスズは説明を始めた。
異変の始まりはカロライン王国領内で依頼をこなしていた冒険者が遠方より迫ってくる魔物の大群を発見したことらしい。
その後大陸東部方面にて活動していた多数の冒険者より同様の報告が入り、現在は街までおおよそ1時間程度の場所を進んでいるとのことだった。
「ダン、僕はただちに自治会議の議員を招集して会議を始めます。
対応には間に合わないでしょうから、事後処理…… の会議しかできないとは思いますが……」
「サラカは自分の仕事をすれば良いわい。
現場対応はワシら冒険者の仕事じゃ。
ということでクロムよ、ギルドからの特別指令じゃ」
「さすがにこの状況じゃ断れないよな。
先発隊としてスタンピードの進行を遅らせて時間を稼げ…… ってとこか?」
「うむ……
ある意味死ねと言ってるような依頼をしておきながらではあるが……
生きて帰って来いよ」
「ったく、無茶ぶりすぎだろ……
他のAランクは?」
「今街にいるのはおぬしだけじゃ……
居場所はわかっておるから至急連絡をつけて応援に向かわせる……
……すまぬな」
「戻ったら、美味いものでもごちそうしてくれ」
クロムは笑いながらそう言い残すと、アキナを連れて街の外へと向かうのであった。
1
お気に入りに追加
165
あなたにおすすめの小説

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

勇者様、旅のお供に平兵士などはいかがでしょうか?
黒井 へいほ
ファンタジー
ミューステルム王国に仕える兵であるラックス=スタンダードは、世界を救うために召喚された勇者ミサキ=ニノミヤの仲間として共に旅立つ。
しかし、彼女は勇者ではあるが、その前に普通の少女である。何度も帰りたいと泣き言を言いながらも、彼女は成長していった。
そして、決断をする。
勇者になりたい、世界を救いたい、と。
己が身に魔王の魂を宿していたことを知ったラックスだが、彼もまた決断をした。
世界を救おうという勇者のために。
ずっと自分を救ってくれていた魔王のために。
二人を守るために、自分は生きようと。
そして、彼らは真の意味で旅立つ。
――世界を救うために。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡
サクラ近衛将監
ファンタジー
女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。
シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。
シルヴィの将来や如何に?
毎週木曜日午後10時に投稿予定です。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~
川原源明
ファンタジー
秋津直人、85歳。
50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。
嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。
彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。
白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。
胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。
そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。
まずは最強の称号を得よう!
地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語
※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編
※医療現場の恋物語 馴れ初め編

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる