あなたの運命になりたかった

夕立悠理

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祝福か、呪いか

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 扉から出てきたのは、僕の番だという少女だった。
 「……っ!」
距離を詰められ、後ずさると、その距離をさらに詰められる。

 「貴方だって、感じているでしょう? 私を愛したいって」
吸い込まれそうな藍色の瞳と、強制的に目が合わせられる。

 「……っあ」
すると、心とは裏腹に体が彼女に近づいた。

 頭のなかが、ガンガンする。
 愛したい、愛したい、愛したい、愛したい、愛したい、愛したい、愛したい、愛したい。

 彼女のことしか、考えられなくなる。

 彼女は、僕に手を伸ばした。白魚のようなその手に触れたい。

 ──違う! 僕が愛しているのは、コーデリアだ。目の前の少女ではない。

 「やめてくれ!」
何とか、手を振り払うと、藍の瞳と目をそらすことができた。

 すると、ようやく息ができる。肩で息をする僕に、隣にいた僕と同じ竜族の同僚が弾んだ声で聞いてくる。

 「ジャレッド、その子は、まさか、番なのか?」
よかったなぁ、運命の相手が見つかって。

 それが、通常であれば、祝福であるだろうその言葉を紡いだ同僚に、身勝手だとは感じながら、殺意を覚える。

 ──これが、運命? こんなのは、呪いだ。

 目があっただけで、僕の意思とは無関係に、体が言うことを聞かなくなり、頭のなかが少女でいっぱいになった。

 僕が愛しているのは、コーデリアだけだというのに。

 「……僕は、君とどうにかなるつもりはない。帰ってくれ」
「……わかったわ。今日は、名前を覚えて欲しかっただけだから。私の名前は、シンディ、今度はそうよんでね」
そういって微笑むと、彼女は、来客室から出ていた。
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