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再会
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あの日のことは、まるで夢だったのではないかと思うほど数日間、穏やかな日々が過ぎた。
けれど、一緒に歩く度に、きつく握りしめられる手や、ジャレッドに抱き締められる回数が異常に増えたことが、夢ではないと告げていた。
そんな、ある日のこと。
どうやって調べたのか私の仕事場に『彼女』はやってきた。
「少し私とお話しませんか? コーデリアさん」
鈴を転がすような声で、彼女は言ったのだ。
ひとまず、休憩をもらい、手近な店に入ると、彼女は要件を切り出した。
「単刀直入にいいます。彼と、別れて」
潤んだ瞳で私を見つめる。私よりも身長が低い彼女は、必然的に上目遣いになる。元々整った顔立ちをしている彼女の、その表情はさぞ庇護欲をそそることだろう。きっと、ジャレッドも。
そう思ってから、首を振ってその考えを追い出す。ジャレッドは、私を愛している。それを、否定するような考えを私が持ってはいけない。
「それは、できません」
私もジャレッドを愛している。たとえ、私がジャレッドの番でなかったとしても。
「私は、彼の番なのよ。私とつがえば、絶対に彼は幸せになれる」
そうだろう。番とはそういうものなのだから。
「私が彼と二人で幸せになります。だから、別れません。では」
これ以上、彼女といたくなくて、席をたつ。
「──貴女はそう思っているかもしれないけれど、彼はどうかしらね?」
去り際に彼女がいった言葉が、私にまとわりつく。
その言葉を振りきるように、足早に、店を出た。
けれど、一緒に歩く度に、きつく握りしめられる手や、ジャレッドに抱き締められる回数が異常に増えたことが、夢ではないと告げていた。
そんな、ある日のこと。
どうやって調べたのか私の仕事場に『彼女』はやってきた。
「少し私とお話しませんか? コーデリアさん」
鈴を転がすような声で、彼女は言ったのだ。
ひとまず、休憩をもらい、手近な店に入ると、彼女は要件を切り出した。
「単刀直入にいいます。彼と、別れて」
潤んだ瞳で私を見つめる。私よりも身長が低い彼女は、必然的に上目遣いになる。元々整った顔立ちをしている彼女の、その表情はさぞ庇護欲をそそることだろう。きっと、ジャレッドも。
そう思ってから、首を振ってその考えを追い出す。ジャレッドは、私を愛している。それを、否定するような考えを私が持ってはいけない。
「それは、できません」
私もジャレッドを愛している。たとえ、私がジャレッドの番でなかったとしても。
「私は、彼の番なのよ。私とつがえば、絶対に彼は幸せになれる」
そうだろう。番とはそういうものなのだから。
「私が彼と二人で幸せになります。だから、別れません。では」
これ以上、彼女といたくなくて、席をたつ。
「──貴女はそう思っているかもしれないけれど、彼はどうかしらね?」
去り際に彼女がいった言葉が、私にまとわりつく。
その言葉を振りきるように、足早に、店を出た。
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