3 / 3
一周目
悪役聖女、義兄にトラウマを植え付ける 2
しおりを挟む
ここで、お母様やお父様にばれないように、トーラスお義兄様にだけ見えるように、口角を上げるのもポイントだ。
きまったー!
これで、苦手なピーマンを押し付ける意地悪な妹が爆誕した。
「……わかったよ」
トーラスお義兄様は、しぶしぶといった様子で、わたしがピーマンだけ分けたお皿を受け取った。
そして、夕食会が再び始まる。
和やかに会話をするお父様とお母様の言葉を聞き流しながら、わたしは、ずっとトーラスお義兄様に注目していた。
トーラスお義兄様は、ピーマンを口に含むと、青い瞳が1.5倍に大きくなった。
そして、勢いよく水で流し込む。
黙々と繰り返される動作を眺めながら、わたしはトラウマを植え付けることに少しだけ成功したに違いないと心のなかでガッツポーズした。
こんな感じで少しずつ、トラウマを植え付けていこう。
◇◇◇
翌日、侯爵家近くの湖畔で読書をするという、トーラスお義兄様についていくことにした。
「……トーラスお義兄様!」
そのためにきゅるん、と瞳を潤ませて手を組み、トーラスお義兄様を見上げる。
「わたし、トーラスお義兄様についていきたいです!」
トラウマを植え付けるという目的もあるけど、純粋にあと6年間しか過ごせない、トーラスお義兄様と思い出作りがしたかったのもある。
「ロイゼ、湖は深くて危ないから……」
「一緒に読書をするだけです。いいでしょう?」
必殺☆うるうるビーム!
「……わかったよ」
ピーマンのおかげか、1.2倍には常から開くようになった瞳を少し細めて、トーラスお義兄様は、ため息をついた。
「じゃあ、ついてきて」
わーい!
お義兄様と読書ターイム!!
わたしは、本を用意して――お義兄様から以前の誕生日に贈ってもらった物語の本だ――トーラスお義兄の後ろについて歩いた。
湖畔はいつも、ついてきちゃダメっていわれるから、始めていくのよね。
きらきらと輝く水や、木々の隙間から漏れる光、そして鳥の囀ずりなど、わたしの興味を引くものがたくさんだ。
きょろきょろと、辺りを観察しながら歩いていると――石につまずいて盛大にこけかけた。
そして、手に持っていた本がぽーんと宙にあがる。
「本が!」
トーラスお義兄様にもらった大事な本なのに!
咄嗟に本を追いかけたわたしは、本を無事キャッチ――する前に、ぐにゃ、とした感触がした。
「え?」
みると、足元に地面はなく、そこは水の上だった。
「……あっ」
まずい!
だって、だって、ロイゼはわたしは、金ヅチなのだ。
溺れてしまったら、泳げない!
そんなわたしに気づかず、先にずんずんすすんでいく、トーラスお義兄様に手を伸ばす。
けれど、その手は届くことなく宙をかいた。
「や……」
ドボン!
耳元で大きな音が聞こえ、わたしのからだは沈んでいった。
きまったー!
これで、苦手なピーマンを押し付ける意地悪な妹が爆誕した。
「……わかったよ」
トーラスお義兄様は、しぶしぶといった様子で、わたしがピーマンだけ分けたお皿を受け取った。
そして、夕食会が再び始まる。
和やかに会話をするお父様とお母様の言葉を聞き流しながら、わたしは、ずっとトーラスお義兄様に注目していた。
トーラスお義兄様は、ピーマンを口に含むと、青い瞳が1.5倍に大きくなった。
そして、勢いよく水で流し込む。
黙々と繰り返される動作を眺めながら、わたしはトラウマを植え付けることに少しだけ成功したに違いないと心のなかでガッツポーズした。
こんな感じで少しずつ、トラウマを植え付けていこう。
◇◇◇
翌日、侯爵家近くの湖畔で読書をするという、トーラスお義兄様についていくことにした。
「……トーラスお義兄様!」
そのためにきゅるん、と瞳を潤ませて手を組み、トーラスお義兄様を見上げる。
「わたし、トーラスお義兄様についていきたいです!」
トラウマを植え付けるという目的もあるけど、純粋にあと6年間しか過ごせない、トーラスお義兄様と思い出作りがしたかったのもある。
「ロイゼ、湖は深くて危ないから……」
「一緒に読書をするだけです。いいでしょう?」
必殺☆うるうるビーム!
「……わかったよ」
ピーマンのおかげか、1.2倍には常から開くようになった瞳を少し細めて、トーラスお義兄様は、ため息をついた。
「じゃあ、ついてきて」
わーい!
お義兄様と読書ターイム!!
わたしは、本を用意して――お義兄様から以前の誕生日に贈ってもらった物語の本だ――トーラスお義兄の後ろについて歩いた。
湖畔はいつも、ついてきちゃダメっていわれるから、始めていくのよね。
きらきらと輝く水や、木々の隙間から漏れる光、そして鳥の囀ずりなど、わたしの興味を引くものがたくさんだ。
きょろきょろと、辺りを観察しながら歩いていると――石につまずいて盛大にこけかけた。
そして、手に持っていた本がぽーんと宙にあがる。
「本が!」
トーラスお義兄様にもらった大事な本なのに!
咄嗟に本を追いかけたわたしは、本を無事キャッチ――する前に、ぐにゃ、とした感触がした。
「え?」
みると、足元に地面はなく、そこは水の上だった。
「……あっ」
まずい!
だって、だって、ロイゼはわたしは、金ヅチなのだ。
溺れてしまったら、泳げない!
そんなわたしに気づかず、先にずんずんすすんでいく、トーラスお義兄様に手を伸ばす。
けれど、その手は届くことなく宙をかいた。
「や……」
ドボン!
耳元で大きな音が聞こえ、わたしのからだは沈んでいった。
0
お気に入りに追加
300
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
長女は悪役、三女はヒロイン、次女の私はただのモブ
藤白
恋愛
前世は吉原美琴。普通の女子大生で日本人。
そんな私が転生したのは三人姉妹の侯爵家次女…なんと『Cage~あなたの腕の中で~』って言うヤンデレ系乙女ゲームの世界でした!
どうにかしてこの目で乙女ゲームを見届け…って、このゲーム確か悪役令嬢とヒロインは異母姉妹で…私のお姉様と妹では!?
えっ、ちょっと待った!それって、私が死んだ確執から姉妹仲が悪くなるんだよね…?
死にたくない!けど乙女ゲームは見たい!
どうしよう!
◯閑話はちょいちょい挟みます
◯書きながらストーリーを考えているのでおかしいところがあれば教えてください!
◯11/20 名前の表記を少し変更
◯11/24 [13] 罵りの言葉を少し変更
婚約破棄された悪役令嬢にはヤンデレ婚約者が宛がわれました
荷居人(にいと)
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢の結末って死ぬ運命にあるか国外追放か。で、乙女ゲーム転生で悪役令嬢になっちゃったといえば死なないためにふんばるか、国外追放やっほーいな気分でそれを目指して平民になろうとするかだと私は思ってる。
大抵転生悪役令嬢はなんだかんだいいポジション枠で幸せになるよね!
なのに私は悪役令嬢に転生してると記憶を取り戻したのはいいとして既に断罪される直前。お決まりの婚約破棄後に言われたのは強制的な次の婚約先!その相手は悪役令嬢のストーカーモブで………。
「あれ?意外にいい男だ」
乙女ゲームでは声のみ出演だったモブは悪役令嬢側からしたらなしでも、私からすればありありの婚約者でした。
寧ろ推しより好みです!ストーカー、ヤンデレ、束縛上等!だってそれだけ愛されてるってことだもんね!
婚約破棄したい悪役令嬢と呪われたヤンデレ王子
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「フレデリック殿下、私が十七歳になったときに殿下の運命の方が現れるので安心して下さい」と婚約者は嬉々として自分の婚約破棄を語る。
それを阻止すべくフレデリックは婚約者のレティシアに愛を囁き、退路を断っていく。
そしてレティシアが十七歳に、フレデリックは真実を語る。
※王子目線です。
※一途で健全?なヤンデレ
※ざまああり。
※なろう、カクヨムにも掲載
殺されたくない転生悪女は、ヤンデレ婚約者と婚約を破棄したい!!
夕立悠理
恋愛
楽しみにしていた魔法学園の入学式で、私は前世の記憶を思い出した。前世の記憶によると、ここは乙女ゲームの世界で、私はヤンデレな攻略対象者たちから様々な方法で殺される悪役令嬢だった! って、殺されるとか無理だから! 婚約者にベタ惚れで、イエスマンな私は今日でやめます!! そして婚約破棄を目指します!! でも、あれ? なんだか、婚約者が私を溺愛してくるんですが……?
※カクヨム様小説家になろう様でも連載しています
盲目のラスボス令嬢に転生しましたが幼馴染のヤンデレに溺愛されてるので幸せです
斎藤樹
恋愛
事故で盲目となってしまったローナだったが、その時の衝撃によって自分の前世を思い出した。
思い出してみてわかったのは、自分が転生してしまったここが乙女ゲームの世界だということ。
さらに転生した人物は、"ラスボス令嬢"と呼ばれた性悪な登場人物、ローナ・リーヴェ。
彼女に待ち受けるのは、嫉妬に狂った末に起こる"断罪劇"。
そんなの絶対に嫌!
というかそもそも私は、ローナが性悪になる原因の王太子との婚約破棄なんかどうだっていい!
私が好きなのは、幼馴染の彼なのだから。
ということで、どうやら既にローナの事を悪く思ってない幼馴染と甘酸っぱい青春を始めようと思ったのだけどーー
あ、あれ?なんでまだ王子様との婚約が破棄されてないの?
ゲームじゃ兄との関係って最悪じゃなかったっけ?
この年下男子が出てくるのだいぶ先じゃなかった?
なんかやけにこの人、私に構ってくるような……というか。
なんか……幼馴染、ヤンデる…………?
「カクヨム」様にて同名義で投稿しております。
変態王子&モブ令嬢 番外編
咲桜りおな
恋愛
「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」と
「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」の
番外編集です。
本編で描ききれなかったお話を不定期に更新しています。
「小説家になろう」でも公開しています。
ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)
夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。
ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。
って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!
せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。
新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。
なんだかお兄様の様子がおかしい……?
※小説になろうさまでも掲載しています
※以前連載していたやつの長編版です
この世界に転生したらいろんな人に溺愛されちゃいました!
めーめー
恋愛
前世は不慮の事故で死んだ(主人公)公爵令嬢ニコ・オリヴィアは最近前世の記憶を思い出す。
だが彼女は人生を楽しむことができなっかたので今世は幸せな人生を送ることを決意する。
「前世は不慮の事故で死んだのだから今世は楽しんで幸せな人生を送るぞ!」
そこから彼女は義理の弟、王太子、公爵令息、伯爵令息、執事に出会い彼女は彼らに愛されていく。
作者のめーめーです!
この作品は私の初めての小説なのでおかしいところがあると思いますが優しい目で見ていただけると嬉しいです!
投稿は2日に1回23時投稿で行きたいと思います!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
トラウマってどんなの?と思ったら、ピーマン食べさせるとか…。かわいい。
しかし後ろでいつのまにか溺れてるってのは本格的トラウマになりうる!
どうなるのー?